久々。
いろいろあった4月。
釣りどころではない日々が続き、海に立ったのはyasuくんの船が2回と岩壁の向こうに1回だけだった。
それもなにかのめり込めないものを背負いながらの釣り。
しかしようやく心根も生活も落ち着きはじめた今日最近。
この休みはコアユを探してメバろうと思っていたのだがするとまたこの天気だ。
雨か。
雨ね。
春の雨。
じゃあ、あれだな。あいつだ。やすや倶楽部の常連さんのブログにもぽつぽつ顔を見せはじめている。
そう。ナマズぅ。
何を隠そう僕はナマズフリークでもあるのだ。
僕とナマズの出会いは9歳の頃に溯る。
その頃三国に住んでいた僕は来る日も来る日も海に川にと釣りに明け暮れる日々を送っていた。
その頃の僕の淡水の釣り場は田園地帯を流れる幅5m程の用水路だった。
その川ではなんと、信じてもらえるだろうか、イトヨが釣れるのである。
きれいな川ではない。緑色のとろりとした水の流れる変哲もない用水路なのである。
子供のくせにホソの小物釣りなどという渋い境地に味わいを感じていた僕は
シモリ浮きにミミズの仕掛けでイトヨ道にのめり込んでいた。
銀色にぴらぴらと輝きトゲだけの背びれを持つその5cm足らずの美しい魚は僕を夢中にした。
小さな口に針をかける難しさを持つこの魚は僕の探求心に火をつけたのである。
ある日。
いつものポイントでイトヨを釣っているとシモリ浮きがゆっくりと斜めに沈んで行った。
イトヨのあたりとは全く違うその浮きの動き(今でも目に浮かぶ)。
ん?とあわせを入れるととてつもない重量が安物ののべ竿を襲った。
わぁぁぁー!!!
イトヨの繊細な引きしか予想していない僕はパニックに陥る。どうして良いか分からない。
両手で必死に竿にしがみつき為す術も分からず硬直する。経験のない引きだった。
間も無く水面にごぉぉばぁぁ!!と姿を現したその「とてつもない」魚はナマズだった。憧れの魚だった。
!?!!!!ななななまずぅーーーーー!!!
余計にパニックに陥ってしまった僕は何を思ったか竿を投げ捨て糸を直接手に取る。
竿の役割なんて理解していなかった。
そして当然、わずか1号の「銀鱗」はショックを吸収する余地を失いあっけなく切れた。
あーーーぁぁぁぁ!
持って行き場のない感情にその辺をうろうろと歩き回る。竿を手に取り切れた糸を見つめる。
その日は夜も眠れなかった。学校でも家でもナマズの事ばかり考えた。会う人みんなに言って歩いた。
僕はその時、図らずも、釣りの上達において最も重要な要素を覚える事となる。
「悔しさと後悔」
後日友人達と大挙してその川に押しかけ「ナマズ退治」を行なった。
金持ちの旅館の息子の友人がその頃見た事もなかったベイトロッドとクローズドフェイスリールとスプーンを使い見事ナマズを釣り上げた。そのナマズは僕のナマズだぁと叫びたかった。悔しくて悔しくて仕方なかった。のべ竿がくずに見えた。
そしてもうひとつの要素を覚えたのである。みんなも覚えがあると思う。隠してるけどw
「嫉妬」
僕のその後の釣り人生においてこれが最大のエポックメイキングである。
次元を越えて釣りにのめり込ませる事となった。
悔恨と嫉妬。
そこから直接今に繋がる。3歳の頃から釣りはしているが端緒はこの1匹のナマズなのである。
時が流れ、中学生になり、鯖江に居を移した僕はパラダイスを発見する。
田園地帯のある用水路。えん堤の下。産卵期に川を溯りもうそれ以上上れないナマズ達はそこに溜まっていた。
梅雨の増水のド茶濁りのその用水路で友人すえもんと共に釣りまくった。
のべ竿と太いラインと鯉針にえさは田んぼで捕まえたイナゴである。
もう無限に釣れる。20本以上釣る。濁って見えないが川底はナマズに埋め尽くされているかと思えた。
足場の高いその場所でカツオの一本釣りのようにぽんぽんと僕達はナマズを抜き上げる。
スカリに入れると上から下までぎゅうぎゅう詰めで持ち上がらなかった。
そこは有名な場所のようだった。
岐阜の川魚問屋のおっちゃんがわざわざそんなところまで来てひっかけ針でナマズをさらって行ったりした。
適当に流す引っかけ針で掛かる程いるのである。
そしてまた時は流れる。毎年春から梅雨にかけてこの川を訪れナマズを釣る。魚影はずいぶん薄くなった。
原点を見るような気がする釣りに、色々な事を考えながらロッドを振る。
「竿」は「ロッド」に名前を変えた。今はルアーだ。
しかし何も変わっていない。つくづく変わっていない。ナマズを釣ると良く分かる。
