まちづくりぷらす

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バスでどこエコ?市民連続講座―もう一度考えよう!交通政策

2007年10月28日 | まちづくり
きのうまちづくり政策フォーラムの足立さんとお会いしたときに、
「もしあした時間があるなら来てみない」と言われた講座に行ってきました
(大雨だったのでかなり行く気が出なかったのですが「えいっ!」と(笑))。

講師は、京都府企画環境部交通対策課・交通需要管理推進担当のの村尾さんでした。
とりあえず、お話のなかで印象に残ったことをメモしておきます。

・京都府が行う政策ベンチャー制度
結局、やる気のある職員をどう生かしていくのかというのは根本の問題です。
京都府では知事に対して直接政策の必要性を訴え、知事がそれを認めれば、
予算と組織体制を確保するという「政策ベンチャー制度」を行っています。
こういうやる気を引き出す手法があってこそ、職員の成長が促されるというものです。

・既往の社会実験は参加する人が損をする構図
結局、パーク&ライドを行ったとしても、それに参加する人は不便になり、
その不便になった人の善意のもとに参加しない人が渋滞緩和の効果を得るという状況。
これをどう考えるかというのは非常に難しいなぁと感じました。

・公共交通は単体の採算だけで測れない正の外部性がある
これはよく言われることですが、事業者の事業収入(分母)と運営費用(分子)
で採算性というものが問われているのですが、公共交通は正の外部性があるだろうと。
正の外部性があることは認められると思うのですが、それがどの程度なのかは
なかなか可視化されていないところで認識が難しいんですよね。

・モビリティマネジメントにおけるトラベルフィードバックプログラム
ひとりひとりの自立的な行動変化を促すコミュニケーションによるプログラムで、
アンケートに答えることで、事実情報を提供、行動変化を依頼し、
最終的に行動計画を作ってもらうことができる手法です。
このアンケートを送る際にも企業には社内のラインを通じて送ることが重要だとか。
それが仕事の一環だと見えるために、まじめに答えてくれる人が多いという。

・交通政策とは対象を特定すること
①平日交通と休日交通
②人の動きとモノの動き
③通勤か業務か買い物か
④都市圏交通か地区内交通か
このあたりを明確にしていない交通政策だと実効性は伴わないとのことです。
実際に通勤行動を変えるために、宇治市の各企業(任天堂・ユニチカなど)の
通勤者に対してわかりやすいマップと時刻表をつくったようです。
本来こういったものは各鉄道会社やバス会社が行うべきだと思いますが、
結局そういうニーズの掘り起こしまでを一貫して見ている人がいないんでしょうね。
そういう意味で1年目は「ニーズがあるんだよ」ということを行政がやってみせて、
2年目から鉄道3社が印刷費を負担するようになったというのはありうるなぁと。

・デザインが交通行動を変える
結局、バスのデザインを変えることで乗車人員が50%増になることもあったそうです。
何だかんだ言って感情的な部分に訴えるという意味では、
パンフレットなどのデザインにもこだわることが重要らしいです。
確かに変なデザインのモノはもらってもうれしくないですよね。


バスでどこエコ?市民連続講座についてのブログはこちらです。
きょうは雨だったためか参加者も非常に少なかったので、
今後の市民連続講座の日程を以下に記しておきます。
交通政策などに興味のある方は、ぜひご参加ください。

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「市民連続講座・日程、場所、講師のご案内」

 公共交通がいかに市民生活に関わっているか、今後環境の側面から公共交通をどのように考えていったらいいのかなど「公共交通が担う環境保全のあり方を学ぶ」ことを主たる目的として、市民を対象に連続講座を開催します。
 また、講座では60分の基調講演(話題提供)と60分のクロストーキングの2本立てとして、受講者が議論し、主体的に公共交通を利用していくと同時に、EST運動の担い手となる動機付けとなるようにしていきます。
 積極的にEST事業に参画したい市民のみなさまの参加をお待ちしております。

※各回とも当日会場にて受付をします。
第3回のみ定員30名。他は定員50名です。


▼第1回目
平成19年10月27日(土)
午後2時から午後4時まで
戦災復興記念館 4階研修室
講師:京都府企画環境部交通対策課. 交通需要管理推進担当 企画課長補佐.村尾俊道氏

▼第2回目
11月17日(土)
午後1時30分から午後3時30分まで
仙台市民会館 第5会議室
講師:(財)計量計画研究所 小島浩氏
「公共交通って、本当に必要なの?―「人の動き」からみる仙台都市圏の公共交通利用実態からの報告―」
「人の動き」のデータを利用して公共交通についての私見をお話しします。
・「全国」からみて仙台の公共交通は、どうみえるか
・「ひと」からみて仙台の公共交通は、どうみえるか
・「まち」からみて仙台の公共交通は、どうみえるか
・「環境」からみて仙台の公共交通は、どうみえるか
・「過去」からみて仙台の公共交通は、どうみえるか
・そして、「将来」は、どうみえてくるか

EST市民会議メンバーとして、仙台におけるEST事業のあり方、
公共交通利用促進のあり方などを平成17,18年度の2年間、検討していただきました。
今回は、パーソントリップから分かる仙台の交通事情についてお話をしていただきます。

▼第3回目
平成19年12月7日(金)
午後6時から午後8時まで
エルソーラ仙台 研修室2
講師:横浜国立大学大学院教授 中村文彦氏
(仮題)「バスでまちづくり 都市交通の再生を目指して」
・PT調査から見る仙台の交通インフラについて
・MMができる環境、できない環境とは?

