星空☆Casting

釣れるものはみんな釣りたい。
夜の海で一人
ひたすら同じ事を繰り返す快感。
さあ、ご一緒に。

FRIENDS part1

2009-03-19 04:18:38 | メバル
「やすや尺メバルトーナメント」が終了し僕のモチベーションは下がり気味だった。

「メバルは6月まで続く、何もトーナメントのために釣りをしていたんじゃない」

コメントにそうは書いてはみたが、やはりあのテンションを続ける事は難しかった。

僕は何も人と競う事が好きなわけではない。釣りはいつやっても、一人でも、楽しいものである。当然。

しかし人には「これだけは負けたくない、これだけは誇れる」というものが何か必ずあって
その分野に関しては人と競い蹴落としてでも一番になりたいのである。
それが行動するモチベーションになり得るのである。

僕にとってのそれはメバル釣りなのだった。

終わって始めて思い知った。こんなに気が抜けるものだとは思わなかった。
その後何度か一人で釣りには出掛けたが、釣れる魚のもつ意味が微妙に変わってしまっていた。

そんなある日。

悪あがき日記のコメントに舌”くんからメバル釣りのお誘いが届く。心が沸き立った。

舌”くんとは「尺メバルトーナメント2008-2009」のチャンプである。「大兄」の名で出ている。
おそらく、ショアからのライト系の釣りに関して、この人より上手い人はそういないと僕は思っている。
その釣りを是が非にも見てみたいとずっと思っていた。

最終的なスコアの差は4匹でわずか2cm。
しかしその2cmはどうしても手の届かない遥かな高みだったのである。

わずか2cmを越える為に払った犠牲。無理。無茶。心も、体も、財布も。
その蓄積のずんっとした重さは、僕をして彼を尊敬させるのに充分なものだったのだ。

その彼からのお誘いである。嬉しくないわけが無い。

ところが今どき携帯を持たない僕には彼と待ち合わせの連絡をとる手段が無い。
コメント欄ではタイムリーに連絡がとれない。彼が釣りに行ける日は日曜だけだという。
それはもうその日、当日だった。

僕は二人の唯一の接点である「やすや」に向かう。
そこから連絡をとって貰おうと思った。そして思惑通りそれに成功する。
彼はその日大阪にいたのであるが夜の待ち合わせには間に合うという。
良かった。繋がった。

3/8/22:00。

僕達は「岩壁の向こう」に立った。

僕には馴染みの場所である。彼もここには良く来るようだ。
この僕が知り尽くした場所で彼はどんな釣りをするんであろう?何を見せてくれるんであろう?

なのであったが…。

その日の状況は激渋で僕がこんなやつ。

15cm程度のを2匹ほど釣ったのみ。

舌”くんはヤリイカの仕掛けなど投入しもう既にその状況にあきらめが入っているようだった。

丸く膨らんだお月様がほぼ天頂にある。夜空は澄み切っている。

だが照明が照らす明るいこの場所では月明かりは良い意味を持たない。
暗い夜にこそ魚は明かりに集まるが
こんなに煌々と月が照らす夜にはこの場所に集結する意味を失わせてしまうのである。

しばらくしてそこを引き上げる。一人の釣りならもっとなにか答えがあるはずとあがいたかもしれない。
しかしこの人が釣れないんである。尊敬するチャンプが。
なら誰も釣れない。簡単にあきらめることができる。


場所を変える。今度は舌”くんのポイントである。
その場所は知っていた。秋の下見の時に日中に入った事がある。

びっしりと小さめのテトラが数百メートルに渡って入り、岸沿いにも関わらず足もとからdeepである。
しかし夜は真っ暗なその馴染みの無い場所に今シーズン僕は入ってみようとは思わなかったのだ。

ここか…。ここであったか…。

だがこの場所も渋い。岩海苔が多く移動もままならない。
やや西に傾いた月明かりがテトラの影を全て失わせていた。「白月」の元に晒されたテトラ。

僕にはあたりすらなく、彼はさすがに24cmを1本あげたようだ。


舌”くん。

ひとつ驚く。

僕はテトラ歩きが得意である。相当速く歩ける。忍者のようだと言う人もいるくらいだ。
だが舌”くんのその超速移動に僕は全く付いて行く事が出来なかった。
音もなく歩道を歩くように移動する。えいっと飛ばない。すっと飛ぶ。道筋を迷わない。止まらない。
飄々と軽々と彼は歩いて行く。はぁはぁとどたどたと僕は後を追う。しんどい。

