まちづくりぷらす

ブログをお引っ越ししました。
すでに更新は停止しています。

『公共サービス改革』

2009年12月31日 | 
この本では、行政サービス検証システムの構築を目指して、(1)行政サービス提供主体の検証システムと(2)最適事業形態の検証システムの2段階に分けて、行政サービスを検証する必要があることを示しています。

(1)行政サービス提供主体の検証システム
・行政が継続
・グレーゾーン→市場化テストへ
・PPP(Public Private Partnership)活用→最適事業形態の検証システムへ
・民営化
・廃止

(2)最適事業形態の検証システム
・業務委託
・指定管理者制度
・セール&リースバック
・PFI(Private Finance Initiative)
・民営化(行政関与型)

これらの仕組みが各政令指定都市を事例にして、どの程度まで実現しているかを調査しています。また、行政刷新会議で実施され話題となった「事業仕分け」や行政サービスに対する民間提案制度など(杉並区・我孫子市・佐賀県など)を事例に、行政サービス検証システムの新しい展開を見据え、あるべき公共サービス改革の方向性を示しています。


日本の新たな「第三の道」

2009年12月05日 | 
久しぶりに「ああ、こういうテーマの本が好きなんだ」と実感した本をご紹介します。
まだ11月27日に出たばかりの新刊です。
ギデンズの『第三の道』を知っている方であれば、すらすら読めると思います。

アンソニー・ギデンズ,渡辺 聰子
ダイヤモンド社
発売日:2009-11-28
 ギデンズとの共同研究を渡辺さんが書き下ろした本です。以前から、第三の道は日本のあるべき姿だと捉えていましたが、現状、民主党政権が誕生した今、何をなすべきか、大目標が見えない中の支柱になりうると思います。

 基本的には、ギデンズの「第三の道」を踏襲していますが、その過程はおのずと日本と他の西欧諸国とは異なるといいます。日本は本格的な市場主義もとったことがないし、逆に福祉国家をとったこともない。そのため、小泉政権が市場主義に舵を切った時に、一気にワーキングプアなどの増大をもたらしたと整理しています。そのため、日本は規制改革(市場主義)と福祉改革を同時に行わなければならないと結論付けています。

 その福祉改革では、「ポジティブウェルフェア」という考え方を基調に、就労のための福祉を目指します。あくまで福祉は一時的な措置であり、健康な状態の大人であれば、就労すべきというのが基本にあります。そのために、就労環境を整えたり、能力開発プログラムをコーディネートするのが政府の役割だといいます。

 英国では、就労支援を広範に民間委託しているようですが、基本的に就労したかどうかという明確な成果指標に基づき、以下のような時期に報酬を与えるようです。
・就職活動を開始した時点
・職業訓練を開始した時点
・職業訓練を修了した時点
・就職した時点
・半年経過した時点

 私が考える日本が取り入れるべき政策形成の視点は、以下のようなものでしょう。
  1.政府は一時的に税金を投入しても、「損して得とれ」的発想を持っていること
  2.そもそも人間は受益するだけの存在になれば堕落するという性悪説に立った制度構築

地域通貨の火付け役

2007年04月20日 | 
日本における地域通貨の火付け役と言えば、必ず挙げられる「エンデの遺言」。
これはNHKの番組として放送され、さまざまな人に影響を与えたようです。
非常に綿密な取材の元に作られた番組だったようで、
「やっぱりNHKはこういう番組作らないとねぇ」と思いました。
その番組の内容を本にしたのが、この『エンデの遺言』↓です。

河邑厚徳ほか『エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」』日本放送出版協会、2000年。


坂本龍一ほか『エンデの警鐘「地域通貨の希望と銀行の未来」』日本放送出版協会、2002年。


鋭いコメントをFinemanさんから頂いたので、書くことがなくなってしまいました(笑)
エンデの鋭い貨幣への問題意識については非常にうなずけるものがありました。
労働の対価としての貨幣を超えて、投機的なマネーをどうするか…
それは地域通貨ならずとも、トービン税などの問題意識とも同じです。
ちなみにトービン税とは、すべての通貨取引に低率の税を課すものです。
特に、短期的な投機目的のマネーは、取引回数が増加するため税金が高くなります。
逆に、長期の投資には低率の課税となり、投機的マネーが抑制されるというものです。

