平成27年5月4日(月)
糸瀬山1,866.6m
木曽三山と呼ばれる、南木曽岳・風越山・糸瀬山は東海地方辺りまでのハイカーにとって日帰りハイキングの人気コースなのだということだ。確かに中央アルプス前衛の木曽側で登り易く、地元で昔から登られていた山という範疇において、この三山は手軽なハイキングの対象だ。木曽の里からは奥の木曽山脈主脈(中央アルプス)よりも人々から身近に親しまれていた山とも言える。不思議なことに全てが木曽川の左岸にあるというのも共通している。そういえば、右岸の山々(岐阜県側)は御嶽山を除くと奥深く、あまりポピュラーに楽しまれている山も無い様に感じる。このうちぼくは風越山にしか登っていなかった。中央アルプスの山々に登るようになったのは実はそれ程昔ではない。伊那の桂木場登山口から将棋頭山を経て木曽駒まで(オマケで茶臼山)日帰りピストンした10年前が初めてだったが、その後何度か登っているうちに、木曽側にある前衛のこの三山が気になってきた。風越山は蕎麦粒岳のオマケに登ったが、とは言え南木曽岳や糸瀬山を主目的として木曽に向かうという程の山でもない。それくらい、木曽はとても遠いところだ。
半年近く山を休んでの再開で、脚も弱くなっているだろう。時期的にも高い山には未だ雪が多い。そんな悪条件?での今回の山登りだからこそ、これらの前山的な山を登ろうと思ったわけだ。昨日は南木曽岳に登った。次は糸瀬山へと向かう。前日に南木曽町のコンビニで買った弁当で夕飯を済ませ、南駒ケ岳から越百山を周回した時に訪れた大桑村に向かう。ここの伊奈川ダムの上に聳えるのが糸瀬山だ。R19の須原から入った林道を延々と辿って高度を稼ぎ、糸瀬山登山口まで上る。林道からハシゴが上って居る登山口周辺に駐車場は無い。登山口から200m程手前に林道掘削時の土捨て場の様な広い空き地があるのでそこに車を停めた。もちろん登山口にも周辺にも車は全く停まっていなかった。天気予報が変わってきて、4日は雨もあり得そうな悪い方向に向かっている…当初の予報では5日が雨で、4日は晴れというものだった。コンビニで昼寝を試みたが、駐車場への車の出入りが多くて、眠れなかった。この駐車スペースに停めたのは未だ明るい時間だったが、シュラフに包まって転がっているとトロトロと眠ってしまった。
寝る時間が長すぎて、途中で何度も目が覚めたが、朝方近くに車の屋根を叩く雨の音が聞こえた。ああ、ダメかなあ…と思いつつも、またシュラフに潜った。明るくなって目が覚めると、雨は上がっていたが、どんよりと雲が低くまた再び降ってくることも予想される。支度をし、パンを食べて5時50分に歩き出す。糸瀬山登山口と看板が立つ登山口の向かいに登山者カード入れの青いポストが立っている。記入して中に入れ、林道脇のハシゴ段を上って杉林に付けられた登山道を登っていく。登山口のところにも車は見当たらないので、お天気のせいで登る人が少ないのだろうか?GW中で人気山でもあるし、全く人が登らないということは余り考えられない(しかし、この日は全く他に人を見なかった。この日、糸瀬山に登ったのは結局ぼくだけだった様だ)。急なジグザグをして尾根に繋がると、少し傾斜が緩んでくる。『松原よこて』の看板がある尾根に繋がる辺りで下の集落を俯瞰できるが、低い山並の上にどんよりとした雲のベールが垂れ下がっていて、この分では上に登るほど天気が悪くなくなって行きそうな雰囲気だった。この先ずっと指導標も良く整備され、ポイントポイントには明瞭な地点名も付けられている。糸瀬山は古くから麓の人たちにとって信仰の山だったと同時に、地名にも残っている様に野鳥を捕獲する鳥屋場であったようだ。信仰と生活が結びついた身近な山だったのだろう。新緑が萌え始めたミズナラの林になる。この付近はとても良い感じで、ぼくの地元の山辺りの雰囲気だ。ミツバツツジの赤紫色が新緑に点々と見られるが、昨日の南木曽岳と違って糸瀬山は全体に花が少なく、咲いていたのはこの付近のミツバツツジくらいなものだった。白く隈取られた丈の低い笹が足元の枯葉の上に広がってくる。新緑のミズナラの林に白い隈取がある低い笹は見た目に大変美しい。
