「ほっかほっか亭」で弁当を買うことにした。
ここの弁当で特に好きなのが「おろしチキン竜田」だ。このお弁当、今キャンペーン期間中で11/24~11/30は、480円がなんと390円!で販売されている。もちろんそれが狙いだった。
店に入ると、客は男が2人、すでに座って待っていた。離れていたので二人連れではないだろう。自分は「おろしチキン竜田」を注文し、丸椅子に座って携帯をいじりながら待つことにした。
数十秒後、4人目の客が入ってきて「おろしチキン竜田」を注文した。それから1分くらいして、5人目となる客が入ってきて、やはり「おろしチキン竜田」を注文した。「キャンペーン期間中だし、人気があるんだなぁ」と思いながらも、待ち続けていた。
やがて、店員が言った。
「順番替わって申し訳ありません、最初の“おろしチキン竜田”のお客様ーっ!」
一瞬にして、店内に緊張が走った。
最初って、誰だよ・・・・・・・
一瞬「自分だな?」と思った。しかし。自分の前には2人の客がいた。彼らが何を注文したか、自分はもちろん知らない。自分を含め後半3人は全員「おろしチキン竜田」だ。この勢いだと前の2人も同じものを注文している可能性もある。・・・・この状況ではまだ、自分だと自信がもてない。
・・・・ん?いや違う。「順番替わって申し訳ありません」って言ったな。ってことは、少なくとも一人は「おろしチキン竜田」以外のものを注文してるはずだ。そうなると、「おろしチキン竜田」を注文している人間は3人もしくは4人に絞られる。
4番目の客も「おろしチキン竜田」を何人の客が注文しているか知らないはず。うかうかしてると、この4番目が、自分だと主張し始めてもおかしくない。果たして、最初の「おろしチキン竜田」の客は誰なのか・・・・。ほんの数秒だが、張り詰めた緊張感に、誰もが動くことが出来なかった。
その時だった。なんと5番目の客が立ち上がった。お、お前ではない。「最初の」って言ってただろ!自分も立ち上がろうとした一瞬先に4番目の客がすっと立ち上がった。そうだろう。4番目にしてみれば、5番目の客より俺が先だ!との思いがある。
まだ、この時点で最初の2人が果たして「おろしチキン竜田」を注文しているのかは、わからない。その危険性は捨て切れなかったが4番目が立った以上、3番目の自分が、ここで仕掛けざるを得ない。間髪いれず立ち上がった。
気になる最初の2人を見ると、わずかに動きがあったが、新聞のページをめくっただけだった。5番目の客が座り、そして4番目の客も悔しそうに、ゆっくりと腰を下ろした。
「本物は誰だ?」みたいになったが、最後には自分だけが立ち上がっていた。
どうやら自分が「最初の“おろしチキン竜田”のお客様」の称号を勝ち取ったようだ。
ゆっくりと、レジまでのヴィクトリーロードを歩き始めた。
っていうか、番号札くれよ! ・・・・ドキドキするじゃないか