▼第4回目
平成20年1月26日(土)
<第1部>
午後1時30分から午後3時30分まで
仙台市市民会館 第1会議室
講師:筑波大学大学院システム情報工学研究科リスク工学専攻 講師 谷口綾子氏

「仙台での新たな取り組み “モビリティ・マネジメント”と“統合バスマップ”」
・なぜ、公共交通が必要か
・社会的ジレンマの仕組み
・交通社会的ジレンマの解決策:モビリティ・マネジメントの概要
・交通すごろくand/or行動プラン作成の作業
・仙台市におけるモビリティ・マネジメント事例
 (転入者対象MM、大学生のバスマップ配布MM、統合バスマップ作成)

モビリティ・マネジメントの実践を各地で行っている谷口先生です。
今年度、仙台では「大学新入生の居住地選択時におけるバス情報提供を通じた
公共交通利用促進プロジェクト協議会(東北運輸局)」の座長をつとめていらっしゃいます。
交通すごろくや行動プラン作成の「作業」も組み込み、実践力を養成します。

<第2部>
午後3時45分から午後5時45分まで(予定)
仙台市市民会館 第1会議室
講師:名古屋大学大学院准教授 加藤博和氏
(仮題)「EST総論 EST運動の担い手になるためには?―全国の事例から―」
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るーぷる仙台の運行間隔短縮

2007年10月26日 | まちづくり
仙台に移り住んで、るーぷる仙台に乗ったときの話を記事に書いたことがあります。
きょうの夜、河北新報を中華料理店で夕飯を食べているとき見ていたら、
るーぷる仙台の運行間隔を短縮するという記事が載っていました。
その記事を探したのですがなかったので、仙台市の記者発表資料を。
これでるーぷる仙台は15分~20分間隔の運行に変わるそうです。

まぁ、記事に書いたことが達成されるようでよかったです
(全然わたしは関係ないのですが…)。
最近は、土日祝の混雑も半端なかったみたいです。
瑞宝殿行ってその後仙台城跡に行く際に、るーぷる仙台を待っている人が、
よくしびれをきらしてタクシーを使っているのを見たことがありますし。
(ショボい記事で申し訳ないです…)

観光インフラとしてのバスの位置づけは金沢と比べると、
やっぱりまだまだ充実していないっていう印象はありますね。
仙台・宮城デスティネーションキャンペーンで混乱しなきゃいいですが…。
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記者発表資料 【平成19年10月25日】
 
観光シティループバス「るーぷる仙台」のサービスをさらに充実
-増車と専属運転手を配置-

 平成11年5月から3両により運行を開始した仙台市観光シティループバス「るーぷる仙台」は、仙台市における観光の大きな柱として成長し、乗客数も順調に伸びてまいりました。これまでの間、乗客増に対応するため、平成16年度に1両増車し、4両体制での運行をしておりますが、それでも土日祝日を中心とした混雑が続いている状況であることから、来年度1両増車いたします。

 また、平成20年10月から12月にかけて開催される、「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン(DC)」に向けて、新たに専属運転手を配置し、おもてなしの心を持ってお客さまに一層ご満足いただけるよう努めてまいります。


1 車両の増車

平成20年度より1両増車し、5両体制で運行することにより、混雑の緩和や運転間隔の短縮を図ります。


2 るーぷる仙台専属の嘱託運転手の採用

 るーぷる仙台は、仙台における楽しい旅のサポート役であることから、車両のみならず、運転手につきましても運転技術の正確さに加え、お客様が、るーぷる仙台を中心とした仙台の街中観光を充分楽しんでいただけるよう、ホスピタリティーあふれるおもてなしの心を持った対応が求められています。

 そのような接客サービスを抜本的なところから充実・強化するために、増車にあわせ新たにホスピタリティー精神にあふれた嘱託運転手を採用・教育し、るーぷる仙台専属とすることといたします。

 なお、嘱託職員の応募資格等は、別紙【PDF10KB】のとおりです。


3 旅の雰囲気づくり

 路線バス運転手の研修とは一味違う観光やホスピタリティーに関する研修の重点実施、るーぷる仙台の車両デザインにフィットする新たなデザインの制服の採用等を行い、お客様と運転手がふれあうことができる機会や視覚面での旅の雰囲気作りなどを充実させ、これまで以上にお客様をお迎えできる体制を整えます。


4 さらなる安全・安心の確保

 平成11年5月の運行開始当初から使用している車両3両は、使用開始から8年が経過していることから、運行中の故障により、お客様にご迷惑をおかけすることがないよう、これまでの日常点検に加え、エンジンやミッションを中心とした分解整備等を実施し、さらなる安全・安心を確保してまいります。
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中間報告会メモ

2007年10月26日 | 日記
ただ気になった点が何点かありました。今後の重大な課題とも言うべき…。
「質問は端的に的確に」というわりには教員で実践できていない人たちがチラホラ。
それに、ほとんど「凍る」ような状況に彼ら1年生は出くわしていません
(これはうちの大学院の誇るI田先生がいらっしゃらなかったのが多分に影響しています)。
「空気を凍らせる」のも教員の仕事のうちだと思います(さすがにわたしは能力不足でできません)。
I田先生がもしいなくなったとしたら、誰がこの役割をするのでしょうか??
それこそ、その道のプロを呼んできて凍らせてもらうのでしょうか?
(一橋大学国際・公共政策大学院ではシンクタンクの職員を呼んでいるそうです)
ガツンとやられる体験は就職活動の際に、自分の矜持となるような気がします。
ある意味で、うちの大学院の就職面接突破率はこれにかかっていると言っても過言ではないです。
そういう意味では、I田先生に「凍らせる講座」を開いてもらうのがベストか(笑)
とりあえず、雑感でした(もし失礼があればこの場でお詫びします)。

公共政策ワークショップⅠ中間報告会(2日目)

2007年10月24日 | 公共政策大学院
東北大学公共政策大学院の中核的カリキュラムである
公共政策ワークショップⅠの中間報告会(2日目)がきょう行われました。

発表はワークショップC、ワークショップDの順に行われました。
C:東アジアにおける地域協力:日本の平和と繁栄を実現するための推進の方途
D:地方自治体の独自課税(最終報告:社会人チーム)
ふたつのグループのメンバーの方、お疲れさまでした。
コメントを活かしながら、ブラッシュアップされることを祈っています。
(正直、中間報告はあくまで途中経過…ここからの頑張り次第です)

とりあえず思ったことを何点か書いてみます。
(ここまではほとんどコピペしちゃいました…ごめんなさい)
【ワークショップCについて】

↑ワークショップC発表の様子

(1)絞った過程を明確に記すこと
ワークショップCの発表は東アジアEPA締結を目指すためには、
まず日本の農業問題とエネルギー問題を解決する必要があるという問題意識でした。
しかしこの間には、かなりの隔たりがあるような気がしています。
そのあたりまで絞っていくのはいいのですが、結局各論に入る前に、
なぜ他の選択肢はなぜとらないのか?の明確な論拠が薄い印象でした。
その選択肢を示した上で絞っていくとより説得的になるような気がします。

