在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

イタリア映画の紹介 Il racconto dei racconti 童話の中の童話

2015-05-28 15:21:16 | 何故か突然イタリア映画
イタリア映画の紹介 Il racconto dei racconti 童話の中の童話



ナポリのヤクザ、カモッラを描いた「ゴモッラ」で一躍有名になった監督、マテオ・ガッローネ。びっくりするほど感じがいい。
こちらの1年は秋に始まって夏前に終わるので(夏はバカンスなので除外。笑)今年のさる賞のノミネート作品もいよいよ大詰め。
カンヌ映画祭にかけて大型作品が出ているため、大詰めになって、イタリアを代表する監督の作品が3本続くことになった。
前回の「私の母」の監督ナン二・モレッティは、年齢もかなり上の大御所監督であるからか、決して感じが良いとは言えなかったが(映画界をよく知っている友人曰く、彼は感じが悪い)ガッローネも似たようなものかと思ったら全然違った。
まだ若いこともあるかもしれないが、なかなか饒舌で、作品に関することだからかなり貴重。

原作は16世紀のナポリの作家、バジーレの書いた童話で、50ほどあるなか、3つを選んでいる。
女性のストーリーの焦点を当てたと言うが、なるほど、素敵な夫を持ちたいと思ううら若いお姫様、子供がなかなかできない女王、若返りたい老女、の3つを選んでいる。
当時の童話は、めでたしめでたしで終わるかわいいものではないので、結構シビアな内容であるが、その3つを、実にうまく掛け合わせている。
つまり、3つの独立した話を、3つの短編とするのではなく、要点要点をつなげて一つにうまくまとめる手法を取っている。
それぞれのストーリーに王様が出てくるが、最初の話、子供のできない女王が魔法で子供を授かったのはいいが、その際、王様が死んでしまう。その葬儀に、あと二人の王様も参加している、という感じでつなげている。
この、3つの領地の3人の王様(一人は女王)が一堂に会して、という場面がいくつかあるため、全体が一つに実にうまくまとまっている。見事である。

撮影はシチリア、プーリアの有名な城、モンテ城、トスカーナ、ラツィオで行われたというが、かなり綺麗。そして、それぞれの衣装も、特に女王の着ているドレスが絵に描いたように、非常に美しい。
ガッローネはもともとは画家だったそうで、ゴヤの世界、そして、カラヴァッジョ、ベラスケスなどを意識したということだが、なるほど納得である。
つまり、映画の景色、衣装を見るだけでも目の保養になる。

細かいストーリーは置いておくが、子供がどうしても欲しい母、子供を手元に置き、コントロールしたい母の恐ろしさ。最初は若返りたいと思ったわけではないにしても、ひょんなきっかけから、若返りたい、そして、妹が若返ったのを見て自分もなんとか若返りたいと思う老女の欲望。素敵な夫を持つことが可能であるはずの、うら若いお姫様の夫に選ばれたのは恐ろしい怪物のような男。最後はその怪物の首を切って殺してしまう。
ストーリーの合間合間に、魔法使いやら、怪獣やら、巨大なノミやらが出現して笑わせてくれる場面もあり、2時間以上にもなるのだが、飽きない。
目の保養になることも含めて、オススメの映画の一つである。

同じようなスタイルの映画を作るのではなく、がらっと違うものを、と思ったそうだが、まさか、ファンタジー作を作るとは。次は一体どんな映画を、ではなく、どんな世界を見せてくれるのか、次回作も楽しみになってきた。

Expo Milano ; padiglione svizzera

2015-05-25 00:33:56 | Lonbardia, Valle d'Aostaロンバルディア他
Padiglione Svizzera
エキスポ スイス館



ちょっとびっくりだったのがスイス館。
他のパビリオンのように並ぶのではなく、チケットをもらう。チケットはもちろん無料。15分おきに100-120人程度を入場させているそうだが、チケットには時間が入っている。
時間にはかなり正確で(さすがスイス!)、時間ぴったりにならないと入れてくれない。

時間まで待って入る。でもまだエレベーターに乗るまで、20分くらい並ぶ。
やっと、あまり大きくはないエレベーターで、タワーの一番上の階へ。(タワーと言っても4階くらい?)

