urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

綾辻行人/佐々木倫子『月館の殺人 下』小学館IKKIコミックス

2006年08月11日 | comic
ネタバレ注意。

お久しぶりの下巻。
「月館」と「幻夜」については、途中まで買ってたIKKI本誌の方で既に読んでたけど、これいいギミックだと思う。仄めかされる「鉄道館」という名前に値するトリックだと思うし、ミステリのマンガ表現の可能性を示したのでは。「架空の路線」って設定も良かったな…こういうロマンティシズムは綾辻の得意とするところ(『時計館』とかね)。
なので楽しみにしてたのはもちろん本筋の事件の解決だったんだけど…これはあまり良いものではなかった。アリバイという限定要素はあるにせよ、ロジックは恣意的だし、主人公の行動がもたらした影響についても無理線の印象が強い。こういう無理なとこ突っ込んでくのは悪い癖(『最後の記憶』とかね)。ムダに人殺しすぎ、犯人像ボヤけすぎな綾辻にはプロットの反省を望みます。
まあマンガとしては、「テツ」の楽しい世界が覗けたし(タモリ倶楽部でもよく覗いてたけど)、なにより佐々木倫子という稀代のユーモア作家と出会えたのが良かった。この作品の基底を成していたのは完全に佐々木ワールドのユーモアでしたね。この巻では「拒否」→「憎悪」の流れ、コマの切り方が何度読んでも笑える。
あと竜ヶ森の扱いだけ、ちょっともったいなかったな…。こいつが探偵やると思ったのに。海月くんみたいで。

月館の殺人 (下)  月館の殺人 (下)
綾辻 行人 佐々木 倫子

小学館 2006-07-28
売り上げランキング : 20

Amazonで詳しく見る
by G-Tools