星空☆Casting

釣れるものはみんな釣りたい。
夜の海で一人
ひたすら同じ事を繰り返す快感。
さあ、ご一緒に。

喪失と再生 part2

2009-02-07 12:32:39 | メバル
前回の続き。2009/2/3。

明け方。僕はPCに向かっていた。

まず、やすやさんにメールを入れ83deepの穂先を引いてもらえるよう依頼する。
保証書はもう既に無い。折るのは2回目だった。

しかし驚くべき事にブリーデンというメーカーは穂先だけでも竿元だけでも小売りしてくれるのである。
それも免責価格とそう変わらない値段なのだ。
なんて素晴らしい会社…てゆうか保証書の意味って…なになの?

メールを送信し終え即座にYahoo!を開く。ヤフオクに数日前から83deepが出品されている事は知っていた。
もちろんver2006である。ver2008は結構出るが2006はめったに出ない。
このタイミングでそれが出ている事は何か運命のような気がした。

これを落とそうと決めた。2本所有したかった。それは僕の夢だった。かなえるのは今だと思った。

定価より上の値段を入札する。これなら落ちるだろう。迷いはなかった。
金はないが今はそれに糸目をつけている場合ではないのだ。

ふふふ。

薄く笑い僕はのびやかに安心をして眠りについた。

83deepは、もうすぐ戻ってくる。



昼過ぎ。目を覚ました僕はシャワーを浴び身支度を整えバーブレスに向った。
もう一つの喪失を取り戻すためだ。
「多い日夜用slimグリーンメタリックレッドヘッド」
これが今はグリーンホロレッドヘッドになって生まれ変わっているはずだ。

バーブレスに着き駐車場から中を見た。客はいない。
バーブレス君がカウンターの中で何やらごそごそしている。

何してるんかな?。ん!?。    ww  

のこぎりで木を切っているのだ。

我々はまたあやしい雰囲気でぶつの受け渡しを行なう。今回はなんと3本3色もある。

Lotを重ねるごとに飛躍してゆく品質。質感。色気。

既に完成の域を越え堂々とした充実を湛えている。

見たい?









美し過ぎて目まいがしてきた。

上から「グリーンホロレッドヘッド」「fullmoon」「ピンクメタリックレッドヘッド」

特にfullmoonに魅かれる。ゴールドのバックと黒のボディー。その上にちりばめられた星空のようなホロ。

「これを海に投げるのか…」また思った。

ロストすれば今回よりもっと深い喪失を味わう事になりそうだった。

しかし僕は正式な辞令(簡単なメール)を受けたテスターである。
義務は果たさなければならない。仕事をしなければならない。

このルアーを世間に広めバーブレス君を世界一の大金持ちにするのが僕の使命なのだ。




喪失はこれで取り戻した。

倍返しで。


あとは釣ること。納得のいく釣りをすること。

それで僕は


完全に再生する。



次の日。2009/2/4。

僕は夜明け前に目を覚ました。

外は静かだ。放射冷却の冷気が部屋の中にまで入り込んできていた。

海は凪いでいるはずだ。無性に釣りがしたくなってきた。居ても立ってもいられなかった。

しかし、83deepはまだ無い。
カラマレッティーでやろうか?一瞬思うが気が進まない。
エギ竿で2gのジグヘッドを投げるのはつらい。魚を掛けてもつまらない。
僕はオーバースペックが嫌いだ。アンダースペックも嫌いだ。
ジャストな道具で釣りをする事。これが快楽なのである。

しかし釣りには行きたい。どうしようかなーどうしたもんかなー。

あ!。

そうだ。

ある。メバル竿。忘れてた。しかしなーあれはなー…。

部屋の片隅から1本のロッドを取り出す。

Nories Slow Retrieve 80


数年前ヤフオクで「色がきれい」だという理由だけで衝動入札して落としたロッド。
届いてみてびっくりした。ぺなんぺなんなのである。

「ぺなんぺなんやん…」思わずつぶやいた。
「ぺなんぺなんぺなんぺなん」と言いながら左右に振った。

先がやわらかいと言うのではない。全部がやわらかいのだ。
まるでへら竿みたいなのである。いやそれよりもやわらかい。何せグリップまで曲がる。
83deepとは真の対極にあるロッドだ。

投げてみてもびっくりする。

いつものつもりでキャストするとルアーは70°程の角度でお星さまに向って飛んで行く。
シュンっとスイングして一拍おいてから指を放さねばならない。

キャスタビリティーという言葉はこのロッドにはない。
どこに飛ぶか分からない。(あくまでも使用者の意見です)