(2)いつまでやればEPAのゴーサインが出るのか?
結局、農業問題に代表されるように、日本農業の構造改善を進めるにしても、
それはいままでの農政がチャレンジしつづけてきた問題だと思います。
それでも日本農業の構造改善につながっていないという事象を
どう評価するのかがやはり問題かなぁと思いました。
それに、今までどのくらい資金が投入されてきたのか、
あとどのくらい目標を達成すれば、この農業問題とエネルギー問題が解決し、
日本がEPA交渉でイニシアティブを発揮できるのかが見えませんでした。

(3)問題解決の手法が大目標のEPA締結と結びついていない
結局、農業問題とエネルギー問題を解決したところで、
東アジアEPAが締結できるという保障はどこにもありません。
むしろFTAやEPAが推進されてきた背景には、WTOの枠組みでの
多国間交渉の行き詰まりという問題があるように感じています。
それをASEAN+6の16カ国の多国間EPAを結ぶというのに、
どのくらい労力を割くことができるのでしょうか?
それに、どのくらいの期間がかかるのでしょうか?
実業界から見れば、二国間交渉で決められるところを先に決めて欲しいと
考えるような気がしますが、その点に言及がなかったのは残念です。

(4)課題解決によって得られる効果の大きさは?
東アジアEPAを締結して日本に得られるのは経済成長5兆円だと言われているそうです。
日本の年間GDPは約500兆円ですから、ようは1%の経済成長です。
1%の経済成長を目指すために、どれだけの資金を内政で投入する必要があるのか
―つまり農業問題を解決した際の効果やエネルギー問題での効果も合わせて
示すことができなければ、「なんだそれだけのために…」という話になりかねません。

【ワークショップDについて】


↑ワークショップD発表の様子

(1)絞った過程と問題意識を示すこと
今回はじめてのワークショップ社会人チームです。
社会人であるがゆえに、か分かりませんが、やっぱり発表は分かりにくかったです。
というのも、彼らの問題意識があまり発表から見えなかったからです。
ほんとうにこの問題を解決したいという熱い思い(それがいるかは分かりませんが…)、
対象分野への「愛」が少なかったような気がしました(去年のMk原先生の名言)。
そういう意味ではなぜ独自課税なのか?なぜ宮城県なのか?なぜ産廃税なのか?
という点はあまりクリアではなく、とりあえず産廃税だろう的なトコがありました。

(2)問題解決の対象と政策提言の対象範囲の小ささの整合性は?
結局、大きな公益は産廃税の場合、産業廃棄物の減少だと思います。
その点に関して、どうして他の手段では問題があるのか、
他の手段と比べて産廃税がいかに有効なのかを示す必要があったかと思います。
政策提言の対象も、条例に一文を加えたり、3つの事業を目的税での措置から
普通税で手当てすることを目指すようなテクニカルな論に矮小化されています。
それでほんとうに産廃税の内在する問題自体が解決するのか、
そして公益である「産業廃棄物の減少」が見込まれるのかは、
もう少し大きな枠組みで話をしないと厳しいのではないかと思いました。

(3)政策提言が提言たりうる体をなしていない
特に、3つの事業を目的税での措置から普通税で手当することを提言したと言っていますが、
これは実際なかなかリアリティを持たない気がしています。
実際、目的税である以上、ある問題に特化した目的に使用しなければならず、
そのような目的を持つ事業がどの程度あるのかということです。
実際に有効な事業を提案して、目的税がどのように使われるかを明確にしてこそ、
政策提言の意義というものが認められるような気がします。
普通税で手当すべきという3つの事業自体の可否を問わず、
一般税で手当することなど、それこそ評価がなされていないという点で
非常なムダを内在しているといえそうです。

そんな感じの中間報告会でした。わたしも頑張らなければ!

「若起塾」事業構想発表会

2007年10月24日 | 日記
きょうは公共政策ワークショップⅠ中間報告会のあと、
若起塾(わかきじゅく)1期生の事業構想発表会に行ってきました。
そもそも「若起塾」とは、せんだい・みやぎNPOセンターの加藤代表理事と
デュナミスの渡辺社長が行っている社会起業家育成を目的とした塾です。
社会起業家とは、社会問題をビジネス的手法(採算ベースで)によって、
解決していこうという起業家のことを指します。
若起塾は、4月から月2回のペースで開催され事業構想を練ってきたそうな
(講座・ワークショップ、フィールドワークを織り交ぜたプログラム)。

それで、今回発表があったのは以下の3プランです。
・地域の孤独死を若手パフォーマーの活躍で減らすプラン
・将来的にニートになるかも知れない学生に対するプラン
・地元山形の若者に元気になってもらうためのプラン

残念ながら時間に遅れたため、一番最初の話は聞けなかったのですが、
うしろ2つのプランについては聞くことができました。

プランについて言えば、まだまだ詰めが甘いということ。
メシを食えるにはほど遠い世界だと思います
(学生など他に所得のあてがあれば多少は可能性は増します)。
さらに言えば、既存の行政の政策体系の中で行われているものの分析や、
実際に他の企業がどの程度参入しているかの分析もなされていません。

山形の例で言えば、農業インターンを行うということでしたが、
少し調べただけでそういう例はいくらでも出てきます
(例えば、(社)日本農業法人協会の農業インターンシップなど)。
それなら、既存のインターンシップではなぜダメなのか、
どこに参入の余地があるのかはやはり調べないといけない気がします
(このインターンでは、山形県にもインターンシップに行っています)。

さらに、事業のイニシャルコストやランニングコストを誰が出すのかも問題です。
学生が出すのか、受け入れ先が出すのか、それとも第三者(行政など)が出すのか。
ほんとうに公益に資するのであれば、行政との協働も視野に入ります。
採算ベースに乗せなければならないから、公益を矮小化するのではなく、
公益を達成するためにはどう連携するのかまで踏み込むとおもしろいと思います。
この視点が見えないので、公益が少し矮小化されている印象があります。
(とはいえ、もちろん基本的には当該事業が採算ベースに乗っているのであれば、
税金を使う場合に比べて、公益概念にとらわれる必要もない気がします)。

そういう意味では、採算ベースに乗ることから事業を始めて、
段階的に公益概念を高めていって協働などのスキームを考え、
その方向性に転化していく(行政などを動かす)ことが求められそうです
(現在の社会的企業一般に言えることですが、採算ベースに乗って
事業がまわりはじめると、それで満足してしまうことが多いわけですが…)。

ほんとうにそこまで社会起業家がやることの是非はまた別問題ですが、
ひとつの方向性として事業プランを考えることは意義深いかなと思いました。

そうそう、この若起塾の第二期の講座があるそうです。
いつあるかはまだ未定(期間は6か月間)のようですが、
興味のある方は渡辺さんとおつなぎしますので、わたしまでご連絡ください。

別に社会企業家にならなくても、こういうマインドを持っていることは、
どんな場(行政・企業・NPOなど)に行っても非常に有益だと思いますので、
うちの公共政策大学院の1年生とか参加してみてはいかがですか??

