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typeKIDS Report

活字書体を使う人のための勉強会

typeKIDS Meeting 2021, Part 2

2021年12月26日 | typeKIDS_Meeting
札幌ほしくずナイト
見果てぬ夢––星屑書体集成を語る
2021年10月22日、札幌クラークホテル



第2夜

みなさん、こんばんは。
きょうは、「さっぽろセレクト」というチケットを購入して、さっぽろ羊ヶ丘展望台、大倉山展望台リフト、札幌もいわ山ロープウェイの3箇所を回ってきました。
地下鉄南北線・東豊線、北海道中央バスを乗り継いで、さっぽろ羊ヶ丘展望台へ。パスゲートから「さっぽろセレクト」を使って入場しました。ここは四季が感じられる展望台です。今は紅葉の季節。広大な牧草地の向こうに札幌ドームが見えます。クラーク博士と同じポーズで記念撮影している若者がいました。
帰りのバスを待っていると、パスゲートの係の人に声をかけられました。大倉山展望台リフトは、ジャンプ競技の公開練習があるのでリフトでは利用できないとのことです。札幌オリンピックミュージアムに変更することにして、地下鉄東豊線円山公園駅から、JR北海道バス「くらまる号」で大倉山ジャンプ競技場に向かいました。ジャンプ台から一直線に伸びる大通公園をこの目で見たかったのですが、練習とはいえ多くのジャンパー達が滑り降りてくるのを間近で見ることができて、これはこれでよかったと思います。
円山公園から今度はJR北海道バスロープウェイ線で、もいわ山ロープウェイ山麓駅へ。ロープウェイとミニケーブルカーを乗り継いで、山頂展望台に到着しました。まだ薄暮だったので、多くの人が大きなカメラで三脚を立てて待っていました。待つこと40分、5時を回った頃から次第に暗り、日本新三大夜景のひとつを堪能できました。
きょうも昨日と同じくレストラン・クラーク亭で、ビーフカレー(スープ・サラダ付き)をいただいてきました。
ということで、今夜も札幌クラークホテルの502号室の窓から北海道大学を臨みながら、[札幌ほしくずナイト第2夜]ということにしたいと思います。


Chapter 1 きたりす白澤明朝、きたりす白澤呉竹、きたりす白澤安竹

きょう訪れた札幌市円山動物園の「こども動物園」には、エゾリス、エゾユキウサギ、エゾモモンガといった北海道の小動物を植物とともに展示した「ドサンコの森」があります。『生態写真集 キタリス』(竹田津実著、新潮社、2019年)という本があるのですがが、エゾリスはキタリスの亜種です。
当初は、北海道に生息している「えぞりす」(蝦夷栗鼠)を名前にしようと考えましたが、どうも語呂が良くありません。蝦夷栗鼠が北栗鼠の亜種であることから「きたりす」(北栗鼠)に落ち着きました。
私は、ずっと和字アンチック体に注目していました。アンチック体といえば、辞書の見出しや漫画のふきだしに使われる程度でしたが、広い範囲で使われる可能性を感じていました。私にとって、これらの和字アンチック体の原点にあるのが「欣喜アンチック」でした。それから20年経って、「欣喜アンチック」のセルフカバーで、和字書体「きたりすアンチック」として制作してみようと考えました。
これを起点として、「きたりす」というグランドファミリーを構築し、「きたりすロマンチック」、「きたりすゴチック」を制作することにした。
漢字書体では、コンテンポラリーな書体として、「白澤明朝」、「白澤呉竹」、「白澤安竹」を試作しています。白澤とは古代中国において、鳳凰、麒麟と同じように、有徳の王の時代に現れるという想像上の神獣です。
『デザインのひきだし26』(グラフィック社、2015年10月25日発行)というムックの中の「もじ部 フォントの目利きになる!15 typeKIDS(今田欣一さんと仲間たち)編」という記事の中で、「白澤中明朝」「白澤太ゴシック」「白澤太アンチック」が取り上げられています。
勉強会の体験学習のために「白澤中明朝」「白澤太ゴシック」「白澤太アンチック」の書体見本を作成しました。漢字書体としてはあまり馴染みのないアンチック体ですが、明朝体、ゴシック体と並ぶ主要書体として漢字書体のアンチック体を確立しておこうと思っていたのです。のちに書体名を「白澤明朝」「白澤呉竹」「白澤安竹」に変更しました。漢字書体は漢字表記にしたかったからです。
和字書体「きたりす」、漢字書体「白澤」と混植する欧字書体として、「フレイヘイド」を制作する計画です。具体的には、フレイヘイド・セリフ(Vrijheid Serif)、フレイヘイド・サン(Vrijheid Sans)、フレイヘイド・スラブ(Vrijheid Slab)として制作します。従属欧文ということばは使いたくないので、たとえ日本語フォントの中の欧字書体であっても、「フレイヘイド(Vrijheid)」のように固有の書体名をつけることにしています。
出島版『トラクタート(TRAKTAAT)』(ドンケル・キュルティウス編、1857年)に用いられた活字書体を参考にしました。書体名の「Vrijheid(フレイヘイド)」は、箕作阮甫を主人公にした小説『フレイヘイドの風が吹く』(市原真理子著、右文書院、2010年)から取りました。フレイヘイドとは自由を意味するオランダ語で、幕末当時の言い方でオランダ語の発音とは異なるそうだが、書体名としては日本での慣例に従い「フレイヘイド」とします。