小さな鞍部を通過する。両側は深く切れ込んで急峻に落ち込んでいる。『イチョウ谷』の看板を過ぎ、ここで方角をやや東に変えて、『丸屋の鳥屋』という看板が付いた尾根の小ピークまでが最も急な登りだ。鳥屋という名前からして往時は渡り鳥を一網打尽にする鳥屋場があった様だ。東に中央アルプスの山並みが見えるが、このお天気では残念ながら中腹以上は雲を被っている。空は少し明るくなってくるが、晴れてきそうな気配はない。かといって直ぐに雨が降ってきそうな様子も無い。足元の笹が段々丈が高くなり密になってきた。ネットでは、この辺りから道を隠すくらいに笹が深くなってズボンを濡らしたという記録を見たので、登りはじめから念のためカッパのズボンを履いてきた。しかし、暑いばかりで笹丈も特に高くならないし、肝心の笹は夕べの雨に濡れていないので脱ぐことにした。
尾根に登り上げる。明るいミズナラ等の広葉樹の登りはますます急になっていく。『まむし坂』の看板を見る。この急な上りをまむし坂と呼ぶようだ。急な登りが落ち着くと『山居の鳥屋』というプレートのある地点に登り上げた。ここで標高1700m程、頂上が1867mなので標高差的にはもう大したことはない。しかし、ここからが結構長かった。笹は刈られているのか?雪が融けたばかりで未だ伸びていないのか、それは分からなかったが、標識もしっかりして道は良く整備されていた。いつのまにか、樹相はシラビソやコメツガになっていた。高峰はガスを被って見えないものの、空は明るくなっていたのだが、雲が厚くなっているのかあるいはその雲の中に入っているのか、少しずつ薄暗くなってきた。登り上げた頂稜はだらだらと続いて、いつになっても山頂に着かない。ダケカンバの林になると、突然右手の視界が開けた。青ナギと呼ばれる地点で、晴れていれば中央アルプスの稜線が仰がれるところだが、今はガスが山々の頂上部に蓋をしている。下にエメラルドグリーンの伊奈川ダム湖が俯瞰できた。「カイバツ一八00米、頂上へ十五分」と書かれた古いブリキプレートが木に付けられていた。
頂上間近の幾つかのコブを越えて、道に脇の笹が深くなり『しらび平 頂上→』のプレートを見る。最後は薄暗くて所々に凹地があるコメツガ林に大きな石がごろごろと山積みされた様な山頂に9時14分に着いた。三角点はどこにあるのか?周囲を見渡すと、一番高いと思われる石の上にペンキで真っ赤に塗られた三角点標石が根元を埋めて立っていた。こんな三角点標石も珍しい。この山頂の名物である『のろし岩』は山頂の先50mくらい向うに木々越に見えている。岩という名前が付いているが、ここにあるのもおかしな程不自然に大きな石だった。山頂付近は大きな石が山積みされている様な、と書いたが、この「岩」も同じ仲間なのだろう。少し離れてぽつんとあるのと、その大きさから異様な印象を受ける。山頂付近には部分的に厚い残雪があるが、ここに到る途中では特に雪も見当たらなかった。三角点標石はあるものの、ここまでの随分頻繁で丁寧な案内看板の割には糸瀬山山頂と書かれたプレートはどこにも見当たらなかった。あるいは無くなってしまったのかも知れないが…。
