日常

シュタイナー「魂について」

2012-04-05 13:42:12 | 
(本書より)
『超感覚的な真実に至ることで、何が学べるのでしょうか。
そこに至ることで学べるのは、快と苦なしに、日常の損得なしに、個人的な偏見なしに、人性の一歩ごとに出あう事柄なしに、真実を把握するということです。』
『笑うことも泣くことも、人間のもっとも深く内的な霊性をあらわしているのです。』



シュタイナー「魂について」春秋社 (2011/01) を読んだ。

シュタイナーの本を読むと、とにかくシュタイナーはタダものではない!ということを改めて再確認する。
(むかし、「所さんのただものではない」という番組、ありましたよね。どうでもいいですけど。)


自分にはまだよく理解できていない部分も多いが、シュタイナーが深い本質を捉えている、ということは何故だか分かる。自分の認識能力の範囲を少し拡張して共感的に理解したい。

一般的に、自分が分からないことに直面したとき、<相手がおかしいのだ>と相手に原因を求めるのは「自我Ego」が持つ防衛反応のひとつだと思う。自我が壊されたくないから行う反射反応のようなもの。たいてい、自分の知性や理性を柔らかく拡張すれば受け入れられることが多いのは過去の経験から理解している。

言語化できない領域(もしくは、今まで誰も適切な言語化に成功していない領域)を言語化するということは、何でも常識はずれに聞こえてしまうものだ。
そういう意味で、誤解や中傷を恐れずに言語化しようとする試み全般には敬意を感じる。その代表格がシュタイナー。シュタイナーは本気で霊を学問しようとしている。



下にはメモのように覚え書きを記載。
「魂」という存在は子供のころから気になっていましたし、今でももちろん気になっています。


シュタイナーは単なる直感や霊感だけではなく、ゲーテ研究を含めた哲学・宗教・科学への深い理解がベースにあります。

この本でも、「魂」に関するソクラテス、ゲーテ、トマス・アクィナス、ヤーコプ・ベーメ・・・の引用も紹介されています。
そういう哲学や思想の歴史を確実に踏まえた上でシュタイナー自身の「魂」に関する考えは展開されます。

だからこそ、シュタイナーの言葉には深みと重みがあるのでしょう。
「魂」の問題は、あらゆる角度から接近していい領域だからこそ、重要。

シュタイナーは元々ゲーテ研究から有名になった人だからこそゲーテの引用が多い。
ゲーテそのものが血となり肉となっている。これこそ学問の真髄だと改めて思う。
シュタイナーからはゲーテの魂が垣間見えるので、ゲーテの本も改めて読みなおしてみよう。



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ゲーテ『神的なもの』
「永遠にしておかしがたい
 偉大な法則に従って
 私たちはみずからの存在の環を
 完成させなければならない」
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魂とは私たちの中にあって、身体の凡ての器官に浸透している何かなのです。
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人間を成長させる最初のものは植物的なものなのです。
植物魂は魂の第一段階であると言えます。
この魂は私たちの身体、その身体の諸部分、目、耳、筋肉、私たちの身体全体を生じさせたのです。
第二の魂である動物魂は、私たちに感受性、欲望、運動の能力を与えています。私たちはこの能力を動物界全体と共有しているので、この魂を動物魂と呼ぶのです。
この能力のおかげで、植物のように生長するだけではなく宇宙の鏡にもなれるのです。

