星空☆Casting

釣れるものはみんな釣りたい。
夜の海で一人
ひたすら同じ事を繰り返す快感。
さあ、ご一緒に。

月は満ちた 海はどうだ part1

2009-02-12 22:55:37 | メバル
2009/2/7夜

やすやさんにて83deepの新しい穂先を受け取る。

それにしても早い。2/3に注文して翌2/4にはもう届いたとのメールを受け取った。
ブリーデンというメーカーは分かっているのである。釣り人の立場に立って物事を考えてくれている。
「このメバルシーズンの真っ只中やのに、このお客さん困ってはりますんやろなぁ、早よ送らな」←関西系
そんな心遣いをひしひしと感じる。

某メーカーのエギングロッドを折った時には
保証書付きであったにもかかわらず散々うだうだと文句を並べたてられ
直ってくるまでに実に1ヶ月半を要し、エギングシーズンをまるまる棒に振ったのだった。

爪の垢を煎じて飲ませてあげたい。


もう1本。ヤフオクにて入札していた83deepは落とせなかった。
定価以上の入札に安心し終了時刻に見ていなかった。
僕以上の値段を付けた人が何人かいたようだ。甘かった。
83deep ver2006はキズありの中古品にも関わらず完全にプレミア価格となっている。
このロッドを偏愛している人間は僕だけではないのだ。

2009/2/8

ちといつもと違うことがしたくなり夕方17:00より三国方面に回る。
海は荒れていた。2.5m~3mの波だ。
崎漁港を覗き竿を出すが反応は全く無い。
沖のテトラと防波堤の間においしそうな潮目があったが釣れてくるのは海藻のみだった。

その後、長橋に回る。しかし波のしぶきが防波堤の高さ以上に上がり外海に入ることは不可能だった。

車を南下させながら所々漁港を見て回るがどこも同じ状況。
しかし越前岬を越えたところから急に波は下がる。1m~1.5mほど。

「やはり、いつものところだな。僕にはそこしかないのだな。」

幽霊テトラに向かう。結局、やはり、ここなのだ。

駐車場に入ったが極めて眠い。目が閉じそうなのである。しばらく睡眠不足が続いていた。

集中力をもった状態でここに入りたい。
満潮は0:00。まだ時間がある。
少し仮眠をとった。

(頭の中を音楽が鳴り響いている。)




22:00。目を覚ます。

満ちる前日の月が明るい。

身支度を整え岩を登り外海を見る。幽霊テトラは時々波に洗われていた。
釣りをするのは不可能ではないがやはり危険と判断。
左に100m離れた中央の岩付近のテトラに乗る。1/28にチヌを掛けたポイントだ。3mの足場で波の心配は無い。

釣座となるテトラによじ登るとLEDの明かりの円の中にひとつ、ジグヘッドが落ちている。
かなり軽いジグヘッドだ。あまり見ない形。円錐状のウェイトにワームストッパーのないシャンク。

「こんなところに来るお馬鹿さんが僕以外にもいるんだな。」

何となく、確信もなく、それは舌”くんのジグヘッドではないかという気がした。なぜか分からんけど。


まず「多い日夜用slim fullmoon」を選ぶ。



暮れ行く空の濃き縹色。

あるいは澄み渡った黎明。

そんな色をしている。美し過ぎる。宇宙を体内に持つルアー。


しかし。

反応は無い。今日も渋いのか…。

左の岩に常に巣くうヤリイカ師の浮きは明らかに左から右に流れている。
海洋生物が作り出すテトラの吃水線はほぼ隠れ潮は満ちているのが分かる。

潮は動いている。

サラシが作る泡が10m沖に何ヶ所にも固まって浮いている。
それはメバルの好むピンポイントとなり得るものだ。

状況は悪くない。はずだ。

(歌が頭の中に鳴り響く。ええぃ!)

ジグヘッドに替えいつものGULPベビーサーディンを刺す。もうこれは僕にとって完全なサーチベイトだ。
テトラ際を丁寧にトレースする。何も起こらない。
右45°フルキャスト。気のないリトリーブをすると「カツン」とあたる。
それが何かに気付くのに一瞬のタイムラグがある。あっ、僕は釣りをしていたんだ。
おっと。あわせを入れた。間に合ったようだ。
メバル25cm。アフターの個体。

(歌がぐるぐる回る。なんとかしてくれ!)