あっ。歳の差かw

散々投げ倒し、有らん限りのテクを使い、なんとか「いいところ」を見せたかったのだがだめだった。


その場所もあきらめる。車に戻る。

その後どこにいこうかと考えるが今日はもうどこもこんな感じであろう事は明白だった。
彼もそう思っているようだった。

道具を仕舞い、一息つき、僕達は横に並んだお互いの車のハッチバックを開け、座り込み、話をした。

聞きたい事が山ほどあるのだ。
舌”くんは惜しげも無く、やさしく、答えてくれる。にこにこと。目から鱗が落ちる事もあった。為になる。

何より僕の飛ばし浮きスタイルに対する「偏見」を取り払ってくれた。
そのリグを僕はそれまでひたすら敬遠していた。

ルアーとロッドの間に異物が介在することにどうしても馴染めないのである。
近距離の一対一のシンプルな勝負こそがメバル釣りであると考えていた。醍醐味だと。

彼はその使い方を詳細に経験を込めて語ってくれた。聞き入る。

つまり、ひと言で言えば、どうしてもそのリグでしか獲れない魚がいるのだと言うのである。
そして、それが彼が求める魚なのだった。

彼が求める魚。

「僕はね、その魚種の中でとにかく一番大きなやつが釣りたいんですよ。とにかく。ほんと」

当たり前の事ではある。
誰でもそう思う。
だが彼の口から出るとその言葉には異様な迫力があった。
決意と言おうか、宣言と言おうか、退路を断った覚悟と言おうか。
それが彼の生きている意味なのだと素直に僕の耳は聞いた。すぅっと染み込んだ。
その為の武器なのであれば飛ばし浮きは是とするべきものなのだ。偏見が消えた。

(その後、僕はたわいもなくあっさりと楕円形のスーパーボールを買う事となるw。やってみよーっと。)

1時間も話し込んで僕達は別れた。

「このあとどうするの?」僕は聞いた。

「うーん、帰りの海を見ながら考えますよ」舌”くんは笑って答えた。

その笑顔を見た瞬間、彼に漂う一種独特の雰囲気に言葉が見つかった。

なんなのだろうと考えていた。そうだ。これだ。

「自由」

そうなのだ。彼の釣りもそれなのだ。





帰って、寝て、目覚めると、1本の電話が掛かる。能登の江崎さんである。

江崎さんの紹介は以前のブログに書いた。
彼は芸術家である。芸術家の紹介は言葉や顔写真ではなくやはり作品だ。その方が分かる。人となりが。




江崎さんは版画家である。鬼ダルマオコゼとナマズの屏風。




江崎さんは陶芸家でもある。ナマコの掛け花。


こんな感じの人物である。作品のままだ。分かった?


電話の続き。
話していると今夜釣りに行くのだと言う。能登の友人二人も一緒だと。
そのうちの一人とは面識があった。釣りをした事は無いが我が家で一緒に飲んだ事がある。
彼も魅力的な人物だった。

名前を「ハッサク」と言う。

そう。あの「尺八ミノー」の作者。ハッサク工房の「社長」だ。
トーナメント中は封印していた能登の釣りに出掛ける格好の動機がみつかる。

「僕も行きます」

電話を切り、特急で支度を整え、車に乗った。

ぬるりと暖かい無目的の昼下がりに、突如として明確な方向が出来た。

その方向に向かってひた走る。制限速度を大きく越えてw




part2に続かせて下さい。

バーブレスくんのところから来てしまった方々。まだ、もう少し、先なんである。ごめんね。

⇒バーブレスくん。丸投げ禁止w。

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ROD/Glamour Rock Fish TR83deep
REEL/EXIST2004
LINE/VARIVAS light game MEBARU PE0,4+6lbフロロ

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悪あがき日記 二日目

2009-03-06 05:14:47 | メバル

2009/3/1/3:00

僕は再び「岩壁の向こう」に立った。
微風。時々強く吹く。基本的に凪ぎではあるが風波がちゃばちゃばと細かく立つ。
昨日と全く同じ状況。なんだか昨日の続きのような気がする。その間にあった仕事も生活も消えていた。

今日も暗いdeepには目もくれずひたすら明るい場所を釣り続けるつもりだ。
残された短時間で出来うる限り数を出すのである。数がサイズに転化する瞬間を待つのである。

昨日、目に掛けてしまいkeepした1匹。
捌いて胃の中味を調べてみると小さなアミエビやジャコが詰まっていた。ナミノハナは入っていない。
であればハードルアーではない。となれば。これか。やはり。最後もやはりこれなのだ。

GULPベビーサーディン。ほんとお世話になりっぱなしで恐縮である。

立ち位置から明かりのあたる場所に投げると斜め前からの向かい風となる。ジグヘッドは3.5gを選ぶ。

一投目。明かりの真ん中を外し明暗の境目の底を狙った。4mの深さ。20m向こう。
岩床を感じるまで沈め可能な限りのスローにリトリーブする。

コン!!

