星空☆Casting

釣れるものはみんな釣りたい。
夜の海で一人
ひたすら同じ事を繰り返す快感。
さあ、ご一緒に。

風の岬

2009-02-25 03:47:58 | メバル
先日。

BARBLESSを訪れカウンターでお話していた時。

バーブレスくんが
「ねえつーさん。ここってやった事ある?」
と、ポイントの空撮写真の本を出してきた。

それはある岬に作られた港の写真だった。

「ああ、ここ?ここはアオリの時期によく行くよ。荒れると一面がサラシになってシーバスもよく釣れる。」

そのポイントは基本的には窪んだ地形が続くその辺り一帯の頂点にあたる岬。
小規模な港の付け根にあたる場所。

テトラが入り、列島のような細長い沖礒が点在し、北からの波の時には南側が大規模なサラシ場となる。
水深がありシャローの藻場もありアオリイカの一級ポイントである。しかしメバルでは入った事はなかった。

「そうだね、ここ。メバルはやった事ないけどきっと釣れるよな。釣れない理由がないよな。」

そうだ。ほんとだ。なんでやってないんだろう。アオリやシーバスに良い場所ならメバルの可能性も高い。

次はここに行ってみるか。新規のポイントを探す僕の頭にその場所がインプットされた。



しかししばらく海は荒れ、仕事のタイミングも悪く数日が経った。
おまけに最近の持病である頭痛に悩まされる。
明日から休み!の仕事最終日。その頭痛は頂点を迎えた。
頭全体がうずき顔まで痛くなってくる。あまりの痛みに目と眉間が自然ときゅ~と収縮し元に戻らない。
ようやく収縮が元に戻った時には目にはじっとりと涙が溢れている。そんな痛みだ。何も考えられない。

仕事を休んでしまう。

なんでもいいからとすがるように風邪薬を飲み(ワインは飲んでませんw)ひたすら眠った。

翌日。十数時間眠り目が覚めると頭痛はなんとか治まっていた。
まだ少し頭の中に「頭痛の根」のようなものは感じるがほぼ通常に戻っている。

「行ってみようか」

2009/2/23/23:00。

僕はそのポイントに立った。久しぶりの釣りだ。

海は荒れていた。1.5~2mのうねりが北から押し寄せる。

沖礒にぶつかりそれを越えてくるうねりが南側に一面のサラシを作る。どう見てもメバルっぽくない。
少しテトラを歩き沖磯から離れサラシが治まる場所に立った。

約30m沖にはくっきりと、蛇行した一本の潮目が見える。

「狙うとすればあそこだな。あそこ以外ないな。」

ポイントの様子が分からず根がかりが恐い。「多い日夜用slim」は避けた。ロストしたくない。
ブルースコードC60を結びフルキャストした。

まず正面を打ち、次に左を打ち、右を打ち、正面と左の間を打ち、正面と右の間を打ちメバルを探す。
どこに投げても潮目にはかかるが反応はない。

「いないのか…」

満潮は1:00。タイミングは悪くないはず。

ワームに替えてみる。山から吹き下ろす横風が強く3gのジグヘッドにGULPを刺した。
潮目は岸に近づいてきている。蛇行したその一部が岸際のサラシに触れる場所があった。そこを打つ。

PEに風が孕み感度を鈍らせる。明確ではない、なにか微妙な違和感を感じた。半信半疑であわせを入れた。

ごごごごご!

おっし来た!メバルだ。大きくもないが小さくもない。良く走る。






アフターで激痩せ。オスか?25cm。

荒れた日はピンポイントである。それがそこなのか?同じ場所を打つ。

「…」!?

また違和感。すかさず合わせた。

ドン!。

乗る。走り回る。







アフター27cm。これはメスだ。


確信。ピンポイント発見。うひひ。そこなのだな。うひひひひ。たたみかける。


また違和感。コツンと来ない。今日のあたりはみんなこれだ。引ったくるように合わせる。

ドシン!。

!!!。重い。もごもごとうごめくような引き。これは走らない。でかい!?





なんという腹だ。スーパープリ。太り過ぎていて体長が読めない。27?いや28?
写真を撮っていると肛門からぽたぽたと何かが落ちた。ん?うわっ!!




お母さん!!お母さん!!出産中ですよ!!あかんてそんな時にごはん食べたら!

お腹やひれに付着した稚魚。見える?さすがメバルの子だ。目しか見えない。体はどれだ。
まず目から出来上がるのである。生物にとって目とはそれほどまでに重要なのか。

28となればやすやメバルダービーの入れ換えサイズだがこんな状態で測ってなんていられない。
すかさずリリース。良い子を産んでね~。



次っ!たたみかける。

違和感。合わせる。

ゴン!





24プリ。プリとアフターが入り交じる。おそらく水中は出産ラッシュだ。


たたみかける。

ひたすら違和感のみ。明確なあたりがでない。風のせいか?そんな食い方なのか?

合わせる。

ドン!





24アフター、あるいはオス。


たたみかける。

また違和感。ビシッ!






24アフター。


ここで風が強風となる。この辺りは常に山からの風が吹く。ここは風の岬だ。

風に煽られるように潮目が岸から離れた。あたりが遠のく。
この群れはサラシについていたのか、潮目についていたのか疑問に思っていたのだが分かった。潮目だ。

急速に離れ行く潮目。風に煽られてジグヘッドが届かない。

待ってー。行かないでー。

ルアーを「多い日夜用slim(グリーンホロレッドヘッド改め)X'masホロ」に替える。

離れ行く潮目の、サラシに接していた「部分」を狙う。フルキャスト。
こいつはウッドの固定重心にも関わらず40mの飛距離が出る。

カツーン!

ようやく明確なあたり。しかし小さいか?






22オス?

それならこれだとまたルアーチェンジ。新作だ。






「多い日夜用slimゴールドバックパールレッドフックスープレックスホールド~!!!」

はぁはぁ。

…興奮し過ぎた。

スープレックスホールドは余計だ。


しかしなんて品のある白。このとろりとした白には見覚えがある。なんだっけ。あ!そうだ。あれだ。

えーと、いきなり改名します。

「多い日夜用slim金彩白磁」うんうんぴったりだ。


またさらに遠くなった潮目にフルキャスト。なんとか届く。
潮目ならどこでも良いのではない。さっきサラシと接していた部分。そこのみだ。

ゴゴン!!

強いあたりを感じた。しかしあわせを入れてリールを少し巻いたところで外してしまう。大きめ。26か。


そこで潮目はまた更に沖に離れた。メタルジグを投入する、が、もう何も起こらなかった。



終わった。



冷たい強風に吹き続けられ、頭痛がまたその根を大きくし始めていた。

「今日はこれまでにしようか。」

「いや、朝まづめが…。いや、しかし。」

車中で葛藤していると眠気が襲ってきた。十数時間寝たのに。やはり何かおかしいのだ。

「とりあえず寝よっと。」

車中泊…。


チヌ釣りの夢を見た。夢の中で僕はこませ団子を練っていた。そっちかいw


…目覚めた。


あらら。



朝まづめは終わっていたの。


TACKLE DATA
ROD/Glamour Rock Fish TR83deep
REEL/EXIST2004
LINE/Daiwa Emeraldas SENSOR 0.5号+7lbフロロ

Moon DATA
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月は満ちた 海はどうだ part2

2009-02-16 12:29:18 | メバル
2009/2/9。満月。

眠る時間がおかしくなってしまっていて22:00に目が覚めた。23:00からの釣りとなる。
満潮は0:00頃。少し出遅れた感がある。

梅浦から下りるが昨日の様子から幽霊テトラ周辺は渋いと判断。
どーよさんのブログに書いてあった海沿いの迂回路を通り「岩壁の向こう」に向かう。

道口~織田に上がる道の最初の坂の途中に右に入る道がある。新しい道だ。
とても広い2車線の直線道路があり後半は曲がりくねった山道となり米ノ~武生線に出る。
非常に早い。元の海沿いの道より早いのではないか?とにかく飛ばせるのである。
どーよさん。ナイス情報をありがとう。

岩壁の向こうは風もなく波も無い。ほぼ天頂の位置にある満月が極めて明るい。

最近ここにはあまり入っていなかった。あまりにも釣れないのである。
苦労して岩を登り、風に吹かれ、はぁはぁ言いながら手練手管を駆使しても20cm3匹とか、そんな感じである。

しかし。

また来てしまった。
やはり引っ張られてしまう。ここには底知れない可能性が秘められているように感じる。
それは幽霊テトラのような数の可能性ではなくサイズに対する可能性である。
もはや僕は25cm100連発よりも尺1本の方を求めている。

サイズの可能性。

それを感じる理由。

それは、ぼんやりとした明かりや明暗のコントラスト、豊富な沈み根、水深、潮流、人の少なさなど
教科書通りの客観的な事実にも起因するのであるが、何より、あるひとつの光景が頭を離れないのである。

あるひとつの光景。

2008/10月のある日。僕はまだ明るい日中、この場所にエギングに入った。
何気なく、先端角の海中を偏光グラスでのぞき込んでその光景に息を飲んだ。

直径10mほどの巨大なメバルボール。海が赤く見える程だった。
そのボールを形成しているのは全て5cm程の稚メバルである。いったい何万匹いるんだろう。
この周辺の受胎力。その中心に着き場としてここがある事。それを感じさせる光景だ。

そして。それだけではなかった。

そのボールから少し離れた場所。
先端直下の根の横。約3mの青く澄みきった海中。

そこに。2匹。
巨大なメバルがサスペンドしていた。

水中の魚は大きく見えるとは言え、それは明らかに尺を越えた個体だった。
それは目尺だけではなく、顔形、肩あたりに漂う雰囲気でも分かる。老成した2匹だ。

バスのように稚魚を見守っているのだろうか?メバルがそんなことをするのだろうか?

