urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

芦辺拓『紅楼夢の殺人』文藝春秋

2005年08月17日 | reading
ネタバレ注意。 芦辺拓は本格を読ませてくれる作家として信頼していますがこれはちょっと…。 絢爛豪華な人工楽園で繰り広げられる連続殺人。道具立ては非常に魅力的ですが、解決や伏線などもおざなりでションボリ。まあそれは多分自覚的にやってることで、本人言うところの「本来のメタミステリ」としての構成に気を配っておられるのでしょう。しかし作中の人物造型があまりにも類型的で、その仕掛けの根幹をなす宝玉というキ . . . 本文を読む

舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる。』講談社

2005年08月17日 | reading
ネタバレ注意。 表題作。 いろいろ混沌としてはいるが、基本は「病室の恋人たち」のおはなし。彼は流通している物語に非常に自覚的(『千と千尋~』とかね)なのがしばしば見受けられるので、これが某ベストセラーに対するアンサーなのかどうかは一考に価するのでは。 その点で僕は大してうまい評価軸を見出せないけども、やはりなんつったって表現の周到さにかけて優れていることは言うまでもなく。いつもより「文圧」はおさ . . . 本文を読む

島田荘司『ネジ式ザゼツキー』講談社ノベルス

2005年08月17日 | reading
ネタバレ注意。 ええとまあ、島荘がよく語っている、「冒頭に幻想的な謎…」云々、という本格論の忠実な実践であると思います。しかしどうにも…。手記にこんな不合理なことが書いてありました、でも実はこんなイミだったんです(よ、石岡くん)、なんて提出されても(いや、石岡は出てないけど)、「へえ」とか思ってそれで終わりになってしまう…まあもちろん、その謎と解決のできにもよるし、単純に方法論の問題に帰着するわ . . . 本文を読む

森見登美彦『太陽の塔』新潮社

2005年08月17日 | reading
ネタバレ注意。 ずーっと読みたいと思ってたんだけど、機を逸していた作家。山形市立図書館は偉い。 第一印象としては、意外と読み易いエンタテインメントといった感じ。もっと才気ばしっているかと思ってたのだが。たとえるなら、滝本竜彦に文学的な自意識を加味したような印象。主に文体で。 ファンタジーノベル大賞受賞の作品だが、ここでの「ファンタジー」は「妄想」と訳されるのですね。男汁とルサンチマンにまみれた . . . 本文を読む

江國香織『神様のボート』新潮文庫

2005年08月17日 | reading
ネタバレ注意。 別に読む気はなかった(山形市立図書館で死ぬほど本借りてきたし)のですが、妹が千円で読書感想文を書けと懇願してきたので請け負ってしまったのでした。まあ好きな作家だしいいかなあと。 ええと、聡明な娘と夢見がちな母という設定はなんかベタだけど、やはりうまい作家なので非常にいとおしく思えます。前半は多少冗長ながら、後半は胸がつまるようでした。 あとはやはり、この不条理なハッピーエンドね . . . 本文を読む