公共政策ワークショップⅠ中間報告会(1日目)

2007年10月23日 | 公共政策大学院
東北大学公共政策大学院の中核的カリキュラムである
公共政策ワークショップⅠの中間報告会(1日目)がきょう行われました。

発表はワークショップA、ワークショップBの順に行われました。
A:「平成の合併」後の基礎自治体における地域自治組織のあり方の再検討
B:「地域活性化」の一般法則の研究

ふたつのグループのメンバーの方、お疲れさまでした。
全般的には我々のときよりプレゼン自体もうまくできていましたし、
質問もしっかり答えられていたような印象があります。
コメントを活かしながら、ブラッシュアップされることを祈っています。
(正直、中間報告はあくまで途中経過…ここからの頑張り次第です)

ただ、ちょっと散漫な質問がM1から多かったような印象があるので、
あしたはぜひ考え抜いた質問を期待したいと思います。

とりあえず思ったことを何点か書いてみます。

【ワークショップAについて】

↑ワークショップA発表の様子

(1)書類の不備は心の乱れ
書類の不備がかなりありましたが、あれはどうしてもマイナス評価になります。
誰か1人でもチェックする、その他のメンバーとのダブルチェックは必要です。
体裁が整っているというのはどんなことでも最低条件なので。

(2)ロジックのつながり
結局、地域自治組織ありきの研究にどうしても聞こえてしまいます。
なぜかと言えば、これで解決される課題の重要性と切迫性を
最大限に訴えきれていなかったからだと思います。

(3)「何でも市民参加」の危険性
テーマによっては、一部の代表であることの弊害はいくらでも出てきます。
なにかしらのアイデアを出してもらって、それを取り入れる趣旨のものは、
こういった市民参加の手法で対応が可能だと思われます。
しかし、価値が先鋭的に対立するものを議論の題材として、
議論し結論を得たとしても、地域自治組織の構成員が
何らかの民主的正統性を持たない限り、ほとんど効力を持ち得ない気がします。
(首長が構成員を任命しているのだから民主的正統性があると言っても、
それはほとんどの人が納得しない民主的正統性だと思います)。
結局「意見反映機能」は、議会との関係抜きには語ることができません。

(4)市民はどこまで活動すればいいの?
さらに、市民はどこまで活動すればよいのか?というのは大きな問題です。
政策各論で市民参加が求められ、かつ各地域単位でも市民参加が求められます。
「結局、行政は金がないから事業をやってほしいんでしょ?」
という市民からの問いに、どう回答するのか?が根源的な問いだと思います。
その明確な回答を有しているのかはよく分かりません。

ある課題を解決するのに、
・行政がやるとどのくらいコストがかかって、どのくらい問題が解決するのか?
・市民がやるとどのくらいコストがかかって、どのくらい問題が解決するのか?

「税金をこのくらい取らないとできません」と言われたときに、
・それでもやってほしいという事業はどのくらいあるのか?
・自分たちの労力を使ってでも事業をやりたいというのはどのくらいあるのか?

まっ、あとはこの前プレゼンを見たときに20問くらい質問したので、
それに対する回答を用意できるように後期頑張ってほしいと思います。

【ワークショップBについて】

↑ワークショップB発表の様子

(1)ツールに惑わされるな
内定式で言われたことですが、スキルを磨くことと本質を捉えることは違います。
アクター分析をしたり、ロジックツリーを書くことは思考を整理するためには、
必要なことだとよく分かりますが、それで本質を捉えられるかは別問題です。
それをパワポに載せても正直言ってほとんど意味がありません。
それは過程であって、結果として提示することにはかなり違和感がありました。

(2)一般法則なるものが「当たり前」を超えられるか?
このワークショップでは一般法則という題名がついているとおり、
地域活性化の一般法則を示すことを第一の目的としているようです。
ただ、そこに羅列されているポイントは誰もが言っている当たり前のことです。
少なくとも活動をやっている(た)人間から言わせれば、
「こんなこと今さら言われてもね…」という印象です。

今後の方向性は、どうすればそのポイントが達成されるかを検証するようですが、
そのポイントが達成されるかどうかはあくまで個別事情による気がします。
となれば、おのずと団体ごとに手法は異なる可能性が高いため、
一般法則なるものに組み入れることは非常に難しい気がします。
入れられるものは結局、ありきたりで当たり前の内容になってしまいます。

そこをどう超えられるか、もしくはあきらめるかは今後の展開次第ですが、
ある程度、テーマを絞ったりしないと厳しいのではないかという印象です。

(3)なぜ加美町なのかよくわからない
加美町に提言を最終的にすることが決まったようですが(以前の記事参照)、
やっぱり加美町に対して提言する必要性が見えてきません。
①職員の熱意とワークショップへの関心が高い
②ユニークな活動をする住民の存在が目立つ
③仙台からのアクセスが比較的良い
の3点をあげて加美町を取り上げる理由としていましたが、
研究としてはこれは根拠にはなりません、まったく。

活動する住民の存在が目立つのであれば、
あとするべきは広報なんかじゃないのか?と誰もが考えつきます。
さらにあえてそんなところに提言をする必要があるのかはよく分かりません。
ラクそうなトコに提言先を絞って、手っ取り早く結論を得たいだけではないかと。

