老後夢見ていた暮らしがすでにこの年にして叶ってしまいました。「これでいいのか?自分」と自問自答しつつも、貪るようにDVD鑑賞に明け暮れる毎日です。
その中でも印象に残る作品をご紹介いたしましょう。
アラビアのロレンス【完全版】 デラックス・コレクターズ・エディション ソニー・ピクチャーズエンタテイメント このアイテムの詳細を見る |
実在した英国将校T・E・ロレンスの自伝を基に描いたアカデミー賞主要7部門を独占した名作です。
神秘的で優雅、なおかつ獰猛で広大な砂漠の風景。
燃えるように赤い朝日。
容赦なく照りつける狂気的な真昼の太陽。
そして、遥かかなたの水平線の先から蜃気楼のように現われる登場人物。
3時間半にも渡る超長編ですが、まったく飽きることがありません。
ロレンスを世界に知らしめたアメリカの新聞記者が問いました。
「ロレンス大佐、あなたを砂漠にひきつけているのは何です?」
「清潔だからだ」
そう、この映画にはつねに清潔感が漂います。たとえそれが、殺し合いをしているシーンであってもです。
その理由はといえば、吸い込まれるほどに荘厳で美しい砂漠の景色とそれを彩る雄大な音楽、加えて、何といっても気品あふれる出演者たちの存在に他ならないのです。
そして、この作品にはまったく女性が登場しないのですが、登場人物の気高さは不思議と色香さえ感じられます。
ロレンスことピーター・オトゥールの白を基調とした、いでたち。金髪とブルーの瞳が白いアラブの民族衣装に映えて輝くばかりの美しさ。それに対比したアリことオマー・シャリフのべドウィンの黒の衣装は、これまた砂漠の夜の闇のような、深くて高貴な美しさが感じられます。
また、人物描写の細やかさには目を見張るものがあります。
ロレンスはアラブ軍を率いてトルコ軍と闘った英雄ですが、もともとスフォード大学で考古学を学んだインテリでした。
表面上の勇猛果敢な振る舞いとは裏腹な、精神的に気弱な危うい部分を、青い瞳の奥の揺らめきなどで見事に表現していました。
途中、ロレンスがトルコの司令官に捕まり、拷問され暴行されるシーンがあるのですが、実際の映像はロレンスが台にうつぶせにされ、残虐な笑みを浮かべたトルコ兵に両手を上に引っ張られるところまでしか映し出されていません。それから先は外で様子をうかがっているアリの目の表情で、ロレンスに何が起こったのか全て読み取れてしまうのです。
この事件によって、自身の象徴であった白い肌が、どんなに愛してもアラブ世界とは融和出来ないこと決定付け、挫折したロレンスは精神を破綻して行きます・・・・・・。
この作品でピーター・オトゥールは主演男優賞を逃しましたが、いったい何故なんでしょうか?と思わせる素晴らしい演技です。
何年経っても色褪せるどころか、むしろ今となっては新しいと感じる。それが名作と呼ばれる作品なのですね。
砂漠に残された仲間を助けに戻るときアリに、
「戻れば死ぬ。それが(彼の)運命だ。」
と言われた時のロレンスの
「運命などない」
という言葉が、心にずしり、と響きました。
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