持っていたワームを目の前に通したが全く無視された。微動だにしなかった。
虚しく何度も通してはみたが、そのうち迷惑そうに深場にゆっくりと沈んで行った。
その後ろ姿を見ながら「今シーズンはここだ」そう決心した。


そんな訳でこの日、僕はまたここに立っている。

まさかその2匹がまだここにいるなどとめでたい事は考えていないが
そのサイズの魚がこの場所を意識しているのは確かである。この場所を「知っている」のである。




まずいつものように先端手前でしゃがみ込み直下の沈み根を打つ。
まずルアーはこれを選んだ。ここでは良い記憶がある。






また進化した。「多い日夜用slimナミノハナアルミホロ」
立体的に貼られたアルミシートの上に薄く乗せられたグアニウム色素のようなホロ。その薄さがセンスだ。


沈み根の周囲をゆっくりと深さ早さ角度を変え、製図の線を引くように丁寧にトレースする。
風はなく思い通りのラインを描く事ができる。

しかし。反応はない。

オープンウォーターを流してみるがだめだ。ナミノハナはいないのである。
今日も渋い。満月の、満潮の、先端を潮が洗うこのタイミングなのだがやはり状況は良くない。

明かりの真ん中にGULPを流してみる。
足もとで反応が出る。



23cm。いつも同じような写真ばかりなので正面から撮ってみた。


深く流してみると



アカメバル20cm。これが何匹か続く。



は~。

結局こんな釣りになってしまう。

自己嫌悪に陥る。こんな事をしに来たのではない。こんな魚を釣りに来たわけではない。
狙うのは尺なのである。その為の釣りをしなければならない。

ジグヘッドを3.5gに替えMARS R32 2.2incパールレッドインを刺し防波堤の裏、暗い側に回る。

いくつか露出している根の、その馬の背の続きが海底に接しているであろう場所。
そこを狙って深く沈めた。30m沖。10mの水深。そのあたりは砂地のようで引っ掛かるものは何も無い。
シェイキングしながらリフト&フォールを繰り返す。
少し手前で岩礁を感じた。そこで止めて一点シェイクをする。

明るい月に照らされ、そのあたりの海面には潮がくっきりと帯のように流れているのが見える。
とても良い条件。他に何が必要だろう?何かが起こるはずだと考える。起きないとおかしいと感じる。

だがやはり。

何も起きない。海は沈黙を続ける。

なぜだろう?僕は間違った事をしているのだろうか?見当違いな事をしているのだろうか?

遠い海底の小さなジグヘッド。83deepとPEはその存在を明確に感じさせてくれる。
その周辺には何もいないのだろうか?時合ではないだけなのだろうか?

何か予感は感じるのである。尺はそこにいて、ルアーを見ている。間もなく食いつく。

何度も同じ事を繰り返す。
丁寧に時間をかける。
潮の流れは蛇行して様々に変わり、同じ場所でもいろんな状況を作ってくれている。
何かきっと「はまる」タイミングはあるはずなのである。




しかし。悲しい事に僕の予感は外れた。



2:30。あきらめる。


なぜ釣れないのだろう?


ロッドを手に持ったままぼんやりと立ち尽くす。
目の前に広がる「釣果」以外は全てが満たされた豪華絢爛な好ポイントを見つめる。


なぜなんだろう?



あ、そうかw。

なげやりに考える。

僕はとんでもないへたっぴぃなのかもしれない。そうに違いない。



迂回路を逆に走り幽霊テトラに入る。

丁度そのタイミングで満月は雲に隠れた。雲は水平線のそのまた向こうにまで厚く広がっている。
今日はもう月は出ない。漁火も水平線の向こうにぼんやりといくつかあるのみだ。

暗い気持ちで、暗いテトラに立ち、釣りを始めた。幾分薄気味悪くもある。
潮はやや落ちかけている。テトラの吃水線は海面の20cm上にある。

昨日の時合は0:00の満潮のタイミングだった。それはもう既に完全に外している。良い要素がまるでない。

しかしあるいは…。

何が起こるかは分からない。魚は見えていない。何を考えているのかも見えない。
その見えなさ具合が逆に希望にも繋がる。すがるような希望ではあるが。

「多い日夜用slimグリーンホロレッドヘッド」を流す。
このルアーのこのカラーを僕は完全に信頼している。
これで釣れなければその日は他のどのハードルアーでも釣れない。断言できる。

しかし釣れない。何も釣れない。テスター失格だな。完全に。

ついやはり手が伸びてGULPベビーサーディンに替える。
過去に覚えのあるおいしいラインを執拗に攻める。

やはり釣れない。何も釣れない。

全く渋い。生命反応がまるで感じられない。



そうこうしているうちに、ラインが竿に絡み始めた。全く理解のできない絡み方をする。
一瞬にしてPEラインがガイドにまとわりつき、結び玉を作り、固く締まってしまう。

僕は糸の絡みを直すのが得意である。時間をかければほとんどの絡みは直す自信がある。

だがこれは直せない。ラインの重なり方が理屈に合っていない。物理の法則に当てはまっていない。
なぜそれの下にこれが通るのか、本当に理解できない。
引っ張ったりほどいたりを繰り返すうちにPEがささくれ立ってきた。
そしてどうしてもほどけない小さな固い結び玉が発生する。だめだ。

仕方なく切る。FGを編み直す。FGを編むのは苦ではない。それが救いだ。


やや風が出てきて雨も降りだした。冷たく静かな雨だ。


釣りを始めるがまたすぐにラインは絡んだ。竿先を引き寄せLEDで照らす。
さっきと同じような絡み方をしている。

なんなのだ!!もう!!いらいらする。

雨が強くなってくる。帽子のつばからぽたぽたと水滴が滴る。
LEDに照らされた周囲数メートルの範囲には僕の心を癒すものは何もない。
濡れたテトラ。魚のいない海。複雑にラインの絡んだロッド。寒々しいものばかりだ。

PEと同じように心もささくれ立つ。荒んでくる。

ひとつ大きく深呼吸をし、気を取り直し、再びラインをほどく作業に集中する。
手もラインもロッドも雨に濡れて余計に作業ははかどらない。また切らなければならないのか…。

しかしどう考えてもこの糸絡みは不自然に感じる。いつもはこんな事は起きないのである。
ラインを絡ませないようなロッド捌きは自然に体が覚えている。
何年もこんな事を続けていると自然にそうなる。
絡んだとしてもすぐに直せるのだ。基本的に巻き付くだけなんだから。

しかし、この絡み方は納得がいかないのである。有り得ないのである。

ふと、心の中にある言葉が浮かぶ。やすやの店長さんが教えてくれた言葉だ。
背筋に寒けが走ったら唱えると良いですよ。と教えてくれた。
寒けはずっと一貫して感じているが、それが寒さからなのか、それ以外から来るのかは分からない。

ああそうか。そうなのか。

小さな確信があり、その言葉を心の中で唱えた。

「私はあなたのお役には全くたてませんよ。僕は役立たずで有名なんですよ。困ったもんなんですよ」

唱えながらラインの本線を引っ張った。

すると。

見る間に、夢のように、絡んだラインはぱらりとほどけた。

別の世界の出来事を、スローモーションで見るように、茫然とその光景を見ていた。

引っ張ったのは僕の手だがほどいたのは別の何かだ。

信じられなかった。そこには固い結び目があったのである。

しかし同時に、深く納得も感じる。ああやはり、そうなのかと。

ここはこういう場所なのである。

なぜか恐怖は感じなかった。親密な空気さえ感じた。僕は今、会話をしたのだ。
僕はこの場所に完全に馴染んでいる。逃げるよりもここにこのままいるべきだと思った。


…こんな事ばかり書いていると人間性を疑われそうだが
まあ、ろくな人間でない事は確かだが
しかしこれは本当の事だ。その場にいれば分かる。

そういう事は、あるのだ。朝飯を食う事ぐらい「普通」の事として。




ふ~、と座り込む。濡れたテトラに寄り掛かり少し休んだ。

疲れたな。

しかし帰ろうとは少しも考えなかった。

雨は容赦なく降り続く。
ダウンジャケットにはもう既に雨がしみ込み、下に着ているフリースを濡らしていた。

テトラに頭をもたれたまま、何となくヘッドランプを点け、何もない空中を照らす。

丸い光の範囲内だけで雨が降っていた。細く、足の長い雨だ。
手も足も投げ出してただぼんやりとその雨を見ていた。
じっと見ているとそれが雨以外のものに見えてくる。
ただの光の線だ。現象ではなく抽象的な何かに見えてくる。