Finemanさんのおっしゃるとおりで、事例を安易に受け入れるわけにはいきません。
現在では、滋賀県で行われている「おうみ」は活動休止に至っています。
番組としてある程度おもしろくするためには脚色が付けられることもしばしばです。
とはいえ、各地に火を付けたという点では、非常に評価できる番組です。
(逆に散るのも早くなるのかもしれませんが…)

ベストプラクティス(良き事例)として文献に取り上げられていたところが、
実際に行ってみると、あまり大したことがなかったとか、
そもそもほとんど実績がなかったとか、そういう経験が何度かあります。

マスメディアに大々的に取り上げられて、
その後、華々しく散っていったものは数多くあるので、
今後の調査過程でも「現場」を重視していかないとなぁと思いました。

広域公共サービスの向上=地域経済振興?

2007年04月12日 | 
最近は結構時間が空いているので、きょうは久しぶりに本↓を読みました。
D・ヘントンほか『社会変革する地域市民―スチュワードシップとリージョナル・ガバナンス』第一法規、2004年。


都市における産業集積はなぜ起こるのかを社会変革とセットにして議論した本です。
内容的には、市民による社会変革を通じた公共サービスの革新が、
産業立地に作用していることをアメリカの諸都市圏の事例から示しています。

アメリカでは公共サービスの格差が比較的大きいことが要因かなぁと思いました。
このため企業は、サービスレベルの高い地域を選好するという状況が見て取れます。
そのサービスレベルの高い地域ほど、従業員の定着率が高いのだと思います。
特に公共交通政策と公営住宅政策が大きな意味を持っているようです。

この公共サービスの革新を担うのが地域の市民(や市民団体)だと言います。
その地域の市民(団体)が自主的にサービスを提供したり、
地方政府にサービス提供を働きかけることでサービスレベルが向上します。

これは、日本の現在の状況とはやっぱり少し違うのかなぁと思いました。
最近の「ガバナンス」の議論にもありますが、
公共サービスの一部が民間企業・NPOによって担われているとはいえ、
地域において均一なサービスを広範に提供しているのは自治体です。
この自治体の公共サービスレベルが大きく違えば、
逆にこの市民や市民団体の出番は大きくなると思います。
さらに、それが企業の立地行動にかなり影響を与えるかもしれません。
現状は、やはりそれよりも人材の集中具合や
社会インフラ(これも公共サービスだが)が企業立地に影響を与えそうです。

本格的に自治体の税収+交付税が減少していくなかで、
公共サービスをどのように描くか…そのときには必要になりそうな議論です。

ちなみに「スチュワードシップ」とは、
「人々から委ねられているものを注意深く、責任を持って管理すること」
と定義されています。

とはいえ、諸都市圏の事例が若干わかりにくかったのが残念です。

まちづくり政策フォーラムの本

2006年09月28日 | 
久しぶりにこのブログで本の紹介をしたいと思います。
(いつもはブクログで更新しています:今回も更新しましたが…)

まちづくり政策フォーラム『協働で地域づくりを「変える」「つなぐ」「活かす」』ぎょうせい、2006年。

最近、かかわらせていただいているNPO法人「まちづくり政策フォーラム」の本です。

勉強がいまひとつの状況

2006年07月30日 | 
最近どうもワークショップの研究がはかどらないので、
軽めの内容+興味のある本を読むことにしました。
(それは夏休みに入ってからにしろよと言われそうですが…)
山中俊之『公務員人事の研究』(東洋経済、2006年)です。
表紙の題名の文字組みがなかなかいい感じだと思ったので、
思わず買ってしまいました~(笑)