スイス館は、オープン前の、外人記者クラブでの会見に行った時、エキスポ側が「スイス館だけはプロジェクトを教えてくれない、中を見せてくれない、どうなっているか楽しみ」と言っていた。

そんな訳で興味シンシン。
ところが、はぁ~、と力が抜けた。
最初の部屋はスイスを代表する企業、ネスカフェの部屋。
棚にはボックスが置いてあって、中には一杯用のネスカフェが入っている。と言うか、それしか入っていない。
好きなだけ取っていいですよ~、と明るいアナウンス。無くなったら終わりですよ~。
次の部屋は、アルプスの塩の部屋。
同じく、好きなだけ取っていいですよ~。
と言われても、一つか二つ、あっけに取られて取る。
なるほど、3つ目はアルプスの水の部屋で、プラスチックのコップがもらえるようだったが、すでに終わりで、棚は空っぽ。

再びエレベーターに乗って下に降りた。
下では何やら展示らしきものがないわけでもなさそうだったが、メイン会場のタワーがコレ。
これで、週末の午後は4時間待ちだったりもする。


Expo Milano; Padiglione Giappone

2015-05-23 11:38:27 | Lonbardia, Valle d'Aostaロンバルディア他
Padiglione Giappone
エキスポ 日本館




日本館がかなりいい。
他、まだたくさんは見てはいないがさすが日本。
並ぶ時間の表示、入る前に数回の説明。 後どれくらい、展示の構成(部屋が9つ)、見学時間の(50 分)説明など。
入ると日本の伝統とテクノロジー、それも他と比べるとかなり進んだテクノロジーを使用して、ヴィジュアル的にかなりきれいで退屈しない。
そして最後のシアターがちょっとデズニーランド風で、回によっては若干白けてしまうリスクはあるにしても(がんばれ!)、面白い。かなりのテクノロジーを駆使して一見の価値あり!







Vermentino: Sardegna x Liguria totale 9 vini ヴェルメンティーノ サルデニアxリグリア 計9種

2015-05-15 15:52:12 | Sardegna サルデニア
Vermentino di Sardegna e di Liguria totale 9 vini ヴェルメンティーノ サルデニアとリグリア 合計9種



Riviera Ligure di Ponente Vermentino Vigna Sori’ 2013 Poggio dei Gorleri ポッジョ・デイ・ゴリエリ
Riviera Ligure di Ponente Vermentino Aimone 2013 BioVio ビオヴィーノ
Colli di Luni Vermentino Superiore Fosso di Corzano 2013 Podere Terenzuola テレンツオラ
Colli di Luni Vermentino Superiore Il Maggiore 2013 Ottaviano Lambruschi ランブルスキ
Vermentino di Gallura Superiore Scialla 2013 Vigne Surrau ヴィーニャ・スラウ
Vermentino di Gallura Superiore Aghiloja Oro 2013 Cantina del Vermentino カンティーナ・デル・ヴェルメンティーノ
Vermentino di Sardegna Kanimari 2013 Nuraghe Crabioni ヌラーゲ・クラビオ二
Capichera 2013 Capichera カピケーラ
Ruinas 2013 Depperu デッペル

アテナウムの試飲会は時々参加する。
今回はサルデニアとリグリアのヴェルメンティーノ比較。
個人的にはかなり面白い内容だと思うが、この手のものは人気は今ひとつのようで、かなりギリギリまでポストはあったよう。
つまり、高いワインとか、有名ワインが出るとわかっている試飲会には申し込みが殺到するが、マイナーな内容、マイナーなワインだとなかなか席が埋まらない。
こういうところが、試飲会を主宰する側の弱みというか、難しいところだと思う。

さて、ワインは全部で9種。品種は全部ヴェルメンティーノ。
サルデニアが5種。リグリアが4種。
試飲の順番はリグリアから始めて交互に、つまり最後はサルデニアが2種続く。