僕は何をしているんだろう?こんなところで、雨に打たれて、何も釣れやしないのに。へたっぴぃのくせに。
遠くまで来たなぁ。なぜか唐突にそんなことを思う。それがどこからなのか、分からない。
幸せなあの日からなのか、苦しかったあの日からなのか。記憶のないある日からなのか。分からない。
今、ここが、ここである事しか分からない。


その時、明確な予感が心を占めた。確信に近いものだった。

「今日はもう一切何も釣れない。魚は何も、どこにも、いない」

それはこれ以上釣り続ける事の意味を失わせる予感だった。信じたくなかった。

しかし帰ろうとはやはり思わなかった。
釣れないとしても、魚がいないとしても
ロッドを振り続ける事。投げ続ける事。それなら出来るのだ。





だが悲しい事に、僕の予感はいつも外れる。そういう風にできている。




力なく立ち上がりロッドを手に取り何気なくキャストした。
普段なら「おいしい」はずのライン。今日も既に何度も通した。
深く海底まで沈めてスローにリトリーブする。何も希望は持っていなかった。

テトラを感じた。少しロッドをあおる。ゴゴッとジグヘッドはテトラから外れ水中を漂う。

突然、漂ったジグヘッドを何かがくわえそのまま移動した。

ティップがすーと入って行った。それが何を意味するのか理解できなかった。

だが自然に体が動く。強いあわせを入れた。一瞬重さを感じた。普通ではない重さだ。

しかし、ふっと軽くなった。外してしまう。

あぁ~~~~!!

なんて事だ。何かは分からないが大きかった。

あぁ~~~~!!

痛恨である。

ルアーを回収する、つもりだったが上がってきたのは何も付いていないラインだけだった。

切れたのか…。

ラインを確認する。それはさっきロッドに絡んだ部分だった。
チェックはした。少々のささくれはあったがOKと判断した。
しかしその判断は甘かったのだ。あわせも強く入れ過ぎた。落ち込んだ。何をやってるんだろう。


しばらくしゃがみ込み、のろのろと動きだし、またFGを編む。

なぜか心は折れなかった。

釣れないという予感は依然として明確だったが、朝、明るくなるまではここにいるつもりだった。
投げ続けるのだ。それはやらなければならないのだ。

なら、またラインシステムを組まなければならない。当然の事だ。

ラインの傷をチェックする。FGノットを強く引っ張り出来栄えを確認する。
よし。問題ない。100%の出来だ。美しく細く段もなく、よく引き締まった完璧なFGだ。

ジグヘッド2.6gに再びGULPを刺した。

さっきの魚が何か、何となく感じるものがあった。メバルではない。
それがいるのであればGULPである。これはえさなのだ。
しかし一度外した。もう来てはくれないだろう。そんなにたくさんいる魚でもない。
やはり予感は当たっている。結局釣れやしない。そう思った。

5:00。

さっきとは違うライン。ひとつだけぽつんと露出したテトラ。その沖側。
フルキャストしdeepな底を目指してラインを弛めた。おもむろにリトリーブを始める。
4mの底だ。時々テトラを感じながら引いてくる。
何度か同じ事を繰り返した。無為な行為である事を感じながら。

そして何度目かのリトリーブ。

ゴゴゴとまたテトラを感じる。さっきと同じように軽い根がかりを外した。
ジグヘッドはくんっと跳ね上がる。ロッドを保持しリーリングを止めカーブフォールさせた。

つん。

何かが触れた。ジグヘッドはそのまままた静かに横に移動する。ティップがお辞儀をした。

手首だけで小さくあわせる。

その何かは水底でうごめいた。

!!!。

スウィープに強くあわせを入れる。

ゴンゴンゴンゴン!!

えぇ!?来たぁぁ!

しっぽの一振り一振りがそのままの形になって手に伝わる。硬い感触の引き。

まだ姿は見えないがこれはメバルではない。

チヌだ。さっきのもそうだ。確信した。

2009/1/28には姿を見るまで分からなかった。しかしもう分かる。間違いない。チヌだ。

平べったい魚特有の重さ。横を向いて暴れると水の圧力がそのままロッドにのし掛かってくる。重い。
テトラにラインが触れる事を警戒したが幸運な事に沖に走ってくれた。

水面を照らす。10m沖で姿が見える。銀色がひらめく。体を翻し渦を作って潜ろうとする。
潜ろうとして沖に向かって走り、潜りきれず、ひっくり返るようにまた水面に姿を現す。繰り返す。

83deepはそれを余裕の顔で受けとめている。イグジストもタイムリーにドラグを鳴らす。

いつもは使用感を感じないほど静かな道具が、今は前面に出てしっかり仕事をこなしている。
極めて頼もしい道具だ。何も心配はいらない。「まかせて!」そう言っている。

ドラグを締め、強気のポンピングで一気に足もとまで魚を寄せた。

網は依然としてない。しかし今度こいつが来たらこうしてやろうと考えていた。

ここも水面まで下りられる。ラインを張ったまま僕は左手でバッカンをひっつかみテトラを滑り降りた。
波が洗い、海洋生物で覆われている水平のテトラ。その上に立った。

眼前の海面にいぶし銀の魚体が横たわる。

テトラにひざをつく。波がひざを洗った。どうせ雨でずぶぬれだ。かまわない。

バッカンを横にして半分を海中に沈めた。右手のロッドを高く掲げる。ヘラブナの取り込みみたいに。
1/28にはささくれ立って切れたリーダーも今日は全くフレッシュだ。ジグヘッドもしっかりと掛かっている。

「入れ、入れ、入れ」

声を出してチヌに言う。なかなか思うようにならない。なってくれない。
何度かの失敗の後、ようやく、チヌはヒラメのような横泳ぎで自らバッカンにゆっくりと泳ぎ込んできた。

ざぶりと水を汲むように引き上げる。バッカンの半分を占める海水が強烈に重い。

えええいっ!!。全身に力を込めてバッカンを持ち上げ、テトラの上にどさりと置いた。

ダダダダダッ!!

チヌが猛烈に暴れる。盛大にしぶきを浴びる。

うっしゃぁぁぁ~!!獲ったぁ~!!

こぶしを握る。

ひざをついたままバッカンをのぞき込む。その姿に見とれた。

同じ海水の中ではあるが
ついさっきまでいた場所とでは決定的に違うバッカンの中でチヌはゆっくりと呼吸をしていた。





側面をなでる。滑らかに固く太った体。充実にはち切れそうだ。



さっきまでの暗く冷たい海が、今はうそのように輝いている。

釣りにはこれがある。一瞬で更新される。何度も経験した事だが今回はひときわ鮮やかだ。




チヌ。43cm。嬉しい魚だ。



ちょっと遊んでみる。

まずはその体表をオーパ!の表紙風にw。






その目玉をオーパ,オーパ!の表紙風にww。









その後は気のない釣りをする。事あるごとにバッカンをのぞき込んでしまう。

そしてこの日もやはり、昨日と同じく朝まずめの時合はやって来なかった。

やれやれ。疲れた。

7:00。終了。

雨は上がっていた。ずぶぬれの帽子を取った。急に世界が明るくなった。髪をぐしゃぐしゃとかき回す。

空を見上げた。すっかり朝だ。朝はしらじらしい顔で世界を覆い尽くしている。

まるでさっきまで暗い夜だったなんて、うそみたいだ。





家に帰りチヌを捌く。この日は休みの嫁と昼ビールを決め込んだ。



松皮造り。熱湯をかけて氷水で〆る。
皮がこりこりして身の味が濃い。
海の香りが広がる。
でもわざわざ家でまでそんな香りを嗅がなくたってさっきまでしこたま嗅いでいたんだけどw





炭火を熾してかぶと焼き。こんな美味しいものがあるんだろうか。

半身は昆布〆にして近々来る予定のお客さんに備えた。

骨とひれはせんべいにしてかりかりと食べた。全て愛してやった。お礼だ。




おっと忘れてた。


さてさて、しかし。それにしても。


メバルはどこに行ったのだろう?


