弁護士辻孝司オフィシャルブログ

京都の弁護士辻孝司のブログです
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ハーモニー~心をつなぐ歌 京都弁護士会「死刑を考える日」のご案内

2016-01-27 20:37:22 | 社会・経済

  

毎年、京都弁護士会では「死刑を考える日」と題して、死刑廃止について市民に問題提起をするシンポジウムを開催しています。

今年も、2月6日(土)午後1時30分から、京都商工会議所で開催します。

今年の内容は、韓国映画「ハーモニー 心をつなぐ歌」を上映した後、

杉浦正健さん(自民党)、平岡秀夫さん(民主党)というお二人の元法務大臣をゲストにお招きして、

死刑執行を指揮するにあたっての法務大臣の職責と苦悩、死刑制度の実情と今後について語っていただきます。

  

映画は、私も見たことがないのですが、女子刑務所での実話をもとにした映画です。

とても感動的な映画で、評価も高いようです。(大スクリーンで無料で見れます!)

映画について詳しくはこちらからどうぞ。

  

元法務大臣お二人からも、ベールに包まれた日本の死刑制度の実情、政治家と死刑についてのぶっちゃけ話が伺えることと期待しています。

当日は、私もスタッフとして参加していますので、ぜひともお越しください。

予約不要、入場無料です!

詳しくは、こちらから京都弁護士会のHPをご覧ください。

  


京都市のHPに講演録がアップされました。

2016-01-26 10:07:04 | 社会・経済

 

2015年9月30日に担当した、京都市の第5回企業向け人権啓発講座(ハラスメント対策)の講演録が京都市のホームページに掲載されました。

私の話した内容がそのまま記録されているので、読み返してみると、話が下手くそだなあ、もっとコンパクトにやればよかった、もっと丁寧にやればよかったと、

後悔するところばかりで恥ずかしい思いです。

が、自分の恥ずかしいところをさらけ出してこそ、次の成長があるのだと前向きに考えることにしました。

京都市のホームページはこちらです。

よろしければ、ご覧ください。(ただし結構長いです。)

  

本年にアンコール企画のご依頼をいただきましたので、ブラッシュアップして、より良い講演を目指します!

 


岡山刑務所を視察してきました。2015.10.07

2015-10-15 15:33:54 | 社会・経済

  

先週、京都弁護士会の死刑制度調査検討プロジェクトチームのみんなで、岡山刑務所に視察に行ってきました。

視察の目的は、無期懲役受刑者の処遇の状況を知ること。

 

刑務所は、場所によって、収容されている受刑者の分類が異なっています。

岡山刑務所は、刑期が長期で、犯罪傾向が進んでいない人が収容される刑務所になっています。

  

岡山刑務所は、収容者のうち約半数が無期懲役の受刑者です。

無期懲役の人が犯した罪名は、殺人、強盗殺人など、生命に関する犯罪の人たちばかりです。

ただ、そういう重大犯罪を犯した人であっても、みんなが犯罪傾向が進んでいるわけではなく、初犯という人もいます。

そういう人たちが、岡山刑務所に収容されています。

  

現在、無期懲役では、現在、仮釈放が認められることは極めてまれなケースになっています。

仮釈放が認められたケースも、30年以上服役して初めて仮釈放が認められています。

そうしたことから、日本の無期懲役は、事実上、終身刑化しているといわれています。

誰も身元引受人になってくれなかったり、服役中に家族がみんな死んでしまって身元引受人がいなくなったりして、仮釈放で出所しても生活の目途が立たないため、結局、仮釈放がほとんど認められていないのが実情です。

仮釈放ではなく、獄死してはじめて出所していく人の方が圧倒的に多くなっています。

  

いつまでも収容されているため、次第に高齢化が進んでおり、岡山刑務所でも60歳以上の高齢者が約3割、50歳以上になると約5割となり、最高齢の方は88歳だそうです。

一般社会と一緒で、高齢化すると当然、病気もいろいろ出てきたり、寝たきりになったり、認知症になったりします。

刑務所でも、そういう人の介護が行われているようです。

視察した時に、収容者の食事を見せてもらいましたが、半分くらいの人は通常職だけれども、半分くらいの人は減塩食、糖尿食、やわらか食(おかゆなど)になっていました。

日本の刑務所は高齢者・障がい者のための施設になっているといわれますが、まさにそのとおりの印象です。

  