もし一般法則なるものをほんとうに使えるものだと言い張りたいのであれば、
活動が起こっていない場で試して活動が起こるかのほうがよっぽど意義深いです。

それでもなお加美町に対して提言したいのであれば、
「活動を拡大するためにはさらなる困難がこんなに控えている!」
ことをアピールしないと、一般法則なるものが使えるかの検証にはなりません。
最近は、加美町に引きずられすぎているような気がします。
一般法則なるものの処遇をどうするのか、そろそろ考えるべきかなと思います。

(4)ベストプラクティスはなぜ広まらないのか?
徳島県上勝町がベストプラクティスだと言い張るのはいいのですが、
なぜそれが他地域に敷延できないのか、それを考えるべきだと思います。
それは一般法則なるものがあれば解決するのか?という点です。

ただ、上勝でもいろどり事業が年間売り上げ2億5000万円だというものの、
結局200人の参加があるわけで、1人あたり売り上げで見れば年間125万円。
何らかの別所得がある人しか、このお金ではやっていけないわけです。
無償の奉仕に頼って、一部の所得水準を上げることがほんとうによいことなのか、
その辺はもう少し考えを詰めていく必要がありそうです。

メシが食えることが最低条件なら「市民活動でメシは食えない」という状況に
どう対応していくのか、これも検証が求められるような気がします。
税金をほとんど使わずにある程度の課題解決ができるのなら、
こんなに安い課題解決はないでしょうと言い切ってしまうほうが清々しいです
(これは両方のワークショップとも言えることなのかもしれませんが…)。

みなさんの質問自体は以前彼らWS-Bメンバーと飲みに言ったときに、
ガツンガツンに攻めた内容とほとんど変わらないなぁという印象でした。

とはいえ、中間報告2週間前に変更した我々旧WS-Bよりよかったです
(去年のショボショボ司会わかおの様子はこちら)。
厳しいことも多少並べましたが、これからの頑張り次第です。期待してます。

民間刑務所と企業との連携

2007年10月18日 | 日記
A級(初犯)だからできるといえばそれまででしょうが、
基本的には実業界のニーズに沿った教育プログラムを組むという点では、
どの刑務所においても同じ可能性を秘めているといっても過言ではないでしょう。

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民間刑務所の出資企業、出所後の受刑者を正社員採用へ
(読売新聞 - 10月18日 11:55)

 全国で初めて民間の資金と経営手法を導入するPFI方式で設置された山口県美祢(みね)市の刑務所「美祢社会復帰促進センター」の出資企業の1社でIT関連企業「日本ユニシス」(東京)が、十分な技能を身に着けた同刑務所の受刑者を出所後、グループ会社の正社員として採用する制度を新設した。

 法務省によると、企業で初の取り組みという。

 同社は9日から、男性受刑者18人を対象に、プログラミングなど社員研修と同レベルの高度な教育を行っている。

 国が管理する刑務所でも、情報処理の訓練を行い、国家資格を取得させてきたが、就職を保証するものではなかった。同センターは「就労支援を含めた職業訓練で、受刑者の社会復帰を促したい」としている。法務省は「出所後に就職できた場合、受刑者の再犯率は大幅に下がる。他のPFI刑務所でも同様の取り組みが広がることを期待したい」と話している。
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プロジェクト機関の位置づけ

2007年10月08日 | 公共政策大学院
加美ゼミ 東北大公共政策大学院生、町と提携(河北新報2007年10月7日付)

今年の東北大学公共政策大学院のワークショップBが新聞記事になりました。

「東北大公共政策大学院の学生が、加美町と調査研究の提携を結んだ」ことで、
プロジェクト機関の位置づけをはっきりさせるという効果がありそうです。
ちなみにプロジェクト機関は政策提言対象と言いかえることができます。
地域の学生コンサルティングファームとしての役割を担えるかどうかは、
彼らにかかっていると言っても過言ではないかもしれません。

もちろん、今年度に提言を出すだけではなかなか動き出さないと思うので、
来年度も継続的に加美町にかかわって活動する人が出てくれば、
また東北大学公共政策大学院は一歩前進するような気がします。

とはいえ、この時期に出すというのもなかなか思い切りがいいですね。
ちなみに彼ら学生のブログも立ち上げられています(こちら)。
まちづくりブログの記事の書き方について、今度教えなくては!(笑)

コンサルティングといえば、
一橋大学国際・公共政策大学院の公共経済プログラムでは、
コンサルティングプロジェクトというカリキュラムを組んでいます。
うちの大学院で行う公共政策ワークショップを1人で行うのが、
このコンサルティングプロジェクトの仕組みのようです。

受け入れ機関を明確にして行うことの効果はこのカリキュラムで発揮されています。
成果もしっかりと公表されています(2007年度レポートはこちら)。
ブログから友達になった関くんは愛知県一宮市に対して政策提言をしたみたいです。
ちょこちょこメールのやりとりをしたり、会って話したり、
mixiなどの日記を見ていましたが、なかなかハードそうでした。
お疲れさまでした。

公表されるというプレッシャーがさらなる高みへと引き上げてくれそうです。

美濃市あかりアート展のライブ

2007年10月04日 | 日記
高校時代の友人が地元でソロライブをするそうです。
いまは仕事の傍ら、東京のライブハウスを中心に活動しています。

オリジナル曲の『灯』が、あかりアート展のテーマソングに決定したそうです。
岐阜県の協力で、ソロCDも完成したんだとか。
2日間のイベントの中で、計3回のライブを予定しているそうです。
ちなみに友達のホームページはこちら。ブログはこちら

美濃市あかりアート展10月6日(土)7日(日)
街角コンサート
<晴天時>
10月6日(土)19時30分~「番屋」前メインステージ
10月7日(日)17時30分~山田家ギャラリー
同じく7日(日)20時10分~「番屋」前メインステージ
<雨天時>
10月6日(土)19時45分~吉田工房
10月7日(日)18時00分~吉田工房

すべてのステージ、40分程度を予定。
オリジナル曲を中心とした、弾き語りのライブです。

詳細は以下の通り↓
あかりアート展HP
ライブ詳細

東京にいても地域のことを思っている人は重要ですね。
こういう人を地域づくりに巻き込めるというのはいいなぁと思います。
ぜひ岐阜にお住まいの方は10月6日、7日に美濃市に足を運んでみてください。
美濃市のうだつの上がる町並みは昔の景観がよく残されています。
そのなかで灯がともるというのはきれいだと思います!

