9/25/19:30。
あれは一隻だろうか二隻だろうかと、重なり合った灯りに迷いながら沖のイカ釣り船の漁り火を数える。
視界の両側が岬に遮られるこの場所でもその輝く点は23を数えた。
明るい。
一般社会では3連休最終日のこの日。その夜。
もう人出も減ったかとホームポイントに向かい、思い通りそこに入る事ができた。
足下の磯にはこってりと新鮮なイカスミの跡があり、まだ明るい日中にそこそこの釣果があった事が伺われる。
ずいぶん抜かれたあとであろうが気にならなかった。
この場所であれば、誰が何をしたあとであろうともそこそこ結果を出せる自信がある。
知り尽くしたポイントというのは宝だ。
前日。
梅浦から北に向かうが、これが夜中の海かと思うような人出の多さに入る場所がなく
ようやく見つけたあるテトラ帯にハァハァ汗をかいて苦労して入り、結果、15cm3杯の貧果に見舞われた。
3.5号では全く乗らず、3号に落としてようやく触腕1本のあたりを捕らえ、
ええいと2.5号に落としてようやくガッツリと抱いてくる。
今年の、今の海はまだそんな感じかと、この日も3号のエギから始めた。
1投目。
フルキャストの沖に投げ入れ時間をかけて底を取る。
高速の巻きシャクリで高く跳ね上げまた落とす。
音沙汰ないままそれを繰り返し、エギは約10m沖の底に着底した。
その手前には小さな海中の根があり、沖からついてきたアオリイカのフィーディングポイントとなっている。
獲物を追いつめた気になるのだろうか、なぜか乗りの良い場所。このポイントの最も熱い一点である。
集中する。
跳ね上がり至上主義のエギ王Q-JPに2発強い負荷をかけ2mほど舞い上がらせる。
そのままスラックを取らず高い位置のロッドを徐々に下げながら、ラインを張るか張らないかの微妙なテンションでフォールさせる。
明るいイカ釣り船のおかげで、エメラルダスセンサーのライトグリーンのラインが完全に目視できる。
ラインが見える事は重要である。釣果が倍は違ってくる。ロッドに直接あたりが出る事はむしろ稀だ。
3mの足場からラインはおよそ45度の角度で海面に続いている。それを凝視する。
1mほどフォールさせた段階で、伸びたS字にラインがふっとふけた。
まだボトムじゃない。
あたりだ。
ぱしんっと掛けに行く。
どん!ぐぃーんぐぃーん。
ああ。この感触。この瞬間。その重量が「生命」である、という事。
それほど大きくない。しかし15cmでもない。
水面に浮かび上がりしゅーと潮を吹く。慎重に抜き上げる。
18cmか。まぁまぁだな。
このサイズがあって、この抱き方をするのなら3.5号でokだ。
エギを得意のEgi-Ten Q3.5号オレンジに替えた。
またフルキャスト。
釣れるのは10m沖だがアオリイカはその場所に居着いているのではない。沖から来るのだ。
その10m沖の根を直撃しても釣れたりしない。
Egi-Ten Qは跳ね上がらない。ほとんどレンジを変えずダートする。
ボトムを少し切る位置でダートを繰り返し、おそらくじっと見ているであろうアオリイカを想像しながら少しずつ距離をつめる。
15m沖。そろそろか。
一旦エギを底に着け、すぅーっと1mほど持ち上げてパンパンッ!!と2発小さく強くダートさせる。
Egi-Ten Qは位置を変えずにその場で首を振っただけだ。ラインスラックが全く出ない。
そのままエギの沈むスピードでロッドを下げて行く。
微妙なテンションを掛けながら、ややたるませ気味のラインが沈下速度を超えて「すっ」と張った。
あたり!
18cm程度を想定してあわせを入れる。
どしんっ!
!!!