死刑を廃止した時の最高刑として、終身刑を導入すべきか否かということが一つの論点になるのですが、

この点については、死刑を廃止すべきという意見の人の中にも、仮釈放がない絶対的終身刑は人から希望を奪う残虐な刑罰なので許されないという意見が強くあります。

仮釈放のない終身刑は本当に残虐なのか? 

事実上、終身刑化している無期懲役囚の処遇実態を見れば、何か考えるヒントになるのではないかと調査に行ったのです。

  

刑務所の職員の方の話を聞いているところでは、事実上終身刑化しているとは分かっていても、たとえわずかでも仮釈放という希望があることで、収容者はモチベーションを維持できているのではないかということです。

グラウンドで何人もの方が運動されていたのですが、いつの日か仮釈放になって社会の戻った時に、体力がなくなって、よぼよぼになっていたのではダメだと、熱心に体を鍛えておられました。

   

刑務所では、懲役囚には刑務作業が課されるのですが、長期の受刑者が多い岡山刑務所では、その技術がとても熟練したものになっています。

熟練工になると作業報奨金(作業したことに対する報酬)の金額も増え、そのお金を積み立てて被害者や遺族に送金している人もいるそうです。

岡山では「備前焼」がブランドですが、何と岡山刑務所でも「備前焼」が作られていて、受刑者の中に備前焼職人がおられます。

視察の記念に、徳利を買いました。

  

とても素敵な徳利ですよね。

値段は1200円、普通の備前焼だと、この3倍くらいの値段がするそうです。

  

もう一つお土産で買ったのがこれ!

造り酒屋さんがしてそうな、しっかりした生地で出来た、おしゃれな前掛けです。

これは岡山刑務所の作品ではなく、函館少年刑務所と旭川刑務所で作られたもの。

元々は函館少年刑務所で作っていたようですが、人気商品で生産が間に合わず、増産のために旭川刑務所でも作っているそうです。

以前から目を付けていて、いつか欲しいと思っていました。

こういうのを買うと、料理をしてみたくなります。

さっそく、パン作りに挑戦してみました。(残念ながら失敗したので、もう一度チャレンジします。)

   

岡山刑務所では、10月17日(土)、18日(日)に、「矯正展」というのが開催されて、こうした作品の販売やイベントが行われるそうです。

全国の刑務所でも「矯正展」があります。

誰でも参加できるイベントです。

普通なら行くことのない刑務所、一度くらいは、ぜひ行ってみて下さい。

刑務作業で作られた商品の販売は、全国の刑務所でやっていますよ。  

 


京都市 企業向け人権啓発講座で講演してきました。H27.9.30

2015-10-01 12:01:13 | 社会・経済

  

京都市主催の企業向け人権啓発講座で講演してきました。

テーマは、「ハラスメント」

最近、企業からのこのテーマでの講演依頼が多いです。

  

ハラスメントの概念や判断基準、対応態勢や予防方法、発生時の対処法などを、実際の事例を紹介しながら解説しました。

後半は、参加者のみなさんに出演してもらい、パワハラの寸劇を見てもらい、その事例をもとにグループに分かれてディスカッションし、最後は発表してもらいました。

 

様々な企業を代表して、多くのみなさんに参加していただきました。

参加者のみなさんは、実際の職場でハラスメントに取り組まれているだけあって、とても熱心に議論していただき、終了後も質問にお越しいただきました。

 

最近は事務所でも、パワハラ・セクハラに関する相談が増えているような気がします。

企業や経営者のみなさんは、意識を持って取り組んでおられるところが多いのですが、

一人ひとりのレベルになると、まだまだ意識が低かったり、これくらいはいいだろうとか、自分は違うとかいう思い込みが強いのだろうと思います。

ハラスメントがなくなるには時間がかかるでしょうが、地道に取り組んでいきます。

 

 

  

 


広島平和宣言のプレゼン力!

