またまた久々。
6月はメバルの季節である。でかいのはここで出る。
しかし最近の僕は親アオリに没頭していた。
しかし、釣れない。これだけ集中して打ち込み続けて釣れないのは何なのか?
いない訳ではないと思う。釣る人は釣っている(ポイントのHPのおっちゃんは何なのぉ?)。
ポイントも間違っていないはずだ。スポーニング期のメバルと同じ考え方で良いはずだと考える。
シャローの藻場隣接のdeep。
8月の終わり頃に豆のような子アオリが湧く場所。
そんなところに通い続けたのであるがついにロッドに重量は乗ってこなかった。
いや。海藻はいっぱい釣ったな。あれは重いな。10kg単位で釣ってるはずだw
あ!テク?テクか~、気付かんかったww
いやしかし、秋アオリのでかいのにはそこそこ自信があるのである。
寸前まできてなかなか乗らないアオリを乗せるテクには自分でも時々惚れる。
はぁぁ~。
遠いdeepから伝わってくるであろう海の声に耳を澄ませ続けるのに疲れてしまった。しゃくる腕も痛い。
サポートして下さっているエギメーカーさんへの不義理もじわじわと胸を締めつける。
釣れずに帰って潜り込んだ寝床の中でつくづく思う。
「ああ。癒されたい。誰か癒してぇ。」
僕を癒すもの。それは誰かと問うまでもない。そう。あいつだけである。
メバル。キューティーメバル。
親アオリ一杯釣るまでは浮気はしないと封印していた梅雨メバル。
やるしかないな。行くしかないな。もう、我慢できん。
ピカピカに洗って部屋の隅に片づけていた83deepにラインを通す。
ラインを引っ張りきゅ~っと曲げてそのベリーの粘りを楽しむ。
やっぱ。
これだよな。
皆さまお待たせ。ついにつーが83deepを握ったよw
6/13/18:00。
僕は幽霊テトラに向かった。梅雨メバルはここである。「テトラ」なのである。
海は一見平坦で穏やかに見える。しかし異常に波長の長いうねりが北から押し寄せて来ている。
危険な状況。波長の長いうねりは破壊力が強い。
穏やかに見える海に安心していると急に水位が上がり一気にさらわれる。
しばらく観察していると幽霊テトラはやはり時々波に洗われていた。
立ち位置とするテトラは乾いているがそこに至るまでの道程は新鮮に濡れている。
危険と判断し隣接する大岩に乗ってテトラ帯を見渡す。
海況は抜群である。
テトラから3m程はきれいなサラシ。
その沖10mには「洗剤?」と思うほどの潮目の濃い泡が一直線に延びる。
遥か遠くから続く潮目は蛇行してこのテトラ一帯にぶつかっている。
海中を覗くとキラキラと小魚が見える。何の魚かは分からないが10cm近くあるベイトだ。
これは。wwヤッター!
もらったんでないの?もらってもたんでないの?
100m離れた足場の高い「幽霊テトラ第2ポイント」に入った。海中に突き出したとがった岩の右。
一昨年のここは梅雨メバル天国だった。
まだ明るい海にpintale6を投入する。ベイトが小魚ならこれだ。
たくさん浮かぶブイをよけながらキャスト。そしてリトリーブ。ん!?何事も起こらない、と思ったPicUp寸前。
テトラからシュパーンッ!とロケットのような魚影がPintaleめがけて飛び出した。
が。寸前で止まる。
止まるなぁ!!と軽くトゥイッチを入れて止めた。魚影は安心したように一気にくわえ反転した。
おっし!鋭くあわせを入れる。ドン!と乗った。久方ぶりのメバルの感触。やっぱいいなぁ。感涙。
サイズは?んーそこそこ。
27。
今日は良い。きっと爆る。
2投目。同じライン。また足もとで魚影が走った。
ミノーの釣りでメバルが食う瞬間をはじめて見る。
一気には食ってこない。ルアーに並んでじゃれつく。口は閉じたままだ。
止めてみた。まだ見ている。トゥイッチを入れた。ガンッ!と突進して反転した。あわせた、が…外してしまう。
「こうやって食うのか…」
自然の秘密をのぞき見した気がした。小さな衝撃だ。
覚えのあるあたりの感触を思い浮かべる。
「もぞもぞ、コンッ、ガンッ!!!」
もぞもぞは何だろうと思っていた。じゃれつくのか…?。半信半疑なんだな。きっと。
足もとならテトラ際だ。テトラに平行に引いてみる。しかし2m以内は海藻がびっしり繁茂して釣りにならない。
少し沖の海藻のきわを狙う。
コツンコツンとあたりはある。しかし乗らない。きっとそれはじゃれつくあたりなのである。
見えない遠くではjustのタイミングで効果的に食わせのトゥイッチを入れる事が出来ない。
ゆっくり巻いてトゥイッチ、ゆっくり巻いてトゥイッチを繰り返しタイミングの合う瞬間を待ってみる。
トゥイッチ後のstopで1発ドンッと乗ったがすぐに外れた。掛かりが浅い。
無条件でガッツリ食ってきてくれる活性ではない。「渋い」と感じる。
渋いどころかこの後1時間、急に海は沈黙した。わけが分からない。またしても不思議ちゃん登場だ。
煮えきらない思いで試行錯誤を繰り返すうちに大量の流れ藻が流れ着く。北からだ。
北から??