①人事評価、②昇任昇級と給与、③異動とキャリア形成
この3点を中心に、人事・組織マネージメントの改革方向を示しています。
この3つの軸に関して、具体的にはどのようなポイントを押さえればよいか、
非常にコンパクトに、かつわかりやすくまとまっています。
全般的に根拠は薄弱ですが…。

よく「公務員は民間と違って絶対的な成果が見えにくいから、
成果主義を取り入れることはむつかしい」って話を聞きますけど、
やっぱりその辺はある程度、解決可能なんだろうと思いました。

基本的には目標管理を厳密に行うことが重要だと考えられます。
目標管理における3つの前提条件としてあげられていたのが、
①政策・施策との連動、②顧客の視点を重視、③面接を重視、です。
このあたりの目標管理の記述はなかなか参考になりました。

著者(ブログ)は外務省をやめて、いまは日本総研でコンサルをしています。
ブログをちらっと拝見しましたが、どうも全般的に根拠が弱いような…。
公開できない内部話が多くあって、それをもとに判断を下しているんでしょう。
「もっと詳しく具体的な処方箋がほしいのであれば、あとはコンサル頼んでね」
ってことなのかもしれませんね(笑)

ネット上の本棚!

2006年07月09日 | 
よく友達から「なんかいい本紹介してよ~!!」と言われるのですが、
あんまり整理していないために、うまく紹介することができませんでした。
ということで、amazonのリストを作ったりしていましたが、いまいち…。
そして数日後、「ブクログ」なんてステキなブログを発見しました!

どんどん本棚に本が入っていくこの感覚はいいなぁと思いまして、
詰め込み作業を何日間か繰り返し、ある程度の本は入った感じです。
公共政策大学院の友達もブクログを同時に作って、
激しい「本棚に入っている本の数」競争を繰り返していましたが、
僕の負けが決定したので、200冊で打ち止めにしました(笑)
お互いの感想は、「なんか自分が思ってたより少ないね…」でした。

ということで、お待たせしました(誰も待ってないか…)「わかおの本棚」です。
(ちなみにブックマークの一番下:プロフィールの下に登録しておきました)

少しずつ書評をアップしていこうと思いますので、ゆっくりお待ちください。
読んだ本は従来通り、「まちづくりぷらす」のほうにもアップすると思いますが…。

景観まちづくりの力作!

2006年06月21日 | 
土田旭+都市景観研究会編著
『日本の街を美しくする―法制度・技術・職能を問いなおす』(学芸出版社、2006年)
先日5月30日付の記事で「悪い景観100」を紹介したものの、
「どの程度景観について知識があって議論できるのか?」と問われれば、
非常に心許ない状況だったので、この本を買って勉強してみました。

うーん、いろいろ勉強になりました。総じてなかなか良い本だと思います。
ただ、「電柱地中化をすべての街路で行うべき」とかいう提案は微妙です。
「そんな税金どこから出てくるんですか?」って問いたくなります。
(国交省の新たな食いぶちとして位置づけられているような気がしなくもない)
法制度・技術・職能などの部分から多角的に景観を悪くしている原因を把握しています。
とにかく提案と写真が多いので、見ていてなかなかおもしろいです。

「住民は景観の美しさを求めている」という前提で話が進められていましたが、
そこははっきりと再度問われるべき課題だろうなぁと思いました。
住民は「そりゃ汚いよりきれいなほうがいいよ」と言うと思いますが、
その政策に対してどの程度税投入を許容しているかは微妙なレベルだと思います。
となると、やっぱり景観に配慮した不動産評価システムの構築が重要なんだと思いました。

…少しまだ考え中です。

-----
金沢大学学長研究奨励費の成果報告書をサクサクっと作りました。
これで学長研究奨励費で義務になっていることは終了です。
協力してくださったみなさんに心より感謝いたします。

MMJ+政策「科学」してるかなぁ??

2006年06月16日 | 
そうそう、MMJ第20回(情報交換会)に参加を申込みました。
結構おもしろそうだし、片平キャンパスからも近いからみなさん参加してみては??