TACKLE DATA
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fullmoon
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月は満ちた 海はどうだ part1

2009-02-12 22:55:37 | メバル
2009/2/7夜

やすやさんにて83deepの新しい穂先を受け取る。

それにしても早い。2/3に注文して翌2/4にはもう届いたとのメールを受け取った。
ブリーデンというメーカーは分かっているのである。釣り人の立場に立って物事を考えてくれている。
「このメバルシーズンの真っ只中やのに、このお客さん困ってはりますんやろなぁ、早よ送らな」←関西系
そんな心遣いをひしひしと感じる。

某メーカーのエギングロッドを折った時には
保証書付きであったにもかかわらず散々うだうだと文句を並べたてられ
直ってくるまでに実に1ヶ月半を要し、エギングシーズンをまるまる棒に振ったのだった。

爪の垢を煎じて飲ませてあげたい。


もう1本。ヤフオクにて入札していた83deepは落とせなかった。
定価以上の入札に安心し終了時刻に見ていなかった。
僕以上の値段を付けた人が何人かいたようだ。甘かった。
83deep ver2006はキズありの中古品にも関わらず完全にプレミア価格となっている。
このロッドを偏愛している人間は僕だけではないのだ。

2009/2/8

ちといつもと違うことがしたくなり夕方17:00より三国方面に回る。
海は荒れていた。2.5m~3mの波だ。
崎漁港を覗き竿を出すが反応は全く無い。
沖のテトラと防波堤の間においしそうな潮目があったが釣れてくるのは海藻のみだった。

その後、長橋に回る。しかし波のしぶきが防波堤の高さ以上に上がり外海に入ることは不可能だった。

車を南下させながら所々漁港を見て回るがどこも同じ状況。
しかし越前岬を越えたところから急に波は下がる。1m~1.5mほど。

「やはり、いつものところだな。僕にはそこしかないのだな。」

幽霊テトラに向かう。結局、やはり、ここなのだ。

駐車場に入ったが極めて眠い。目が閉じそうなのである。しばらく睡眠不足が続いていた。

集中力をもった状態でここに入りたい。
満潮は0:00。まだ時間がある。
少し仮眠をとった。

(頭の中を音楽が鳴り響いている。)




22:00。目を覚ます。

満ちる前日の月が明るい。

身支度を整え岩を登り外海を見る。幽霊テトラは時々波に洗われていた。
釣りをするのは不可能ではないがやはり危険と判断。
左に100m離れた中央の岩付近のテトラに乗る。1/28にチヌを掛けたポイントだ。3mの足場で波の心配は無い。

釣座となるテトラによじ登るとLEDの明かりの円の中にひとつ、ジグヘッドが落ちている。
かなり軽いジグヘッドだ。あまり見ない形。円錐状のウェイトにワームストッパーのないシャンク。

「こんなところに来るお馬鹿さんが僕以外にもいるんだな。」

何となく、確信もなく、それは舌”くんのジグヘッドではないかという気がした。なぜか分からんけど。


まず「多い日夜用slim fullmoon」を選ぶ。



暮れ行く空の濃き縹色。

あるいは澄み渡った黎明。

そんな色をしている。美し過ぎる。宇宙を体内に持つルアー。


しかし。

反応は無い。今日も渋いのか…。

左の岩に常に巣くうヤリイカ師の浮きは明らかに左から右に流れている。
海洋生物が作り出すテトラの吃水線はほぼ隠れ潮は満ちているのが分かる。

潮は動いている。

サラシが作る泡が10m沖に何ヶ所にも固まって浮いている。
それはメバルの好むピンポイントとなり得るものだ。

状況は悪くない。はずだ。

(歌が頭の中に鳴り響く。ええぃ!)

ジグヘッドに替えいつものGULPベビーサーディンを刺す。もうこれは僕にとって完全なサーチベイトだ。
テトラ際を丁寧にトレースする。何も起こらない。
右45°フルキャスト。気のないリトリーブをすると「カツン」とあたる。
それが何かに気付くのに一瞬のタイムラグがある。あっ、僕は釣りをしていたんだ。
おっと。あわせを入れた。間に合ったようだ。
メバル25cm。アフターの個体。

(歌がぐるぐる回る。なんとかしてくれ!)

そのラインかっ!と思いもう一度通すが出ない。何度も通すが何も起こらない。

時々なぜ釣れたのか分からない魚がいる。
テトラから遠く離れたオープンウォーター。ほぼ水面レベル。
そんなところにこの25cmはぽつんと一人でいたのだろうか?群れでいるべき場所だと僕は考える。
考える、が、しかし考えが上手くまとまらない。

(歌はますます絶唱を続ける。あ~うるさい!)

もう一度テトラ際をGULPで攻める。

もぞもぞ。

あたりがあったが僕はあわせることをしない。それが何か理解できない。
集中力を完全に阻害されている。だめだ。釣りができない。

…。

今日の昼間からずっと、僕の頭の中にはひとつの歌がぐるぐるエンドレステープのように鳴り響いている。
どうしようにも止まらない。全く集中ができない。

この日の朝、テレビで、日曜の午前中特有の「爽かなようで実は気持ちの悪い」音楽番組を見てしまった。
そこではさだまさしが大げさにもオーケストラをバックに死にかけの幽霊のような震える声で歌っていた。

 薄紅の秋桜が秋の日に
 何気ない日だまりにゆれてます。
 この頃涙もろくなった母が
 庭先でひとつ咳をする。


おぉ!さだ!!さだ!!おぉ!さだ!そう、あんた、さだ。

ひとつ言わせてもらうとなぁ

あんたなぁ



暗い。



僕はさだまさしに対して特段に拒否反応は感じない。しかし全然ファンでもない。
言ってみればどうでも良いのである。しかし耳に付く歌は作る。それは認める。
それを不注意にも口ずさんでしまった僕の頭の中にはその「秋桜」がびっちりと張り付いてしまった。
どうにも止めようが無い。呪われた事にフルコーラス歌えてしまうのだ。
集中しようとすると余計にボリュームが上がる。なんとかしてくれぇぇ…。

僕はこの呪縛に掛かりやすい体質なのかもしれない。ちょくちょく起こる。
「おどるポンポコリン」が流行った時には連日連夜頭の中がぴーひゃらぴーひゃら言って死ぬかと思った。
目の下に隈ができそうだった。痩せそうになった。何も考えられなかった。

この大切な満月周りの良き日に、さだに取り憑かれてしまった僕は全く使い物にならない。
さだっ。頼むっ。やめて。stop。

しかし止まらない。

人類は天然痘を撲滅し、月に行き、通話のできる超小型コンピュータを小学生にまで持たせることに成功した。

が、まだ、これを止める方法は発見できていないのだ。



そんな中0:00の満潮を迎える。10mほど沖、泡が固まった場所。そこで小さな爆発が始まる。時合いだ。

ルアーは「多い日夜用slimグリーンホロレッドヘッド」に替えていた。
このルアーの力にすがる。

ゆっくり水面をリトリーブして来ると

ゴンッ!!

とんでもなく強いあたりが出る。

しかし外す。集中力がない。ゾーンに入って行けない。

ゴンッ!!

次のキャストでもここで食って来ると分かっていながら外す。一拍遅れる。

歌を口ずさむ。歌ってしまえば良いのだ。やけになって大声で歌い始める。

 こ~ん~な~こ~は~る~び~よ~りの~
 お~だ~や~か~な~ひは
 あなたの~やさしさが~しみてくるぅ~

大声で歌う間もメバルは容赦なく食ってくる。ゴン!ゴン!ゴン!。

1リトリーブ中に何度もあたる。乗らない。乗らない。

しかし…。

これはいくらなんでも外しすぎだ。集中力がないといえどもおかし過ぎる。

思い出す。

2008/3月にも同じ事があった。ロングキャストの遥か沖で今日のように強いあたりが頻発した。
しかし全然乗らなかった。20発ほどのあたりで獲ったのは8本だけだった。
釣れてくる魚は口にフッキングしておらず頭や口の外に掛かるものが多かった。
体当たりしているのかと考えた。あるいは寸前で見切り反転した際にルアーにあたるのかとも。


今日も同じ状況だ。こいつらは食ってきていない。当たってきてるだけだ。
至近距離なので尚更乗りにくい。この距離での83deep+PEには、吸収してくれる遊びが全く無い。弾くのだ。

獲りたい。なんとしてでも。歌うのをやめ無理矢理に集中する。ぐぅ~と脳に力を込めた。

キャスト。
泡の塊を通過するタイミングで引き波の重さを感じる。
リトリーブをやめ軽くトゥイッチを入れ、止めた。ここだ。来い!

ゴンッ!!