ここで僕は大きな勘違いをしていた事に気付く。
うねりは北からきている。右から左だ。約20°の浅い角度でテトラ帯をかすめるように洗う。
海流は通常南から来る。左から右だ。例外なくこの場所はそうなのである。
であるから左側に岩が突き出たこのポイントはポイントになりえるのである。
通常エディー(反転流)はこの場所に起こるのである。
確かにうねりは右から来ている。しかしうねりは海水の移動を意味しない。海水の上下動の伝搬に過ぎない。
例えうねりの上に浮かぶものがあってもその力のみでは移動しないのである。うねりはエディーを生まない。
藻を運ぶのは海流である。それが北からきている!?南から来るものと思い込んでいた。
であればエディーはここにはない。食い気のある魚も居ない。
今日はここじゃないんだ…。
荷物を引っつかみテトラを登る。堤防の上を50m程南に移動してテトラに飛び降り、駆け降りた。
ハァハァ。ここだ。きっと。幽霊テトラ第3ポイント。
さっきまで左にあった岩を右に見るポイント。岩から40m南。
エディーはここで発生しているはずだ。
既に日は落ちている。沖にはふたつみっつ漁火があるのみで暗い。空は厚い雲に覆われている。
岩の先端を狙いpintale6をフルキャストした。このルアーの飛距離はちょうどその距離に合う。
ゆっくりリトリーブ。何やらゴゴゴと感触が有り明確なあたりが無いままtipが引き込まれた。
!!。あわせを入れる。きゅ~んと重量が乗った。
27。
よーし。ここ。絶対ここ。爆る。確信した。
ノリにノってキャストを続ける。
岩の中央。そのきわ。リトリーブを開始した瞬間、またしてもtipが引き込まれるあたり。
あわせる。重量が乗る。そしてその重量は27のものではなかった。
でかいっ!!
テトラに近い場所で掛けたので潜られるのが恐い。力任せにゴリ巻きした。
83deepは28までなら水面を引きずって来られる。
しかしこれは無理だ。水面に出せない。水中をじりじりと寄せる。
その感触に、これは行った。と思った。確実だ。と思った。間違いない。
尺だ。
魚を寄せる水中の軌跡が夜光虫で青く光る。ぐぉんぐぉんともがく魚の形もそのまま丸く光って見える。
でけー…。皮膚が粟立つ。
あと5m。
もう少し。
まで来て。
あろうことか。
その尺メバルは一気に海面まで走り派手にえら洗いをやった。やりやがった。
ダダダダダッ!!と全身を震わせる。pintale6はあっけなく空中に弾け飛んだ。
うぁぁぁぁぁぁーーー!!!
虚脱した。なんて事だ。メバルがえら洗い…って。確かにロッドは高く掲げていた。それにしても…。
このままで終わったら僕は立ち直れるであろうかと自問自答しながら釣り続ける。
テトラのきわを狙い過ぎがっちりと根掛かりして切る。
はぁぁぁ。
FGを編み多い日夜用slimX’masホロを結ぶ。
ふと反対側に投げた。長いリトリーブの終わり。足もとでゴツンと来た。あわせる。瞬間、切れた。
tipの位置でPEが切れていた。
ひゃぁぁぁぁーーーー!。X'masホロォォォォ…。(バーブレスく~~~ん。ひま?)
