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typeKIDS Report

活字書体を使う人のための勉強会

タイプフェイスデザインのための臨書のすすめ

2017年07月04日 | typeKIDS_Workshop
タイプフェイスデザインは書字が基本なので、タイプフェイスデザイナーが習字をすることは無駄ではありません。もちろん書家をめざすわけではないので、筆やペンの動きを知ることだけでもよいでしょう。
せっかく学習するのであれば、最初の一歩として古典の名品の臨書から入るのがいいと思います。そこで、タイプフェイスデザイナーが学びやすいものを、漢字、和字、欧字からひとつずつ選んでみました。

漢字 『褚遂良千字文』
褚遂良(596–658)は唐代の政治家で、書家としても知られています。欧陽詢、虞世南とともに初唐の三大家と呼ばれています。漢字書道では、まず褚遂良の代表作である『雁塔聖教序』を学ぶことが多いのですが、タイプフェイスデザインの学習用として『褚遂良千字文』を取り上げることにしました。筆の運びがわかりやすいものだと思います。


[図版引用]『中国古代法書選褚遂良千字文』(魏文源編、江蘇美術出版社、2014年)より

欧字 『時祷書』
漢字と同様に欧字においてもタイプフェイスデザインの基本は書字にあります。欧字ではカリグラフィーが漢字の書道に相当します。カリグラフィーでは、ブラックレター、イタリック、スクリプトを学びますが、タイプフェイスデザインの学習のためにはヒューマニスト・ミナスキュール+ヒューマニスト・キャピタルがいいと思います。
この『時祷書』は1500年ごろ、ボローニャのジョヴァンニ・ベンティヴォーリオのために制作されたものだそうです。


[図版引用]『もっと知りたいカリグラフィー―絵と写真で見る歴史と技法』(ディヴィッド・ハリス著、小田原真喜子監修、弓狩直子翻訳、雄鶏社、1997年)より

和字 『小学書方手本』
かな書道では、最初に『高野切第三種』など古今集写本を学ぶことが多いのですが、タイプフェイスデザインの学習のためには、「楷書に調和するひらがな、カタカナ」の方が望ましいと思います。
そこで国定教科書『小学書方手本』を取り上げました。子供たちが学びやすい平易な書風で書かれており、現在においても手本として最適だと思います。この手本を書いた鈴木翠軒(1889–1976)は大正・昭和時代の書家です。


[図版引用]『鈴木翠軒 復刻版甲種尋常科用小学書方手本』(安藤隆弘解説、芸術新聞社、1987年)より

白澤太アンチック体:習作の記録

2017年03月26日 | typeKIDS_Workshop
■書体見本

●参考にした資料
『富多無可思』(青山進行堂活版製造所、1909年)所収のアンチック形活字(グレーで覆った文字をのぞく)を参考にしました。



●書体見本
白澤太アンチック体の書体見本。この書体見本は、仮想ボディ48mmサイズで、基準となる12文字が並べられています。部首、画数などの参考となる代表的な字種です。これを観察して課題の字種を描いていきます。




■習作の記録

●下書き
白澤太アンチック体の書体見本を見ながら下書きをしていきます。練習用として制作している字種は、千字文の冒頭12文字「天地玄黄宇宙洪荒日月盈昃」です。




●原字制作
メーキャップをしているところです。これから墨入れを進めていきます。




(濱亨さんによる習作)



●簡易文字盤製作
原字(ボディサイズ48mm)からダイレクトに文字盤用(ボディサイズ4.25mm、5mmピッチ)に縮小してネガフィルムに起こしました。簡易文字盤「四葉」の裏からネガフィルムを貼り込みました。白澤書体文字盤の簡易文字盤「四葉」を使用した白澤書体の集合文字盤の完成です。



●テスト印字
この文字盤を写真植字機にセットして、テスト印字してみたかったのですが、そこまではできませんでした。
この漢字書体と組み合わせる和字書体、欧字書体も写研の写真植字機で印字できなければならないので、既成の文字盤から選択することにします。

和字書体: アンチック体(中見出し用)


欧字書体: E41-44(スタイミー・ボールド)




白澤太ゴシック体:習作の記録

2017年03月25日 | typeKIDS_Workshop
■書体見本

●参考にした資料
『活字と機械』(野村宗十郎編輯、東京築地活版製造所、1914年)所収の五号ゴチック活字見本を参考にしました。



●書体見本
白澤太ゴシック体の書体見本。この書体見本は、仮想ボディ48mmサイズで、基準となる12文字が並べられています。部首、画数などの参考となる代表的な字種です。これを観察して課題の字種を描いています。