開高健が書いている。あるアメリカ人釣り師の言葉。
「大人と子供の違いは持っているおもちゃの値段の違いに過ぎない」
苦笑するほど、その通りだ。
2009/4/25。
今年の初ナマズ。もういるかな?と川を覗く。雨と苗代でマッディーウォーター。
良い事である。目の良くないナマズに水の透明度はあまり影響を与えない。
むしろ夜行性のナマズにとって濁った水は水中の光度を下げ昼間から活動する動機づけとなる。
3mの足場。川幅は8m程か。ポイントは対岸のシャロー。水深は約50cmで流れはない。
その対岸のコンクリートブロックのその際にやつらは潜んでいる。いつも同じ場所にいるんである。
バーブレスくんやどーよさんはスピナーでナマズを釣るのを得意としているようだが
足場が高く浅いこのポイントではハードルアーを引く事が出来ない。
水中にはいろんなもの(自転車やパチンコ台w)が沈んでいて根掛かりも激しい。
僕がここで使うのはテキサスリグである。ピッチングで対岸に送り込みピンポイントを打って行く。
ロッドはデスのF3-61X(HT800だよ)。
いつもはF6-69X(どーせHT800さ。初代さ。)を使うのだが今日は何となくこのライトなロッドを選んだ。
ワームはパラマックス4inch。波動が肝のナマズ釣りではグラブ系がやはり強い。まあ何でもいいんだけどね。
ワームフックのかえしは潰す。巨大なフックは致命傷になりかねないのである。
1投目。ここは必ず出る!ガチなピンスポットにそっと送り込む。
護岸から生えた雑草の影に必ず1匹潜んでいるのである。その雑草にルアーが乗った。
軽くゆすってルアーを落とす。ラインは雑草に掛かったままだ。狙い通り。
雑草を支点に静かに上下動を繰り返すとゴゴゴゴン!!といきなりあたった。おっしゃ1発!
約1年ぶりのナマズのファイト。これはなかなかでかい。その滑らかな引きを楽しむ。
マッディーウォーターのナマズは金色をしている。金色が渦を巻く。
ナマズは必死である。必死さが一番良く見えるのはナマズである。トルクフルなファイト。
しかし長続きしない。あっけなく裏返りあえぎはじめる。
腰を落とす。巻けるところまでリールを巻く。そして全身でそいやっと抜き上げる。
柔らかい草むらにそっと落とされたナマズはぬらりぺたりとのたうちまわる。
なかなかでかい。手尺で測ると60cmを少し越えたあたり。既に腹は卵で満ちている。
ナマズ。キモカワユスw
少し川を下ると田んぼへの取水口がありそこにはしごが設置されている。それを降りてそっとリリース。
大きなお母さんはつるりと水に馴染んで姿を消した。
気を良くして釣り続ける。
このポイントは狭い。50m程の距離しかない。その対岸を50cm刻みでピッチングで打っていく。
なかなか出ない。昔はどこでも釣れたのであるが。
この魚影の薄くなり具合は何なのであろうか?水質か?何なのか?分からない。
釣り上がって行きあるピンポイントに差し掛かる。無造作に捨てられたU字構が2本。
これは中学時代から変わらずそこにある。25年も続けてポイントであり続けている。なんてポテンシャル。
集中してピンのピンを狙う。上手く入った。入った瞬間ラインがすーと移動した。
ていっ!クラッチを繋ぐのと同時にあわせを入れる。再びF3-61Xに重量が乗った。
ナマズはごんごんごんとは引かない。
段のない重量の疾走があるだけだ。全身で水を捕まえロスなく滑らかに走る。
9歳の僕を硬直させたその重量感。しかし今はもう余裕だ。おもちゃの値段が違うのだw
これもなかなかのサイズ。ここのナマズはでかい。過去には70cmまで出ている。マナマズのサイズだろうか。
60を少し切る辺り。
U字構がこのポイントの最上流にあたる。それ以上狙うべきピンはない。ここで終了とする。
雑草で始まりU字構で終わる。いつも同じ。釣れる場所は決まっていてプロセスなんてない釣りだ。
しかしそこには安心感があるのである。今年も去年も一昨年もそのずっと前から同じ場所にナマズはいる。
季節が何度巡っても変わらず同じ事を繰り返せるのは幸せな事だ。
魚影は確かに薄くはなった。でも、ナマズ釣りしかの川はまだ生きている。
TACKLE DATA
ROD/DESTROYER F3-61X "SPEED TIP CUSTOM"
REEL/Millionaier CV-Z 103L "Club M"
LINE/VARIVAS game 16lb
LURE/PARAMAX4inch+1/2oz TEXAS