はぁぁぁぁ。
たった一投でまたFGを編み直す。
再びpintale6を結ぶ。(7本持っているw)
気合いを入れ直しまた岩を狙う。
エディーの形を想像した。岩の先端から円形に回り込むその中央を通すイメージを頭に浮かべた。
渓流の岩陰。そこに潜み食料を待ちわびる渓魚。なぜかそれが頭に浮かぶ。
そう。考え方は全く同じだ。
暗い水中を泳ぐpintaleを想像した。目を閉じた。こうべを垂れて祈っている人と同じ姿勢になる。
何投目か。岩のきわではなくリトリーブのほぼ中盤。予期せぬ場所でまたtipが引き込まれた。
何だこのあたりは!?コンッともドンッとも来ない。ぎゅーんと引き込むだけだ。
ロッドを跳ね上げる。テトラに潜られるのを警戒して強めに締めたドラグがチリッと鳴る。
これも。でかい!?
距離が近い。テトラも近い。一気に勝負に出る。ロッドを低くした。イグジストをごりごり巻いた。
魚はずいぶん余力を残して足もとまで来る。慎重に抜き上げた。ラインをつかみ素早く下あごを掴んだ。
ぐりんぐりんとうごめくが絶対落とすかぁと下あごを掴む手に力を込めた。
ヘッドライトを点けた。照らされた魚を見た。やったと思った。行ったと思った。しかし。ん?とも思った。
これは尺だろ。興奮した僕がささやく。
いや、行ってない。あるか、ないか、微妙。冷静な僕がささやく。
すぐに測ってみたいがテトラの上では無理だ。堤防まで上がるのはチャンスを逃す事になりかねない。
魚をバッカンにkeepし釣り続ける事にする。(今考えればバッカンの中で測れば良かったのだ。おろかなw)
しかし心に引っ掛かる事がある。あたり方だ。コンッやドンッが無い。
何となく重くなりゆっくりと持って行く。経験の無いあたり方だ。
喜んで食っているようには感じない。気乗りのせぬままくわえて泳ぐ、感じ???。
ルアーが合っていないのか…。夕方見た小魚を思い出す。10cm近くあった何か。
であればpintale6はやや小さい。
BOXを開けひとつのルアーを取り出す。
CALM80。
スポーニング期にしばらくマイブームとなったルアー。
その後ワームの釣りが主体となり結ぶ事が無くなっていた。
確信の無いままキャストした。
暗闇の中、50mの飛距離を持つこのルアーを40m向こうの岩に向かって投げるのには神経を使う。
直撃したらアウツだ。
着水。一瞬待ってリトリーブ。そこでゴツンッ!!と来た。!!?。ゴツンだ!一発!
あわせる。長い距離を寄せる。それほど大きくない。余裕で寄せる。抜き上げる。照らす。小さい!と感じた。
尺を見ているので感覚がおかしい。このサイズは喜ぶべきだ。しかし小さいと思ってしまう。
28。
今のあたりは強かった。CALM80がはまったのか?
続ける。ゴンッとあたる。乗らない。何度もゴンッとあたる。乗らない。
長いbodyが仇となり乗りにくいのもこのルアーの特徴だ。
しかし強くあたってくる。ゴンッゴンッと。明らかに魚のテンションが違う。
やはりこれか…。でかいベイトを食っているのか!?
岩の先端をかすめる方向にフルキャストした。着水は見えないが岩の向こうまで届いているはずだ。
数メートル巻く。そろそろ先端をかすめ、内側に入ってくる、であろうと想像した。
暗闇での釣りは想像により成り立つ。
ドスンッ!!
砂袋を落としたような強烈なあたりが83deepを襲う。何だっ!?慌ててあわせる。
重量を感じた瞬間、ドラグがジッジッジィーーーー!!と鳴いた。がち締めのドラグが5m程一気に出された。
!!!!!。
一瞬シーバスかと思ったが違う。メバルだ。やばい。でかい。さっきの推定尺より明らかに大きい。
32?33?
冷静になろうと努めた。慌てるなと言い聞かせた。これは獲ると決心した。
これを獲らねば間違いなく後悔する。
テトラからの距離は遠い。オープンウォーターである。
ゆっくり寄せる。ロッドは寝かす。時々の突っ込みにドラグがジッと鳴く。もう少しだ。胸が高鳴る。
足元まで来た。重さを確認する。さっきより確実に重い。ライトで照らしたいがそれは我慢する。
祈るように抜き上げた。ラインを手に取った。
暗闇の中、わずかなシルエットでテールフック一本が掛かっているのみである事を知る。やばい!
