urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

山田風太郎『厨子家の悪霊』ハルキ文庫

2005年12月02日 | reading
ネタバレ一応注意。

忙しくてレヴューの時系列が合っていません。一週間前ぐらいに読んだ本です。思い出しながら…。

予想以上に「本格」な作品集でした。「天誅」のあまりにもバカすぎるプロットとか、アイデア・プロットに優れ、独特の雰囲気と相俟って非常にオリジナルな本格として成立しています。表題作のどんでん返しの連鎖などもラディカル。ただ色々な制約(枚数とか)が影響しているのかもしれませんが、本格としてはその見せ方が洗練されていない印象はありましたね。「本格」と「山田節」の折衷様式として読むのが正しいかもしれません。
医学的・薬学的知識が本格プロットのメインになる作品が散見されますが(自身の素養も大きいのでしょう)、カッチリした本格でそれをやると効果的でない場合が多い印象があるので、この世界に持ち込むのはなかなか優れた戦略かと思いました(結果的に、でしょうけど)。そういう意味もあって「眼中の悪魔」と「旅の獅子舞」が個人的に好きでした。

文章もかっこいいです。

《轟警部補よ――君は確かに深刻精緻な犯罪の設計図をひっくり返した。だが、ご存知であろうか? この事件の妖光は、その設計図の下の、凍結した人間性の大地そのものから発する妖光であったことを。/凍土は深い――十七年前。》(表題作64p)

さて、山田風太郎作品でどうしても読みたい作品があるのです。その名も…

「うんこ殺人」。

なんて素晴らしいタイトルなのでしょう。
収録された作品集などご存知の方はご一報ください。

作品の評価はBマイナス。

4894563231厨子家の悪霊
山田 風太郎

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