urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

森絵都『アーモンド入りチョコレートのワルツ』角川文庫

2005年11月10日 | reading
ネタバレ一応注意。

担当教官のとこに卒論のレジュメ持ってったらボロボロだった。一時間話して、その後遅刻してバイト。んで今帰宅。喉が痛い。風邪だ多分。朝から左手の中指が痙攣してるし…。
もう、ブログ書いて寝る。

さて、切り替えましょうね。たまにこういうのが無性に読みたくなる俺、フェミニンモード(←キモい)。

それぞれクラシックに材を得た短編が三つ。結論から言いますが、素晴らしい小説でした。文章は余計な装飾がなくてすごく読みやすい(一時間半で読めた)けど、でもとても感性豊かな文体。こういうのを美文と言うんだと思うんだけど。角田光代の解説(素晴らしい解説です。作家の本質をずばりと切って取り出して、まっすぐに自分の言葉で語っている。俺もこんな風な文章が書きたいなー)でも述べられているような、「やさしさ」や「肯定」といった、一貫して正の感情に根ざした暖かい物語の作り方。とても心地いい作品世界が構築されています。
「子供は眠る」の夏休みの情景、表題作のピアノ教室での出会い、どちらの風景も素晴らしいけど、俺は「彼女のアリア」に描かれたボーイ・ミーツ・ガールが一番好きだった。文学的価値は一番低い気がするけど。なんでこんだけの描写でこれだけ魅力的な女の子に書けるんだろうか(それはこの話に限らずすべての女性キャラに言えるが)。90pのウソとかマジ笑ったよ(ミステリ読みだし)。もうほんと、非常に映像的な卒業式の描写から始まって、二人が「卒業」を終えるまで、どうしようもなくキラキラしてて眩しい名シーンの連続。だけど…こんなにも美しい中学生カップルはいねえ!!

《でもこの人はいい魔女だ、とわたしは思った。「長いおつきあいをしたいわね」と、そのよくしなりそうな桃色のてのひらをさしだされた瞬間、握手をかわすまでもなく、本当にぴぴっとわかったのだ。/この魔女はきっと、おもしろい。すごくすごくおもしろいぞ、と。》(表題作121p)

あんまり技術論にしたくないんだけど、すげーうまいよ。女性キャラはほんとに皆、抱きしめたくなるぐらい魅力的ですわ…。

黙って読めばいいのに、お、章くんが死ぬのか? とか、お、この旧校舎で死体発見か? とか、サティのおじさん、ホントは誰なんだ? とか、いちいちミステリ的プロットを想像しながら読む俺の業は深い。

もともと児童文学作家なんだよね。子供に買い与えるべき本は決まったね。

作品の評価はA。

4043791011アーモンド入りチョコレートのワルツ
森 絵都

角川書店 2005-06-25
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6 コメント

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追記 (urt)
2005-11-10 01:47:16
「だって、メルトモのステファンよ、なんて……」(133p)

も面白いな。
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うはっ (pokan)
2005-11-10 16:20:46
本読みたい!次はこれを読ませていただきます!

あと正月に名古屋行くわ!その頃は山形帰ってんのかな?
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多分 (urt)
2005-11-10 17:24:45
今年の年末は帰んねーと思うわ。例の日本縦断? 名古屋にてお待ちしております。

この中学生、俺の目には眩しすぎるよ。
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yomuyo!! (pokan)
2005-11-10 20:31:46
正月名古屋で試合あるからさ。そん時に時間あったらあそぼーや!!
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はろー (ぱせり)
2005-11-10 22:18:52
初コメントしてみます。この本、前に読んだよ。すごいすてきだと思った。うまいことばにはできないけど…ありきたりっぽい展開なのに、キレイに書くなぁと思ったよ。個人的には「子供は眠る」がすきでした。
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Unknown (urt)
2005-11-11 00:41:16
>pokan

おう!楽しみにしてるさー。



>ぱせり

初コメントサンキューです。そうだね、ベタな話を印象よく読ませるってのは手腕だわね。そういう意味で「子供は眠る」は一番そのウデが発揮されてるね。一番ルーツになった資質…児童文学に近いと思うし。
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