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typeKIDS Report

活字書体を使う人のための勉強会

白澤書体:いまさら写植、なおさら写植、そして……

2015年03月24日 | typeKIDS_Workshop
樹脂活字に変わる別の方法を考えている時に、ある人から写植文字盤というアイデアが出てきました。本格的な文字盤制作は無理にしても、簡易文字盤「四葉」をもちいて、テストぐらいはできるんじゃないかということでした。実現できるかどうかはわかりませんが、考えてみてもいいのではないかと思いました。


(moji moji party No.6「写植体験展」より)

「貘1973」という書体は、もともと金属活字化を想定して今田が描いたレタリングがベースになっています。だから活字の原図サイズにあわせて2inch(5.08cm)角の原字用紙を作成してデザインすることにしました。金属活字は技術的あるいはコスト的に実現が難しく、3Dプリンターによる樹脂活字に挑戦し、さらに別の方法を模索しているところです。「貘1973」プロジェクトは継続しています。


(2inch サイズの原字用紙)

「貘1973」は金属活字を想定して制作したものなので、写植書体としては別の書体を考えることにして、写研で用いられていたものと同じ48mm角の原字用紙でデザインすることにしました。


(48mmサイズの原字用紙)

石井茂吉(1887−1963)は、写真植字機を普及させるために必要な書体として、1930年から1935年までに、本文用の明朝体(のちの石井中明朝体+オールドスタイル小がな)、太ゴシック体(のちの石井太ゴシック体+小がな)、それにアンチック体(和字書体のみ)を制作しています。
石井中明朝体・オールドスタイル小がな(1933年)(※文字盤の見本は大がな)
石井太ゴシック体・小がな(1932年)(※文字盤の見本は大がな)
アンチック体(1935年)(※文字盤の見本は中見出し用)





このうち「アンチック体」には漢字書体がありません。そこで「アンチック体」の漢字書体をつくってみようと思いましたが、石井中明朝体、石井太ゴシック体に合わせた(擬似)「石井太アンチック体」の漢字書体をつくることには、いくらテストとはいえ抵抗がありました。
 また書体設計の学習用プログラムとして、明朝体、ゴシック体もオリジナルの書体のほうが望ましいと思ったのです。漢字書体に合わせた和字書体をつくることはよくあったので、その逆に、和字書体に対して漢字書体を変えてもいいのではないかということです。
 その新しい漢字書体を「白澤」と名付けました。白澤中明朝体白澤太ゴシック体、そして白澤太アンチック体です。その書体見本の下書きから始めたところです。



この漢字書体と組み合わせる欧字書体も写研の写真植字機で印字できなければならないので、既成の文字盤から選択することにします。
E01-24(センチュリー・オールド・スタイル)
E08-44(ニュース・ゴシック・ボールド)
E41-44(スタイミー・ボールド)






新しい漢字書体、白澤中明朝体、白澤太ゴシック体、白澤太アンチック体は、前述の和字書体と欧字書体を考慮に入れながら、築地活版五号活字と石井書体を参考にして制作をすすめていきたいと思います。
(白澤書体は、typeKIDS の学習用としてテスト的に制作しているものです。商品化することは考えておりません)




貘1973−B:漢字書体制作奮闘記

2015年03月17日 | typeKIDS_Workshop
1973年に今田が描いたレタリングを、40年の時を経て「貘1973」の初号活字として製作してみようというプロジェクト。和字書体とともに漢字書体の制作もすすめられています。活字の原図サイズにあわせて2inch(5.08cm)角に、紙に墨で描くという方法で活字の原図を制作していくことになりました。

Step1 試作4字

ほとんどのメンバーが活字書体制作の経験がありません。しかもすべて手作業でやろうとしているのですが、なかなかイメージがつかめないようです。そこで、今田がまず「貘ボールド」で「謹賀新年」の4文字を制作し、3Dプリンターによる樹脂活字にしてみようということになりました。サンプル4文字だけでも形になると、制作にもますます力が入ると思ったからです。