1Riviera Ligure di Ponente Vermentino Vigna Sori’ 2013 Poggio dei Gorleri
最初の印象がかなりよい。甘くて、花、熟したフルーツ、柑橘などにミネラル、スパイス、ナッツなど。ただ、味の方は、期待する分もあるが、酸がやや少なく、塩味はあるが、持続性はまずまず。++(+)
3Riviera Ligure di Ponente Vermentino Aimone 2013 BioVio
香りの強さはまあまあ。ビタミンを思わせる香り、ミントなどの緑の香り。味は、何かが物足りない。若干バランスが悪いような。++
5Colli di Luni Vermentino Superiore Fosso di Corzano 2013 Podere Terenzuola
香りにやや強さがある。柑橘と花の香り。ボディがあり、まろやかさもあり、余韻に心地よくほろ苦さが残る。+++(+)
7Colli di Luni Vermentino Superiore Il Maggiore 2013 Ottaviano Lambruschi
最初は閉じているが、出てくるとかなりよい。チョーク系の香りに、白と黄色の花が綺麗で、カモミールなど、複雑性が出ている。アタックがとても良く、珍しく(笑)塩味だけでなく酸味も綺麗に感じる。持続性がとてもよい。++++
2Vermentino di Gallura Superiore Scialla 2013 Vigne Surrau
最初のワインが華やかだったのもあるが、香りがやや弱い印象。しかし、出てくるとフルーツやユーカリ、そして海のそばにある緑の茂み(macchia mediterraneoと言う)、ミネラルがきれい。味はかなり塩味が強いく、やや細い感じだが、持続性がよい。+++
4Vermentino di Gallura Superiore Aghiloja Oro 2013 Cantina del Vermentino
残念ながら、僅かだがコルク臭あり。ただ、どのボトルも同じような感じだったようで、代わりなし。ある程度まとまってコルク臭がついたのではないか。残念。
6Vermentino di Sardegna Kanimari 2013 Nuraghe Crabioni
個人的にはやや臭みを感じた。(決して悪いわけではないが。)味のインパクトがあり、ボディもよく、余韻に柑橘系の香りが残る。+++
8Capichera 2013 Capichera
昔よく飲んだワインだが、久々。サルデニアのワインの歴史を語るときに欠かせないワインの一つだと思う。色がかなり濃く(一番濃い)、甘い、魅力的な香り。グレープフルーツなどの柑橘、花、桃など、綺麗に熟している。エレガントさとボディの両方を持ち、余韻が長い。+++++
9Ruinas 2013 Depperu
Capicheraの後に、一体どんなワインを持ってきたのかと思った。色にしても、香りにしても、味にしても、 Capicheraにかなうワインはそうたくさんはないと思うからだ。ところが、これがかなりいい。生産量の少ない、ほとんど無名と言っていいワイナリー。エレガントで、軽やか、ミネラスが綺麗で、余韻がかなり心地よい。+++++

全体には、やはりサルデニアが圧倒的に勝っていた。リグリアはこのところ頑張っているし、最近は個人的に結構好きで飲むが、残念ながらサルデニアの方が上を行っていた。リグリア、がんばれ。

7 Fiano di Avellino フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ7種

2015-05-08 23:27:00 | Campania カンパーニア
Fiano di Avellino Radici 2014 Mastroberardino マストロベラルディーノ
Fiano di Avellino 2012 Guido Marsella グイド・マルセッラ
Fiano di Avellino vigna della congregazione 2013 Villa Diamante ヴィッラ・ディアマンテ
Fiano di Avellino 2009 Rocca del principe  ロッカ・デイ・プリンチペ
Fiano di Avellino Refiano 2012 Tenuta cavaliere pepe テヌータ・カヴァリエレ・ぺぺ
Fiano di Avellino 2013 colle di lapio コッレ・ディ・ラピオ
Campania Fiano IGT particella 928 2012 Cantina del Barone カンティーナ・デル・バローネ



友人のルカが試飲会を再開した。第1回の前回はあいにく Vinitalyに行っていたので参加できなかったが、今回は参加してみた。
前回がグレコ・ディ・トゥーフォだったので、フィアーノの今回はその続きということになる。

ルカはワインの試飲をブラインドでする派である。
最近は絶対にブラインドだよね、という風潮はあるが、ブラインドでやらない派はちなみにたとえばアルマンド・カスターニョ。
まあ、彼ほど有能であればこだわることはないし、もちろんブラインドで試飲をすれば、素晴らしい才能を発揮する人である。
対して、サンドロ・サンジョルジは絶対にブラインド派で、試飲会に行くと(最近は行っていないのだが)注がれたワインを、時間制限付きで試飲、つまりしーん(座布団を取り上げられる?)とみんな黙ってメモを取る。
AIS(現在のFIS)は、何度かブラインドらしきことをやったが、一般にはブラインドでやらない派である。(最近はほとんど参加していないので、変わっているかもしれない)

ルカの試飲会で以前面白かったのは、全くバラバラの、いったいどこの国かわからないワインもごちゃ混ぜにしてのブラインドだったが、これが意外に不評だったそうで(ある程度のレベルになると、「外れる」のではないかと怖くなる)やらなくなった。
または、テーマを決めた時はブラインドではない試飲にしていた。
という2種のやりかたをしていたのだが、今回はその中間のやり方であった。