2015-08-07 14:47:26 | 社会・経済

戦後70年という節目の年ということに加えて、平和と戦争、憲法について国民に広く知ってもらいたいという安倍総理の隠れた戦略が奏功して、

今年の八月六日はこれまで以上に注目を集め、特別な原爆の日になったように思います。

そんな原爆の日の式典での松井広島市長の平和宣言と安倍総理の挨拶は、プレゼン的にも極めて対照的でした。

 

 

   

昨日の広島市長の「広島平和宣言」は、「人類愛」と「寛容」を訴えた内容ももちろんすばらしいのですが、プレゼンとしてもすばらしい!

   

1 はじめに聞き手に広島の原風景をイメージさせるという舞台を設定します。

2 続いて、原爆投下による惨状という舞台を描写して設定するのですが、はじめの美しい原風景とのコントラストがあるために、その悲惨さが際立ちます。

3 リアルな舞台設定のあと「盗みと喧嘩を繰り返した子どもたち」「幼くして原爆孤児となり今も一人で暮らす男性」「被爆がわかり離婚させられた女性」「当時16歳の女性」「当時12歳の男性」という人物を登場させ、「広島をまどうてくれ!」などと話をさせます。

   

舞台設定 → 人物が登場 → アクション! という、まるで映画を撮影しているような宣言の前半部分です。

前半部分の具体的な話によって、聞き手は、頭の中で映画を見せられ、宣言に引き込まれてしまいます。

その結果、後半の「共生社会」「人類愛」「寛容」による核兵器廃絶、「信頼」を基礎にした武力に依存しない幅広い安全保障 というメッセージが、すっと心の中に入ってきます。

松井市長が、被爆者に、市民に、政府に、世界に、心からメッセージを伝えたい!という気迫も伝わってきます。

  

具体的な話をすることは聞き手に具体的な映像をイメージさせるだけではありません。

具体的な話は、ちゃんと事実を見ている、勉強している、理解しているということを伝えてくれます。

  

逆に、抽象的な話は、よく勉強していない、何もわかっていない、けれども、適当にうまくごまかして話しているという印象を与えます。

安倍総理の挨拶にはまったく具体性がありません。

広島に一度も行ったことがなくても、被爆者と話をしたことがなくても、原爆について勉強したことがなくても語ることのできる内容でしかありません。

安倍総理でなければ語れない内容でもありません。

とりあえずやっつけで作ったような挨拶で、これでは人の心を動かせません。

   

以下に、広島市長の平和宣言を引用しておきます。

良い文章です。ぜひ、ご一読ください。 

 ついでに、安倍総理の挨拶もどうしても読んでみたいという人はこちらをどうぞ

  

【広島平和宣言 2015】

私たちの故郷(ふるさと)には、温かい家族の暮らし、人情あふれる地域の絆、季節を彩る祭り、歴史に育まれた伝統文化や建物、子どもたちが遊ぶ川辺などがありました。

  

1945年8月6日午前8時15分、その全てが一発の原子爆弾で破壊されました。

きのこ雲の下には、抱き合う黒焦げの親子、無数の遺体が浮かぶ川、焼け崩れた建物。

幾万という人々が炎に焼かれ、その年の暮れまでにかけがえのない14万もの命が奪われ、その中には朝鮮半島や、中国、東南アジアの人々、米軍の捕虜なども含まれていました。

辛うじて生き延びた人々も人生を大きく歪(ゆが)められ、深刻な心身の後遺症や差別・偏見に苦しめられてきました。

生きるために盗みと喧嘩(けんか)を繰り返した子どもたち、幼くして原爆孤児となり今も一人で暮らす男性、被爆が分かり離婚させられた女性など――苦しみは続いたのです。

「広島をまどうてくれ!」。これは、故郷や家族、そして身も心も元通りにしてほしいという被爆者の悲痛な叫びです。

広島県物産陳列館として開館し100年、被爆から70年。歴史の証人として、今も広島を見つめ続ける原爆ドームを前に、皆さんと共に、改めて原爆被害の実相を受け止め、被爆者の思いを噛(か)みしめたいと思います。