よしっ!
すかさずあわせる。上手くタイミングが合った。

ゴゴゴゴゴ。

ようやく乗った!強烈に引く。でかいっ!?
突っ込みのスピードが速い。魚は完全に向こうを向いている。

ゴリ巻きして一気に抜きあげる。普通ではない角度で上がってきた。
やはり、リアフックが頭に掛かり、フロントフックは痛ましい事に左目に掛かっている。






27cm。臨月をむかえつつあるプリ。
撮影用にフックを刺し直してある。やらせ画像だ。向こう側の目は潰れて血が滴っている。写せない。
リリースすべき個体であるが傷が深くKeepする事にした。…ごめんね。

これを最後にあたりが遠のく。

場所を変えようと岩の右側のポイントに入るが先客がいた。ここで人に会うのは初めてだ。
ブリーデンのニット帽をかぶっている。ロッドは2本ありどちらもグラマーロックフィッシュだ。
ステンボー+ビームリーチのスプリットリグ。

少し話す。

「時合、終わったでしょ」
「そうですね、止まりましたね。ぼつぼつ釣れてたんですが。」
「サイズは?」
「27止まりですね」

50m離れたここでも同じ状況のようだ。ふぅ。

1:30。一旦上がる事にした。車の中で仮眠を取り。朝方に掛けよう。

車に戻る。さだはまだ歌っている。
カーステレオにOFF SPRINGのAmericanaを差し込む。ボリュームを上げた。

さだよ。さあ。消えてしまえ。

シートを倒す。エアコンで暖まった体に眠気が強い。
ボリュームを下げようか。思った瞬間。眠りに落ちた。なぜ、こんなに眠いんだろう。




5:30。
絶妙の時間に目が覚める。朝まずめの時合は6:00~6:30だ。

この日はバーブレス君と落ち合う事になっていた。
彼がいつも車を止める場所に向かう。あった。来てるんだな。
いわゆる「deep隣接の岩」に入っているはず。
上からのぞくが暗くて姿が見えない。ヤリイカ師もまだいるようで僕が入る場所はなさそうだった。

2/5に入ったテトラに乗った。眠っている間に波はずいぶんと落ちていた。ほぼ、凪ぎだ。

あっ!

ふと、気がついた。さだは頭から消えている。
寝ている間に鳴り続けていたOFF SPRINGが睡眠学習の役割を果たしたのだろうか?

やれやれ。

助かった。

やっと。集中できる。

しかし。

この日の朝は時合はやって来なかった。あらゆるものを投げたが全く反応がなかった。
朝のその時間帯は引き潮の底で、テトラの吃水線の40cmも下に海面はあった。

わずか6時間で40cm落ちる潮。

6:50。

あきらめて堤防に上る。

向こうからバーブレス君が歩いてきた。
僕に気がついているのに何となく目をそらして空などを見たりしている。
徐々に近づき、いよいよ無視できない距離になってようやく目を合わせて笑った。

「どうやー?」
「渋い。ほとんどこれだけ」
27cmを見せる。
「わーやっぱ27ってでっかいなー」
「どうだった」
「23ぐらいのが2匹だけ」
「その竿どう?」
貸してあるSlow retrieve 80を指さす。
「のるー。しかしほんと魚の大きさが分からんw」

車に戻り、また少し話しをして別れた。

僕達の会話は、いつも、淡泊だ。



長い一日が終わる。


しかし。

つくづく…

さだには参った。


TACKLE DATA
ROD/Glamour Rock Fish TR83deep⇒復活
REEL/EXIST2004
LINE/Daiwa Emeraldas SENSOR 0.5号+7lbフロロ

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喪失と再生 part2

2009-02-07 12:32:39 | メバル
前回の続き。2009/2/3。

明け方。僕はPCに向かっていた。

まず、やすやさんにメールを入れ83deepの穂先を引いてもらえるよう依頼する。
保証書はもう既に無い。折るのは2回目だった。

しかし驚くべき事にブリーデンというメーカーは穂先だけでも竿元だけでも小売りしてくれるのである。
それも免責価格とそう変わらない値段なのだ。
なんて素晴らしい会社…てゆうか保証書の意味って…なになの?

メールを送信し終え即座にYahoo!を開く。ヤフオクに数日前から83deepが出品されている事は知っていた。
もちろんver2006である。ver2008は結構出るが2006はめったに出ない。
このタイミングでそれが出ている事は何か運命のような気がした。

これを落とそうと決めた。2本所有したかった。それは僕の夢だった。かなえるのは今だと思った。

定価より上の値段を入札する。これなら落ちるだろう。迷いはなかった。
金はないが今はそれに糸目をつけている場合ではないのだ。

ふふふ。

薄く笑い僕はのびやかに安心をして眠りについた。

83deepは、もうすぐ戻ってくる。



昼過ぎ。目を覚ました僕はシャワーを浴び身支度を整えバーブレスに向った。
もう一つの喪失を取り戻すためだ。
「多い日夜用slimグリーンメタリックレッドヘッド」
これが今はグリーンホロレッドヘッドになって生まれ変わっているはずだ。

バーブレスに着き駐車場から中を見た。客はいない。
バーブレス君がカウンターの中で何やらごそごそしている。

何してるんかな?。ん!?。    ww  

のこぎりで木を切っているのだ。

我々はまたあやしい雰囲気でぶつの受け渡しを行なう。今回はなんと3本3色もある。

Lotを重ねるごとに飛躍してゆく品質。質感。色気。

既に完成の域を越え堂々とした充実を湛えている。

見たい?









美し過ぎて目まいがしてきた。

上から「グリーンホロレッドヘッド」「fullmoon」「ピンクメタリックレッドヘッド」

特にfullmoonに魅かれる。ゴールドのバックと黒のボディー。その上にちりばめられた星空のようなホロ。

「これを海に投げるのか…」また思った。

ロストすれば今回よりもっと深い喪失を味わう事になりそうだった。

しかし僕は正式な辞令(簡単なメール)を受けたテスターである。
義務は果たさなければならない。仕事をしなければならない。

このルアーを世間に広めバーブレス君を世界一の大金持ちにするのが僕の使命なのだ。




喪失はこれで取り戻した。

倍返しで。


あとは釣ること。納得のいく釣りをすること。

それで僕は


完全に再生する。



次の日。2009/2/4。

僕は夜明け前に目を覚ました。

外は静かだ。放射冷却の冷気が部屋の中にまで入り込んできていた。

海は凪いでいるはずだ。無性に釣りがしたくなってきた。居ても立ってもいられなかった。

しかし、83deepはまだ無い。
カラマレッティーでやろうか?一瞬思うが気が進まない。
エギ竿で2gのジグヘッドを投げるのはつらい。魚を掛けてもつまらない。
僕はオーバースペックが嫌いだ。アンダースペックも嫌いだ。
ジャストな道具で釣りをする事。これが快楽なのである。

しかし釣りには行きたい。どうしようかなーどうしたもんかなー。

あ!。

そうだ。

ある。メバル竿。忘れてた。しかしなーあれはなー…。

部屋の片隅から1本のロッドを取り出す。

Nories Slow Retrieve 80


数年前ヤフオクで「色がきれい」だという理由だけで衝動入札して落としたロッド。
届いてみてびっくりした。ぺなんぺなんなのである。

「ぺなんぺなんやん…」思わずつぶやいた。
「ぺなんぺなんぺなんぺなん」と言いながら左右に振った。

先がやわらかいと言うのではない。全部がやわらかいのだ。
まるでへら竿みたいなのである。いやそれよりもやわらかい。何せグリップまで曲がる。
83deepとは真の対極にあるロッドだ。

投げてみてもびっくりする。

いつものつもりでキャストするとルアーは70°程の角度でお星さまに向って飛んで行く。
シュンっとスイングして一拍おいてから指を放さねばならない。

キャスタビリティーという言葉はこのロッドにはない。
どこに飛ぶか分からない。(あくまでも使用者の意見です)

ううむ。田辺哲男は良く分からないものを作ってしまった。趣旨は何なのであろう。

僕がまだバサーだった頃、雑誌Basserに連載されていた田辺の「バス釣り道場」をかかさずに熟読していた。
パターンフィッシングの素晴らしさ重要さを教えてもらった。そしてそのまま今に至るのだ。
田辺の事は今でもとても尊敬している。

しかしこの竿は…。

いや、何か狙いがあるに違いない。何せ田辺なのだ。
そう思ったが結局1度か2度使ったきりで部屋の片隅にうずもれさせていた。


だがやはり今日はこれで行こう。これしかないのだ。一応メバル竿なのだ。
PEを使用する事などは夢にも考えていない大きさのガイド。
3Lbフロロを巻いたリールを装着する。