つまり、テーマは決まっているのでワインは何かわかっている、しかし、ワインのタイプやワイナリーはわからない、という方法であった。

他の人の意見はわからないが、私にはちょっと中途半端だった。
以前、やはり某団体が、ワインはわかっているが、どれかはわからないというやり方での試飲会を開いた時、どれかわかっている講師がワインに付いて話すので、気が散るし、話の内容と力の入れ方にこちらの意見も左右された。
今回もそれにわりに近かった。
ルカが好きなワインばかりを選んだというが、やはりどうしてもあるところで力が入ってしまう。
すると、こちらも、感情的にどうしても修正したくなってしまうのである。

さて、ルカが選んだフィアーノ7種は、樽使いのはなく、ステンレス(セメントもあった?)のみ。
やや遅摘みタイプを中心に、自然派も含めて7種。
試飲の準備は、ダイスを転がして決めた全くの偶然。
偶然は奇なりではないが、本当に偶然なのに、とても面白い順番になったと思う。



Fiano di Avellino Radici 2014 Mastroberardino
ご存知ラディーチの白。赤は有名だが、これは白。そういえば白もあったんだ。香りは甘く、熟したリンゴなどに冬メロンまで混じり、わずかスパイスが香りを引き締める。香りはとてもよくできている。味は、酸と塩味が強く、口が乾く感じがあり、最後はほろ苦さが残る。++(+)
Fiano di Avellino 2012 Guido Martella
色が濃いめ。先のワインとは、同じフィアーノでも全く違うタイプだとわかる。ミネラル、燻製っぽい香り、ナッツ、そして、ミルク系の香りもあり。だんだん香りが変化していくのが面白い。味がかなり良く、ボディもあり、持続性も良い。最後にやはり燻製っぽい香りが残り、心地良い。++++
Fiano di Avellino vigna della congregazione 2013 Villa Diamante
さらに色が濃い。3つのうち2つまでがかなり色が濃く、フィアーノはこんなに色が濃かったか?と思ってしまう。かなり変わっている。辛口の香りにカモミール風の香りが混じり、やや酸化した感じも取れる。酸だけでなく、塩味もあり、持続性がすごくあるわけではないが、消えたと思ったらまだ戻って来る感じ。+++(+)
Fiano di Avellino 2009 Rocca del principe 印象がかなり面白い。新しいヴィンテージではないのではないかと思ったら(一応、古いヴィンテージが一つあるとのインフォあり)、2009年だった。よく熟していて、樽を使ったのではないかと一瞬思わせるくらい。アタックは優しい感じにだが、しっかりしたボディもあり、酸がきつくなく、ナッツが余韻に残る。こういう少したった白が個人的に好きなのだと納得。+++(+)
Fiano di Avellino Refiano 2012 Tenuta cavaliere pepe
香りが最初は閉じていて、だんだん出てくるが、ややビオ風の臭みがある。エレガントな雰囲気もあり良いのだが、やや個性に欠ける感じがなきにしもあらず。+++
Fiano di Avellino 2013 colle di lapio
可もなく不可もない感じ。色は最初のワインのように薄め。酸が際立ちほろ苦さが残る。++
Campania Fiano IGT particella 928 2012 Cantina del Barone
再び色が濃くなる。栗やハチミツなど、個人的に好みの香り。ミントのような緑の香りが加わり奥行きがある。アタック良し、酸がきれいで、持続性も申し分なし。++++

全くバラバラのワインの時は結構はっきり優劣、好みが分かるが、とにかく全てフィアーノで、好みの順を付けるのはかなり迷った。





イタリア映画の紹介 Mia madre 私の母

2015-05-07 17:27:44 | 何故か突然イタリア映画
イタリア映画の紹介 Mia madre 私の母



素敵な映画だった。
モレッティの新作ということで、今回はいつもより多くの人が集まった。
こういう場になかなか顔を出さないモレッティ氏自身を間近で見れる期待もある。
なにせ内輪の会なので、嬉しいことに目の前。
映画は、これが映画、と言うとオーバーだが、こういうのを映画と言うんだ、と、観ていて思った。
ある映画評論家が「奥深く、真面目な映画、映画の映画、現実と虚構、今の時代がいかに複雑で多くの問題を抱えているかが見えて来る」というようなタイトルで評論を書いているが、まさにその通り。