KOきたりす白澤明朝M







KOきたりす白澤呉竹B







KOきたりす白澤安竹BK








Chapter 2 ときわぎ白澤明朝、ときわぎ白澤呉竹、ときわぎ白澤安竹

「ときわぎロマンチック」「ときわぎゴチック」「ときわぎアンチック」は、近代明朝体と組み合わせる和字書体、ゴシック体と組み合わせる和字書体、アンチック体としての和字書体ということで、一九五〇年代に印刷された金属活字にみられる力強くしなやかな雰囲気を醸し出すことを目標にして制作しました。
その基本となる「ときわぎロマンチック」の参考にしたのは、『右門捕物帖全集 第四巻』(佐々木味津三著、鱒書房、1956年)の本文に使用されている、力のある和字書体です。復刻ではなく、これを参考にしながら新しく画き起こしました。「ときわぎロマンチックW3」は本文用和字書体で、漢字書体は「白澤明朝」、欧字書体は「Vrijheid Serif」と組み合わせます。
「ときわぎロマンチック」をもとにして、「ときわぎゴチックW6」と、ときわぎアンチックW9」を制作しました。「ときわぎゴチックW6」は小見出し用和字書体です。漢字書体は「白澤呉竹」、欧字書体は「Vrijheid Sans」と組み合わせます。「ときわぎアンチックW9」も小見出し用和字書体です。漢字書体は「白澤安竹」、欧字書体は「Vrijheid Slab」と組み合わせます。

KOときわぎ白澤明朝M





KOときわぎ白澤呉竹B





KOときわぎ白澤安竹BK







Chapter 3 みそら白澤明朝、みそら白澤呉竹、みそら白澤安竹

1970年代から1980年代にかけて、しばしば試みられていたのが現代的な明朝体、ゴシック体などに組み合わせられるように同一の筆づかい・まとめ方で設計した書体です。これは『レタリング 上手な字を書く最短コース』(谷欣伍著、アトリエ出版社、1982年)の本文に使われていた試作書体にもみられます。それをやってみようと思いました。
「みそらロマンチック」は、「欧字書体のローマン体、漢字書体の現代明朝体と組みあわせる和字書体として、2000年に制作した「セイム」をリニューアルしました。制作した当初、漢字書体は平成明朝を念頭に考えていました。つぎに、欧字書体のサンセリフ体、漢字書体の現代ゴシック体と組みあわせる和字書体として2004年に制作した「テンガ」をリニューアルして「みそらゴチック」を制作しました。欧字書体のスラブセリフ体、漢字書体の現代アンチック体と組みあわせる和字書体として、2010年に制作した「ウダイ」をリニューアルして「みそらアンチック」を制作しました。
平成明朝、平成ゴシックはありましたが、平成アンチックは制作されていません。そこで漢字書体を「白澤」書体とすることにしました。バージョンアップする際に、グランド・ファミリー化して全体的な名称を「みそら(美空)」としました。