あわててCALM80を掴んだ。
瞬間その大きなメバルは身をよじった。その衝撃でフックが外れた。テトラの間にぽちゃんと落ちた。
ぞわっ…。毛穴が開いた。
ああああああああーーーーーーぁぁぁ!!!
ほんとに声を出して「ああああああああーーーーーーぁぁぁ!!!」と叫んだ。叫ばざるを得なかった。
しばらく放心する。落ちたテトラの隙間を照らす。海藻が揺れている。
なんて事……。
こんな事が……。
もう一生釣れないかもしれないサイズ……。紛う事無きメモリアルフィッシュ…。
僕の釣りの最大の欠点はランディングである。寸前で落とした推定尺upは両手では足りない。
網必要だな…。もう決めた。網買お。またまたまたまた思った。
しかし良い網が無いのである。
仕舞い寸法50cm。全長4m。網径40cm。目の細かい網。そしてかっこいいの。
どなたか作っていただけませんか。
その後、その喪失を取り戻すべく投げ続けた。
やり直そ。僕が悪かったから。もう一度だけ、ね。チャンスをくれんかな。ね。お願い。頼む。
往生際悪く、未練がましく、みっともなくも1時間投げ続けた。
しかし。それきり。失ったものは帰ってこなかった。
はぁぁぁぁ~。海よりも深い溜め息をつく。
ゆっくりと重々しくテトラをよじ登る。後ろ髪を何かが引っ張る。心霊現象ではなく。
堤防に上がる。そこでさっき釣った「尺?」を測った。
29.5cm…。何度測っても29.5…。
はぁぁぁぁぁぁ~。いわゆる泣き尺。
これはもう。
泣きじゃくるしかないではないか。
TACKLE DATA
ROD/Glamour Rock Fish TR83deep
REEL/EXIST2004
LINE/VARIVAS light game MEBARU PE0.4+6lbフロロ
LURE/pintale6,CALM80
MOON DATA
6月はメバルの季節である。でかいのはここで出る。
しかし最近の僕は親アオリに没頭していた。
しかし、釣れない。これだけ集中して打ち込み続けて釣れないのは何なのか?
いない訳ではないと思う。釣る人は釣っている(ポイントのHPのおっちゃんは何なのぉ?)。
ポイントも間違っていないはずだ。スポーニング期のメバルと同じ考え方で良いはずだと考える。
シャローの藻場隣接のdeep。
8月の終わり頃に豆のような子アオリが湧く場所。
そんなところに通い続けたのであるがついにロッドに重量は乗ってこなかった。
いや。海藻はいっぱい釣ったな。あれは重いな。10kg単位で釣ってるはずだw
あ!テク?テクか~、気付かんかったww
いやしかし、秋アオリのでかいのにはそこそこ自信があるのである。
寸前まできてなかなか乗らないアオリを乗せるテクには自分でも時々惚れる。
はぁぁ~。
遠いdeepから伝わってくるであろう海の声に耳を澄ませ続けるのに疲れてしまった。しゃくる腕も痛い。
サポートして下さっているエギメーカーさんへの不義理もじわじわと胸を締めつける。
釣れずに帰って潜り込んだ寝床の中でつくづく思う。
「ああ。癒されたい。誰か癒してぇ。」
僕を癒すもの。それは誰かと問うまでもない。そう。あいつだけである。
メバル。キューティーメバル。
親アオリ一杯釣るまでは浮気はしないと封印していた梅雨メバル。
やるしかないな。行くしかないな。もう、我慢できん。
ピカピカに洗って部屋の隅に片づけていた83deepにラインを通す。
ラインを引っ張りきゅ~っと曲げてそのベリーの粘りを楽しむ。
やっぱ。
これだよな。
皆さまお待たせ。ついにつーが83deepを握ったよw
6/13/18:00。
僕は幽霊テトラに向かった。梅雨メバルはここである。「テトラ」なのである。
海は一見平坦で穏やかに見える。しかし異常に波長の長いうねりが北から押し寄せて来ている。
危険な状況。波長の長いうねりは破壊力が強い。
穏やかに見える海に安心していると急に水位が上がり一気にさらわれる。
しばらく観察していると幽霊テトラはやはり時々波に洗われていた。
立ち位置とするテトラは乾いているがそこに至るまでの道程は新鮮に濡れている。
危険と判断し隣接する大岩に乗ってテトラ帯を見渡す。
海況は抜群である。
テトラから3m程はきれいなサラシ。
その沖10mには「洗剤?」と思うほどの潮目の濃い泡が一直線に延びる。
遥か遠くから続く潮目は蛇行してこのテトラ一帯にぶつかっている。
海中を覗くとキラキラと小魚が見える。何の魚かは分からないが10cm近くあるベイトだ。
これは。wwヤッター!