薄暗い山頂から、先ののろし岩の下に行って休む。のろし岩にはアルミハシゴが懸かっている。少し上りかけたが、ガタガタして頼りない上に、その先はクサリはあるが足場のない岩の上を伝って行かなくてはならない。今日の天気ではこの上に登っても展望があるはずもないので、無理をして上るのは止めた。清見オレンジを食べながら、のろし岩の下で湯を沸かし、カップ焼きそばも食べた。山でカップ焼きそばを食べるのは初めてだが、ソースの味が食欲をそそり、疲れた時にはのどを通らないパンやおむすびよりも良い感じだ。休んでいるうちに、雨がぽつぽつ降ってきたのでカッパを出そうとしたが直ぐに止んだ。その後も何度かぽつぽつきたが、本降りにはならなかった。GW期間中であるのに相変わらず誰も登ってこなかった。10時にのろし岩の前から腰を上げ、下ることにする。薄暗い山頂部を降り始め、急な尾根を下るようになると登りの時と違って周囲もガスに包まれ、全体に薄暗くなってきた。今朝の天気予報では今日の後半が雨、明日は晴れるという…。
山居の鳥屋で小休止する。残っていたパンを食べてお腹が一杯になった。ここから急な下りをして、丸屋の鳥屋の先で、どうにも眠くなってきたので道に横たわって眠ってしまった。誰も来ないから、道の真ん中に寝ていても大丈夫?15分ほど眠り込んでから起き上がり、再び荷を担いで歩き出す。しばらく歩くと随分登りになる。おかしいな、と思いながら、こんなに行きに下り返しがあったろうか?フーフー言いながら笹の小山に登り上げ、ふっと前を見ると『山居の鳥屋』の看板がある。さっきここでパンを食べて休んだ所だ。昨年南アルプス前衛仙丈ヶ岳に繋がる地蔵尾根で、居眠り後に今回と同じく降りて来た道を戻って再び登ってしまったことがあったが…こんなことを2度もするなんて。往復30分以上のロスタイムだ。頭がボケてしまった様な気分で気が抜け、どっと疲れが襲う…。
その後は坦々と下って、笹尾根から杉林に降り、急な下りをジグザグに降りる。最後はハシゴを降りて林道の登山口に下りた。林道を引き返して、12時44分に車に戻った。雨もパラパラくらいで濡れずに済んだが、とうとうこの日は山の中で誰にも会わなかった。支度を済ませて林道を下る。里に下りるまで基本的には舗装されている道だが、上から落ちてきた様な落石や、大きな水溜りに所々には未舗装箇所もあってあまり良い道ではない。国道に下りて木曽福島方面に向かい上松町にある桟温泉に寄って行く。「木曽の桟(かけはし)」と言う名勝の直ぐ近くにある温泉旅館だ。木曽の桟と言うのは、危険な崖を横断するためにかつて作られた石垣の桟道なのだと後で知った。この時はそこまで行って見なかった。国道が改修されて遥か上を通過するようになり、かつては国道沿いにあったこの温泉を見つけるのに、何度も同じ所を行ったり来たりしてやっと辿りついた。
温泉旅館は崖の下の狭い地形に建っていて、木曽川を眺められる中々風光明媚なところだ。日帰り温泉と違って、この類の日帰り入浴可の旅館は昼間はたいてい空いている。誰も居ない温泉を独り占めして気分も最高だ。浴場も木曽檜の湯船もそこそこ広く、源泉は冷泉なのでこれを加熱しているのだろうが、昨日のあららぎ温泉よりもずっと良い。温泉は透明だが鉄さびのような匂いがしていた。景色を眺めながら疲れを癒して長湯した。昨日に比べれば、今日の糸瀬山の方が標高差もあって往復の時間も掛かった。しかし、久しぶりに2日続けて山に登ったことを考えれば疲労度も左程でなく、まだまだ大丈夫(登れるかな)という手ごたえがあった。といっても、ハイキング山を2山登っただけ…。入浴後は午後ゆっくりと引き返し、夜の9時ごろには帰宅できた。意外な程GWなのに静かな山を楽しめて満足な2日間だった。
糸瀬山1,866.6m