■習作の記録

●下書き
白澤太ゴシック体の書体見本を見ながら下書きをしていきます。練習用として制作している字種は、白澤中明朝体千字文の冒頭12文字「天地玄黄宇宙洪荒日月盈昃」です。



●原字制作
白澤中明朝体にあわせて千字文冒頭12文字「天地玄黄宇宙洪荒日月盈昃」を制作しています。下書きが終わり、メーキャップ、墨入れに進みます。墨入れは初体験だそうです。




(吉田大成さんによる習作)



●簡易文字盤製作
原字(ボディサイズ48mm)からダイレクトに文字盤用(ボディサイズ4.25mm、5mmピッチ)に縮小してネガフィルムに起こしました。簡易文字盤「四葉」の裏からネガフィルムを貼り込みました。白澤書体文字盤の簡易文字盤「四葉」を使用した白澤書体の集合文字盤の完成です。



●テスト印字
この文字盤を写真植字機にセットして、テスト印字してみたかったのですが、そこまではできませんでした。
この漢字書体と組み合わせる和字書体、欧字書体も写研の写真植字機で印字できなければならないので、既成の文字盤から選択することにします。

和字書体: 石井太ゴシック体・大がな


欧字書体: E08-44(ニュース・ゴシック・ボールド)




白澤中明朝体:習作の記録

2017年03月24日 | typeKIDS_Workshop
■書体見本

●参考にした資料
『活字と機械』(野村宗十郎編輯、東京築地活版製造所、1914年)所収の五号明朝活字見本を参考にしました。



●書体見本
白澤中明朝体の書体見本。この書体見本は、仮想ボディ48mmサイズで、基準となる12文字が並べられています。部首、画数などの参考となる代表的な字種である。これを観察して課題の字種を描いていきます。




■ 習作の記録

●下書き
白澤中明朝体の書体見本を見ながら下書きをしていきます。
練習用として制作している字種は、五号明朝活字見本の冒頭12文字「天地玄黄宇宙洪荒日月盈昃」です。



●原字制作
築地活版五号明朝活字見本にあわせて千字文冒頭12文字「天地玄黄宇宙洪荒日月盈昃」を制作しています。下書き、メーキャップが終わり、いよいよ墨入れに入ってきました。




(吉田千恵さんによる習作)



●簡易文字盤製作
原字(ボディサイズ48mm)からダイレクトに文字盤用(ボディサイズ4.25mm、5mmピッチ)に縮小してネガフィルムに起こしました。簡易文字盤「四葉」の裏からネガフィルムを貼り込みました。白澤書体文字盤の簡易文字盤「四葉」を使用した白澤書体の集合文字盤の完成しました。







●テスト印字
この文字盤を写真植字機にセットしてテスト印字してみたかったのですが、そこまではできませんでした。
この漢字書体と組み合わせる和字書体、欧字書体も写研の写真植字機で印字できなければならないので、既成の文字盤から選択することにします。

和字書体:石井中明朝体・オールドスタイル大がな



欧字書体:E01-24(センチュリー・オールド・スタイル)







Glyphs で吉備書体(1)

2016年07月17日 | typeKIDS_Workshop
「いぬまる吉備楷書」「さるまる吉備隷書」「きじまる吉備行書」は、ハンドライティング(書字)からタイプフェイス・デザインへ発展させた書体である。



当初は「欣喜楷書W3」、「欣喜行書W3」、「欣喜隷書W3」と言っていた。フェルトペンで書いたものをAdobe Streamline でアウトライン化して、Fontographer で修整、「漢字エディットキット」で日本語のデジタルタイプを作成した。



漢字書体1006字のレベルで3書体の試作品が完成したのは2001年のことだった。試用版の無料頒布期間が終了したのちも試行錯誤を繰り返していたが、いろいろ迷いながら変更していったことをいったん破棄して、初心に返ってやり直すことにした。

再チャレンジにあたっては、勉強ということもあって Glyphs を使ってみた。それからずいぶん時間が経過した。どうしてもやらなければという気持ちがなくて、しかも漢字書体で Glyphs を使い慣れていないということもあって、ずっとそのままになっている。







TypeKIDSの今後の展開のためにも、 Glyphs 版の「いぬまる吉備楷書」「さるまる吉備隷書」「きじまる吉備行書」を、なんとかしたいと思っている。