ううむ。田辺哲男は良く分からないものを作ってしまった。趣旨は何なのであろう。

僕がまだバサーだった頃、雑誌Basserに連載されていた田辺の「バス釣り道場」をかかさずに熟読していた。
パターンフィッシングの素晴らしさ重要さを教えてもらった。そしてそのまま今に至るのだ。
田辺の事は今でもとても尊敬している。

しかしこの竿は…。

いや、何か狙いがあるに違いない。何せ田辺なのだ。
そう思ったが結局1度か2度使ったきりで部屋の片隅にうずもれさせていた。


だがやはり今日はこれで行こう。これしかないのだ。一応メバル竿なのだ。
PEを使用する事などは夢にも考えていない大きさのガイド。
3Lbフロロを巻いたリールを装着する。

5:30。

海に向う。

幽霊テトラだ。全然懲りていない。
それに朝方である。0:00さえ外せば良いのだ。まだ暗いが明るくなる一方だし。

海に着くと思いのほか荒れていた。1m程か。
この低いテトラに乗るにはギリギリの波である。時々しぶきを浴びた。
テトラ際から10m程沖までサラシが広がっている。

ジグヘッド2gにGULPを刺す。

第1投。
わぁぁやっぱり空に飛んでった。あら~あんなとこ落ちた。素早く巻き取る。困った竿ぉ~。

第2投。慎重に。
おっ!まともに飛んだ15mぐらいだな。何とかなるな。
キャストに満足しながらリトリーブを始めた。投げたことに満足し釣る体勢になっていなかった。しかし。

ぐわぁん。

手にあたりが響き渡った。83deepとはあたりの感触がまるで違う。

ロッドを跳ねあげた、つもりだったが跳ね上がらない。跳ねあがったのはグリップだけだ。
くにゃんとロッドは魚の引くままに曲がる。
バットまで完全に曲がり力を完全に吸収している。そもそもバットの概念が無い。

83deepなら掛かった瞬間に読める魚の大きさが、これはまったく読めない。ひざの力が抜けそうな感触だ。
きっと魚もそうだったと思う。ぐりんぐりん抵抗してみてもなにやら歯応えがないに違いない。

あ、なにこれ、あ、なにこれ、あ、なにこれ、あ、なにこれ

などと言っているうちに寄せられてしまうんである。

いつの間にか足もとまで来ていた。魚がどの方向にいるのかすら分からない。あわててごぼう抜きした。




25cm。案外大きい。しかもこれはプリだ。25のプリ。2009/1/28にはいなかった魚だ。

違う群れが入ってきている!直感した。

次のキャスト。すかさず。


23cm。これもプリだ。よしよしひじょ~に良い感じである。釣れ方が良い。爆る時特有のリズムだ。

次のキャスト。力を抜いて自然に投げた。リトリーブを始める。




その時だった。   







唐突かつ強烈な便意が僕を襲った。もちろんMEGAである。

来た瞬間にもう一刻の猶予もならない。急転直下である。

わぁぁなんてことこんなときにうんこなんてなんてことこんなときにわぁぁ。

大急ぎでラインを巻き取った。
巻き終えるのも早々に僕はことに及ぶための「場所」を探した。あ、あそこがいい。テトラを飛んだ。

2つのテトラをまたぐ。下は水面だ。いやぁ~ん水洗やん。
急いでおろす。厚着がうとましい。
またいだテトラの幅は広くしゃがめない。ほとんど立ったままだ。


はあ~。


僕はひたった。


でも…やっぱ幽霊テトラでこんなことしたらやばいよな。ばち当たるよな。


思ってみたが仕方がない。どうしようもありえない。…あ。


あ…。


紙無い。


あらら。


どうしよ。


えーと…。



え?

どうしたかって?



…。



夜明けの空に星がとてもきれいだった。

☆ピカピカ。ピカ。



何事もなかったかのようにそそくさと僕は釣座に戻る。
置いたロッドを手にすると巻き取り切らなかったジグヘッドがテトラに引っ掛かっている。
3Lbフロロは躊躇なく切れた。

スナップを結びジグヘッドを装着する。GULPの必要はないな。

ビームスティック2.2inch氷河を選ぶ。爆る時はこれだ。針持ちが良い。釣っちゃ放し釣っちゃ放ししやすい。
こんなの売って儲かるのか?と思うぐらい長持ちする。

時合いよどうか続いていてくれと祈ってキャストする。

さっきと違う場所。
あら?釣れない。大きく右に振る。
だめだ釣れない。
さっきのラインに戻す。
すると

ぐぅおん。

小さなあたりがロッド全体に反響した。

よっし、このラインか!!



ここから

怒濤の連発が始まった



ほれっ。



とぉぉぅ!



おりゃっ!



ええぃ!