植物魂によって生体を形成する素材が摂取でき、動物魂によって低次の魂のいとなみが可能になるのです。
感受性は快と苦を通して育ちます。
どんな植物も発芽力なしには種子から成長していけないように、動物も器官を印象で満たし、生命(いのち)を快と苦で満たせなかったら、動物として生きていけません。
私たちの植物魂は素材の世界から生体を育成し、動物魂は欲望界から欲望の素材を受容するのです。
人間の場合には知性という高次の営みが始まっているのです。この第三段階は、悟性魂と呼ばれます。
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教育とは、人間の個的なものを発達させることです。各人の中に眠っている高次の魂を目覚めさせることです。
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私たちの時代はみずからの魂の存在を否定するところまで達してしまいました。
この時代に自分自身を取り戻す事、私たちの内部の永遠で恒常なものを信じること、私たちの内部の神的なる存在の核心をこの時代のために新たに甦らせること、これが私たちの課題でなければならないのです。
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プラトンがソクラテスをあれほど尊敬したのは、ソクラテスが自己認識を通して至高なる神の認識に達することができたからでした。ソクラテスは認識と真理の殉教者になりました。
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トマス・アクィナス
「わたし達が感覚的な環境の中で見るものは、
 いつでも感覚的な幻想に浸透されている。」
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トマス・アクィナス
「人間の魂は輝く月に似ている。しかしその輝く光を月は太陽から受け取っている。
 人間の魂は水に似ている。その水は、それ自身では冷たくも暖かくもなく、熱を火から受け取っている。
 人間の魂は高次の動物魂に似ている。しかしそれが人間の魂でありうるのは、その光を人間の霊から受け取るからなのである。」
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ゲーテ
「人間の魂は水に似ている。天から来て天へ昇る。
 そしてふたたび大地へ下りる。永久に繰り返しながら。」
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ゲーテ
「一人一人の魂はひとつの波となって、繰り返して湧きおこる。
 そして海水から波を波立たせる風は運命の働きなのだ」
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ゲーテ『海面上の霊たちの唄』
「風は波の 愛すべき恋人
 風は海の底から大波をわき立たせる。

