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地域通貨の火付け役

2007年04月20日 | 
日本における地域通貨の火付け役と言えば、必ず挙げられる「エンデの遺言」。
これはNHKの番組として放送され、さまざまな人に影響を与えたようです。
非常に綿密な取材の元に作られた番組だったようで、
「やっぱりNHKはこういう番組作らないとねぇ」と思いました。
その番組の内容を本にしたのが、この『エンデの遺言』↓です。

河邑厚徳ほか『エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」』日本放送出版協会、2000年。


坂本龍一ほか『エンデの警鐘「地域通貨の希望と銀行の未来」』日本放送出版協会、2002年。


鋭いコメントをFinemanさんから頂いたので、書くことがなくなってしまいました(笑)
エンデの鋭い貨幣への問題意識については非常にうなずけるものがありました。
労働の対価としての貨幣を超えて、投機的なマネーをどうするか…
それは地域通貨ならずとも、トービン税などの問題意識とも同じです。
ちなみにトービン税とは、すべての通貨取引に低率の税を課すものです。
特に、短期的な投機目的のマネーは、取引回数が増加するため税金が高くなります。
逆に、長期の投資には低率の課税となり、投機的マネーが抑制されるというものです。

Finemanさんのおっしゃるとおりで、事例を安易に受け入れるわけにはいきません。
現在では、滋賀県で行われている「おうみ」は活動休止に至っています。
番組としてある程度おもしろくするためには脚色が付けられることもしばしばです。
とはいえ、各地に火を付けたという点では、非常に評価できる番組です。
(逆に散るのも早くなるのかもしれませんが…)

ベストプラクティス(良き事例)として文献に取り上げられていたところが、
実際に行ってみると、あまり大したことがなかったとか、
そもそもほとんど実績がなかったとか、そういう経験が何度かあります。

マスメディアに大々的に取り上げられて、
その後、華々しく散っていったものは数多くあるので、
今後の調査過程でも「現場」を重視していかないとなぁと思いました。

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4 コメント

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先走って長文ご容赦 (Fineman)
2007-04-22 09:30:09
■NHKのエンデの遺言は印象に残っています。
あの番組の中で、滋賀県のエコマネー「おうみ」が、成功例として紹介されていました。確か、趣味で公民館を使う住民が、利用後に公民館の掃除をすると労働分のエコマネーがもらえて、次回利用料の一部をそこから支払える、という話でした。
あれは、影響を与えるだけの力がある紹介でした。
■で、松江でも「だがあ」というエコマネーの企画が立ち上がり、実は私もその活動メンバーの一人で、紙幣のデザインや、「できること・してほしいこと登録」の管理ツールを Microsoft Access で組むことを依頼されて、ボランティアでやっつけました。でも、実際には全く機能しなかったのです。
それについては下記のサイトの下段に書いています。
http://fish.miracle.ne.jp/mail4dl/05-topic-news/Pick11g.htm
■誰かが、貯めたエコマネーを使って洗車をして欲しいと思ったとき、個人情報は公開されていないので事務局に連絡します。事務局の者が、「洗車できます」という登録をしている人に連絡を取って都合を聞きます。「今週の土曜日と、次は来週の日曜日なら空いている」と回答を得て依頼者に連絡を取ると、「今週の土曜は予定が入っているなあ」と言います。「では来週の日曜にしますか」と聞くと、ガソリンスタンドの洗車コーナーに行くと500円でその日にすぐ洗車できるのですから、大抵の依頼者は「いや、今回は遠慮しておきます」と言うのでした。
■そんな風に、実態はうまく回っていないけれども、時々、問い合わせや取材の申し込みが事務局に対してあります。すると、取材日を決め、そのときにレポーターの前で、うまく善意が人から人へ回って機能しているというシナリオを作っては演じていました。しかもテレビ局の方も、もっとこんな感じがいいかも、などと "助言" を下さったり。で、世の中には、そういう加工された情報が発信されていく。
■しばらく前に書店で「元気なまちづくりのすすめ」という事例紹介本が平積みになっていました。
http://www.bk1.co.jp/product/2427320
島根の事例を見ると、これが成功例として紹介されるのか・・・と首をかしげるものがありました。取材者は、エコマネーなら運営者に、自治体の施策なら県庁に、取材を申し込みます。すると「本人たち」が発信する情報にはどうしてもバラ色に見せたい、報告したいというバイアスがかかってしまいます。で、たぶん世の中には、実態とすこしズレた成功情報が数多く回っているようです。島根の事例に首をかしげるものであったということは、他の県の例も同様かもしれません。成功事例を調査することの難しさが、そこにはありそうです。
■松江のエコマネーが消滅したあとで、バラ色に見えた「おうみ」についてネットですこし調べましたが、実態はやはり苦悩したり停滞したりバラ色からは遠いという運営者の書かれた記事を見つけて、NHKのディレクターさんの「欲しい情報」が放送されたのだな、と思っていました。そのサイトはもう見つかりませんが、下記のようなサイトはありました。
・3つめの黄色い欄↓
http://www.biwa.ne.jp/~yamamasa/data16-9.html
■個人的には、商店街活性化の成功度合いの指標に、別のお役所からの「視察の数」が上げられることも、実際の成果とズレがある情報の発信だ、と思っています。
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まさにそのとおりだと思います (わかお)
2007-05-11 00:18:49
コメントが遅くなりまして申し訳ありません。就職活動等で立て込んでいました。

確かにできること・できないことリストでの活動はそういった危険性をはらんでいるなぁと思いました。地域通貨も明らかに実績よりもマスメディアの取材が先行したかたちだと思います。以前、高崎経済大学に行ったときに、学生のまちづくりの事例としてそこそこ有名なものを見に行ったのですが、そこはまさにがらんどう。何も活動を行っていない雰囲気でした。
成功事例については、まさにFinemanさんのおっしゃるとおりです。マスメディアの取材に基づくものはある程度の脚色によって実態とのズレが生じます。さらに、当事者による論文等はどうしても宣伝の色彩を強めるため、実態とは乖離していることがしばしばです。わたしも研究において、よくこういう場に遭遇しました。
「視察の数」も確かに怪しいですね。金沢は視察にはもってこいの場所だそうです。温泉が近くにあって、そこそこ観光資源も豊かで…。そういった中で、成果指標として視察数を持ってきても、本質的に意味がないと、わたしも感じます。
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でしゃばってすみません (Fineman)
2007-05-20 13:15:03
・先走って、一種イヤラシイ生意気を書いたのに、丁寧なお返事をありがとうございました。
・過去15年くらいのまちづくり向けの公的な取り組みは大抵 「成功」 したと総括されています。15年も成功が続いたら、そろそろ当初あった問題は解決されて消えてもいいころですよね。
・就活を優先で頑張ってくださいね♪
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確かにそうですね (わかお)
2007-05-22 20:24:43
いえいえ、非常に参考になりました。
少し研究としては行き詰まりを見せていますが…。
確かに成功の総括が多い気はしますね。
ベストプラクティスは参考程度に考えています。
結局は足で稼がなくてはいけないのかもしれません。
少なくとも、その事例を自分で調査して確認する必要がありそうです。

どうもありがとうございます!
就活は今週末で終わる予定です。
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