   

しかし、世界には、いまだに1万5000発を超える核兵器が存在し、核保有国等の為政者は、自国中心的な考えに陥ったまま、核による威嚇にこだわる言動を繰り返しています。

また、核戦争や核爆発に至りかねない数多くの事件や事故が明らかになり、テロリストによる使用も懸念されています。

核兵器が存在する限り、いつ誰が被爆者になるか分かりません。

ひとたび発生した被害は国境を越え無差別に広がります。

世界中の皆さん、被爆者の言葉とヒロシマの心をしっかり受け止め、自らの問題として真剣に考えてください。

   

当時16歳の女性は「家族、友人、隣人などの和を膨らませ、大きな和に育てていくことが世界平和につながる。思いやり、やさしさ、連帯。理屈ではなく体で感じなければならない」と訴えます。

当時12歳の男性は「戦争は大人も子どもも同じ悲惨を味わう。思いやり、いたわり、他人や自分を愛することが平和の原点だ」と強調します。

辛(つら)く悲しい境遇の中で思い悩み、「憎しみ」や「拒絶」を乗り越え、紡ぎ出した悲痛なメッセージです。

その心には、人類の未来を見据えた「人類愛」と「寛容」があります。

   

人間は、国籍や民族、宗教、言語などの違いを乗り越え、同じ地球に暮らし一度きりの人生を懸命に生きるのです。

私たちは「共に生きる」ために、「非人道性の極み」「絶対悪」である核兵器の廃絶を目指さなければなりません。

そのための行動を始めるのは今です。

既に若い人々による署名や投稿、行進など様々な取り組みも始まっています。共に大きなうねりを創りましょう。

被爆70年という節目の今年、被爆者の平均年齢は80歳を超えました。

広島市は、被爆の実相を守り、世界中に広め、次世代に伝えるための取り組みを強化するとともに、加盟都市が6700を超えた平和首長会議の会長として、2020年までの核兵器廃絶と核兵器禁止条約の交渉開始に向けた世界的な流れを加速させるために、強い決意を持って全力で取り組みます。

  

今、各国の為政者に求められているのは、「人類愛」と「寛容」を基にした国民の幸福の追求ではないでしょうか。

為政者が顔を合わせ、対話を重ねることが核兵器廃絶への第一歩となります。

そうして得られる信頼を基礎にした、武力に依存しない幅広い安全保障の仕組みを創り出していかなければなりません。

その実現に忍耐強く取り組むことが重要であり、日本国憲法の平和主義が示す真の平和への道筋を世界へ広めることが求められます。

来年、日本の伊勢志摩で開催される主要国首脳会議、それに先立つ広島での外相会合は、核兵器廃絶に向けたメッセージを発信する絶好の機会です。

 

オバマ大統領をはじめとする各国の為政者の皆さん、被爆地を訪れて、被爆者の思いを直接聴き、被爆の実相に触れてください。

核兵器禁止条約を含む法的枠組みの議論を始めなければならないという確信につながるはずです。

 

日本政府には、核保有国と非核保有国の橋渡し役として、議論の開始を主導するよう期待するとともに、広島を議論と発信の場とすることを提案します。

また、高齢となった被爆者をはじめ、今この時も放射線の影響に苦しんでいる多くの人々の苦悩に寄り添い、支援策を充実すること、とりわけ「黒い雨降雨地域」を拡大するよう強く求めます。

  

私たちは、原爆犠牲者の御霊(みたま)に心から哀悼の誠を捧(ささ)げるとともに、被爆者をはじめ先人が、これまで核兵器廃絶と広島の復興に生涯をかけ尽くしてきたことに感謝します。

そして、世界の人々に対し、決意を新たに、共に核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて力を尽くすよう訴えます。

平成27年(2015年)8月6日

   広島市長 松井一実