 使用する出力機は、産業用ではなく、低価格なパーソナル3Dプリンター。多くの字種を作りたいので高額になると困るのです。できるだけリーズナブルにしたいところでした。素材は、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを 重合させてつくられる樹脂)、色は鉛活字に近いシルバーを選びました。
 途中で、裏文字でなければいけないのに表文字になっているというトラブルはありましたが、樹脂活字4文字が完成しました。熱がさめるのを待つ時間がもどかしいものです。やっと手に取ってみると、残念なことに……。画質はガタガタ、表面は凹凸があるのです。ノズルのピッチと線幅の干渉で、面が部分的に抜けてしまっています。今後も試行錯誤を繰り返すことになるでしょうが、なんとかオリジナルの樹脂活字を製作したいと思ったのでした。



 まず、サンプル4文字(季節外れの「謹賀新年」)の樹脂活字だけで組版し、東京アナログラボ所有の真新しい Adana21Jにセットして印刷してみました。
 予想通り表面が平滑でないため、きれいに印刷できません。表面をサンド・ペーパーで削り、なめらかにしました。つぎにテープで微妙に高さを調整していくことになりました。何度か試行錯誤を繰り返したがうまくいきません。印刷のときの微妙な力加減で、なんとか濃度が均一にできるようになりました。








Step2 書体見本12字

このサンプル4文字を参考に、書体見本12字(毛永辺紙囲室調東激機闘驚)を制作することにしました。「typeKIDS」のメンバーは書体制作に関してはまったくの初心者ですが、ひとりだけ活字の原図を描く経験のあるベテランがいるので、書体見本12字の制作を委ねました。
 サンプルをもとに、あらためて原字用紙に画いてもらうことになりました。簡単な仕様(字面サイズの基準、ウエイトの基準)を決めておきました。工程は和字書体と同様で、下書き、メーキャップ、墨入れ、仕上げ、センター入れ、となります。







 これも和字書体と同じように、制作した原字をスキャンして、Adobe IllustratorでトレースしてアウトラインデータにしてSVG出力し、123D Designにインポートして3次元CADデータに加工し、Export STL でSTL出力しました。これを東京メイカーに送り、出力しておいてもらいました。



 結果は残念なものでした。画数の多い4文字(激機闘驚)には潰れているところがあったので、12文字全数の印刷テストはあきらめざるを得ませんでした。
 漢字かな交じり文のコピーも印刷する予定でした。

激闘に驚き
いつしか永機は
東の囲まれた室て
毛辺紙を調へる

※永機(1823-1904)は幕末・明治の俳人、毛辺紙は竹を材料とした紙の種類のこと。

書体見本の12字をすべて使い切り、ひらがなを重複させないでできるだけ多く使うという条件でコピーを作っていましたが、これも断念しました。


画数の多い文字をのぞいた残りの8文字だけを使ったコピーに変えて、なんとかテスト組みまではできました。



Step3 千字文のうち冒頭108字

当初は自分の名前が組めるようにしたいと考えていました。名前も含めて12字を選んで下書きをしてみることになったのですが「田」とか「子」とかは重複してしまいます。ほかに、自分の好きな熟語や漢詩が組めるように重複することのないように調整しながら、これが出発点としてすこしずつ増殖させていこうと思っていましたが、いっそのこと、千字文の冒頭から12文字ずつ画いていこうということになりました。本来なら書体見本にあわせてということになるのですが、スタートの時点ではまだできていませんでした。そこで「貘L」漢字書体の下書きを参考にしてもらってすすめることにしました。



 下書きが終わったと思ったところで、通信教育のようにトレーシング・ペーパーを重ねて赤鉛筆でチェックを入れています。月1度、2時間程度の作業ではなかなか進みませんが、それを参考にしながら下書き上での修整をしていきます。普段よく見ているはずの漢字書体ですが、実際に画いてみると思うようにはできないようです。
 限られた時間なかでは簡単にできるというものではないので、自宅でも作業するようにして順調に進んでいます。







 下書きが終わると、メーキャップ、墨入れになります。その前に、烏口で直線を、溝引で曲線を引く練習をしました。ほとんどのメンバーが初体験なので、まだ慣れていませんが、使いこなせるようになると便利な技術です。溝引定規は手作り。ガラス棒と版下筆(名村製の白桂小を使用)を使っています。



 パーソナル3Dプリンターの限界を感じたので、今後は新たな活字製作の方法を模索して行くことになるかもしれません。


[追記]





typeKIDS Exhibition 2015 内覧会

2015年03月08日 | typeKIDS_Exhibition
typeKIDS Exhibition 2015 内覧会
日時:2015年3月7日(土)19:00-19:30
場所:東京・表参道 表参道画廊+MUSÉE F