そのラインかっ!と思いもう一度通すが出ない。何度も通すが何も起こらない。

時々なぜ釣れたのか分からない魚がいる。
テトラから遠く離れたオープンウォーター。ほぼ水面レベル。
そんなところにこの25cmはぽつんと一人でいたのだろうか?群れでいるべき場所だと僕は考える。
考える、が、しかし考えが上手くまとまらない。

(歌はますます絶唱を続ける。あ~うるさい!)

もう一度テトラ際をGULPで攻める。

もぞもぞ。

あたりがあったが僕はあわせることをしない。それが何か理解できない。
集中力を完全に阻害されている。だめだ。釣りができない。

…。

今日の昼間からずっと、僕の頭の中にはひとつの歌がぐるぐるエンドレステープのように鳴り響いている。
どうしようにも止まらない。全く集中ができない。

この日の朝、テレビで、日曜の午前中特有の「爽かなようで実は気持ちの悪い」音楽番組を見てしまった。
そこではさだまさしが大げさにもオーケストラをバックに死にかけの幽霊のような震える声で歌っていた。

 薄紅の秋桜が秋の日に
 何気ない日だまりにゆれてます。
 この頃涙もろくなった母が
 庭先でひとつ咳をする。


おぉ!さだ!!さだ!!おぉ!さだ!そう、あんた、さだ。

ひとつ言わせてもらうとなぁ

あんたなぁ



暗い。



僕はさだまさしに対して特段に拒否反応は感じない。しかし全然ファンでもない。
言ってみればどうでも良いのである。しかし耳に付く歌は作る。それは認める。
それを不注意にも口ずさんでしまった僕の頭の中にはその「秋桜」がびっちりと張り付いてしまった。
どうにも止めようが無い。呪われた事にフルコーラス歌えてしまうのだ。
集中しようとすると余計にボリュームが上がる。なんとかしてくれぇぇ…。

僕はこの呪縛に掛かりやすい体質なのかもしれない。ちょくちょく起こる。
「おどるポンポコリン」が流行った時には連日連夜頭の中がぴーひゃらぴーひゃら言って死ぬかと思った。
目の下に隈ができそうだった。痩せそうになった。何も考えられなかった。

この大切な満月周りの良き日に、さだに取り憑かれてしまった僕は全く使い物にならない。
さだっ。頼むっ。やめて。stop。

しかし止まらない。

人類は天然痘を撲滅し、月に行き、通話のできる超小型コンピュータを小学生にまで持たせることに成功した。

が、まだ、これを止める方法は発見できていないのだ。



そんな中0:00の満潮を迎える。10mほど沖、泡が固まった場所。そこで小さな爆発が始まる。時合いだ。

ルアーは「多い日夜用slimグリーンホロレッドヘッド」に替えていた。
このルアーの力にすがる。

ゆっくり水面をリトリーブして来ると

ゴンッ!!

とんでもなく強いあたりが出る。

しかし外す。集中力がない。ゾーンに入って行けない。

ゴンッ!!

次のキャストでもここで食って来ると分かっていながら外す。一拍遅れる。

歌を口ずさむ。歌ってしまえば良いのだ。やけになって大声で歌い始める。

 こ~ん~な~こ~は~る~び~よ~りの~
 お~だ~や~か~な~ひは
 あなたの~やさしさが~しみてくるぅ~

大声で歌う間もメバルは容赦なく食ってくる。ゴン!ゴン!ゴン!。

1リトリーブ中に何度もあたる。乗らない。乗らない。

しかし…。

これはいくらなんでも外しすぎだ。集中力がないといえどもおかし過ぎる。

思い出す。

2008/3月にも同じ事があった。ロングキャストの遥か沖で今日のように強いあたりが頻発した。
しかし全然乗らなかった。20発ほどのあたりで獲ったのは8本だけだった。
釣れてくる魚は口にフッキングしておらず頭や口の外に掛かるものが多かった。
体当たりしているのかと考えた。あるいは寸前で見切り反転した際にルアーにあたるのかとも。


今日も同じ状況だ。こいつらは食ってきていない。当たってきてるだけだ。
至近距離なので尚更乗りにくい。この距離での83deep+PEには、吸収してくれる遊びが全く無い。弾くのだ。

獲りたい。なんとしてでも。歌うのをやめ無理矢理に集中する。ぐぅ~と脳に力を込めた。

キャスト。
泡の塊を通過するタイミングで引き波の重さを感じる。
リトリーブをやめ軽くトゥイッチを入れ、止めた。ここだ。来い!