いろいろあった4月。
釣りどころではない日々が続き、海に立ったのはyasuくんの船が2回と岩壁の向こうに1回だけだった。
それもなにかのめり込めないものを背負いながらの釣り。
しかしようやく心根も生活も落ち着きはじめた今日最近。
この休みはコアユを探してメバろうと思っていたのだがするとまたこの天気だ。
雨か。
雨ね。
春の雨。
じゃあ、あれだな。あいつだ。やすや倶楽部の常連さんのブログにもぽつぽつ顔を見せはじめている。
そう。ナマズぅ。
何を隠そう僕はナマズフリークでもあるのだ。
僕とナマズの出会いは9歳の頃に溯る。
その頃三国に住んでいた僕は来る日も来る日も海に川にと釣りに明け暮れる日々を送っていた。
その頃の僕の淡水の釣り場は田園地帯を流れる幅5m程の用水路だった。
その川ではなんと、信じてもらえるだろうか、イトヨが釣れるのである。
きれいな川ではない。緑色のとろりとした水の流れる変哲もない用水路なのである。
子供のくせにホソの小物釣りなどという渋い境地に味わいを感じていた僕は
シモリ浮きにミミズの仕掛けでイトヨ道にのめり込んでいた。
銀色にぴらぴらと輝きトゲだけの背びれを持つその5cm足らずの美しい魚は僕を夢中にした。
小さな口に針をかける難しさを持つこの魚は僕の探求心に火をつけたのである。
ある日。
いつものポイントでイトヨを釣っているとシモリ浮きがゆっくりと斜めに沈んで行った。
イトヨのあたりとは全く違うその浮きの動き(今でも目に浮かぶ)。
ん?とあわせを入れるととてつもない重量が安物ののべ竿を襲った。
わぁぁぁー!!!
イトヨの繊細な引きしか予想していない僕はパニックに陥る。どうして良いか分からない。
両手で必死に竿にしがみつき為す術も分からず硬直する。経験のない引きだった。
間も無く水面にごぉぉばぁぁ!!と姿を現したその「とてつもない」魚はナマズだった。憧れの魚だった。
!?!!!!ななななまずぅーーーーー!!!
余計にパニックに陥ってしまった僕は何を思ったか竿を投げ捨て糸を直接手に取る。
竿の役割なんて理解していなかった。
そして当然、わずか1号の「銀鱗」はショックを吸収する余地を失いあっけなく切れた。
あーーーぁぁぁぁ!
持って行き場のない感情にその辺をうろうろと歩き回る。竿を手に取り切れた糸を見つめる。
その日は夜も眠れなかった。学校でも家でもナマズの事ばかり考えた。会う人みんなに言って歩いた。
僕はその時、図らずも、釣りの上達において最も重要な要素を覚える事となる。
「悔しさと後悔」
後日友人達と大挙してその川に押しかけ「ナマズ退治」を行なった。
金持ちの旅館の息子の友人がその頃見た事もなかったベイトロッドとクローズドフェイスリールとスプーンを使い見事ナマズを釣り上げた。そのナマズは僕のナマズだぁと叫びたかった。悔しくて悔しくて仕方なかった。のべ竿がくずに見えた。
そしてもうひとつの要素を覚えたのである。みんなも覚えがあると思う。隠してるけどw
「嫉妬」
僕のその後の釣り人生においてこれが最大のエポックメイキングである。
次元を越えて釣りにのめり込ませる事となった。
悔恨と嫉妬。
そこから直接今に繋がる。3歳の頃から釣りはしているが端緒はこの1匹のナマズなのである。
時が流れ、中学生になり、鯖江に居を移した僕はパラダイスを発見する。
田園地帯のある用水路。えん堤の下。産卵期に川を溯りもうそれ以上上れないナマズ達はそこに溜まっていた。
梅雨の増水のド茶濁りのその用水路で友人すえもんと共に釣りまくった。
のべ竿と太いラインと鯉針にえさは田んぼで捕まえたイナゴである。
もう無限に釣れる。20本以上釣る。濁って見えないが川底はナマズに埋め尽くされているかと思えた。
足場の高いその場所でカツオの一本釣りのようにぽんぽんと僕達はナマズを抜き上げる。
スカリに入れると上から下までぎゅうぎゅう詰めで持ち上がらなかった。
そこは有名な場所のようだった。
岐阜の川魚問屋のおっちゃんがわざわざそんなところまで来てひっかけ針でナマズをさらって行ったりした。
適当に流す引っかけ針で掛かる程いるのである。
そしてまた時は流れる。毎年春から梅雨にかけてこの川を訪れナマズを釣る。魚影はずいぶん薄くなった。
原点を見るような気がする釣りに、色々な事を考えながらロッドを振る。
「竿」は「ロッド」に名前を変えた。今はルアーだ。
しかし何も変わっていない。つくづく変わっていない。ナマズを釣ると良く分かる。