一瞬根掛かりかと思う。動かない。しかしその動かぬ何かは独特の柔らかさを持っている。
でかい...。つぶやく。
底から引き剥がそうと渾身のパワーでリフトアップさせる。
アオリイカは「いややいややいやや」と底にへばりつこうと必死で引っぱり返す。
でっけ...。またつぶやく。
まだ9月である。しかしこれは9月に感じる重さではない。
ガイドにPEのこすれる音がやけに耳につく。リールを滑らかに巻き続ける事は困難でポンピングで寄せるしかない。
5mの水深を浮き上がらせ、ようやく水面に顔を見せたアオリイカは噴水のように高く水を吐いた。
漁り火に照らされて太い足がぱらりと開き飴色に輝く。ああ、飴色だ。
腰を落とし、巻けるところまでロッドを下げ、抜き上げようと測った重さに一瞬躊躇するがやるしかない。
フッキングは完璧で足はすべてエギに絡み付いている。身切れする恐れはない。
ロッドの反発力を利用して抜き上げる、が、やや高さが足りずに足下の斜面にべちゃんと着地した。
瞬間、ぶっしゅーと音付きで盛大に墨を吐き、僕の大事なゴアのパンツにべっとりと命中した。
その噴射の勢いで斜面を滑り落ちそうになるアオリイカの首根っこをむんずと掴んだ。
でっか...。
でろりんと24cm。10月後半のサイズである。
頭が大きく、肩幅の広い男前。しばらく見入る。
その後15cmを何杯か追加し、手乗りイカも登場で潮時と竿を納めた。
帰宅してキッチンに立つ。腹ぺこである。
24cmを捌くが、厚すぎる身に、刺身はいかがな物かと迷ったがとりあえず造ってみる。
やはり...。イカそうめんではなく、イカうどんができてしまった。
定番。アオリイカ定食。ゲソの唐揚げに畑の秋なすも添えてみた。
ゲソの唐揚げはマヨネーズで頂く。
「天然のお塩をちょっと付けるとその甘さったらもう...」
などとお上品なうそをついたりしない。断固としてマヨネーズである。
刺身はしょうが醤油をたっぷりつけて、炊きたてほかほか、やや硬めに炊いた新米に乗せてあうんと頬張る。
特にエンペラのプチプチ具合が清々しい。そして甘い。
美味いなぁ。秋だなぁ、とゆっくりと堪能する。
とは言え一人では食いきれない。刺身が半分ばかり余ってしまった。あごが痛いw
キッチンに戻り、刺身に衣を絡ませて、なすも混ぜてかき揚げを作る。
同時に熱々のお出汁を作り揚げ浸しにしてみた。
アオリイカと秋なすのかき揚げ。揚げ出汁作り。
天盛りに生姜を添える。
うまい...。と。言わざるを得ない。
不味い要素が一切ない。
一口、一口、噛みしめて、その甘さ、うまみの濃さにうなる。
秋が来た。来ちゃったなぁ。
外の空気はずいぶん前から既に秋だが、舌と胃を経由して身をもって感じる夜であった。
さてさてさて。
話は変わる。
イカプラスという雑誌をご存知だろうか?
9/21に秋号が発売されている。
東海北陸地域限定のイカの季刊誌である。
アオリイカの雑誌と言えば、どこか遠い南の土地の離れ小島で、怪物のようなデカアオリを釣って巻頭カラーをにぎわすのが常であり
絵的には見栄えはするが同じアオリイカとは言えそれは我々がやるのとは別の釣りである。
一言で言えば憧れは抱くが参考にはならないのだ。
この雑誌はあくまでも地元限定である。見覚えのある海が登場する。
身近な海で、身近なサイズのアオリイカを釣る無名に近いフリーク達の情報が詰まっている。
それぞれに個性的であり、なるほどとうなずけるテクが満載されていて実釣にとても役に立つ。
アオリのみではなくイカならすべて対象であり、エギングだけでなくヤエンや船も網羅して、一冊すべてイカである。
ずいぶん売れている雑誌の様でamazonの釣り雑誌部門でルアマガやロドリを抑えて売り上げ1位を記録したりしているんだとか。
今回。僕も記事を書かせて頂いた。白黒1ページではあるが紙媒体で活字になるのは初体験であり、なかなか感慨深い。
まぁ僕の記事は置いておいたとして、他の情報に非常に価値があるので手に取って頂ければ幸いである、と宣伝しておくw
ご紹介頂いたyasuくん。お世話ばっかりお掛けしたカタリスト長谷川さん。
この場を借りてお礼申し上げます。
ありがとうございました。
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