村山皓・木村高宏編『政策科学のフィールド』(晃洋書房、2006年)
きのうは学部時代のゼミの先生(木村先生)が編者をしている本を読みました。
表紙は4つの案からどれがいいか意見を出し、第1章の原稿も読んでいました。
ということで、全部まとまってどんな本になったか知りたかったので購入。

おもしろかったのは、
第3章の「地方分権社会における公共事業と政策評価」という部分で、
地域産業連関表というものを例として使っていたことです。
最近、産業連関表ってそこそこ使えるかもと思っていました。
地方自治体が地域に特化した産業連関表を作成する作業は、
その自治体の「強みと弱み」を把握するには非常に有効な手段だと感じました。

第4章の「政策選好と参加行動」という部分では、
人々は「自らの意見を反映して運営していく政治」を求めているわけではなく、
「政治の客体としてよくしてほしいと望んでいる」という指摘がありました。
市民参加ってそういう部分では、やっぱり一部の人のものだと思いました。

この本は題名に「フィールド」ということをうたっているので、
いろんなとこには目配せしてありますが、少しバラバラな感じもします。

あとは、よく「公民協働」ということばが使われていましたが、
ほんとに「公」と「民」として分けるのが適切なんですかね。
「官民協働」とは意図的に分けて使っているんでしょうか??
個人的には、やっぱり「官民協働」のほうがスッキリします。

ファシリテーションのむつかしさ

2006年06月13日 | 
あまりに本紹介をしていなかったので、最近読み終えた本でも…。
ちょこちょこ読んでいるんですが、金融関係の本を紹介してもおもしろくないので。

ロジャー・シュワーツ/寺村真美+松浦良高訳
『ファシリテーター完全教本』(日本経済新聞社、2005年)です。

自分の研究とあんまり関係ないといえば関係ないのですが、
ワークショップをはじめとして議論の一番基礎となる
ファシリテーションスキル(議論の流れを管理する手法)を磨きたいと思ってます。
特にこのスキルが卓越している職業としてコンサルタントをあげることができます。
いろんなところで顧客の間に立って議論することに慣れているからなんでしょうね。
金沢まちづくり市民研究機構では、現役都市計画コンサルの人が抜群でした。
とはいえ、「ほんとにコンサルやってたの?」という人もいましたが…(笑)
僕がまずはコンサルのような仕事に就きたいなぁと考えているのは、
この辺のスキルの重要性を痛いほど認識しているからかもしれません。

ずいぶん話がそれてしまったように思いますが、上に示した本は、
とにかく「現状分析―介入サイクル」という概念を頭にたたき込むためか、
この概念を形を変えて(場合によっては形を変えずに)くどいほど何度も出てきます。

なんじゃそりゃということで…
<現状分析のステップ>
1.言動を観察する
2.意味を推察する(なるべく低次の推察にとどめる)
3.介入すべきか、どのように、なぜ介入するかを決める
<介入のステップ>
4.相手の言動について説明する(正しいか誤りかを確認)
5.ファシリテーターの推察をグループで共有する(正しいか誤りかを確認)
6.言動を変えるかどうか、どのように変えるかを決める手助けをする(正しいか誤りかを確認)

とはいえ、こういう型を身体に埋め込むというのはそう簡単にできるものではないわけで、
何度もそのサイクルを試して振り返らないとスムーズに使うことはできないでしょうね。
まさに「トライアンドエラー」です。

基本的にファシリテーションの現場が想像できる人にはオススメです。
「ファシリテーションってなによ?それって役に立つの??」って人は、
まず、初心者向けの本を読んだほうが頭に入りやすいと思います。

引っ越しの準備をせずに本を読む

2006年03月19日 | 
田尾雅夫・川野祐二編著『ボランティア・NPOの組織論』(2004年、学陽書房)
浅野一郎・浅野喜治『立法政策の企画と立案』(2003年、LEC)