5:30。

海に向う。

幽霊テトラだ。全然懲りていない。
それに朝方である。0:00さえ外せば良いのだ。まだ暗いが明るくなる一方だし。

海に着くと思いのほか荒れていた。1m程か。
この低いテトラに乗るにはギリギリの波である。時々しぶきを浴びた。
テトラ際から10m程沖までサラシが広がっている。

ジグヘッド2gにGULPを刺す。

第1投。
わぁぁやっぱり空に飛んでった。あら~あんなとこ落ちた。素早く巻き取る。困った竿ぉ~。

第2投。慎重に。
おっ!まともに飛んだ15mぐらいだな。何とかなるな。
キャストに満足しながらリトリーブを始めた。投げたことに満足し釣る体勢になっていなかった。しかし。

ぐわぁん。

手にあたりが響き渡った。83deepとはあたりの感触がまるで違う。

ロッドを跳ねあげた、つもりだったが跳ね上がらない。跳ねあがったのはグリップだけだ。
くにゃんとロッドは魚の引くままに曲がる。
バットまで完全に曲がり力を完全に吸収している。そもそもバットの概念が無い。

83deepなら掛かった瞬間に読める魚の大きさが、これはまったく読めない。ひざの力が抜けそうな感触だ。
きっと魚もそうだったと思う。ぐりんぐりん抵抗してみてもなにやら歯応えがないに違いない。

あ、なにこれ、あ、なにこれ、あ、なにこれ、あ、なにこれ

などと言っているうちに寄せられてしまうんである。

いつの間にか足もとまで来ていた。魚がどの方向にいるのかすら分からない。あわててごぼう抜きした。




25cm。案外大きい。しかもこれはプリだ。25のプリ。2009/1/28にはいなかった魚だ。

違う群れが入ってきている!直感した。

次のキャスト。すかさず。


23cm。これもプリだ。よしよしひじょ~に良い感じである。釣れ方が良い。爆る時特有のリズムだ。

次のキャスト。力を抜いて自然に投げた。リトリーブを始める。




その時だった。   







唐突かつ強烈な便意が僕を襲った。もちろんMEGAである。

来た瞬間にもう一刻の猶予もならない。急転直下である。

わぁぁなんてことこんなときにうんこなんてなんてことこんなときにわぁぁ。

大急ぎでラインを巻き取った。
巻き終えるのも早々に僕はことに及ぶための「場所」を探した。あ、あそこがいい。テトラを飛んだ。

2つのテトラをまたぐ。下は水面だ。いやぁ~ん水洗やん。
急いでおろす。厚着がうとましい。
またいだテトラの幅は広くしゃがめない。ほとんど立ったままだ。


はあ~。


僕はひたった。


でも…やっぱ幽霊テトラでこんなことしたらやばいよな。ばち当たるよな。


思ってみたが仕方がない。どうしようもありえない。…あ。


あ…。


紙無い。


あらら。


どうしよ。


えーと…。



え?

どうしたかって?



…。



夜明けの空に星がとてもきれいだった。

☆ピカピカ。ピカ。



何事もなかったかのようにそそくさと僕は釣座に戻る。
置いたロッドを手にすると巻き取り切らなかったジグヘッドがテトラに引っ掛かっている。
3Lbフロロは躊躇なく切れた。

スナップを結びジグヘッドを装着する。GULPの必要はないな。

ビームスティック2.2inch氷河を選ぶ。爆る時はこれだ。針持ちが良い。釣っちゃ放し釣っちゃ放ししやすい。
こんなの売って儲かるのか?と思うぐらい長持ちする。

時合いよどうか続いていてくれと祈ってキャストする。

さっきと違う場所。
あら?釣れない。大きく右に振る。
だめだ釣れない。
さっきのラインに戻す。
すると

ぐぅおん。

小さなあたりがロッド全体に反響した。

よっし、このラインか!!



ここから

怒濤の連発が始まった



ほれっ。



とぉぉぅ!



おりゃっ!



ええぃ!




あー、いちいち写真なんて撮ってられない。

海の中の他の場所と何の違いも見えないある1点。丁度サラシが始まる場所。10mほど沖。

そこのみで次々とメバルは食ってくる。これはメバルには良くあることなのだ。
不思議なことであるがほんの1m四方ほどの一点なのである。そこを通さないと食わないのである。

サイズは22~25cm。あまり大きくは無いがどれも見事にプリである。

完全に違う群れだ。魚体がフレッシュなのである。
明らかに分かる。じっとしていた体ではない。泳いでいた体なんである。
次の大潮を意識している群れだ。それが入ってきている。

連発の中でこのロッドの長所が見えてくる。

とにかく外さない。乗りの良さは驚異的である。Noriesってそう言うことか←違
単に良くある「乗りが良い」と謳われるロッドではない。
「ものすごく」乗りが良いのである。ロッドが意志をもって乗せるかのようなのである。

当たった瞬間もう掛かっている。合わせなくても絡めるように掛けてくる。
ファイト中もばらす不安は皆無だ。こちらが引こうが押そうが常に一定のテンションを魚にかけ続けてくれる。

それに感度も良い。この柔らかさからは想像できなかったがロッド全体であたりを出す感じだ。

これにはフロロの影響もあるだろうと思う。

PEは輪郭のきれいな等身大のあたりを出すが、フロロは反響するようなあたりが出る。
それがこのロッドに良く合っている。反響がロッドで増幅される感じなのだ。

これを出すためにキャスタビリティーを殺したのかもしれない。

あぁ…なんて…田辺…。

数年前なら分からなかったかもしれない。

83deepを使い込んでいろいろ見えてきたこと。

見ない振りをしている短所。惚れ込んでいる長所。

このロッドはそのどちらもが83deepとは正反対にある。光と影みたいに。

両方合わさると完璧になるが、悲しいかな、それは多分、両立なんてできないのだ。



空はだいぶ白んできた。ラインを結べる明るさ。
そこで、急にあたりが遠のいた。
短いな。20分ほど。しかし満ち足りた。

その後、しばらくあがくが


これが頻発し始めた。

こら、 R32は高いんだぞ。こいつに刃物を持たせたのはだれだ。


潮時。


再生はほぼ完了した。

しかし

ほぼ、ではだめだ。

落ちる前より、もっと上に上がるのだ。




次の日の朝。2009/2/5 6:00。

僕はまた海に立っていた。
今日は仕事なのだが迷いはなかった。


釣りにはある一線が存在する。それは釣れるか釣れないかを分ける大切な一線である。

これは単純だが難しいことだ。なかなかできない。


その一線は


自分の都合に合わせて釣りに行くのか。魚の都合に合わせて釣りに行くのか。


その間に、くっきりと引かれている。



幽霊テトラから海に向って左に50mほどのテトラ。
ほぼ水面にある。ここに乗れるのはべた凪の時だけだ。羅紗を貼ったような海。

左右にまっすぐテトラが延びる。どちらの際も狙うことができる。
目の前は完全なオープンウォーターだ。こんな凪ぎならここである。

波気がある時は昨日のような釣れる場所の特定が起こりやすい。
しかしべた凪の日は広範囲で釣れることが多い。
キャストできる場所が多いポイントの方が有利なのだ。

「多い日夜用slim」を投げたかったが3LBでは不安がある。何かを間違うとロストしてしまう。
今日もジグヘッドで行こう。こいつを投げるのは83deepが帰ってきてからだ。

2.6gジグヘッドにビームスティック クリアグリッターを刺す。遠くまで探りたい。

右前方にキャストした。来る事は分かっていた。完全に見えていた。

ぐぉん。

来た。15m沖。1mライン。

ロッドが充実に満たされる。

サイズは相変わらず分からない。でかい…か?



