だから、走るのだ。

春の長野マラソンに向けて、祐一郎にウツツツを抜かしながらも、もくもくトレーニング中。

『スウィーニー・トッド』見ました。

2008-01-28 | 映画、読書

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師
監督 ティム・バートン
2008年1月25日(金)

 


モノクロの画面に飛び散る真っ赤な血しぶき。その色は実際の血よりも紅い鮮やかな真紅色。


表情が乏しく感情を抑えたキャラクターたちが唯一感情を爆発させるのが殺人のシーンであるため、監督は血なまぐさいシーンは特にこだわったようである。


残酷な描写によってR指定が付くことなどなどなんのその。
それを恐れるあまり表現が控えめになるくらいなら興行成績が落ちようともかまわない。
分かるものにだけ分かればいいといった、監督のこよなくB級ホラーを愛する気概が、大げさに気持ち悪い演出のところどころに感じられて、それがマニアックな者たちの心を捕らえるのだ。


無実の罪で投獄され、愛する妻子を失った現在、スウィーニーにとって現実の世界は死の世界も同然。それは悪夢のような色調乏しいモノクロの世界。
反対に、妻子といた過去の美しい記憶は色彩鮮やかな世界。

その儚い記憶を思い出しながら紡ぐ優しく美しい旋律をバックに次々と冷酷に淡々と殺人を重ねていく。
カミソリで首をかき切り血が「シュバッ」と吹き出る音も、「ギー、バタン」と椅子を倒す音もすべてその旋律に含まれているかのように。

「復讐」しか頭の中にインプットされていない機械仕掛けの人形のようにスウィーニーは殺人を犯し、殺された者もまるで人形のように地下の倉庫に落ちてゆく。

四六時中眉間に深い皺を寄せ、陰鬱な表情を浮かべる彼にはもはや復讐以外何も目に入らない。
ミセス・ラベットのスウィーニーとの甘い生活を夢見たカラフルな空想の中でも、まるで他人事のように無表情でラベットのなすがまま。

一方通行なラベットの恋心が物悲しくもあり、おかしくもある。



そして、残虐な殺人鬼には幸せな結末はけっして訪れない。

けれども、哀しい殺人鬼にとってはあれがハッピーエンドなのかもしれない。

 


ジョニー・デップはさすがだ。
演出は大げさだが、彼の演技はとても最小限で、スウィーニーの深い内面を表現している。
歌も浪々と歌い上げるのではなく、怒りや哀しみなどのいくつもの感情を搾り出すように曲に乗せているといった感じで、スウィーニーのダークなイメージにとても合っていると思う。

憎むべき殺人鬼であるはずなのに、どこか共感を覚えてしまうようなキャラクターに仕上げているところがジョニデのすごいところである。


ミセス・ラベットのヘレナ・ボナム=カーターも存在自体がすでにただならぬ雰囲気であるが、純粋でどこか憎めない犯罪者を演じている。



ひたすら暗く陰惨でおぞましい映画ではあるが、物語の根底は愛である。
そしてときおり「クスッ」と思わず笑ってしまうようなおかしさが散りばめられており、どこか抗えない不思議な魅力がこの映画にはあると思う。





哀しく孤独な殺人者といえば、真っ先に哀しく孤高なヴァンバイアが思い浮かぶ。
キャラクターといいストーリーといい、どこか似ている。

B級映画とホラーを愛するティム・バートン監督にぜひ映画版「ダンス・オブ・ヴァンパイア」を作って頂きたいと密かに願っている。


もちろん伯爵さまはジョニー・デップで。(あ、でも教授でも面白いかも。アルフもいける?)



 

人気ブログランキング参加中★←お願いします!どうかぽちっとして!!

 

コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大阪国際女子マラソン | トップ | 血が足りない。 »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
うむ・・・・ (クロリン)
2008-01-29 10:56:30
先日私も見ましたがこの様な表現ができなかった。
この表現力すばらしい!!!!!!
私は無実の罪で投獄され復讐とはいえ殺人を機械的に行うのがどうも受け入れられずでした。
ジョニー・デップの抑えた演技が淡々と殺人を犯してしまうスウィニーのダークさを表現していて役者としては面白いものを演じたと思う。
別に博愛主義ではない私だけどあそこまで次々生々しく殺人を犯すのを見ると辛くなる。
でもこのスウィーニ・トッド、舞台で市村正親さんと大竹しのぶさんで公演しなかったっけ?
この二人の舞台も観てみたかったと映画を見た後に思った感想でした。
返信する
映画の感想は難しい。 (うさみみ)
2008-01-29 23:16:11
★クロリンさま

この映画ダメな人は絶対だめでしょうね。
隣のお嬢さんはずっと顔を手で覆ってました。
さすがの私も最初の殺人シーンは辛かったですね
でも逆に言い方悪いですけど、あれだけリズム良く殺していると残虐感が薄れてちょっと可笑しくなってくるというか…。
ジョニーも生真面目に演じてるけどどこか可笑しいし。
道徳的な見方で観るとどうしても許せないのでしょうが、ホラー映画とかオカルト映画として観ると面白いのかもしれません。(言ってることよくわかりませんが)

舞台観とけば良かったと思いました。再演してくれないでしょうかね?

返信する
なるほどー (ららにゃん)
2008-01-30 00:10:18
下手な評論家さんたちよりもわかりやすいですねーうさみみさんの表現
ヒマだから見に行こうかしら~って思うけど・・・
やっぱダメだわ~
血なまぐさいシーン、残酷な描写・・・とても映画館では見れません

ジョニデの伯爵様、いいかもー
返信する
あれー? (うさみみ)
2008-01-30 23:11:58
★ららにゃんさま

お仕事がお仕事なので、そういうの大丈夫かと思ったらダメなんですね~(あ、前も聞いたかも)。
舞台だと描写に限界があるのですが、映画はやりたい放題ですからね~。

ジョニデの伯爵様イケると思いますよ。白塗りだし
返信する
よく言われます (ららにゃん)
2008-01-31 21:32:10
そうなんですよ~仕事柄、平気そうでしょー
仕事では何ともないんですけどね~でも映画はダメだー
スクリーンからの血しぶきを全身に浴びそうに感じます
おまけにスクリーンの中のケガ人(?)を助けに行きたくなるんです
返信する
さすが! (うさみみ)
2008-02-01 01:48:32
★ららにゃんさま

心構えが違うせいでしょうかね~。
でもさすが!スクリーンの中の怪我人まで助けに行きたくなるなんて
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画、読書」カテゴリの最新記事