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書物と活字の懇話会

第6回 本居宣長の著書を見る

2016年02月14日 | typeKIDS_Seminar
第6回 本居宣長の著書を見る
話者:今田欣一
日時:2015年11月8日(日)15:15-17:15
場所:新宿区・榎町地域センター 工芸美術室

大雑把に言えば、おもに文芸書をしるした「和様漢字+ひらがな」の系統と、おもに学術書をしるした「楷書漢字+カタカナ」の系統があります。前者は欧字書体のイタリック体(スクリプト体)に相当し、後者はローマン体に相当するものと考えています。

本居宣長(1730—1801)は江戸中期の国学者です。本居宣長の二冊の著書から、 和字書体のイタリック体(スクリプト体)とローマン体について考えてみることにします。




1『玉あられ』(本居宣長著、柏屋兵助ほか、1792年)

『玉あられ』は本居宣長の著書で、版木彫刻によるものです。近世の歌文に著しい誤用があるのを正そうと思い、古文の用法を思いつくままに説明したものだそうです。
 内容は「歌の部」と「文の部」にわかれています。本居宣長の、漢文的な表現を排斥して和語を重視するという意識と、中古語を最上とする言語感に基づいて実践されたということです。
「和様漢字+ひらがな」の系統で、私は欧字書体のイタリック体(スクリプト体)に相当する書体だと思っています。






2『字音假字用格』(本居宣長、錢屋利兵衞ほか、1776年)

『字音假字用格』は日本に伝来した漢字の字音に、どの和字をあてるのが正しいのかを古文献の用例にもとづいて決定したもので、京都の錢屋利兵衞らによって一七七六年(安永五)に刊行されました。
 この『字音假字用格』は漢字カタカナ交じり文で書かれていますが、表記に関する説明には、ひらがなが交じっています。すなわちカタカナとひらがなとが同じ文字列で、ひとつの字様としてそろっているのです。
 鎌倉時代には、漢字カタカナ交じり文とともに、すでに漢字ひらがな交じり文もあらわれているのだそうですが、印刷物における漢文体系統のカタカナが、ひらがなにかわるのは、本居宣長らの国学者によるものだとされています。





漢字ひらがな交じり文は、本居宣長の『古事記伝』はもちろん、平田篤胤の『神字日文伝』や伴信友の『仮字本末』など、本居宣長以降の国学における出版物に引き継がれていきました。国学だけではなく、大鳥圭介独自の活字をもちいて出版した『歩兵制律』のように、洋学の書物などにも、漢字ひらがな交じり表記を採用している書物があります。
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