26プリ。これも昨日はいなかった魚だ。


左前方に投げる。

ぷぅん。



25プリ。


また右前方。

がぉん。



25プリ。


続けて右前方。

どぉん。



26プリ。丸呑みだ。

しかしサイズが足りない。28.5が欲しい。そしてもうひとつ、29が欲しい。


左テトラ際。

ぬぅー。



26か。プリ。

それにしても1発も外さない。


左30度。

だんっ。



27だ!。プリ。

おしっ!次っ。


しかし。


これで打ち止めだった。


唐突に時合は終わった。
何をしてもどこに投げてももう何も起こらなかった。


ふー。


お茶を飲んだ。煙草をくわえた。





再生完了。完全に満たされた。




いや。


まだ上がれる。


サイズには、まだ、余裕がある。



そいつらが待ちわびるfull moonは、もうすぐ、昇ってくる。




TACKLE DATA
ROD/Nories Slow Retrieve 80
REEL/TEAM DAIWA AEGIS 2004
LINE/銘柄不明 フロロ3Lb

Moon DATA

2009/2/4


2009/2/5
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喪失と再生 part1

2009-02-05 10:48:00 | メバル
2009/2/2~2/3深夜。

親友すえもんと釣りに行く。

すえもんとは中学以来の友達である。
ナマズやフナやウグイなどをいつもいっしょに釣り歩いていた。

その頃の年齢特有の残虐性、あるいは理由なき焦燥感や無力感からか
釣った魚をカッターで切り裂き、その辺に無意味に並べるなどというまことに野蛮な事をしてみたり
黄昏行く川の堤防の上で、お互いの好きな女の名前などを告白しあったりしたりしていた。

高校は別になって次第に疎遠となり、社会に出てからも土地が離れて縁はなく
しかし10年ほど前、帰郷した僕がある日、ふと、すえもんの家の前を通った際偶然に再会し
まだ釣りを続けている事を知り、再び縁が繋がり今に至る。

もうさすがに無意味に魚を切り裂いたりなどはしないが(料理はするようになったが)
今でもこの人といるとあの頃のままの気持ちになる。基本的に何も変わっていない。

本当の親友というのは……。何かの本に書いてあった。

「真に何でも言い合える親友というのは、子供の頃に作った親友だけである。
 大人になってからできた友達もそれに近いものにはなれるが、そこには利害の関係が必ず生まれ
 言えない事が常に存在するのだ」と。

この人を見ていると、そうかもしれない、と思う。
言わない事も無いではないが、それは「あえて」言わない事でなんである。


この日。

すえもんの家庭の都合で23:00あたりからの釣りになる。
海はど干潮に向うタイミングであまり良い時間帯ではない。
「ある条件」が河野方面にあるという情報を頼りに「がけ崩れの南側」の道から海に降りた。

車を走らせていると「ある条件」が見え始めた。この条件はずいぶん遠くからでも分かるのである。
勢い込んで現場に着く。しかしそこはシャローのゴロタ浜だった。
「ある条件」が効くにはある程度の水深とテトラが必要なのである。ここにそれは無かった。
しかし、あるいは、と、釣り始める。

「多い日夜用slimグリーンメタリックレッドヘッド」でロングキャストを続けた。
この条件にはこのカラーが効くような気がした。
しかしやはりあたりは遠い。

一度だけフルキャストしてようやく届く大岩の際で、ドンッ!と強いあたりを感じたが外してしまう。
そして結局それだけだった。

「ある条件」はその1箇所にあるのみで、仕方なく僕達は甲楽城のテトラに入った。
しかしやはり状況は渋くようやくやっと


22cmのこいつが釣れただけだった。
そして、この写真がこのルアーの遺影となった。

こちら方面のポイントに疎い我々は思い切って北に向った。
大きく宮崎を回る迂回路を通り「がけ崩れの北側」の道を下り「幽霊テトラ」のある防波堤に入った。
先日の事もあり新規のポイントを開拓しようと巨大なその防波堤の中央付近、大きな岩があるポイントに入る。

これが悲劇の喪失の始まりとなった。

テトラが苦手なすえもんだがそれでも難なくたどり着けるぬるいポイント。クランクした堤防の凹部にあたる。

ろくにポイントの様子も観察せずに「多い日夜用slimグリーンメタリックレッドヘッド」をキャストする。
すると、いきなり、引っ掛かった…。押しても引いても外れない。強くひっぱるとにゅ~と動く。
まさか…ライトで照らすとそれは定置網のロープだった。これに引っ掛かるともう終わりである。
あぁぁぁ。このルアーはなくしたくない。できる事ならこのままここでずっと繋がっていたいぃぃっ!。
心から思った。
が、しかし当然そうもいかず泣く泣く切る。
「僕ここ嫌いッ!!もういやっ!!」
すえもんに当たるが無言のまま困った顔をするだけだ。
「僕そっち行く!!」とすえもんを越えてロープから遠い場所に入る。

程なくすえもんが「釣れたぞ~」と声を上げる。見ると15cm程のアカメバルだ。
「おお、よかったな~」
「うん、ジグヘッド底シェイク~」
落ち込む僕に元気をつけようと明るい声で応えてくれる。

優しいのである。

ふんっそんな魚っ、と思いつつも僕も底シェイクを始めた。
新規の場所で底の様子が全く分からない。すぐに根がかり。
ロッドをあおっても外れず。ロストを覚悟でロッドと糸をまっすぐにしてひっぱった。


「べきっ」


暗闇にいやないやな音が響いた。

…。

おそるおそる、おそるおそる、ロッドのティップを照らしてみる。
トップガイドが、なかった。絡んだままひっぱったのだ。
ラインも切れてこの世からトップガイドの存在が消えた。

わぁぁぁぁぁ!!!!。83deepぅぅぅぅぅ!!!!!!

極めて激しく動揺しつつも落ち着いた声で「…すえもん、竿折れた」と告げた。
「うそやろっ」暗闇ですえもんも激しく動揺した。闇の空気が揺れた。かける言葉を探している沈黙があった。

優しいのである。

テトラにしゃがみ込みゆっくりと煙草を吸った。
この場所でできる事は何も無くなり引き返そうとテトラを登りかけたが岩のりで滑り上手く登れなかった。
全力を挙げれば登れるだろうが全力を出す気力がなかった。また僕はすえもんに当たった。
「すえもんっ!!登れんっ!」
「おう、待っとけ」
テトラが苦手なすえもんがいっしょうけんめいこちらに向った。

優しいのである。

「竿、見せて」
ティップを見せた。すえもんがそれを手にするとジョイントが外れた。
外れるなどとは思っていなかったすえもんはそれをお手玉した。
「カラン」
ティップがテトラの隙間に落ちた。慌ててすえもんは手を伸ばす。しかし届かなかった。
「ああ、ああ、行っつんた、す、すまん」
「いいいい、かまわん、どうせ折れてたんやし」乾いた声で答えた。
すえもんも僕と同じくらい落ち込んだ。

とても優しいのである。




ほんの15分で僕は大切なものを2つ無くした。こんな事があるのだろうか。

最近しばらく、仕事でも家庭でも、何をしても上手く行かず、ついていない事が多かった。
体調も悪く常に頭痛と腹痛を抱えていた。
そして今日は、僕が持つ「もの」の中で一番大切なものと非常に大切なものを一時に失ったのだ。
激しい喪失感が僕を包んだ。手がなくなったような気がした。どうにかしてくれと思った。

しかし

同時に、ふと

「これ以上はもう落ち無い、ここが底だ」

と直感した。あとは上がるだけだ、と。



案の定。



次の日から僕は上昇を始めた。




また続くんだよ。w

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幽霊テトラ及び奇跡の海水浴場テトラに8時間立て篭もりっ Part2

2009-02-01 21:24:04 | メバル
前回の続き。2009/1/28。

チヌを逃し、しばらくその場でぼんやりした後、降りたテトラを這い登る。
登れないかも、と思ったテトラだったが何とかなるもんである。
テトラには必ずルートがある。どこから始めたとしても。
あそこに行きたいと思って行けなかった事は1度も無いのだ。

FGを編み直しキャスティングを再開する。ここで海の様子が少し変わってきた事に気付く。
べたべたの凪ぎであったのが波立ってきた。ざばんざばんとスパンの短い波である。
風は出ていないので潮の流れの影響であろうと思う。
同時に、夜光虫が光り始めた。黄緑にぽつんぽつんとかなり大きく光るタイプである。
この夜光虫は好きだ。青い細かい夜光虫はよろしくないがこのタイプには良い記憶がある。

そろそろか。
ボトムの釣りは中断しジグヘッド+GULPのまま水面から中層を探る。
ここん。
あたりがあったが外してしまう。
もう一度同じ場所。
同じようにあたり20cmが釣れてくる。テトラにかなり近い場所だ。
反応は出始めたようだ。
テトラに沿って投げる。ギリギリだ。竿を立て、できうる限りのデッドスローで巻いてくる。

とぅるる。

気持ち良いあたり。やや大きいか。良く走ってくれる。
22cm。
このメバルは回遊してきたのか?テトラから出て来たのか?いつもの疑問が湧く。

6月の昼間に穴釣りでメバルを爆釣した事がある。尺まで出た。
ああ、メバルってテトラの中にいて夜出てくるのか。
その時はそう思ったが冬には穴で釣れた事は無い。

どうなんだろう?
ねぇ、舌”くん。

ルアーを替える。ハードルアーで釣りたい。
出て来て頂くか、大御所に。

「多い日夜用 グリーンメタリックレッドヘッド」
沖に投げるが反応はない。やはりまだテトラ際だ。右側のテトラギリギリ。
コツ…ン。と消えそうなあたり。
スウィープにあわせる。乗った。
テトラから引きはがす。ようやくまともなサイズか。
やっぱこのルアーは強い。