あー、いちいち写真なんて撮ってられない。

海の中の他の場所と何の違いも見えないある1点。丁度サラシが始まる場所。10mほど沖。

そこのみで次々とメバルは食ってくる。これはメバルには良くあることなのだ。
不思議なことであるがほんの1m四方ほどの一点なのである。そこを通さないと食わないのである。

サイズは22~25cm。あまり大きくは無いがどれも見事にプリである。

完全に違う群れだ。魚体がフレッシュなのである。
明らかに分かる。じっとしていた体ではない。泳いでいた体なんである。
次の大潮を意識している群れだ。それが入ってきている。

連発の中でこのロッドの長所が見えてくる。

とにかく外さない。乗りの良さは驚異的である。Noriesってそう言うことか←違
単に良くある「乗りが良い」と謳われるロッドではない。
「ものすごく」乗りが良いのである。ロッドが意志をもって乗せるかのようなのである。

当たった瞬間もう掛かっている。合わせなくても絡めるように掛けてくる。
ファイト中もばらす不安は皆無だ。こちらが引こうが押そうが常に一定のテンションを魚にかけ続けてくれる。

それに感度も良い。この柔らかさからは想像できなかったがロッド全体であたりを出す感じだ。

これにはフロロの影響もあるだろうと思う。

PEは輪郭のきれいな等身大のあたりを出すが、フロロは反響するようなあたりが出る。
それがこのロッドに良く合っている。反響がロッドで増幅される感じなのだ。

これを出すためにキャスタビリティーを殺したのかもしれない。

あぁ…なんて…田辺…。

数年前なら分からなかったかもしれない。

83deepを使い込んでいろいろ見えてきたこと。

見ない振りをしている短所。惚れ込んでいる長所。

このロッドはそのどちらもが83deepとは正反対にある。光と影みたいに。

両方合わさると完璧になるが、悲しいかな、それは多分、両立なんてできないのだ。



空はだいぶ白んできた。ラインを結べる明るさ。
そこで、急にあたりが遠のいた。
短いな。20分ほど。しかし満ち足りた。

その後、しばらくあがくが


これが頻発し始めた。

こら、 R32は高いんだぞ。こいつに刃物を持たせたのはだれだ。


潮時。


再生はほぼ完了した。

しかし

ほぼ、ではだめだ。

落ちる前より、もっと上に上がるのだ。




次の日の朝。2009/2/5 6:00。

僕はまた海に立っていた。
今日は仕事なのだが迷いはなかった。


釣りにはある一線が存在する。それは釣れるか釣れないかを分ける大切な一線である。

これは単純だが難しいことだ。なかなかできない。


その一線は


自分の都合に合わせて釣りに行くのか。魚の都合に合わせて釣りに行くのか。


その間に、くっきりと引かれている。



幽霊テトラから海に向って左に50mほどのテトラ。
ほぼ水面にある。ここに乗れるのはべた凪の時だけだ。羅紗を貼ったような海。

左右にまっすぐテトラが延びる。どちらの際も狙うことができる。
目の前は完全なオープンウォーターだ。こんな凪ぎならここである。

波気がある時は昨日のような釣れる場所の特定が起こりやすい。
しかしべた凪の日は広範囲で釣れることが多い。
キャストできる場所が多いポイントの方が有利なのだ。

「多い日夜用slim」を投げたかったが3LBでは不安がある。何かを間違うとロストしてしまう。
今日もジグヘッドで行こう。こいつを投げるのは83deepが帰ってきてからだ。

2.6gジグヘッドにビームスティック クリアグリッターを刺す。遠くまで探りたい。

右前方にキャストした。来る事は分かっていた。完全に見えていた。

ぐぉん。

来た。15m沖。1mライン。

ロッドが充実に満たされる。

サイズは相変わらず分からない。でかい…か?



26プリ。これも昨日はいなかった魚だ。


左前方に投げる。

ぷぅん。



25プリ。


また右前方。

がぉん。



25プリ。


続けて右前方。

どぉん。



26プリ。丸呑みだ。

しかしサイズが足りない。28.5が欲しい。そしてもうひとつ、29が欲しい。


左テトラ際。

ぬぅー。



26か。プリ。

それにしても1発も外さない。


左30度。

だんっ。



27だ!。プリ。

おしっ!次っ。


しかし。


これで打ち止めだった。


唐突に時合は終わった。
何をしてもどこに投げてももう何も起こらなかった。


ふー。


お茶を飲んだ。煙草をくわえた。





再生完了。完全に満たされた。




いや。


まだ上がれる。


サイズには、まだ、余裕がある。



そいつらが待ちわびるfull moonは、もうすぐ、昇ってくる。




TACKLE DATA
ROD/Nories Slow Retrieve 80
REEL/TEAM DAIWA AEGIS 2004
LINE/銘柄不明 フロロ3Lb

Moon DATA

2009/2/4


2009/2/5
コメント (21)
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