もらったんでないの?もらってもたんでないの?
100m離れた足場の高い「幽霊テトラ第2ポイント」に入った。海中に突き出したとがった岩の右。
一昨年のここは梅雨メバル天国だった。
まだ明るい海にpintale6を投入する。ベイトが小魚ならこれだ。
たくさん浮かぶブイをよけながらキャスト。そしてリトリーブ。ん!?何事も起こらない、と思ったPicUp寸前。
テトラからシュパーンッ!とロケットのような魚影がPintaleめがけて飛び出した。
が。寸前で止まる。
止まるなぁ!!と軽くトゥイッチを入れて止めた。魚影は安心したように一気にくわえ反転した。
おっし!鋭くあわせを入れる。ドン!と乗った。久方ぶりのメバルの感触。やっぱいいなぁ。感涙。
サイズは?んーそこそこ。
27。
今日は良い。きっと爆る。
2投目。同じライン。また足もとで魚影が走った。
ミノーの釣りでメバルが食う瞬間をはじめて見る。
一気には食ってこない。ルアーに並んでじゃれつく。口は閉じたままだ。
止めてみた。まだ見ている。トゥイッチを入れた。ガンッ!と突進して反転した。あわせた、が…外してしまう。
「こうやって食うのか…」
自然の秘密をのぞき見した気がした。小さな衝撃だ。
覚えのあるあたりの感触を思い浮かべる。
「もぞもぞ、コンッ、ガンッ!!!」
もぞもぞは何だろうと思っていた。じゃれつくのか…?。半信半疑なんだな。きっと。
足もとならテトラ際だ。テトラに平行に引いてみる。しかし2m以内は海藻がびっしり繁茂して釣りにならない。
少し沖の海藻のきわを狙う。
コツンコツンとあたりはある。しかし乗らない。きっとそれはじゃれつくあたりなのである。
見えない遠くではjustのタイミングで効果的に食わせのトゥイッチを入れる事が出来ない。
ゆっくり巻いてトゥイッチ、ゆっくり巻いてトゥイッチを繰り返しタイミングの合う瞬間を待ってみる。
トゥイッチ後のstopで1発ドンッと乗ったがすぐに外れた。掛かりが浅い。
無条件でガッツリ食ってきてくれる活性ではない。「渋い」と感じる。
渋いどころかこの後1時間、急に海は沈黙した。わけが分からない。またしても不思議ちゃん登場だ。
煮えきらない思いで試行錯誤を繰り返すうちに大量の流れ藻が流れ着く。北からだ。
北から??
ここで僕は大きな勘違いをしていた事に気付く。
うねりは北からきている。右から左だ。約20°の浅い角度でテトラ帯をかすめるように洗う。
海流は通常南から来る。左から右だ。例外なくこの場所はそうなのである。
であるから左側に岩が突き出たこのポイントはポイントになりえるのである。
通常エディー(反転流)はこの場所に起こるのである。
確かにうねりは右から来ている。しかしうねりは海水の移動を意味しない。海水の上下動の伝搬に過ぎない。
例えうねりの上に浮かぶものがあってもその力のみでは移動しないのである。うねりはエディーを生まない。
藻を運ぶのは海流である。それが北からきている!?南から来るものと思い込んでいた。
であればエディーはここにはない。食い気のある魚も居ない。
今日はここじゃないんだ…。
荷物を引っつかみテトラを登る。堤防の上を50m程南に移動してテトラに飛び降り、駆け降りた。
ハァハァ。ここだ。きっと。幽霊テトラ第3ポイント。
さっきまで左にあった岩を右に見るポイント。岩から40m南。
エディーはここで発生しているはずだ。
既に日は落ちている。沖にはふたつみっつ漁火があるのみで暗い。空は厚い雲に覆われている。
岩の先端を狙いpintale6をフルキャストした。このルアーの飛距離はちょうどその距離に合う。
ゆっくりリトリーブ。何やらゴゴゴと感触が有り明確なあたりが無いままtipが引き込まれた。
!!。あわせを入れる。きゅ~んと重量が乗った。
27。
よーし。ここ。絶対ここ。爆る。確信した。
ノリにノってキャストを続ける。
岩の中央。そのきわ。リトリーブを開始した瞬間、またしてもtipが引き込まれるあたり。
あわせる。重量が乗る。そしてその重量は27のものではなかった。
でかいっ!!
