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誰でもよかった:秋葉原通り魔事件/上(その2止)「後ろにいた二人がいない」

2008-06-20 01:07:49 | 国内社会
 誰でもよかった:秋葉原通り魔事件/上(その2止)「後ろにいた二人がいない」

 ◇川口さん・藤野さんの友人、ブログに
 その時、秋葉原に偶然居合わせたというだけで、理由もなく突然命を絶たれた被害者たち。あきらめきれない夢や将来があった。友や家族らは深い悲しみにくれながら、それぞれの言葉で愛する人への思いを語った。

 東京電機大2年の藤野和倫さん(19)と東京情報大2年の川口隆裕さん(19)は、歩行者天国の交差点で加藤容疑者のトラックにはねられるなどして亡くなった。一緒にいた電機大の友人2人のうち1人がその瞬間を会員制サイトのブログに書き込んでいた。会員仲間からは励ましの書き込みが相次いだが、友人は「(加藤容疑者が)誰でもよかったと言っていることが許せない」と泣き崩れた。

 4人は8日朝、映画を見るためJR新宿駅で待ち合わせた。その後「食事でもしよう」と秋葉原へ向かったという。2人ずつ並んで歩いている時、トラックが右前から飛び込んできた。蛇行運転しタイヤがきしむ音が聞こえ、4人ともはねられた。

 友人はブログに「後ろにいた友達二人が…いない。ゾッとした」と書いた。藤野さんと川口さんはその場に倒れたまま帰らぬ人となった。

 「運命だから? そんなの残酷過ぎる…」友を失った悲しみと理不尽さを率直に書いたブログ。「かける言葉が見つからない」「無理すんなよ」「お友達のご冥福を祈ります」。哀悼と励ましの言葉が仲間から贈られた。【神足俊輔、倉田陶子、弘田恭子】

 ◇歯科医を勇退、余生楽しみに--中村さん
 中村勝彦さん(74)は、歯の矯正を専門とする腕利きの歯科医だった。開業していた歯科医院があった東京都府中市の医師仲間らは「後進の育成や地域医療に尽力した立派な方だった」と実直な性格をしのんだ。

 中村さんは日本歯科大を卒業して開業。しかし、大学の医局に入って矯正学に挑戦し、自らの専門分野を確立したという。自らの医院で若手を育てる一方、日大歯学部で03年までの約20年間、兼任講師を務めた。

 講師を依頼した納村晋吉・日大名誉教授は「勉強熱心の硬骨漢。患者を大切にし、知識も豊富だから話がおもしろい。若手からも患者からも人気があったと思う」と語った。医師会の記念誌につづった「カラオケには二度行きましたが、小生にはあわないとさとりました」との文章からは、まじめさと愛嬌(あいきょう)を兼ね備えた人柄が伝わってくる。

 今春、教え子に医院を託し、半世紀近い医師人生にピリオドを打った。歯科医仲間らが開いた慰労会では「これからは勇退して好きなことをやりたい」と照れながら話したという。納村さんは「役目を終え、趣味の写真や旅行などで余生を過ごすはずだったろうに」と唇をかんだ。【木村健二、大場弘行】

 ◇音楽の夢絶たれ--武藤さん
 「音楽で人を喜ばせたい」。武藤舞さん(21)はクラシックコンサートのプロデューサーを夢見ていた。在学していた東京芸大音楽学部では録音や音響を勉強し、音楽関連会社に就職が内定していた。アルバイト先の量販店店頭で携帯電話を販売していて刺された。

 指導する亀川徹准教授(47)は「彼女なら素晴らしいコンサートを企画できたはず。残念」と声を落とした。

 優しい性格とリーダーシップで親しまれた。都立日比谷高校の同級生(21)は「バンドでボーカルやキーボードを頑張っていた。カラオケで洋楽を歌うのがうまかった」と振り返る。最近は財団法人が開催するミニコンサートに参加し、高知県や山口県の老人ホームなどを回っていた。財団の小沢桜作さん(36)は「子供やお年寄りに人気だった。音楽の舞台に生きる舞台人としての一歩を踏み出したばかりだった」と悔しそうに話した。

 中学2年の時、中学生海外交流事業で米サンフランシスコに短期留学した。文集には「おいしかったのは生の果実をシェークのようにした飲み物。アメリカンサイズで飲みきれなくてもったいなかった」と現地での生活を描いた。

 一緒に留学した私立大4年、本間和基さん(21)は「1月に最後に会った時は、音楽の仕事の夢を語っていたのに」と話した。【杉本修作】

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 ◇亡くなった方々
 武藤舞さん(21)=東京都北区浮間3、大学生▽小岩和弘さん(47)=板橋区新河岸1、無職▽中村勝彦さん(74)=杉並区下高井戸4、無職▽松井満さん(33)=神奈川県厚木市森の里1、調理師▽藤野和倫さん(19)=埼玉県熊谷市河原町2、大学生▽宮本直樹さん(31)=同県蕨市北町2、会社員▽川口隆裕さん(19)=千葉県流山市南流山8、大学生

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 ◆川口さん、藤野さんの友人のブログ◆

今日は人生で、生涯で一番最悪な日だろう。

僕は大切な人を二人失いました。

大学の友達…

こんなにもあっさりと…

今日は行くあてもなく適当に歩いていた。

緑信号の横断歩道。

いつも通りのグダグダな雑談。

どこにでもある平和で普通な話。

思い出すと涙が止まらない。

…トラックが自分らに猛スピードで突っ込んできた。

…ほんの一瞬だった。

隣にいた友達と俺(おれ)はぎりぎりでよけて腰の打撲だけで済んだ。本当に死線だった。

すぐ振り返った。

後ろにいた友達二人が…いない。

ゾッとした。

震えがとまらなかった。

その直後発せられた「逃げろ!」

ナイフを持った男?通り魔?

意味がわからなかった。

直後ひかれた友達にすぐさま駆け寄った。

…立ち尽くした。

素人でも分かる、重体。

自分はなにもできなくて

ただ大声で、何度も何度もそいつの名前を呼んだ。

事故にあった友達の携帯を

自分が預かっていた。

その携帯が鳴った。

…友達の親だった。

「□□君?あのね、○○…死んじゃった…。」

号泣でいわれた。

涙が止まらない。

神様…僕らが何をしたの?

運命だから?

そんなの残酷すぎる…

 (原文のままだが一部省略。□はブログの筆者名)

(出所:毎日新聞 2008年6月10日 東京朝刊)
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