論文情報ナビゲータと学長研究奨励費結果報告書

2007年10月02日 | 政治・行政
国立情報学研究所の論文情報ナビゲータ(通称CiNii)はたまにお世話になっています。
この簡易検索で「本文あり」にチェックして検索すると論文が出てきます
(大学の紀要が中心で、あまりレベルの高い論文はないですが…)。

とはいえ、基礎的な知識をさっと入れるには十分すぎる情報量です。

そんなCiNiiになぜかわたしの名前が載っています(笑)
というのも学部時代に、金沢大学学長研究奨励費をもらっていて、
その「結果報告書」がCiNiiに登録されているからです。

なぜか、もう1人の名前が間違っています(修正できないのかなぁ)。
結果報告書を書いたときの記事はこちら。相変わらずまぬけです。

結果報告書の全文はUPしていなかったので、コピーしておきます。
ほんとうは昨年ブラッシュアップしてどっかに投稿しようと思っていたのですが、
結局仙台都市総合研究機構がなくなり、事情が大きく変化したのでお蔵入り。
うーん、実に惜しいことをしたような気もします。

そうそう、自分の名前ブログ名で検索すると、いろんなトコにヒットします。
こういうくだらないことで、CiNiiに登録されていることを知ったわけです(笑)
あと、はてなアンテナに登録してくださっているとはありがたいなーとか。

いつまで実名でブログを続けられるかは分かりませんが、
これからも不定期更新で続けていくので、よろしくお願いします。

【以下長文なので、お時間のある方はお読みください】
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「金沢市における住民参加の政策形成」

(代表)わかお(法学部公共システム学科)

1.背景と研究目的
 かつて行政サービスが問題となる際には、多くの場合市民運動が起こり、市民は行政に対して強烈な抵抗を示した。そのような抵抗を抑えるために、市民参加によってあらかじめ意見を聞き、同意を得る手法が定着した。しかし、市民参加は行政が市民の意見を聞く姿勢を示す「ポーズ」になっている場合も多く、その制度は形骸化していると言われることもある。しかし、現実としてさまざまな類型の市民参加制度が存在する以上、それを把握することは重要な課題である。
 また、市民参加とは異なる流れとして、自治体による政策形成の必要性が地方分権を大きな契機として提起されるようになった。さまざまな政策形成の手法が存在するものの、昨今大きな注目を浴びている手法として、全国で設立が相次ぐ自治体シンクタンクがあげられる。
 上述した市民参加と自治体による政策形成両面の視点を生かし、市民参加による政策形成手法として位置づけられる「金沢まちづくり市民研究機構」や、宇都宮市、上越市、仙台市における自治体シンクタンクの事例研究から、市民参加による政策形成手法がどの程度有効かを考察する。
 「金沢まちづくり市民研究機構」とは、金沢市が2003年に設置した市民参加による政策形成手法である。市民がグループごとに分かれ、ディレクター(学識経験者)の指導を受けながら、1年間政策提案を目指し活動する。その提案は各部局に振りわけられ、可否が検討され一部の政策提案が予算要求される。このような形で、白紙から政策提案を作り上げる市民参加の例はあまり多くない。自治体シンクタンクのなかには、市民参加による政策研究を行っている事例もある(本論文では上越市と仙台市の事例がそれに当たる)。
 現在、市民研究機構においては、市民研究員間に能力差があり、それがグループの政策提案能力の差につながっているとされる。それゆえ、グループによっては、実現可能性の低い政策提案がなされているとの批判がある。ただこの問題は、「市民」参加である以上起こりうることだと考えられる。では、市民参加を行っている自治体シンクタンクではどのように解決したのか、それは市民研究機構にとって大きな示唆を与える。事例研究から導いた考察に基づいて、市民研究機構におけるさまざまな課題改善手法の提案へ結びつけることを目的とする。

2.研究方法
 文献による調査に基づき、市民参加手法と自治体における政策形成手法を概観した。その上で、下記団体にヒアリング調査を行った。金沢まちづくり市民研究機構においては、研究代表者が市民研究員として参加していたため、その参与観察も知見として取り込んだ。

 表.各自治体シンクタンクと金沢まちづくり市民研究機構の概要

 出典:ヒアリングより筆者作成

3.研究成果と考察
(1)組織体制
 自治体シンクタンクそのものが、既存のライン組織を越えた組織であるがゆえに、首長の強いリーダーシップによって作られる場合が多いことが宇都宮市、上越市、仙台市の事例から明らかとなった。しかしそれは逆に、首長の政策構想を強力に推進するという目的を有した自治体シンクタンクの組織基盤は、首長が変わることで不安定になる可能性が高いともいえる。そのような状況は、首長が変わり組織体制の見直しを迫られている仙台市の状況からも理解できる。また、政策研究には一定の客観性が求められるため、任意団体型の仙台市のみならず、自治体内部設置型である宇都宮市と上越市の自治体シンクタンクも外部からのチェック機能を取り入れている。
 政策研究を行うことは、職員の人材育成という観点からも大きな意味を持っていることが3つの事例および金沢市政策研究所(金沢市における自治体シンクタンク)から理解できる。しかし、宇都宮市および上越市の研究員が指摘していたように、自治体シンクタンク自体の政策研究能力は高まりづらい現状にあるといえよう。それは、自治体シンクタンクがその研究員を自治体職員で調達する場合が多いからである。自治体職員から研究員を調達するということは、人事異動の対象となり、自治体シンクタンクで身につけた政策研究能力を流出することにつながる。それを補完するために、宇都宮市では専門研究嘱託員を導入することで政策研究能力の維持をはかっている。
 政策研究能力は高まりづらいが、自治体としての政策形成能力を高める上で自治体シンクタンクは大きな機能を果たすことになろう。政策研究能力を身につけた自治体職員が各担当部局において仕事を行うことで、政策研究能力を存分に生かした政策形成が可能であろう。とりわけ市民研究員制度を導入している上越市と仙台市では、市民との恒常的なコミュニケーションを行うことになる。そのため、市民意識を「想像できる」職員を増やすことにつながると考えられる。その職員が市民セクターと行政セクターの間に立つコーディネーターとしての役割を発揮する可能性は高い。金沢市においては、金沢まちづくり市民研究機構と金沢市政策研究所の連携が一部のグループでは行われているが、全グループで行われているわけではないため、市民意識を強く念頭に置いた自治体職員の人材育成は、他の機会にはかられることになろう。