テトラに近い場所で掛けたので潜られるのが恐い。力任せにゴリ巻きした。
83deepは28までなら水面を引きずって来られる。
しかしこれは無理だ。水面に出せない。水中をじりじりと寄せる。
その感触に、これは行った。と思った。確実だ。と思った。間違いない。
尺だ。
魚を寄せる水中の軌跡が夜光虫で青く光る。ぐぉんぐぉんともがく魚の形もそのまま丸く光って見える。
でけー…。皮膚が粟立つ。
あと5m。
もう少し。
まで来て。
あろうことか。
その尺メバルは一気に海面まで走り派手にえら洗いをやった。やりやがった。
ダダダダダッ!!と全身を震わせる。pintale6はあっけなく空中に弾け飛んだ。
うぁぁぁぁぁぁーーー!!!
虚脱した。なんて事だ。メバルがえら洗い…って。確かにロッドは高く掲げていた。それにしても…。
このままで終わったら僕は立ち直れるであろうかと自問自答しながら釣り続ける。
テトラのきわを狙い過ぎがっちりと根掛かりして切る。
はぁぁぁ。
FGを編み多い日夜用slimX’masホロを結ぶ。
ふと反対側に投げた。長いリトリーブの終わり。足もとでゴツンと来た。あわせる。瞬間、切れた。
tipの位置でPEが切れていた。
ひゃぁぁぁぁーーーー!。X'masホロォォォォ…。(バーブレスく~~~ん。ひま?)
はぁぁぁぁ。
たった一投でまたFGを編み直す。
再びpintale6を結ぶ。(7本持っているw)
気合いを入れ直しまた岩を狙う。
エディーの形を想像した。岩の先端から円形に回り込むその中央を通すイメージを頭に浮かべた。
渓流の岩陰。そこに潜み食料を待ちわびる渓魚。なぜかそれが頭に浮かぶ。
そう。考え方は全く同じだ。
暗い水中を泳ぐpintaleを想像した。目を閉じた。こうべを垂れて祈っている人と同じ姿勢になる。
何投目か。岩のきわではなくリトリーブのほぼ中盤。予期せぬ場所でまたtipが引き込まれた。
何だこのあたりは!?コンッともドンッとも来ない。ぎゅーんと引き込むだけだ。
ロッドを跳ね上げる。テトラに潜られるのを警戒して強めに締めたドラグがチリッと鳴る。
これも。でかい!?
距離が近い。テトラも近い。一気に勝負に出る。ロッドを低くした。イグジストをごりごり巻いた。
魚はずいぶん余力を残して足もとまで来る。慎重に抜き上げた。ラインをつかみ素早く下あごを掴んだ。
ぐりんぐりんとうごめくが絶対落とすかぁと下あごを掴む手に力を込めた。
ヘッドライトを点けた。照らされた魚を見た。やったと思った。行ったと思った。しかし。ん?とも思った。
これは尺だろ。興奮した僕がささやく。
いや、行ってない。あるか、ないか、微妙。冷静な僕がささやく。
すぐに測ってみたいがテトラの上では無理だ。堤防まで上がるのはチャンスを逃す事になりかねない。
魚をバッカンにkeepし釣り続ける事にする。(今考えればバッカンの中で測れば良かったのだ。おろかなw)
しかし心に引っ掛かる事がある。あたり方だ。コンッやドンッが無い。
何となく重くなりゆっくりと持って行く。経験の無いあたり方だ。
喜んで食っているようには感じない。気乗りのせぬままくわえて泳ぐ、感じ???。
ルアーが合っていないのか…。夕方見た小魚を思い出す。10cm近くあった何か。
であればpintale6はやや小さい。
BOXを開けひとつのルアーを取り出す。
CALM80。
スポーニング期にしばらくマイブームとなったルアー。
その後ワームの釣りが主体となり結ぶ事が無くなっていた。
確信の無いままキャストした。
暗闇の中、50mの飛距離を持つこのルアーを40m向こうの岩に向かって投げるのには神経を使う。
直撃したらアウツだ。
着水。一瞬待ってリトリーブ。そこでゴツンッ!!と来た。!!?。ゴツンだ!一発!