2014年12月に表参道画廊での展示の話をいただき、TypeKIDS としても日頃の活動を発表するまたとない機会だと考えて快諾しました。これまで少しずつメンバーに話をしていた漢字書体の変遷を総合的に整理するとともに、多くの人が「漢字書体」に興味を持つきっかけにしたいと思ったのでした。

■「漢字書体の変遷とその復刻」展

 課題は「原資料の画像と復刻書体を、A3サイズのポスターとしてレイアウトすること」です。現役の学生や若手のデザイナーを中心として、各々の持ち味があらわれた作品に仕上がりました。





漢字書体の変遷を時代別に12分類し、それぞれに説明文を加えた構成にしました。



隷書体・行書体・楷書体・宋朝体・元朝体・明朝体・清朝体・過渡期明朝体・近代明朝体・銘石体と経典体・呉竹体(ゴシック体)・安智体(アンチック体)

全体として年表のようなイメージになるように構成しています。



展示し終わるとポスターのデザイン担当者を交えて、駆け足でしたが typeKIDS メンバーと関係者で内覧会をひらきました。ここではデザインの評価ではなく、漢字書体の簡単な説明と復刻書体の設計意図の紹介が中心でした。







「貘書体で初号活字をつくろう」発表会
typeKIDS で1年半にわたって取り組んできた「貘1973-B」ひらがな書体の3Dプリンター活字とその印刷物について、その制作の過程と苦労話を担当の山田知子さんより報告がありました。





【特別展示】
展示した24書体のうち「金陵」(細・粗)、「龍爪」「蛍雪」は、北京北大方正電子有限公司から簡体字版として発売されています。同社の協力を得て『書体見本帳』を展示できることになりました。同社の豊富な漢字書体について紹介しました。





●typeKIDS Exhibition Spring 2015
「漢字書体の変遷とその復刻」展

会期: 2015年3月9日-14日(土) 12時-19時(最終日は17時)
場所: 東京・表参道 表参道画廊+MUSÉE F



※たくさんの方に来場頂きまして、ありがとうございました。



貘1973-B:和字書体制作奮闘記

2015年03月05日 | typeKIDS_Workshop
「typeKIDS」のメンバーは、書体制作に関してはまったくの初心者です。ひとつの体験として、昔ながらの方法、つまり紙に墨で描くという活字書体制作に取り組むということになりました。作品として制作するのではなく、もちろん商品化するということではありません。体験を通して活字書体を理解しようというものです。
 活字書体をつくるといっても、どこから手をつけていいかわからないということで、「貘1973」という、今田が学生時代の1973年にスケッチしていた書体を体験の素材として提供することにしました。当時は金属活字の原字として考えていたのですが、日の目をみないまま埋もれていたものです。
 和字書体はひとりで担当しないと全体的なイメージが統一できません。それを承知の上で、「貘1973」は、ひらがなを4名で分担することにしました。あえてグループ制作に挑戦してみることになったのです。
 原字用紙(兼下書き用紙)のデータは、メンバーのひとりがAdobe Illustratorで作成することになりました。原字用紙(兼下書き用紙)は2inchボディ・サイズで、1/18inch(約1.41mm)方眼で薄いブルーのガイドラインを入れることにし、A4サイズに12文字入るようにレイアウトされています。
 すべてアナログで制作するということになったので、原字制作の道具を揃える必要が出てきました。とりあえず、昔使っていた道具について説明し、専門的にやるわけではないので、所持していないものは何かで代用できないかを検討しました。
 制作の工程として、「プリントして下書き用紙とし、鉛筆で下書きをする」「もう一枚を原字用紙として、下書きをアウトラインでトレースして墨入れをする」「できた原字を仕上げて、チェックを繰り返しながらメンバーみんなで完成させていく」ということになります。
 以下、2013年10月から2015年3月までの記録です。