いきなりだ。83deepは難なく掛ける。やはりこいつでなくっちゃ。なくなった手が戻ってきたようだ。
しかしこれはかなり大きい。昨日はいなかったサイズ。
暴れさせて周りの魚を散らさないようスイープにゆっくりと寄せる。魚の顔を常にこちらに向けるのである。



しょっぱなから27cm。期待が膨らむ。

二投目。

同じく光の中を避けやや横の暗い場所を打つ。底。

コン!!

気持ちいいくらい容易にあたりが出る。これもなかなか。



26cm。

ますます期待が膨らむ。

明かりの真ん中に投げてみる。ここにも当然魚はいた。しかしサイズが小さい。20~23cm。

僕は明かりの真っ正面に立っている。サーチライトで照らされたルパンみたいに。まぶしい。
約100m向こうの岩のおよそ15mの上からその明かりは放たれている。
光の広がりの少ないビームのような明かりだ。
そこからまっすぐ水面に光の道が出来る。その幅は約5mだ。
光の道、水面に光が反射している場所はそのまま光の当たる場所になる。
その道の中を打つとサイズは小さい。釣れるレンジも高い。
道を外して2m程横を打つとサイズが上がる。高いレンジでは食いが渋い。やはり底だ。
せまい範囲での明確な棲み分け。サイズによって変わる個性。メバルは楽しい。

光の道を外した暗い底をひたすら打ち続ける。時々あたりは止まるが10分ほどでまた食いが立つ。
短い時合を積み重ねて行く。サイズは25~27cm。揃っている。無心に釣り続ける。


27。

26。

こんな感じ。


底を狙い過ぎて根がかりする。外れず切る。今日はPE0.4号+6lbフロロに替えていた。
このシステムでは根がかりは確実にPEから切れる。
FGを編む。風が吹く。時間がない。焦って1度失敗し2度目で仕上がる。

さあ釣り始めようと顔をあげたら目の前の岩に人が2人立っていた。ショック死しそうなほどびっくりする。
心霊現象では全くないw。リアルな釣り人である。FGに気を取られ全く気がつかなかった。

ここで釣りの途中で人が来たのは初めてである。全く想定していない。動揺する。
おまけにその2人は僕の前方から光の中を打ち始めた。投げるラインがややクロスする。やめてくれぇ~。

しかしそんなことは言えなかった。ここは僕だけの場所ではないのだ。
今日はトーナメント最終日ですのでよそへいって下さいお願いします、など通用しない。僕の都合に過ぎない。
我慢する。共存する。僕のキャストを待ってキャストしてくれるマナーはある。水面を照らしたりなどもしない。

僕がどうしても許せない釣り師のタイプは2つある。
無神経に水面を照らすやつと、釣ったフグをその辺に捨て干物にするやつだ。
そのどちらかを目にしたら僕は注意する事にしている。看過出来ない。

しかしこの2人はとてもきれいに静かに釣りをする。謙虚なマナーを心得ている。
それにずいぶん軽いジグヘッドを使っているらしく飛距離が10mもない。
その軽さであればこの風の中ではボトムへは落とせない。狙っている魚はかぶらない。
大丈夫。じゃまにはならない。平和だ。僕は僕の魚を釣り彼らは彼らの信じる釣りをする。
もっと重いジグヘッドで底を狙えばでかいの釣れるよなどと教えるほどには僕は人間が出来ていないのだ。

結局その2人は光の中では1匹も釣らず裏側の暗い場所へと移動した。
それにしても恐ろしく静かな2人だ。
並んで釣っているにも関わらず一言も会話は交わさない。足音すらたてない。