女性映画監督のマルゲリータが新作映画を撮影している。
閉鎖を免れた工場。新しいオーナーはアメリカ人。ただし、3分の1をリストラするという。従業員たちは、絶対反対の横断幕をもって行進。オーナーとは衝突する。
この映画の中の映画の役者たちが面白い。特に、アメリカ人のオーナー役が、バリバリ英語訛りのイタリア語を話したり、発音が違ったり、セリフを思いっきり忘れてくれたり、かなり笑わせてくれる。
と、映画の撮影の合間に、もう命わずかになった母親の見舞いに頻繁に病院を訪れる。
仕事を休業して、やはり看護に当たっている兄の役は監督のモレッティ自身。
男から見る母親像、女から見る母親像の違い、離婚して、高校生の子供(女の子)がいるが、その母娘関係、祖母と孫の関係、そして、フィクションではあるが、工場で働く人たち、海を越えてやってきた新しいオーナーとの関係など、何かが起こるわけではなくとも、どれもが解決しがたい問題を抱え、心にしっとり響いてくる。
最後は、母親が亡くなり、回想、エンディング。。。(のはずだが、なんと、機械の調子が悪く、最後の1分半は監督自身に語ってもらった次第)

映画監督役のマルゲリータ・ブイ(自身の名前で演じている)は好きな女優だが、実にうまい。こだわりのある(モレッティ氏もそう)女性監督役を見事に演じている。はまり役。
なお、この映画の撮影中にモレッティ氏のお母様は本当に亡くなったらしい。

ジーンと、というよりシンシン、じわじわ心の中に入ってくる映画。
ぜひ日本での配給を期待したい。

ポスターの男性が監督のモレッティ。





イタリア映画の紹介 La terra dei santi 聖なる者たちの土地

2015-05-01 23:00:19 | 何故か突然イタリア映画
La terra dei santi 聖なる者たちの土地



タイトルから一瞬宗教映画かと思ったが違う。ンドゥラゲタの話である。

イタリアのヤクザ的存在と言うとマフィアをすぐに想像すると思うが、マフィアはシチリアの組織のみを指し、1800年代には存在していたので、ある意味歴史的な存在になっている。
マフィアに似たような組織は、他に、南イタリアのナポリ、プーリア、カラブリアにあるが、つながりはなく、カラブリアの組織をンドゥラゲタと言う。こちらは戦後にできた組織なのだそうだ。
先週の映画が、コメディとはいえナポリの組織、カモッラを背景にしたもので、今週はカラブリア。
毎週観る映画を選ぶのはさる委員会だが、2週続けてヤクザ組織が背景のもので、つまり、人々の関心はないわけではない、と言えるかもしれない。

監督のフェルナンド・ムラーカ氏曰く、存在しているンドゥラゲタを取り扱った映画はこれで3本目とのこと。
まだ歴史の新しいンドゥラゲタは、ファミリーが主体になっているという。
映画が良かったのは、ファミリー同士の抗争を背景に、夫、息子が殺されてしまう、妻であり母である女性を描いたからだと思う。

ストーリーは、姉妹の会話から始まる。
姉(カテリーナ)の方は、ある組織のボスの妻である。
妹(アッスンタ)の夫は数年前に殺された。
そして、結婚式。
花嫁のアッスンタはあまり嬉しそうではない。というのは、夫の弟と再婚するからだ。
マフィアは違うらしいが、ンドゥラゲタは、夫が殺されると(もちろん可能ならば、だろうが)兄弟が引き取ることになっているらしい。
北イタリアから来た女性の検察官(ヴィットリア)が、アッスンタと接点をもち、女性の観点から組織の撲滅に手を入れていく。
アッスンタの前夫との子供は18歳、成人して組織に入る儀式をし、その道を進む選択をする。
アッスンタもバリバリの組織の一人の女なので、異議はない。しかし、ほどなく、その子供が他のファミリーに殺されてしまう。
子供を失ったアッスンタが、女性検察官の前で、最後は涙を流す。

アッスンタを演じた女優がかなりいい。ふてぶてしくもあり、可愛いところもないわけではない組織の女を演じている。
(ふてぶてしいだけなのは姉の方)
人物の会話は全部カラブリア方言。仕事で何度も行ったところとはいえ、こんなにすごい方言だったんだ、と改めて関心。
いつも一緒に行く友人はイタリア人だが、わかる?と聞くと、わからないところもある、と。
語学堪能、南イタリアにも詳しい彼でもわからないところがあって、イタリア語の字幕スーパーが欲しいよね、と冗談を言うくらいだった。
とくに、最初の姉妹の会話がかなり難しく、まるで外国語の映画を見ているようだったのだが、そのあたり、流れをさらっと説明してくれて助かった。
方言のこともあり、若干難しい部分があったこともあるが、もう一度最初から見てもいい、と思った。

なお、撮影はカラブリアではなく、プーリアのある町で行われたとのこと。
(カラブリアだったら事件が起こっていたような気もする。。。)
なお、現在まだ一般公開中であるが、一番観客に関心を持ってもらえたのは、今のところカラブリアが一番だそうで、やはり地元の関心は強いようだ。