在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Piccoli crimini coniugali di Alex Infascelli イタリア映画の紹介「夫婦間の小さな犯罪」

2017-04-27 10:32:41 | 何故か突然イタリア映画
Piccoli crimini coniugali
監督 アレックス・インファシェッリ

登場人物二人だけ。すでに亀裂の入った夫婦の心理劇。




すぐに書ける、書きたくなる作品、書けない、書きたくない作品があるが、これは後者。

途中、どうしても出なければならない仕事の電話がかかり、5分くらい抜けたこともある。

最初から最後まで、登場人物二人だけ。

いや、もう一人いたよね。
夫が病院から退院して家に帰る車を運転してた運転手。

あれは私です、と監督。(笑)

運転していただけで、後姿のみ、だから登場人物はやっぱり二人、で、85分。
長いような短いような。

相当の役者じゃないともたないと思うのだが、そこは、セルジョ・カステッリートとマルゲリータ・ブイ。どちらも大御所。いわくいっぱいの夫婦役。

夫エリアは、有名な推理小説作家。
ある日、アパートの階段から落ちて入院。記憶を失った。

記憶は戻っていないが、怪我は治り、退院。
妻と二人で住む、広く趣味のいい、高級アパートに戻ってくる。

実は夫婦間、いろいろあったにもかかわらず、夫の記憶がないことをいいことに、よき夫に戻ってくれるよう誘導する妻。

記憶が全く無くなったと言いながら、本当はかなり戻ってきている夫。

どこまでが本当で、どこからが嘘か、いったいどんな夫であり、どんな妻だったのか、階段から派手に転げ落ちるようなことがどうして起こったのか、その駆け引きが、ほぼ言葉だけで繰り広がられる。

真実、虚栄、嘘、過ち、夫婦間の小さな犯罪、なすりつけなどが、愛という幻想のもとにドロドロとぐろを巻いてる感じ。

最初は、よき夫、よき妻に見えた二人の間の深い溝がだんだんと見えてくる。

かなり広いとはいえ、撮影は家の中だけ。
登場人物も二人だけ。

映画というより演劇を見ている感覚。
微妙な言葉のあやを聞き逃さないように、結構緊張する。
見事な心理劇。推理劇。

これを面白いと思うか、退屈と思うかは、かなり極端に意見の分けれるところ。