木曽三山と呼ばれる、南木曽岳・風越山・糸瀬山は東海地方辺りまでのハイカーにとって日帰りハイキングの人気コースなのだということだ。確かに中央アルプス前衛の木曽側で登り易く、地元で昔から登られていた山という範疇において、この三山は手軽なハイキングの対象だ。木曽の里からは奥の木曽山脈主脈(中央アルプス)よりも人々から身近に親しまれていた山とも言える。不思議なことに全てが木曽川の左岸にあるというのも共通している。そういえば、右岸の山々(岐阜県側)は御嶽山を除くと奥深く、あまりポピュラーに楽しまれている山も無い様に感じる。このうちぼくは風越山にしか登っていなかった。中央アルプスの山々に登るようになったのは実はそれ程昔ではない。伊那の桂木場登山口から将棋頭山を経て木曽駒まで(オマケで茶臼山)日帰りピストンした10年前が初めてだったが、その後何度か登っているうちに、木曽側にある前衛のこの三山が気になってきた。風越山は蕎麦粒岳のオマケに登ったが、とは言え南木曽岳や糸瀬山を主目的として木曽に向かうという程の山でもない。それくらい、木曽はとても遠いところだ。
半年近く山を休んでの再開で、脚も弱くなっているだろう。時期的にも高い山には未だ雪が多い。そんな悪条件?での今回の山登りだからこそ、これらの前山的な山を登ろうと思ったわけだ。昨日は南木曽岳に登った。次は糸瀬山へと向かう。前日に南木曽町のコンビニで買った弁当で夕飯を済ませ、南駒ケ岳から越百山を周回した時に訪れた大桑村に向かう。ここの伊奈川ダムの上に聳えるのが糸瀬山だ。R19の須原から入った林道を延々と辿って高度を稼ぎ、糸瀬山登山口まで上る。林道からハシゴが上って居る登山口周辺に駐車場は無い。登山口から200m程手前に林道掘削時の土捨て場の様な広い空き地があるのでそこに車を停めた。もちろん登山口にも周辺にも車は全く停まっていなかった。天気予報が変わってきて、4日は雨もあり得そうな悪い方向に向かっている…当初の予報では5日が雨で、4日は晴れというものだった。コンビニで昼寝を試みたが、駐車場への車の出入りが多くて、眠れなかった。この駐車スペースに停めたのは未だ明るい時間だったが、シュラフに包まって転がっているとトロトロと眠ってしまった。
寝る時間が長すぎて、途中で何度も目が覚めたが、朝方近くに車の屋根を叩く雨の音が聞こえた。ああ、ダメかなあ…と思いつつも、またシュラフに潜った。明るくなって目が覚めると、雨は上がっていたが、どんよりと雲が低くまた再び降ってくることも予想される。支度をし、パンを食べて5時50分に歩き出す。糸瀬山登山口と看板が立つ登山口の向かいに登山者カード入れの青いポストが立っている。記入して中に入れ、林道脇のハシゴ段を上って杉林に付けられた登山道を登っていく。登山口のところにも車は見当たらないので、お天気のせいで登る人が少ないのだろうか?GW中で人気山でもあるし、全く人が登らないということは余り考えられない(しかし、この日は全く他に人を見なかった。この日、糸瀬山に登ったのは結局ぼくだけだった様だ)。急なジグザグをして尾根に繋がると、少し傾斜が緩んでくる。『松原よこて』の看板がある尾根に繋がる辺りで下の集落を俯瞰できるが、低い山並の上にどんよりとした雲のベールが垂れ下がっていて、この分では上に登るほど天気が悪くなくなって行きそうな雰囲気だった。この先ずっと指導標も良く整備され、ポイントポイントには明瞭な地点名も付けられている。糸瀬山は古くから麓の人たちにとって信仰の山だったと同時に、地名にも残っている様に野鳥を捕獲する鳥屋場であったようだ。信仰と生活が結びついた身近な山だったのだろう。新緑が萌え始めたミズナラの林になる。この付近はとても良い感じで、ぼくの地元の山辺りの雰囲気だ。ミツバツツジの赤紫色が新緑に点々と見られるが、昨日の南木曽岳と違って糸瀬山は全体に花が少なく、咲いていたのはこの付近のミツバツツジくらいなものだった。白く隈取られた丈の低い笹が足元の枯葉の上に広がってくる。新緑のミズナラの林に白い隈取がある低い笹は見た目に大変美しい。