(2)業務
 宇都宮市、上越市、仙台市における自治体シンクタンクの事例は、調査研究事業、政策形成支援事業の2つを柱として業務を行っている。調査研究事業では、自治体シンクタンクとして打ち出すべき長期的視野に立った政策研究(シンクタンク機能)と担当部局の要望による短期的な課題解決を目指した政策研究(コンサルティング機能)があることが明確となった。
 そして長期的視野に立った政策研究(シンクタンク機能)が有効に利用されるためには、各部局での政策立案の取り組みを支える政策形成支援事業も大きな役割を担うだろう。上越市の研究員が指摘したように、この調査研究事業と政策形成支援事業を毎年ていねいに行っていくことが部局を越えた政策形成の実現には不可欠なものと考えられる。しかし、それを行うには人的資源が少ないため、シンクタンク機能もしくはコンサルティング機能のどちらかに傾注せざるを得ないという現状がこれら3つの自治体シンクタンクから明らかになった。
 金沢まちづくり市民研究機構における金沢市の業務はかなり限定的であり、市民による自立的な政策研究が行われている。市民研究機構活動の運営方針は、市民研究員の代表とディレクターによって構成される機構会議で決定されるため、その方針転換も機構会議を通して決定される。

(3)研究テーマ
 宇都宮市、上越市、仙台市の自治体シンクタンクは、「地域の実情を反映した政策提案」を出すことを念頭において研究テーマの設定を行っている。その点で3つの自治体シンクタンクは「自治体シンクタンクとして求められる機能」を果たしているといえよう。
 金沢まちづくり市民研究機構の場合は、テーマ設定の段階から公募を行い地域ニーズの把握に努めている。しかし、テーマ設定は最終的にディレクターの意向により決定されていることが施策担当者の発言から明らかになった。そのため、ディレクターのできる範囲での研究が行われているという現状がある。ここで、本来目指すべき研究部門と研究テーマの乖離が発生するといえる。
 また、事例研究で示したとおり、研究部門の1は「金沢世界都市戦略・世界の都市政策交流部門」と位置づけられ、総合的な政策パッケージを提言することを目的としているはずであるが、研究テーマでは「金沢らしさの具体化に関する研究」となり、具体的な提言を出すという目的を有していると理解できる。参与観察や市民研究会へのオブザーバー参加でも同様のことが明らかとなっている。金沢まちづくり市民研究機構は、各研究部門における研究成果を総合し「金沢世界都市構想」に資する提言提出を目的としているため、このように研究部門と研究テーマが乖離することは課題といえる。
 また、市民研究機構の各グループは密接に関連する政策分野もありながら連携をあまり行っていないことが参与観察と市民研究会の見学から明らかになった。この点を解決しなければ、金沢まちづくり市民研究機構全体の政策提言をブラッシュアップすることは不可能であろう。

(4)自治体政策への反映方法
 この自治体政策への反映方法が宇都宮市、上越市、仙台市の各自治体シンクタンクと金沢まちづくり市民研究機構にとって大きな課題となっている。内部設置型(宇都宮市・上越市)の出す政策提案が反映されやすく、任意団体型(仙台市)のものが反映されにくいという単純な図式にはなっていない。全体的に自治体シンクタンクとして果たすべき長期の視点を打ち出すこと(シンクタンク機能)よりも、短期的な政策課題を解決する(コンサルティング機能)方向に軸足を置いているといえよう。
 それは、長期的視野に立った政策提案ばかり行っていると、「自治体シンクタンクとは何をやっている組織なのか」という批判を受けるためであろう。それに対し、短期的な政策課題を解決する場合、担当部局で起こっている問題をすぐに解決するという「駆け込み寺」的な側面がかなり強くなる。長期的視野を打ち出した政策でもなく、部局を超えた横断的かつ抜本的な改革案を打ち出すわけでもないので、政策提案の実現性は比較的高まることになる。
 しかし、自治体シンクタンクに求められる機能は、本来長期的視点に立った政策や横断的かつ抜本的な政策案を提示することである。それを達成するには、担当となるそれぞれの部局はもちろんのこと、上越市の研究員が示したように、市民やマスコミを巻き込んだ「外からの風」が必要となるという認識を共有することが重要である。報告書として完成させることが目的ではなく、最大限政策を反映させることを目標にするのならば、その後の取り組みの支援(政策形成支援)も必要となる。
 金沢まちづくり市民研究機構では、最大限予算化を目指すために研究期間を予算作成時期に合わせている。この取り組みは、他の自治体シンクタンクの政策反映方法にも示唆を与えるだろう。しかしながら、市民参加による横断的かつ抜本的な改革案を提示しても企画課で政策提案をピックアップし各部局に割り振るとなると、市民参加による政策形成のメリットは薄れかねないともいえる。
 また金沢まちづくり市民研究機構は、市民の政策提案を強力に推進する体制になっていないことも大きな課題である。市民参加を行う上越市と仙台市の自治体シンクタンクの場合、その研究員はみずから作った政策提案を最大限反映させるため、担当部局との交渉を行うと考えられる。対照的に金沢まちづくり市民研究機構では、企画課が担当課であるがその仕事だけを行うわけではないため、このような役割は果たしにくいと考えられる。

(5)市民研究員
 市民研究員の考察では、市民研究員制度を導入していないうつのみや市政研究センターを除外する。NPOなどによる市民活動が盛んになってきた場合、大きな課題となるのが市民研究員を確保する方法であろう。仙台市の場合、市民研究員制度を導入した1995年と現在の市民活動の状況は大きく異なっている。そのため、市民研究員制度の位置づけが変容しているといえる。これは、都市の成熟度にも大きくかかわるが、市民活動が盛んになってきた場合、避けては通れない課題となろう。
 市民研究員と一口にいっても実際は多様である。仙台市の場合、年齢・性別・職業などのバランスを考慮しているため、市民意識の把握やその視点を最大限取り入れようとしていることがうかがえる。つまり、市民を育てるという人材育成的な意味合いもかなり強いといえよう。対照的に上越市の場合、「専門的知識を持った市民の参加が多い」。つまり、その目的は専門性を高めることが主であり、研究所の研究員を増やすのと同様の効果を持つと考えられる。金沢まちづくり市民研究機構の場合、専門的知識を有した市民の多いグループとそうでないグループがあるため、市民を育てるという人材育成の側面(仙台市の事例)と専門的知識を提案に生かすという側面(上越市の事例)があるといえる。
 市民研究員が専門的知識を持つか否かにかかわらず、縦割りのセクションを横につなぐパイプづくりを担っていることには変わりないといえる。このような市民参加を行うことが部局を越えた改革提案につながるため、シンクタンク機能が強まるといえよう。
 また、市民研究員の「まちづくりのリーダー」としての活用方策も大きな課題となる。とりわけ金沢まちづくり市民研究機構の場合、毎年80名近くの市民研究員経験者が生まれる。政策提案したことを実現するためには、「行政でできること」もあれば、「市民でできること」もある。もちろん「両者の協働」を必要としている政策もある。市民研究員経験者は、「その市民でできること」と「両者の協働」を推進していく主体として活動することが望ましいといえよう。