KOみそら白澤明朝M





KOみそら白澤呉竹B





KOみそら白澤安竹BK






(2023年5月17日更新:画像追加)


typeKIDS Meeting 2021, Part 1

2021年12月26日 | typeKIDS_Meeting
札幌ほしくずナイト
見果てぬ夢––星屑書体集成を語る
2021年10月21日、札幌クラークホテル



新型コロナウイルス感染症の蔓延により、typeKIDS Meetingは開催できなかった。ちょっと寂しいので、架空のセミナーを妄想してみた。
唯一、宿泊した札幌市のホテルから発信するかたちで「札幌ほしくずナイト」としてみた。内容は欣喜堂の「星屑書体集成」の解説である。

第1夜

みなさん、こんばんは。
今、私は札幌に来ています。札幌には2018年から4年計画で、5月に訪れようと企画していたのですが、残念ながら昨年は新型コロナウイルス感染症(COVID–19)が蔓延して、断念せざるを得ませんでした。ことしも5月23日からの予定でしたが、再び感染が拡大し、3度目の緊急事態宣言が発出され、北海道も蔓延防止重点措置が出されるという状況になり、夏になると感染が爆発的に拡大しまして、結局秋になってしまいました。
きょうは、昨年予定していた「札幌芸術の森」に行ってきました。スタートは札幌市立大学芸術の森キャンパス(デザイン学部)から。札幌芸術の森美術館、札幌芸術の森工芸館をめぐった後、芸術の森に移築されている作家・有島武郎旧邸を見学しました。札幌芸術の森野外美術館は思っていたより起伏があり、思っていたより迷路でしたね。明後日には、モエレ沼公園、サッポロファクトリー、札幌ドームを回って、昨年の計画を回収したいと思っています。
先ほど、レストラン・クラーク亭でハンバーグ(Mサイズ、ライス・スープ・サラダ付き)をいただいてきました。学生が多いためか、かなりのボリュームでした。
ということで、札幌クラークホテルの502号室の窓から北海道大学を臨みながら、[札幌ほしくずナイト第一夜]という時間にしたいと思います。


Chapter 1 ゆきぐみ重陽、つきぐみ月光、はなぐみ花信

最初のセクションとして、ゆきぐみ重陽、つきぐみ月光、はなぐみ花信を取り上げます。これは既存の書体で言えば、楷書体、隷書体、行書体に相当します。これらは一般的には筆書系と言われていますが、木版印刷の本文をベースにしようと思いました。その方が活字に近いものだと考えたのです。
「ゆきぐみ」と「はなぐみ」は明治時代の木版教科書、『中等國文 二の巻上』(1896年、東京・吉川半七藏版)を参考にして制作した書体です。この教科書、本文は楷書体だが、手紙文は行書体で、どちらも彫刻の味わいが残るいい書体です。毛筆で書かれた文字が、彫刻刀でなぞられることによって力強さが加味されています。「つきぐみ」は、昭和初期の地図『東京』(1934年、大日本帝国陸地測量部)の等線の手書き文字を参考にして、隷書体と組み合わせることを想定して制作しました。和字書体として発売して、既成の漢字書体の楷書体・行書体・隷書体をむすぶ書体の一族ができるようにしました。
明朝体、ゴシック体のファミリーまでなら多くのメーカーで制作されていますが、楷書体、行書体、隷書体を揃えているメーカーは多くありません。しかも明朝体、ゴシック体ほどには、楷書体、行書体、隷書体に力を入れていないように思えます。使用状況を考えるとやむを得ないことでしょう。それでもやはり、漢字書体、欧字書体を加えた日本語書体として、構想だけでも示したいと思いました。それが「ゆきぐみ重陽」「つきぐみ月光」「はなぐみ花信」です。