小さな鞍部を通過する。両側は深く切れ込んで急峻に落ち込んでいる。『イチョウ谷』の看板を過ぎ、ここで方角をやや東に変えて、『丸屋の鳥屋』という看板が付いた尾根の小ピークまでが最も急な登りだ。鳥屋という名前からして往時は渡り鳥を一網打尽にする鳥屋場があった様だ。東に中央アルプスの山並みが見えるが、このお天気では残念ながら中腹以上は雲を被っている。空は少し明るくなってくるが、晴れてきそうな気配はない。かといって直ぐに雨が降ってきそうな様子も無い。足元の笹が段々丈が高くなり密になってきた。ネットでは、この辺りから道を隠すくらいに笹が深くなってズボンを濡らしたという記録を見たので、登りはじめから念のためカッパのズボンを履いてきた。しかし、暑いばかりで笹丈も特に高くならないし、肝心の笹は夕べの雨に濡れていないので脱ぐことにした。
尾根に登り上げる。明るいミズナラ等の広葉樹の登りはますます急になっていく。『まむし坂』の看板を見る。この急な上りをまむし坂と呼ぶようだ。急な登りが落ち着くと『山居の鳥屋』というプレートのある地点に登り上げた。ここで標高1700m程、頂上が1867mなので標高差的にはもう大したことはない。しかし、ここからが結構長かった。笹は刈られているのか?雪が融けたばかりで未だ伸びていないのか、それは分からなかったが、標識もしっかりして道は良く整備されていた。いつのまにか、樹相はシラビソやコメツガになっていた。高峰はガスを被って見えないものの、空は明るくなっていたのだが、雲が厚くなっているのかあるいはその雲の中に入っているのか、少しずつ薄暗くなってきた。登り上げた頂稜はだらだらと続いて、いつになっても山頂に着かない。ダケカンバの林になると、突然右手の視界が開けた。青ナギと呼ばれる地点で、晴れていれば中央アルプスの稜線が仰がれるところだが、今はガスが山々の頂上部に蓋をしている。下にエメラルドグリーンの伊奈川ダム湖が俯瞰できた。「カイバツ一八00米、頂上へ十五分」と書かれた古いブリキプレートが木に付けられていた。
頂上間近の幾つかのコブを越えて、道に脇の笹が深くなり『しらび平 頂上→』のプレートを見る。最後は薄暗くて所々に凹地があるコメツガ林に大きな石がごろごろと山積みされた様な山頂に9時14分に着いた。三角点はどこにあるのか?周囲を見渡すと、一番高いと思われる石の上にペンキで真っ赤に塗られた三角点標石が根元を埋めて立っていた。こんな三角点標石も珍しい。この山頂の名物である『のろし岩』は山頂の先50mくらい向うに木々越に見えている。岩という名前が付いているが、ここにあるのもおかしな程不自然に大きな石だった。山頂付近は大きな石が山積みされている様な、と書いたが、この「岩」も同じ仲間なのだろう。少し離れてぽつんとあるのと、その大きさから異様な印象を受ける。山頂付近には部分的に厚い残雪があるが、ここに到る途中では特に雪も見当たらなかった。三角点標石はあるものの、ここまでの随分頻繁で丁寧な案内看板の割には糸瀬山山頂と書かれたプレートはどこにも見当たらなかった。あるいは無くなってしまったのかも知れないが…。