●きょうは愛着のある原付とおさらばしました。
雪道で信号が黄色に変わってブレーキをかけたら180度ターンして、
後ろのクルマの人と目があってお互い大笑いしたことなど思い出いっぱいです。
でも引っ越しの準備は特に進まず、本を真剣に読みました。
ほんとに、最近本を読んでいないので、かなり危機感があります。

○上の本は、非常に読みやすかったです。そこそこオススメ。
NPOに少しかかわったことがあれば、そのNPOを思い出しながら読み進めるとGOOD!
わたしも実際「はづちを」を思い出しながら、「ああそうそう」なんて読みました。
内容的には、当たり前なことなんですが、記述していくことに意味があるんですよね。
「お前に組織論が分かるか」と厳しいことを昔師匠から言われましたが、
やっぱり何かの組織に少し属してみると違うような気がしますね。
バイトを極端に嫌がる人がいますが、少し違った目線で社会を見れるようになります。

○下の本は、いまはそんなに役に立たなくても、そのうち役に立つのかなぁと。
今年の4月から地方自治体で勤める人は、買ってもいいんじゃないでしょうか。
ちゃんと問題とかをこなしながら、読み進めていく趣の本なので、
「ちゃんとやれば」それなりに条例の作り方は理解・実践できると思います。
わたしは問題を適当にしか考えなかったので、知識として入れただけって感じです。

「今ごろ教科書かよ」というツッコミはなしで

2006年02月03日 | 
本の紹介ばかりしています。そろそろ飽きてくるころか…。

村松岐夫『行政学教科書―現代行政の政治分析』(有斐閣、2001年)

「わかおの専門ってなんだっけ?」という声が聞こえてきそうですが(笑)
たまには自分がどの分野を勉強しているか、その位置づけを確認したくなるんです。
この本読んでみて、「もうすこし早く読めばよかった」と少し後悔しました。
卒論の先行研究として引用できそうな記述がいくつかあったんですよ。

まっ、内容は行政学の教科書です。
別にウダウダ説明するまでもない、そんな感じです。
筆者の村松岐夫氏…公務員試験の勉強をした人はご存じだと思いますが、
通説である政策形成における官僚優位論に対して、政党優位論を唱えた人ですね。
その論を唱えた『戦後日本の官僚制』(東洋経済、1981年)を読むほど元気はないけど、
とりあえず、村松氏が何を言っているかを理解するにはよい本。
わたしは『戦後日本の官僚制』を1年半前くらいに読んだときに、
「これはおもしろい!」と思っていたのですが…いまは通説の支持です。

なんか通説ってコトバ、久しぶりに使ったな、法学部なのに。

ネタがない人は本ばかりを紹介する

2006年02月01日 | 
米牛肉輸入再停止・耐震偽装・ライブドアあたりを取り上げてもいいんですが…。
なんかもう少し、うちのブログらしいネタがほしいところですよね。

大阪府総務サービスセンター編『大阪府庁の総務事務改革』(LEC、2004年)を読みました。
この本は先回紹介した本と違って、読み進めるのに結構苦労しました。
というのも、内容はPPP(官民協働)の事例として位置づけられるものなので、
得意分野の1つなんですが、その対象は「総務事務」なんですよね。
「総務事務」は、組織内の「ヒト・モノ・カネ」を管理し、組織機能を維持する事務のことを指します。
中央省庁ではこの事務の担当課としておおむね3つの課があるため「官房三課」と言われます。
今まではこういった事務はかなり重要視されていたわけですよね(権限上も昇進上も)。

ただ現在は、有限資源の配分という観点から直接業務(住民とかかわる業務)を重視し、
そうでない間接業務(組織維持のための業務)は抜本的に見直すという機運が高まっています。
そこで、企業も役所も間接業務をアウトソーシング(外部委託)したり、
派遣社員を使ったりすることでコストダウンをはかっています。
日本企業が1990年代を通して事業部制から分社化を進めると、
分社ごとに総務担当部門が存在するというムダが出てきました。
それを排除するために、総務部門を1つに集約する「シェアードサービス」という考え方が誕生。
大阪府ではそれを国・地方自治体で初めて導入したというお話です(あー長かった)。
導入に向けての取り組みや入札方法から導入後の課題までが書かれています。

でも、総務事務の内実ってやっぱり学生の僕にはよくわかんないんですよね。
組織のなかに入ったことがなければ、あまり理解ができないような気がします。
ということで、今回の本はあまりオススメできそうにないです。
強いて言えば、SEになる(なりたい)人は読んでおいて損はなさそうです。
あとは、役所のエリートコースを行きそうな人も(笑)

モチベーションを生むのは??