再び集中する。相変わらず短い時合を繰り返し釣れ続ける。既に25upのみで20本を越えた。
しかし、やはり、そこに壁がある。27cmの壁だ。越えられない。でかいのはどこだ。この中にはいないのか?
時間は5:00前だ。あと1時間余り。時間がない。焦る。でかいのはどこだ?どこだ?どこだ?激しく求める。


ポイントを一枚の絵画に見立ててみる。
キャンバスの上に光の道や波の方向、潮の流れなど魚に影響のある要素を線で描き込む。
その下地の上に魚の釣れた場所を点で打っていく。その線と点には明確な自然の道理があるはずだ。
優れた絵画は必ずこの道理によって成り立っている。具象抽象を問わず良い作品はみなそうだ。

このポイントを線と点の抽象画にしたらそれは優れた絵画になるはずだ。
自然の道理に外れたメバルなどいないのだから。
しかし今、この段階ではまだ絵は完成していないようだ。
上手く出来てはいるが何か足りないのだ。何かもう一つ有効な点が欲しい、そう感じる。

ではその「一点」はどこに打てば良いのだ?その点を打つには才能が必要になる。
芸術家の一線はそれを打てるか打てないか、そこで分かれる。

既に描き込んだ小さく狭く固まった点の集合。おそらくその「一点」はそこから少し離れた場所にある。
ある空白の中に、絶妙なバランスを持って存在する「一点」。それが打ちたい。なんとしてでも探したい。
打ったとすれば絵画全体に豊かな調和を生み出しすぅっと納得のいく一点。

でかい魚はそこにいるはずなのだ。

悲しい事に一発でその点が打てるほどの才能のない僕は当たりかまわず投げ散らかす。
打ってみてバランスを見ながら、違う!と言って消してはまた次を打つ。しかし見つからない。打てない。

ひょっとしたら下地の線自体がまだ足りないのかもしれない。
気がついていない有効な線。それが見えていないのかもしれない。なんなのだそれは。

分からない。


時間は5:30。黎明が差し始める。残された時間はない。
思い切って立ち位置を変える。防波堤に上がりそびえる岩壁の横に立つ。

そこから明かりが設置された対岸の岩の直下を狙う。
光は当たっていない。灯台下暗し、のような一点。光の道のライン上にある闇の点だ。
横風を受ける方向となるが風は弱まっていた。フルキャストし、底まで沈めた。そっとリトリーブしはじめる。

コン!

!!。「一点」を求めだしてから始めてあたりが出た。よしっ!でかい!?
遠くから寄せてくる。確かに大きい。水面が割れない。今日一である事は確かだ。慎重に3mの高さを抜きあげた。



27は確実に越えている。28あるか?ないか?このわずかなサイズupに意味を感じる。今までと「違う魚」か!?
測らずにすかさず次を投げた。その「一点」はそこか!?

コン!

同じ場所でまたあたりがでる。やはりそこなのか!?見つけたのか!?



27だ。やはりその一点ではないのか?「同じ魚」なのか!?

次を打つ。


しかし。


そこであたりは途絶えた。空が白んでくる。急速に魚の気配が消えた。




はぁぁぁ~。



終わった…。



届かなかった…。



防波堤の上にへたり込み朝の晴れ渡った海を眺めた。煙草をくわえる。


「やりきったな」


それしか出てこなかった。



ふと気が付いてさっきの魚を計測する。



27.5cm。
最小の登録サイズは27cmだ。5mm更新出来る。しかし順位に変動はない。4位だ。

今日は少しkeepさせてもらった。メバルを欲しがっている人がいる。



一番右が27.5cm。真ん中が大きく見えるがレンズのあやだ。


総括。

やすや「尺メバルトーナメント2008~2009」登録した他3本。そのDATA。


12/14 27.5cm CALM80 「奇跡の海水浴場」


12/19 28cm ピンテール6 「奇跡の海水浴場」


1/8 28cm ブルースコードC60 「岩壁の向こう」

そして。3/1 27.5cm GULPベビーサーディン 「岩壁の向こう」

計111cm。

よくやったと思う。あのキラ星のごときメンバーの中で4位は誇るべきだ。
この辺りが実力である。この順位は正しい。やはり舌”くんは偉大だ。ターレンと名乗るだけのことはある。

しかし更新サイズを「多い日夜用slim」で出せなかった事は痛恨ではある。
バーブレスくん。すまない。テスター失格だな。
でもね。ほんと。ありがとう。


この2日間も悪あがきにしては上出来だった。サイズを問わなければ60本は釣ったのだ。
最後に5mm更新出来た事。それが「やりきった」という気持ちに繋がる。
わずかだが従来を越えたのである。