開高健が書いている。あるアメリカ人釣り師の言葉。
「大人と子供の違いは持っているおもちゃの値段の違いに過ぎない」
苦笑するほど、その通りだ。
2009/4/25。
今年の初ナマズ。もういるかな?と川を覗く。雨と苗代でマッディーウォーター。
良い事である。目の良くないナマズに水の透明度はあまり影響を与えない。
むしろ夜行性のナマズにとって濁った水は水中の光度を下げ昼間から活動する動機づけとなる。
3mの足場。川幅は8m程か。ポイントは対岸のシャロー。水深は約50cmで流れはない。
その対岸のコンクリートブロックのその際にやつらは潜んでいる。いつも同じ場所にいるんである。
バーブレスくんやどーよさんはスピナーでナマズを釣るのを得意としているようだが
足場が高く浅いこのポイントではハードルアーを引く事が出来ない。
水中にはいろんなもの(自転車やパチンコ台w)が沈んでいて根掛かりも激しい。
僕がここで使うのはテキサスリグである。ピッチングで対岸に送り込みピンポイントを打って行く。
ロッドはデスのF3-61X(HT800だよ)。
いつもはF6-69X(どーせHT800さ。初代さ。)を使うのだが今日は何となくこのライトなロッドを選んだ。
ワームはパラマックス4inch。波動が肝のナマズ釣りではグラブ系がやはり強い。まあ何でもいいんだけどね。
ワームフックのかえしは潰す。巨大なフックは致命傷になりかねないのである。
1投目。ここは必ず出る!ガチなピンスポットにそっと送り込む。
護岸から生えた雑草の影に必ず1匹潜んでいるのである。その雑草にルアーが乗った。
軽くゆすってルアーを落とす。ラインは雑草に掛かったままだ。狙い通り。
雑草を支点に静かに上下動を繰り返すとゴゴゴゴン!!といきなりあたった。おっしゃ1発!
約1年ぶりのナマズのファイト。これはなかなかでかい。その滑らかな引きを楽しむ。
マッディーウォーターのナマズは金色をしている。金色が渦を巻く。
ナマズは必死である。必死さが一番良く見えるのはナマズである。トルクフルなファイト。
しかし長続きしない。あっけなく裏返りあえぎはじめる。
腰を落とす。巻けるところまでリールを巻く。そして全身でそいやっと抜き上げる。
柔らかい草むらにそっと落とされたナマズはぬらりぺたりとのたうちまわる。
なかなかでかい。手尺で測ると60cmを少し越えたあたり。既に腹は卵で満ちている。
ナマズ。キモカワユスw
少し川を下ると田んぼへの取水口がありそこにはしごが設置されている。それを降りてそっとリリース。
大きなお母さんはつるりと水に馴染んで姿を消した。
気を良くして釣り続ける。
このポイントは狭い。50m程の距離しかない。その対岸を50cm刻みでピッチングで打っていく。
なかなか出ない。昔はどこでも釣れたのであるが。
この魚影の薄くなり具合は何なのであろうか?水質か?何なのか?分からない。
釣り上がって行きあるピンポイントに差し掛かる。無造作に捨てられたU字構が2本。
これは中学時代から変わらずそこにある。25年も続けてポイントであり続けている。なんてポテンシャル。
集中してピンのピンを狙う。上手く入った。入った瞬間ラインがすーと移動した。
ていっ!クラッチを繋ぐのと同時にあわせを入れる。再びF3-61Xに重量が乗った。
ナマズはごんごんごんとは引かない。
段のない重量の疾走があるだけだ。全身で水を捕まえロスなく滑らかに走る。
9歳の僕を硬直させたその重量感。しかし今はもう余裕だ。おもちゃの値段が違うのだw
これもなかなかのサイズ。ここのナマズはでかい。過去には70cmまで出ている。マナマズのサイズだろうか。
60を少し切る辺り。
U字構がこのポイントの最上流にあたる。それ以上狙うべきピンはない。ここで終了とする。
雑草で始まりU字構で終わる。いつも同じ。釣れる場所は決まっていてプロセスなんてない釣りだ。
しかしそこには安心感があるのである。今年も去年も一昨年もそのずっと前から同じ場所にナマズはいる。
季節が何度巡っても変わらず同じ事を繰り返せるのは幸せな事だ。
魚影は確かに薄くはなった。でも、ナマズ釣りしかの川はまだ生きている。
TACKLE DATA
ROD/DESTROYER F3-61X "SPEED TIP CUSTOM"
REEL/Millionaier CV-Z 103L "Club M"
LINE/VARIVAS game 16lb
LURE/PARAMAX4inch+1/2oz TEXAS