4.結論
 考察を踏まえて、金沢まちづくり市民研究機構の課題改善につなげるための手法提案を行う。「市民による政策提案のレベルアップをはかり、その提案が自治体政策に反映されること」という方向性を定めて3つの手法を提案する。

(1)金沢まちづくり市民研究機構と金沢市政策研究所がさらに連携して政策提案を行う
 両者の連携は合同研究会を通して一部のグループで行われていることは、「(1)組織体制」の考察部分で示した。しかし、金沢まちづくり市民研究機構の市民研究会と金沢市政策研究所の「ゼミナール」や「研究グループ」との合同研究会は単発のものであり、周期的に合同研究を行っていないことが考察から明らかになった。そのため、このような合同研究会をさらに多く開催し、政策提案を練り上げることは大きな意味を持つ可能性がある。合同研究の意義は、上越市、仙台市といった市民研究員制度を持つ自治体シンクタンクの事例からも明らかである。合同研究により市民・職員相互の理解を深めることは、政策提案の実現性を高めることにつながると考えられる。また職員の人材育成という観点からも非常に効果的な手法であることが、上越市、仙台市の事例から示されている。
 また、「(4)自治体政策への反映方法」の考察でみたように、市民の政策提案を強力に推進する体制を作る必要があろう。それを作るには、この「ゼミナール」や「研究グループ」が大きな役割を果たすことになる。この「ゼミナール」や「研究グループ」のメンバーが「市民研究機構政策具現化プロジェクトチーム」として、各担当部局との交渉に当たることも考えられるだろう。

(2)金沢まちづくり市民研究機構とNPOが連携し政策提案を行う
 身近な地域の問題に関しては、地域で実際に活動するNPOを活用することも有効であろう。それは、地域に密着しある専門分野に特化し活動を続けているため、課題発見能力が高いからである。当然政策における問題点も把握している。しかし、実際に政策提案能力が高いとは言いがたい状況にある。また自治体はNPOの課題発見能力を政策形成能力の向上にうまく生かせていない。そのため、市民研究機構とNPOの共同研究を行うことも、ひとつの手法として有効に機能する可能性が高いといえよう。
 この場合、金沢まちづくり市民研究機構がコミュニティシンクタンク(市民がコミュニティの課題解決のために行う調査研究、政策提案を専門的な立場から支援するとともに、市民的視点から行政施策へのアドバイスや代替案の作成を担う組織)的な色彩を強めることになる。つまり、手法提案「(1)金沢まちづくり市民研究機構と金沢市政策研究所がさらに連携して政策提案を行う」に比べて、自治体職員の関与が減ることになる。そのため、自治体政策への反映度は若干低くなるだろう。しかし、市民と行政の協働により、政策の執行段階を担うことが多くなってきたNPOと連携して政策を提案するということは、政策執行の実効性を高めるという観点からは一考に値する。
 またさらなる効果も現れる。それは、市民研究員経験者の活用方法である。「(5)市民研究員」の考察部分で示したとおり、毎年80名近くになる市民研究員経験者の活用方策は大きな課題となっている。しかし現在、市民研究員を市民活動へつなぐ手法は確立されていないように思われる。そこでこのような共同研究を行うことは、市民活動への参加障壁を低くする効果を持つといえる。

(3)市民研究機構全体で政策提案の整合性を高める
 市民研究機構の各グループは政策分野が同じであっても、あまり連携を行っていない。そのため、同じ方向性の提案に関しては、市民研究機構全体の政策提案に整合性を持たせるために、各グループの提案内容を一致させることが望ましい。そうすることで、政策提案のブラッシュアップが可能となり、政策提案の実現性も高まると考えられる。

参考文献
・阿部孝夫『政策形成と地域経営』学陽書房、1998年。
・今井照『自治体政策のイノベーション』ぎょうせい、2004年。
・兼子仁編著『広報広聴と情報政策』労働旬報社、1986年。
・金沢まちづくり市民研究機構ホームページ
http://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/shiminkikou/ (2005年11月8日アクセス)
・金安岩男・横須賀市都市政策研究所編『自治体の政策形成とその実践―横須賀市の挑戦』ぎょうせい、2003年。
・神原勝「二元代表民主制における議会の機能」『月刊自治フォーラム』2001年6月号。
・来栖紀雄『広報広聴課』ぎょうせい、1992年。
・澤昭裕・経済産業研究所編『民意民力』東洋経済新報社、2003年。
・世古一穂『市民参加のデザイン』ぎょうせい、1999年。
・総合研究開発機構「日本のシンクタンク情報」ホームページ
 http://www.nira.go.jp/icj/tt-idxj/index.html (2006年1月11日アクセス)
・田村秀『政策形成の基礎知識』第一法規、2004年。
・日本都市センター「都市政策研究データベース」ホームページ
http://www.toshi.or.jp/citydb/index.shtml (2006年1月19日アクセス)
・松下啓一『協働社会をつくる条例―自治基本条例・市民参加条例・市民協働支援条例の考え方』ぎょうせい、2004年。
・室井力編『住民参加のシステム改革』日本評論社、2003年。
・森啓『自治体の政策形成力』時事通信社、2003年。
・山内弘隆・上山信一編『パブリック・セクターの経済・経営学』NTT出版、2003年。
・渡邉満「行政と住民等との合意形成の手法(パブリックインボルブメント)」『郵政研究所月報』2001年8月号。