第1プロセス 下書き





40年前に今田が描いた活字書体「貘1973」の下書きを、活字の原図サイズにあわせて2inch(5.08cm)角に拡大するということから始めることにしました。トレースすればいいだけなのですが、やってみるとなかなか難しいことでした。直線がきれいな直線にならず、円弧がきれいな円弧にならない。いざ手書きとなると、なかなか思い通りにはいかなくて歯がゆいようでした。
 最初から思い通りになるわけではなく、修整をくりかえしながら、カタチを整えていくわけです。経験者はそれがわかっているからもう少し大胆に描くことができるのですが、ほとんどのメンバーが活字書体制作の経験がなかったので、少し苦労しました。
 また、自分の好きなスタイルを描くというのであればもっと簡単にできるのかもしれません。なにかに合わせるというのは、見本があるからやりやすそうに見えますが、実は意外と難しいことだと思われます。なにしろ書体設計の経験がないメンバーで、しかも同じ書体を分担しているのだから、どうしても個人差が出てしまうのは仕方ないところでしょう。



第2プロセス メーキャップ



下書きが終わり、メーキャップへ。下書き用紙の上に原字用紙を重ねて、アウトラインをトレースします。一度墨入れすると大幅な修整ができなくなるので、この工程で太さなどを調節しながら、しっかりとアウトラインをかためます。

第3プロセス 墨入れ



はやく進んでいる人から墨入れに入ります。溝引で曲線を引く練習をしたので、いよいよ実践ということになりました。フリーハンドでも可能ですが、溝引を使いこなせるようになると便利な技術なので、できるだけ挑戦するようにしています。
 初めての体験で、烏口や溝引きになかなか慣れず、思い通りにはできてはいません。練習をおろそかにしてしまったかもしれません。やはり用具の使い方をみっちりやるべきだったかなと反省しています。今回は、原字制作の難しさを認識したことが成果です。

第4プロセス 仕上げ



墨入れが終わると仕上げ作業に入ります。はじめての墨入れということもあって、メーキャップのとおりとはいかず、かなりガタガタです。ポスターカラーのホワイトと墨、2本の筆を使っての仕上げ作業に苦労しています。溝引きが慣れないので、ついついフリーハンドになることが多いようです。



第5プロセス センター入れ
文字の寄り引きにかかわるセンター入れの作業は、重要な工程です。しかしながら、専用のゲージの作成が間に合わなかったこともあって、今回は止むを得ず省略しました。


第6プロセス アウトライン・データ化(母型パターン製作に相当)



手作業にこだわっている「貘1973」の制作ですが、この工程だけはパソコンの力を使わざるを得ません。とはいえ、どこかに依頼するのではなく、原字を制作した文字を担当者が自ら3Dデータ化するので、手作りに近い感覚ではあります。
 制作した原字をスキャンして、Adobe Illustratorでトレースしてアウトラインデータにします。金属活字に例えれば、亜鉛凹版を作成して母型パターンを製造する工程に相当するのだと思いながら作業をすすめることにします。

第7プロセス 3次元CADデータ化(活字母型の彫刻に相当)



Adobe Illustratorで作成したアウトラインデータをSVG出力し、123D Designにインポートして3次元CADデータに加工し、Export STL でSTL出力します。こじつければ、ベントン型活字母型彫刻機により、活字パターンからの活字母型の彫刻に相当する作業にあたります。

第8プロセス 樹脂活字製作(活字の鋳造に相当)



自分の手で設計、データ化した3次元CADデータを使っての活字製作(活字鋳造ではなく)です。用意した3Dデータ(STLデータ)を東京メイカーに送り、出力しておいてもらいました。素材はABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを重合させてつくられる樹脂)、色はホワイトを選択。

第9プロセス 活字組版



「いろはうた」を組んでみることにしました。印刷機で一度には刷れないので、2回にわけることになりました。

第10プロセス 印刷





東京アナログラボ所有のAdana21Jにセットして印刷してみましたが、表面が平滑でないためきれいに印刷できませんでした。活字は、微妙な高さの違い、傾きがあると、ちゃんと印刷できないのです。活字のボディの大切さ、活字組版の難しさをあらためて思い知ったのでした。今回はそれが成果でした。
 今後は、制作が遅れた字種があって間に合わなかったカタカナ48字を含めて、樹脂活字にかわる別の方法を考えたいと思います。


どうしてもはっきりと印刷したかったので、1行ずつ版をわけて印刷することにしました。何度も調整して、すべての行までなんとか印刷し終えました。







[追記]