KOゆきぐみ重陽M







KOつきぐみ月光M







KOはなぐみ花信M








Chapter 2 ゆきぐみラージ上巳、つきぐみラージ端午、ときわぎ七夕

もうひとつの大きな構想がふくらんできました。それは「ゆきぐみ」を明朝体に、「つきぐみ」をゴシック体に組み合わせる和字書体を、同じコンセプトで制作するということでした。大きさを工夫して、漢字書体の楷書体・行書体・隷書体にくわえて、明朝体・ゴシック体をふくみ、それぞれがファミリーを形成するという今までにない壮大な構想ができあがったのです。それぞれを「ゆきぐみラージ」、「つきぐみラージ」としました。
明朝体・ゴシック体は既成の書体では、すでに優れた書体が多く販売されていることから、まずは和字書体を優先して制作することにしました。漢字書体は混植(合成フォント)で使えばいいと思ったのですが、面倒だ、使い勝手が悪いという声がありました。プランとして、「ゆきぐみラージ上巳」、「つきぐみラージ端午」を試作しています。
さらに「ときわぎクラシック」を加えました。『右門捕物帖全集 第四巻』(佐々木味津三著、鱒書房、1956年)の本文に使用されている、力のある和字書体を参考に「ときわぎロマンチック」として制作しました。これをもとに宋朝体との混植を目的として制作したのが「ときわぎクラシック」で、これに漢字書体「七夕」を組み合わせたのが「ときわぎ七夕」です。
漢字書体名の「上巳」「端午」「七夕」は五節句から取っています。

KOゆきぐみラージ上巳M







KOつきぐみラージ端午B







KOときわぎ七夕M








Chapter 3 まき林佶、ロンド巴里、タクト造像

さらに、欧字書体に対応する和字書体を制作しようという構想がありました。漢字書体との混植を考えながら、育ててきた書体群である。書写の書体から、ヒューマニスト系統に対応する書体、テクストゥーラ系統に対応する書体、そしてレタリングの書体から、サンセリフ・ラウンド系統に対応する書体を制作するということです。
欧字書体のヒューマニスト体に対応する和字書体として制作したのが「まき」という書体です。幕末の三筆のひとりである巻菱湖の書いたひらがなを版下とした海援隊の初歩的英語教科書 『和英通韻以呂波便覧』(巻菱湖書、土佐・海援隊、1868年)をベースにしました。「まき」と漢字書体「林佶」、欧字書体のヒューマニスト体「K.E.Cassiopeia Medium」とともに組み合わせたのが「まき林佶」です。
欧字書体のテクストゥーラ系統に対応する和字書体を制作したいと考えていました。テクストゥーラ体と北魏楷書体とは時代も書字の道具も異なっているが、なんとなく同じ匂いがしました。これらとの組み合わせを想定した和字書体として制作したのが「タクト」です。「まき」と漢字書体「造像」、欧字書体のテクストゥール体「K.E.Ophiuchus-Medium」とともに組み合わせたのが「タクト造像」です。
欧字書体のラウンド・サンセリフ体に対応する和字書体も加えることにしました。漢字書体の丸ゴシック体との組み合わせを想定して和字書体「ロンド」を制作しました。わが国では丸ゴシック体といっているもので、どちらかというと日本では看板などで好まれている書体です。「ロンド」は和字書体「アンジェーヌ」、「ルリユール」、「テアトル」、「ロンド」と漢字書体「巴里」とともに、欧字書体のラウンド・サンセリフ体「K.E.Orion-DemiBold」とともに組み合わせたのが「ロンド巴里」です。

KOまき林佶M







KOタクト造像EB







KOロンド巴里(パリ)TK








(2023年5月17日更新:画像追加)