25cm。リアフックがくちびるの皮一枚。
なんかものすごくいやいや食ってきたような風情。
「くおかなーくわんとこかなーちょとなめてみようかなーどしよかなー」
などと着いてきてるうちに掛かってしまったのである。かわいそうに。

スポーニング絡みのこの時期、プリかアフターかは興味のあるところ。
この魚はアフターである。腹ペちゃで肛門が少し出ている。
25cmはアフターであるか。じゃあもっと大きいのはどアフターだな…。
基本的にスポーニングは大きなやつから始まるんである。
あくまでも「基本的に」だが。

その後22cm程度が何匹か掛かる。こいつらはみなオスだ。腹は細いが引き締まっている。
1匹23cmが釣れてこれはメスのプリだった。

海況は上向いてきたようだ。
電気浮きが流れてきた。ヤリイカの仕掛けがブレイクしたのだろう。
ぷかぷかとかなりの速度で左から右に流れて行く。いつもの潮だ。動き始めた。
ふと幽霊テトラの方を見るとヤリイカ師が帰って行くところだ。これからなのにぃ。

じゃあ行くか。幽霊テトラ。本当の爆発はそこで起こる。この潮の時に。

幽霊テトラ。
以前にもすこし書いたが2007/1/2に僕はここで幽霊を見たのだ。

信じられない爆釣が続き、そろそろ食いが渋くなりかけた頃。
なぜか仕掛けが次々と切れ始めた。何に引っ掛かったわけでもラインに傷があったわけでもない。
リトリーブしているとふと軽くなり、上げてみるとルアーが無いのだ。
それを何回か繰り返し、???と何度目かの仕掛けを作っている時。

テトラの上で海に背を向けてしゃがみ込んだ僕の横を
白い布が、ふわっとひらめき海に向って通過して行ったのだ。

着物の裾だと思った。
なぜかはっきりと女性だと分かった。
暖かい風圧が頬を洗った。
いらいらした感情がまっすぐに伝わった。

道具を引っつかみ逃げた。汗だくでテトラを渡り岩を登り車に乗り込みエンジンをかけた。
車の時計は0:05。その瞬間はおそらく0:00ぴったり。そのあたりだ。

それ以来真夜中のここには一人では来られなくなった。誰かといっしょに何回か入ったが気持ち悪かった。
その誰か(バーブレス君)がそこで撮った僕の後ろ姿の写真にはびっしりと白い球体が写り込んでいた。

ここだけではない。その数日後、ついさっきまで立っていたテトラでも、夕方、まだ早い時間
釣りをしている僕の耳元に、背後から、小さな女の子の声で

「どうしてなの?」

と聞こえたりした。

あのね。

こっちが聞きたいの。


その後メバルの季節も終わりここには来なくなった。
夏が過ぎ秋が過ぎまた冬がきて少しその記憶が薄くなった頃、僕はまたここに戻ってきた。

なにしろ素晴らしいポイントなのだ。27upが40本なのだ。そちらの記憶が勝ったのだ。

幸いそれからは何も起こっていない。あれはたまたまだったのだ。
何かの「間違ったゆがみ」のようなものだったのだ。
そう思う事にした。していた。


この日。

ルアーをジグヘッド2.6g+GULPベビーサーディンに替える。でかいのはdeepにいる気がした。

「でれば確実にでかい」ラインを何度もしつこく通すがでない。

相変わらずテトラ際を通すと22cm程度ならぽつぽつ釣れる。
かなりの時間を使ってあらゆる角度深さを探り続けるが釣れるのはやはりテトラ際のシャローだけだ。

また1匹23cmのプリが釣れた。ジグヘッド丸呑みだ。




25はアフターで23はプリなんだな。2009/1/28のここはそういうタイミングなのだな。

数メートル程横にテトラを乗り換える。こちらにはテトラ帯からぽつんと離れてひとつテトラが出ている。
この沖側も堅いラインだ。2m程沈めてゆっくりと引いてくる。

もぞ…。

渋い渋いあたりにすかさずあわせを入れる。

どん!

!!でかいか!?

しかしリールを数回巻くとぷっと外れてしまう。

あー。

26か7である。食い方が渋い。

同じラインに再び投げる。何度か通すとまた

もぞ…。

今度はスウィープにあわせた、が、重さが乗った瞬間またぷっと外れた。
同じぐらいの大きさだった。



…明確に見えてきた。

23はプリだ。ジグヘッドも丸呑みにする活性がある。

25はアフターだった。唇一枚だ。活性は低い。

26~7は間違いなくアフターだろう。食いも浅い。GULPでさえ半分しか食わない。フックがかすめるだけだ。

アフターの個体はスポーン直後の疲れでテトラ帯で一服している。
積極的にえさをとる気分では全くない。
しかし目の前を通ればせっかくだからと何となく口を使う。

それ以上の大きさの魚は…。

とっとと沖に行っちゃった。w


wっている場合ではない。いやいやながらでも口を使うのなら何としてでも獲ってやるまでだ。

ジグヘッドを2gに落とす。ワームは…えーと…GULP。これ以外に何があるのだ。


また同じラインを深さを変えて何度も通す。集中する。かなり気合いがはいってきた。乗ってきた。

手に全ての感覚を、髪の毛1本のあたりでも逃すかと集中させる。

極度に集中すると、僕は空を見る。だらんと首の力を抜き、目を半開きにしてぼんやり空を見る。
手にしたロッドとリールは消え、感覚だけが全身を占める。乗ってくるとそうなる。



その時だった。



緑色の花火が上がった。正確に言うと花火の「火の粉」のようなものだった。

50m程沖の海上に、緑色の火の粉が、ひゅぅ~と上がり

放物線を描き下に落ち

落ち切る前に横に移動し、糸を引いてすぅぅ~と消えた。


……。



………なに…?…いまの…。なに?




識者に聞いてみよう。

(1)大槻教授⇒これこそプラズマですよ。冬の日本海には多いんだ。実験でも同じものできるよ。

(2)矢追純一氏⇒これは間違いなくUFOですね~。大きさからして偵察機ですよ。ビデオ撮ったぁ?

(3)稲川淳二氏⇒ぅぁぁあああぁ~やだよ~やだよ~やめてよ~。まずいな~まずいな~。



僕の意見は断然(3)である。間違いない。
背筋にぞくぞくっと悪寒が走った。やばい。逃げろ。
こえ~。こえ~。だめだやっぱり、ここ。

急ぎながらもしっかりと足場を確認してテトラを渡る。一歩一歩岩を登る。足ががくがくしてくる。
車にたどり着く。エンジンをかける。反射的に時計を見た。

23:53。

あと7分いたら、と、思うと…。

2007/1/2も、前触れがいくつもあったのだ。気のせいだと無視していて、0:00を迎えたのだった。



明るいところに行きたい。コンビニに向う。コンビニは信じられないくらい明るい。違う世界だ。
男の焼きそばなどというものを買い車内でむさぼる。気がつくと腹が減っていた。

またあそこに行けるだろうか?自問する。
0:00さえ外せば…。自答する。

…なんて、ばか。

⇒バーブレス君。いっしょに行って下さい。2月は僕月曜全部休みだから。


しかしまだ釣りはしたい。さっきの乗った感覚が残っている。
どこへ行こうかな。
あそこがいいな。明るいし。

僕は「奇跡の海水浴場」に向った。

ここは旅館街の何の変哲もない小さな海水浴場である。
テトラが囲み10m程の開口部がある。
近くの漁港の明かりに照らされ明るい事が長所か。影もたくさんあるし。

こんなところ。



分かる人は分かるね。

しかし、実は、やすやさんの「尺メバルトーナメント」に登録している4本のうち
実に3本がここなのである。1本が海水浴場内で2本が外テトラだ。

海水浴場内で釣れるとなれば車から降りて30秒の場所である。そこで28cmが釣れるのである。
年初にバーブレスさんと訪れた際には開口部で推定尺もばらしている。
奇跡と言わずして何といおうか。

しかし。
この日の状況は幽霊テトラと似たり寄ったり。
20~23cmは数釣れた。23はやはりプリだった。
1本まともなやつ。25cm。



やはりこれもアフターである。
このあたり一帯は今はこんな感じなのである。

午前2時。終了。8時間も釣りをしたのは久しぶりだった。
いろいろあって楽しい日だった。

「ある条件」が来る事が待たれる。
それが来ると水面で爆る25cmのそのボトムに、でかいやつが潜むのだ。

今日も釣りに行く。その条件を探してさまよう事になると思う。


しかしこの釣行以来、体の調子が悪いのだ。肩と首が重く頭痛が激しい。

やだな、と思う。ほんとに。あれは。


TACKLE DATA
ROD/Glamour Rock Fish TR83deep
REEL/EXIST2004
LINE/Daiwa Emeraldas SENSOR 0.5号+7lbフロロ

Moon DATA

コメント (20)
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