あわせる。長い距離を寄せる。それほど大きくない。余裕で寄せる。抜き上げる。照らす。小さい!と感じた。
尺を見ているので感覚がおかしい。このサイズは喜ぶべきだ。しかし小さいと思ってしまう。
28。
今のあたりは強かった。CALM80がはまったのか?
続ける。ゴンッとあたる。乗らない。何度もゴンッとあたる。乗らない。
長いbodyが仇となり乗りにくいのもこのルアーの特徴だ。
しかし強くあたってくる。ゴンッゴンッと。明らかに魚のテンションが違う。
やはりこれか…。でかいベイトを食っているのか!?
岩の先端をかすめる方向にフルキャストした。着水は見えないが岩の向こうまで届いているはずだ。
数メートル巻く。そろそろ先端をかすめ、内側に入ってくる、であろうと想像した。
暗闇での釣りは想像により成り立つ。
ドスンッ!!
砂袋を落としたような強烈なあたりが83deepを襲う。何だっ!?慌ててあわせる。
重量を感じた瞬間、ドラグがジッジッジィーーーー!!と鳴いた。がち締めのドラグが5m程一気に出された。
!!!!!。
一瞬シーバスかと思ったが違う。メバルだ。やばい。でかい。さっきの推定尺より明らかに大きい。
32?33?
冷静になろうと努めた。慌てるなと言い聞かせた。これは獲ると決心した。
これを獲らねば間違いなく後悔する。
テトラからの距離は遠い。オープンウォーターである。
ゆっくり寄せる。ロッドは寝かす。時々の突っ込みにドラグがジッと鳴く。もう少しだ。胸が高鳴る。
足元まで来た。重さを確認する。さっきより確実に重い。ライトで照らしたいがそれは我慢する。
祈るように抜き上げた。ラインを手に取った。
暗闇の中、わずかなシルエットでテールフック一本が掛かっているのみである事を知る。やばい!
あわててCALM80を掴んだ。
瞬間その大きなメバルは身をよじった。その衝撃でフックが外れた。テトラの間にぽちゃんと落ちた。
ぞわっ…。毛穴が開いた。
ああああああああーーーーーーぁぁぁ!!!
ほんとに声を出して「ああああああああーーーーーーぁぁぁ!!!」と叫んだ。叫ばざるを得なかった。
しばらく放心する。落ちたテトラの隙間を照らす。海藻が揺れている。
なんて事……。
こんな事が……。
もう一生釣れないかもしれないサイズ……。紛う事無きメモリアルフィッシュ…。
僕の釣りの最大の欠点はランディングである。寸前で落とした推定尺upは両手では足りない。
網必要だな…。もう決めた。網買お。またまたまたまた思った。
しかし良い網が無いのである。
仕舞い寸法50cm。全長4m。網径40cm。目の細かい網。そしてかっこいいの。
どなたか作っていただけませんか。
その後、その喪失を取り戻すべく投げ続けた。
やり直そ。僕が悪かったから。もう一度だけ、ね。チャンスをくれんかな。ね。お願い。頼む。
往生際悪く、未練がましく、みっともなくも1時間投げ続けた。
しかし。それきり。失ったものは帰ってこなかった。
はぁぁぁぁ~。海よりも深い溜め息をつく。
ゆっくりと重々しくテトラをよじ登る。後ろ髪を何かが引っ張る。心霊現象ではなく。
堤防に上がる。そこでさっき釣った「尺?」を測った。
29.5cm…。何度測っても29.5…。
はぁぁぁぁぁぁ~。いわゆる泣き尺。
これはもう。
泣きじゃくるしかないではないか。
TACKLE DATA
ROD/Glamour Rock Fish TR83deep
REEL/EXIST2004
LINE/VARIVAS light game MEBARU PE0.4+6lbフロロ
LURE/pintale6,CALM80
MOON DATA