2006年01月31日 | 
野村総合研究所『2010年の日本―雇用社会から起業社会へ』(東洋経済新報社、2005年)を読みました。
いちおう院修了後は、シンクタンク・コンサル系の仕事に就くことを多少考えているので、
「社会に対してシンクタンクがどんなことを提言しているのか」を知るために読みました。
この本も先日紹介した本と同様、軽めの文体なので非常に読みやすいと思います。

基本的には、副題となっている「雇用社会から起業社会へ」という論点を中心に扱います。
ここでいう「起業社会」というのは、みんながみんな起業することを目指しているわけではなく、
たとえ組織内であっても、その内部にいる構成員のモチベーションを高め、
組織の活力を高めるという手法も含めて位置づけられています。
このモチベーションを高めるのに、金銭による報酬だけでなく、
専門的知識・技術を得られるか、職務裁量の広狭などをあげて考察していました。
やはり働く人の欲求がどんどん高次の段階に移行していることは確かなようです。

あとは、団塊の世代の大量退職以降の動向なども。
団塊世代による起業や団塊世代をターゲットにした新たな産業の出現などをあげてました。

わたしの専攻との関連でいくと、4章「社会資本の創造的破壊」がおもしろかったですね。
人口減少のなかでこれ以上の社会資本整備が必要なのか、そしてそもそも可能なのかという話です。
「減築」ということばが最近少しずつ聞かれるようになってきました。
これから社会資本関係の財政は、維持管理コスト・そして資本の更新コストとの戦いになります。
つまり、こういったコストを減らすために、社会資本を「あえて取り壊す」という概念です。
コンパクトシティ構想などもこの「減築」の概念を取り入れています。
また「コンバージョン」にも「減築」と似たような政策効果が期待されています。
これは、ニーズに合わなくなった資本を他の用途に変更するという意味ですね。
「商業ビルのニーズが減少してきたので、コンバージョンしてマンションにする」などと使われます。
この本では、金沢市の補助金の例が少し紹介されていました。

なかなか意欲的な提言を出していますし、労働政策などに興味があれば読む価値はありそうです。

結局ネタがないときは本を紹介するパターン

2006年01月26日 | 
友達とドライブに行ってきました…大野に行ってきたんですが。
けど結果的に特に収穫もなく(店が休みで)、出直しな感じです。
たまには、こういうことがあってもいいかな~気分転換には。

それで卒論が終わって、「遊びエンジン」に火を入れたのですが、
遊びすぎるのも、さすがにもったいないと思うので、
「勉強エンジン」を再始動させるために、軽めの本を読むことに。
上山信一『だから、改革は成功する』(ランダムハウス講談社、2005年)です。

内容的には、「うーん、さすが」とうなることが多かったです。
僕もとりあえず、改革をサポートできる人間になりたいので、
非常に示唆を受ける部分が多かったような気がします。
改革を行う人間になるために求められる条件とか。

上山氏は、木村先生とも話したことがありますが「筆が早い」。
行政改革・評価をフォローしてるときによく出てきます。
改革プロジェクトを40近くこなしたという「改革界の巨人(笑)」。
この本では、マッキンゼーにいたころやいまの活動から導き出された、
改革を行うための手法がコンパクトにまとめられています。
「現場改善運動が改革につながる」っていう話を
上山氏の本かなにかで読んだことがありますが、
やっぱり「現場が動いてこその改革」だということを感じました。

「我こそは改革派だ」という人は一読をオススメします。
(前もこんな締めくくりがあったような…)