 人間の魂は 水によく似ている
 人間の運命は 風によく似ている」
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ソクラテス
「真の賢者は、自分が身を捧げてきた世界を考察する時、一切の感覚世界から独立している。
賢者にとって価値があるのは、決して感覚によってはもたらされないものだけなのだ。
感覚の前に現れるものが消えて行っても、感覚の手に及ばぬものは、変わらずに留まり続ける。」
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霊が自分の内部で語るのを聴くためには、どのように内部に沈滞すのか、という問いなのです。
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超感覚的な真実に至ることで、何が学べるのでしょうか。
そこに至ることで学べるのは、快と苦なしに、日常の損得なしに、個人的な偏見なしに、人性の一歩ごとに出あう事柄なしに、真実を把握するということです。
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魂が沈黙させられますと、つまり魂が遮断されますと、自分のからだと他の人のこころとの間に魂が位置する事ができなくなって、からだは催眠術師のこころの作用に従い、鉱物が自然法則に従うように、意思を失い、催眠術師のこころの働きに従うのです。
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自我の活動を目が覚めてから眠るまで辿って行くと、自我は外界と自分とを一致させようと努めているのだ、と言うことが分かります。
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自我は、外界との関係の満足できないと笑って自由の中に身をおくか、それとも泣いて自分の中に沈滞し内なる創造活動の中で喪失に耐えられるように自分を強くしようとするか。そのどちらかの態度をとるのです。
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笑うことも泣くことも、人間のもっとも深く内的な霊性をあらわしているのです。
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動物は自分の自我をみずからの中にではなく、みずからの外に持っているのです。動物の自我は集合自我であり、その自我は動物を外から導いているのです。
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ヤーコプ・ベーメ
「目覚めている時も私は眠り続けている。睡眠中の私の中に生じている力が、目覚めている時にも働き続けている。」
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ヤーコプ・ベーメ
「私は眠っている間、無になったりしてはいない。睡眠中も自分の自我とアストラル体を保持している。私は無になっていない。ただ自分を、感覚で知覚し知性で把握する世界全体から引き離している。」
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言いかえれば、私たちはこんにち、睡眠中に体験する独立した現実を、覚醒時に意志の力によって、覚醒時の思想の中に注ぎ込むところにまでは、まだ達していません。
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<ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner, 1861年-1925年 満64歳没)> Wikipediaより豆知識
・ オーストリア帝国(1867年にはオーストリア・ハンガリー帝国に、現在のクロアチア)出身の神秘思想家 。アントロポゾフィー(人智学)の創始者。哲学博士。
・20代でゲーテ研究者として世間の注目を浴びた。
・1900年代からは“超感覚的”(霊的)世界に関する深遠な事柄を語るようになった。
・「神智学協会」との方向性の違いにより1912年に同協会を脱退し、自ら「アントロポゾフィー協会(人智学協会)」を設立。
・教育、芸術、医学、農業、建築など、多方面に渡って語った内容は様々に展開され実践された。
・特に教育の分野で、ヴァルドルフ学校(シュタイナー学校)が世界で展開された。
・・1894年には哲学的主著『自由の哲学』を出版し、その5年後には『ゲーテの世界観』を出版。
・「自由の哲学」ではあるゆる哲学の試みを検討し、その欠陥を確定して別の観点を試みた。霊的なものを受け入れる土台つくりに若い頃は励んだ。
・シュタイナーによれば、人間の通常の五感では事物の表面しか捉えることはできず、人間の死後に五感を越えたより高次の7つの超感覚(霊的感覚/器官・チャクラ)によって初めて、事物の本質を把握することができる。
・その超感覚は誰しもが潜在的に持っている。生きている間は瞑想や思考の訓練で引き出せる。
・自分で書いた霊的な事柄も万人が確かめることができるものだとして具体的な修行法を本で公開した。
・しかし、霊媒や降霊術等の、理性的な思考から離れて感情に没入する“神秘主義”は、科学的でなく間違った道であると警鐘を鳴らした。
・シュタイナーは「精神“科学”」という言葉にも表れているように、霊的な事柄についても、理性的な思考を伴った自然科学的な態度で探求した。
・『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』では具体的な霊的体験を得るための修行法を描いているが、二部を作る前に世を去った。
・40歳になるまでは霊的な指導を引き受けなかったのは自分が誤謬に陥り易くなるためだと言う(発明は40歳までのは人類の道徳を退行させ、40歳以後は人類の道徳に貢献するものにもなる)
・第一次世界大戦後の最中に、戦争を初めとした社会問題の解決策として「社会有機体三層化運動」を提唱した。社会という有機体を精神生活(文化)、法生活(政治)、経済生活の三つの部分が独立しながらも、精神生活においては「自由」を、法生活(政治)においては「平等」を、経済生活においては「友愛」を原則として、この3つが有機的に結びつくことが健全な社会のあり方であると説いた。
・1980年代の西ドイツの緑の党の創立理念に影響を与えた。
・ヨーロッパのヴァルドルフ学校(シュタイナー学校)は600校(うちドイツに200校)ある。
・日本ではシュタイナー教育として知られている。シュタイナー学園(神奈川県相模原市藤野町)、東京賢治の学校自由ヴァルドルフシューレ(鳥山敏子代表)など。
・心身障害児のための施設を作った。後に治療教育施設「ゾンネンホーフ」となる。薬以外にも、音楽、絵画、彫塑、オイリュトミーなどの芸術や宗教による特別の教育を示した。イギリスでは治療教育は、シュタイナー教育の代名詞と言われるほど評価が高い。
・シュタイナーによれば人間は7年毎に体を完成させてゆき、63歳で成長の頂点を迎えるとしている。(だから64歳で亡くなった?)
・7歳までを肉体、14歳までをエーテル体、21歳までをアストラル体の完成とし、それ以降は自我が独立して発達するとした。それ以前の期間を教育が必要な時期とした。
・シュタイナーは四体液説の粘液の分類を取り入れている。自我が優勢な胆汁質、アストラル体が優勢な多血質、エーテル体が優勢な粘液質、肉体が優勢な憂鬱質がある。それぞれの気質で子供の対応を変える。個人における四気質を調和へ導くことが教育の課題。
・超感覚的世界というテーマを含んだ新しい劇である「神秘劇」を四作創作した。毎年、スイスのドルナッハで上演されている。
・オイリュトミー:音や言葉の質を身体の動きで表現する独自の芸術を考案した。
・ゲーテアヌムと呼ばれる独特の形姿を持つ建物の設計を行った。
・シュタイナーは芸術を感覚界における超感覚界の表現としている。美は理念(イデア)の表現ではなく、表現によるイデアそのものだとしている。美的な体験はアストラル体(感情、感受的心魂の表現)を通じるものだとし、芸術によるいくつかの療法も行っている。
・シュタイナーは霊学に基づく医学の講演を行った。自然の原料のみを使った化粧品や食品を製造している会社「Weleda」(ヴェレダ)など。
・シュタイナーは有機農業のような地球次元だけでなく、天体の動きなど宇宙との関係に基づいた「農業暦」にしたがって、種まきや収穫などを行うという自然と調和した農業、「バイオダイナミック農法」(ビオダイナミックBIO-DYNAMIC)を提唱した。日本では1985年に千葉県(現在は熊本県)の農場で「ぽっこわぱ耕文舎」が初めて「バイオダイナミック農法」を始めた。
・新しいキリスト教の秘跡の儀式を伝授した。