うん。

うんうん。

よくやった。悔いはない。


あ~。


いや。


でも。


やっぱちょっと。


悔しいなw


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悪あがき日記 一日目

2009-03-03 20:45:24 | メバル
やすやさんの「尺メバルトーナメント」は2009/3/1に最終日を迎える。

2/27時点で僕は4位だった。28cm,28cm,27,5cm,27cmの合計110.5cmが登録サイズだ。
TOPは舌”くん。113cm。2.5cm差。僕が30cmを釣れば3cm加算でTOPとなれる。
最近僕が尺を激しく求めていたのはこの理由からだ。

去年は優勝出来た。しかしその優勝は僕にとって納得の出来ない苦いものだったのだ。






去年の登録4本。
上から30.5cm,29cm,28.5cm,28cm。計116cm。

素晴らしいサイズではある。しかし納得がいかない。どうしても心に引っ掛かるものがあった。

なぜか?

この登録4本の内、上位3本は能登で釣ったものなのだ。
別にこのトーナメントには場所の制限はない。遠慮せずに誇ればいいのである。
しかし僕のホームグラウンドは越前なのである。
それに他の誰一人として県外からの登録はなかった。

同じメバルではあるが同じ土俵ではない。やはり能登は釣り荒れしていない。人が少ない。
アベレージは2cm程越前海岸よりは上にある感触である。
この年、僕が越前海岸で釣った魚のみを登録していたらおそらく5位辺りだったはずだ。

今年はなんとしてでも越前海岸のみでケリをつけたい。獲りたい。それで始めて納得がいくのである。
今年勝ってもそれは2連覇ではない。初勝利である。そんな気持ちだった。

3/1のリミットまでに残された日数は2日。
ちょうど仕事は夕方~夜中2:00までの勤務帯に当たる。
釣りが出来るのは3:00~6:00の3時間×2。計6時間が残されるのみだ。
潮回りは良い。2/28,3/1共に4:00に満潮を迎えるタイミング。可能性はある。勝負は出来る。
悪あがきしてやろうじゃないか。



2009/2/28。仕事を終え帰宅する。

どこに入るかが問題だ。新規の場所で1発を狙うのはリスキー過ぎる。時間がない。
先日の「風の岬」もその後何度か入ったが安定感が感じられなかった。状況により過ぎる。

となると幽霊テトラか岩壁の向こうか。どちらかだ。
結局だめだったとしても最後は「畳の上」で死にたい。そう思った。

家を出て最初の三差路を右か左かでどちらのポイントかが決まる。ギリギリまで悩む。
ゆっくり走り道に出る。一瞬考える。思い切ってハンドルを左に切った。

「岩壁の向こう」だ。

今シーズンはここだと決めたのである。最近釣果は芳しくない。しかしやはり可能性を感じるのだ。
ここに掛けよう。全くだめなら明日幽霊テトラに行けば良い。

3:00。その港の駐車場に着く。やや風がある。しかし海は凪いでいる。誰もいない。

よし。やるか。

僕は勇んで車のハッチバックを開けた。ウエストバッグとLEDを装着する。バッカンを手に持つ。

おや?

あれ?

一瞬、僕がここにいる意味が分からなくなった。

え?

まさか。


83deepがない…。


なんで?忘れてきた?そんなはずはない。確かに手に持って家を出た。
自分の行動を必死に思い出す。眉間に指を当てて目を閉じじっと考える。

あ!?

ああ!!



きゃぁぁぁぁぁぁ~!!!!!

道具を持って玄関を出た時点で僕は忘れ物に気がつく。多い日夜用slimだ。
洗って乾かしていたのをバッグに入れるのを忘れた。

いけないいけない。はは。危なかった。気がついてよかった。気が利く~と僕はそれを取りに家に入った。
その時、83deepを玄関先に立て掛けた。
忘れ物をバッグに納め玄関を閉めた。ロッドはそこに立てかけたままで車に乗ったのだった。