ゴンッ!!

よしっ!
すかさずあわせる。上手くタイミングが合った。

ゴゴゴゴゴ。

ようやく乗った!強烈に引く。でかいっ!?
突っ込みのスピードが速い。魚は完全に向こうを向いている。

ゴリ巻きして一気に抜きあげる。普通ではない角度で上がってきた。
やはり、リアフックが頭に掛かり、フロントフックは痛ましい事に左目に掛かっている。






27cm。臨月をむかえつつあるプリ。
撮影用にフックを刺し直してある。やらせ画像だ。向こう側の目は潰れて血が滴っている。写せない。
リリースすべき個体であるが傷が深くKeepする事にした。…ごめんね。

これを最後にあたりが遠のく。

場所を変えようと岩の右側のポイントに入るが先客がいた。ここで人に会うのは初めてだ。
ブリーデンのニット帽をかぶっている。ロッドは2本ありどちらもグラマーロックフィッシュだ。
ステンボー+ビームリーチのスプリットリグ。

少し話す。

「時合、終わったでしょ」
「そうですね、止まりましたね。ぼつぼつ釣れてたんですが。」
「サイズは?」
「27止まりですね」

50m離れたここでも同じ状況のようだ。ふぅ。

1:30。一旦上がる事にした。車の中で仮眠を取り。朝方に掛けよう。

車に戻る。さだはまだ歌っている。
カーステレオにOFF SPRINGのAmericanaを差し込む。ボリュームを上げた。

さだよ。さあ。消えてしまえ。

シートを倒す。エアコンで暖まった体に眠気が強い。
ボリュームを下げようか。思った瞬間。眠りに落ちた。なぜ、こんなに眠いんだろう。




5:30。
絶妙の時間に目が覚める。朝まずめの時合は6:00~6:30だ。

この日はバーブレス君と落ち合う事になっていた。
彼がいつも車を止める場所に向かう。あった。来てるんだな。
いわゆる「deep隣接の岩」に入っているはず。
上からのぞくが暗くて姿が見えない。ヤリイカ師もまだいるようで僕が入る場所はなさそうだった。

2/5に入ったテトラに乗った。眠っている間に波はずいぶんと落ちていた。ほぼ、凪ぎだ。

あっ!

ふと、気がついた。さだは頭から消えている。
寝ている間に鳴り続けていたOFF SPRINGが睡眠学習の役割を果たしたのだろうか?

やれやれ。

助かった。

やっと。集中できる。

しかし。

この日の朝は時合はやって来なかった。あらゆるものを投げたが全く反応がなかった。
朝のその時間帯は引き潮の底で、テトラの吃水線の40cmも下に海面はあった。

わずか6時間で40cm落ちる潮。

6:50。

あきらめて堤防に上る。

向こうからバーブレス君が歩いてきた。
僕に気がついているのに何となく目をそらして空などを見たりしている。
徐々に近づき、いよいよ無視できない距離になってようやく目を合わせて笑った。

「どうやー?」
「渋い。ほとんどこれだけ」
27cmを見せる。
「わーやっぱ27ってでっかいなー」
「どうだった」
「23ぐらいのが2匹だけ」
「その竿どう?」
貸してあるSlow retrieve 80を指さす。
「のるー。しかしほんと魚の大きさが分からんw」

車に戻り、また少し話しをして別れた。

僕達の会話は、いつも、淡泊だ。



長い一日が終わる。


しかし。

つくづく…

さだには参った。


TACKLE DATA
ROD/Glamour Rock Fish TR83deep⇒復活
REEL/EXIST2004
LINE/Daiwa Emeraldas SENSOR 0.5号+7lbフロロ

Moon DATA

コメント (20)
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