薄暗い山頂から、先ののろし岩の下に行って休む。のろし岩にはアルミハシゴが懸かっている。少し上りかけたが、ガタガタして頼りない上に、その先はクサリはあるが足場のない岩の上を伝って行かなくてはならない。今日の天気ではこの上に登っても展望があるはずもないので、無理をして上るのは止めた。清見オレンジを食べながら、のろし岩の下で湯を沸かし、カップ焼きそばも食べた。山でカップ焼きそばを食べるのは初めてだが、ソースの味が食欲をそそり、疲れた時にはのどを通らないパンやおむすびよりも良い感じだ。休んでいるうちに、雨がぽつぽつ降ってきたのでカッパを出そうとしたが直ぐに止んだ。その後も何度かぽつぽつきたが、本降りにはならなかった。GW期間中であるのに相変わらず誰も登ってこなかった。10時にのろし岩の前から腰を上げ、下ることにする。薄暗い山頂部を降り始め、急な尾根を下るようになると登りの時と違って周囲もガスに包まれ、全体に薄暗くなってきた。今朝の天気予報では今日の後半が雨、明日は晴れるという…。
山居の鳥屋で小休止する。残っていたパンを食べてお腹が一杯になった。ここから急な下りをして、丸屋の鳥屋の先で、どうにも眠くなってきたので道に横たわって眠ってしまった。誰も来ないから、道の真ん中に寝ていても大丈夫?15分ほど眠り込んでから起き上がり、再び荷を担いで歩き出す。しばらく歩くと随分登りになる。おかしいな、と思いながら、こんなに行きに下り返しがあったろうか?フーフー言いながら笹の小山に登り上げ、ふっと前を見ると『山居の鳥屋』の看板がある。さっきここでパンを食べて休んだ所だ。昨年南アルプス前衛仙丈ヶ岳に繋がる地蔵尾根で、居眠り後に今回と同じく降りて来た道を戻って再び登ってしまったことがあったが…こんなことを2度もするなんて。往復30分以上のロスタイムだ。頭がボケてしまった様な気分で気が抜け、どっと疲れが襲う…。
その後は坦々と下って、笹尾根から杉林に降り、急な下りをジグザグに降りる。最後はハシゴを降りて林道の登山口に下りた。林道を引き返して、12時44分に車に戻った。雨もパラパラくらいで濡れずに済んだが、とうとうこの日は山の中で誰にも会わなかった。支度を済ませて林道を下る。里に下りるまで基本的には舗装されている道だが、上から落ちてきた様な落石や、大きな水溜りに所々には未舗装箇所もあってあまり良い道ではない。国道に下りて木曽福島方面に向かい上松町にある桟温泉に寄って行く。「木曽の桟(かけはし)」と言う名勝の直ぐ近くにある温泉旅館だ。木曽の桟と言うのは、危険な崖を横断するためにかつて作られた石垣の桟道なのだと後で知った。この時はそこまで行って見なかった。国道が改修されて遥か上を通過するようになり、かつては国道沿いにあったこの温泉を見つけるのに、何度も同じ所を行ったり来たりしてやっと辿りついた。
温泉旅館は崖の下の狭い地形に建っていて、木曽川を眺められる中々風光明媚なところだ。日帰り温泉と違って、この類の日帰り入浴可の旅館は昼間はたいてい空いている。誰も居ない温泉を独り占めして気分も最高だ。浴場も木曽檜の湯船もそこそこ広く、源泉は冷泉なのでこれを加熱しているのだろうが、昨日のあららぎ温泉よりもずっと良い。温泉は透明だが鉄さびのような匂いがしていた。景色を眺めながら疲れを癒して長湯した。昨日に比べれば、今日の糸瀬山の方が標高差もあって往復の時間も掛かった。しかし、久しぶりに2日続けて山に登ったことを考えれば疲労度も左程でなく、まだまだ大丈夫(登れるかな)という手ごたえがあった。といっても、ハイキング山を2山登っただけ…。入浴後は午後ゆっくりと引き返し、夜の9時ごろには帰宅できた。意外な程GWなのに静かな山を楽しめて満足な2日間だった。
本当に暑くて夏の様です。その上今日は風が凄かったです。
今日は妻と前橋のばら園に行ったんですが、砂ぼこりがひどかったです。ばらはほとんど終わりな感じで、例年より早いんですね。
来週半ばからは梅雨に入った様な天気になるみたいですね…。
糸瀬山は静かで良かったですね。
三角点の頭を赤く塗るのは会津でもいくつか見たことあります。何のおまじないなのか?目立つようになんでしょうかね?