<生涯>
1868年(7歳)物質世界を超えた超感覚的(霊的)世界を感知。
1873年(12歳)自然科学の文献を読みあさる。
1874年(13歳) 機械論的な世界解釈と、大好きな幾何学に没頭する。
1877年(16歳)カント『純粋理性批判』を読みふける。ヘルバルト主義的哲学の研究に没頭。
1879年(18歳)ある一人の薬草収集家と出会い、人類の歴史の中で、密かに霊的な叡智が受け継がれて来たことを知り、人に話して来なかった自分の霊的な経験を語る。
ウィーン工業高等専門学校(現ウィーン工科大学)に入学し、数学、生物学、物理学、化学を学ぶ。物質に還元して説明する自然科学と霊的経験とのギャップに悩む。
1882年(21歳) アンチ=ワーグナーを主張
(後に「音楽で霊的秘儀を解釈しようとしているリヒャルト・ワーグナーを研究しなければなりません」と語っている)
1883年(22歳)出版家がゲーテの自然科学に関する著作を校訂し、序文を書く仕事を依頼する。(14年後の1897年に完成)
『ファウスト』を初めて読む。自然(物質)と霊(精神)の間の架け橋を示すゲーテの世界観に可能性を感じる。
1886年(25歳) 初の著作『ゲーテ的世界観の認識論要綱』を出版する。
1888年(27歳) 豊富な交友関係とは裏腹に、内的な孤独に見舞われる。
1889年(28歳)初めてニーチェの『善悪の彼岸』を読む。
1890年(29歳) ウィーンの『国民新聞』に演劇評論を連載。ゲーテ=シラー遺稿保管局で働く。
1892年(31歳)『真実と科学』を出版。
1896年(35歳) 「ゲーテ=シラー遺稿保管局」を退職。
1897年(36歳) 14年越しに『ゲーテの自然科学論文集』が出版。
1900年(39歳) 神秘主義に関する連続講義を開始。
1902年(41歳) 神智学協会の会員になる。
『神秘的な事実としてのキリスト教と古代の秘儀』が出版。
 ドイツ支部事務総長に就任・
1904年(43歳) 現代人にふさわしい霊的感覚を啓発する修行法を示す『いかにしてより高次の認識を獲得するか』の連載。
1910年(49歳) 『神秘学概論』出版。
神秘劇第一部『秘儀参入の門』が上演。これ以降シュタイナーの活動は、建築、彫刻・彫塑、絵画、音楽、言語芸術(言語造形)、運動芸術(オイリュトミー)などの各芸術分野に及ぶ。
1911年(50歳) クリシュナムルティ(1895-1986)を救世主とする「東方の星教団」がインドで設立。
1912年(51歳) アントロポゾフィー協会を設立。
1914年(53歳) 第一次世界大戦勃発。
1915年(54歳) 「人類の代表者」と題する彫刻の製作。
1917年(56歳) 実践的な社会運動へと及ぶ。
1918年 第一次世界大戦終結。
1920年(59歳) イタ・ヴェーグマンと共にアントロポゾフィー医学(シュタイナー医学)の創始。
1925年(64歳) 他界(死の三日前まで「人類の代表者」にのみを振っていた。)