致命的ミスである。なんて事だ。この大事な時に。自分がちょっといやになった。

取りに帰るか葛藤する。20分弱だ。帰るべきか?
しかし車にはカラマレッティーがあった。AEGIS2004もあった。釣りは出来る。なんせ時間がない。

しょうがあるまい…。

カラマレッティーでやろうと決めた。エギ竿にしてはやわらかく破格の軽さ。なんとかなるだろう。

ポイントに入る。ほぼべた凪。しかし山から吹き下ろす微風が吹いていた。

いつもの儀式で先端直下の根を通す。ジグヘッド2g+ビームスティック。
やはりエギ竿はきつい。他人の手で釣りをしているようだ。
投げても引いてもルアーの感触が感じられない。思い通り操れない。やはり取りに帰るべきだったか…。
しかしここまで来たらもう遅かった。来た道には巨大な垂直の岩がそびえているのである。

ジグヘッド2gはつらい。引き心地の明確なピンテール6に替える。

魚はいるのか?まずそれが知りたい。明かりの照らすラインに投げた。

コン!!

硬いあたりにあわせを入れる。風に膨らんだラインでタイミングが遅れる。外してしまう。

よしよし。魚はいる。

もう一度同じライン。またコン!活性は高い。今度は乗った。




25cm。アフター。

もう一投同じライン。コン!。



24cm。アフター。

いつもよりサイズがある。通常このラインは20~22cmなのである。

間も無く満潮を迎えるタイミング。状況は悪くない。

ルアーを替える「多い日夜用slimX'masホロ」

同じライン。ゴン!と強く当たるが乗らない。次。ゴン!と当たるがまた乗らない。
明らかにロッドの硬さで弾かれている。合わせのタイミングが上手くいかない。
ピンテールでは食い方がマイルドなのだがこのルアーは激しい。怒ったようにあたってくる。

何度か同じ事を繰り返す。メバルは必ずあたってくる。相当な活性の高さ。ここでは始めてかもしれない。
慣れないロッド。何通りか合わせのタイミングを計る。ゴン!ようやく乗った。



23cm。

足もとにルアーBOXを置いたまま頻繁にルアーを替える。「多い日夜用slim金彩白磁」

同じライン。ゴン!やはり激しい。乗らない。次もまた乗らない。
くそ~83deepならと思わずにはいられない。カラマレッティーはこの激しいあたりを弾きまくる。

ゴン!あわせを入れず一瞬送りこむ。そこで軽くあわせる。乗った。
引きが鋭い。魚の頭は向こうに向いている。おそらくスレだ。
案の定、バイブレーションのような角度でメバルは上がってきた。



24cm。また目に掛けてしまった。keepする。

余りの乗りの悪さにたまらずジグヘッドに戻す。こんな事を繰り返していると魚がすれてしまう。
向かい風が強い。3.5gを選び深い吸い込みを期待して柔らかいGULPを刺した。

水面を流したいが3.5gではやはりレンジが下がってしまう。中層ではあたりが出ない。思い切って底を這わせた。

コン!

気持ちいいあたり。しかし小さいか?



24cm。

この後もひたすらこんな釣りが続く。何を投げてもあたる。しかしサイズは25cm止まりだ。
やはりハードルアーは弾きまくる。ジグヘッドでしか乗せられない。
裏の暗い側に回ってdeepな釣りをしようか考えるが却下した。何せ時間がない。
明るい場所でひたすら釣れるものを釣っていればそのうちサイズが混じるかもしれない。

しかしそう上手くはいかなかった。どうあがいても25cmである。しかし数はいる。30本は軽く越えている。
そしてひとつ吉兆が顔を見せる。ROLLING BAIT48を投げている時何かが引っ掛かった。



ナミノハナだ。まだいたのだ。

しかし時間はもう6:00に迫っていた。山の端が明るくなってくる。

今日はもうだめだな。明日だ。83deepを持って明日に掛けよう。
弾いて逃した魚の中に大きな魚もいたかもしれない。

いよいよ明るくなってあたりは遠のく。
明るい場所にとって朝まづめの光は魚を散らせる意味しかない。魚は広範囲に散って行った。見えるようだった。

散った魚を探そうと悪あがきする。メタルジグ7gをフルキャストしてボトムを探る。

ぬ~~。

おっと。あらあら。来たのね、あなた。ちょっと嬉しい。



ヤリイカ。

これを最後に切り上げた。まだ明日がある。あと3時間ある。

魚はいる。きっとでかいのもその辺にいるはずだ。明日もここだ。決めた。
畳の上で死ぬのである。そして、あわよくば…。


帰宅しこいつで一杯やり眠りに就いた。くたくただ。仕事後の釣りは堪える。




TACKLE DATA
ROD/Calamaretti 862M
REEL/TEAM DAIWA AEGIS 2004
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