Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

ベニモンマダラ

2010-07-31 22:27:29 | 自然から学ぶ
 異なった地域の現場を歩いていると、ふだん見ている空間とは違ったものが見えるもの。先ごろ今年何度か訪れている富士見町立沢の水田地帯を歩いた。標高は千メートルを超えているものの、同じように雑草の丈は高く伸びて、なかなか管理できないのだろう、畦畔に伸びた草が刈られることもなく聳え立っているところも少なくなかった。そんな畦畔の中に小さな、しかし目立つ昆虫を見つけた。よく見るとけっこうあちこちにその姿が確認できる。翅は黒いものの、そこに赤色の斑点が見える。交尾をしているのか二匹が尻側を向けてくっついている。周辺にいる同じ昆虫もどれも同じようにつがいでいる。しかしその両者の羽の色は微妙に違い、斑点の色も濃さに違いがある。我が家のあたりでは見ない昆虫である。

 この昆虫はベニモンマダラという。食草がクサフジというこの昆虫は蛾の一種。蛾には異様な模様を見せるものが多いが、どちらかというと蝶のような好印象を持たせるもの。ただしこの模様で大型だったらやはり異様かもしれない。環境省カテゴリで準絶滅危惧(NT)種に指定されていて長野県でも同じNT扱いである。諏訪地方にはけっこう多く飛んでいるようで地域限定的なもののよう。

  先日のコケリンドウもしかりであるが、やはり伊那谷にはない個体が見られる。このベニモンマダラを確認した場所は昭和40年代後半にほ場整備をされた地域。とするとわたしが生まれ育った飯島町あたりとそれほど変わらない時代の整備履歴である。しかし整備後の自然状態はどうかと見ると、両者には若干違いがあるように感じられる。おそらくこの富士見町の空間は種の多様性が高いという印象を受ける。飯島町の場合ほぼ全町を対象にくまなく整備されたというその整備範囲の違いのようなものはあるかもしれないが、この富士見町の場合もそこそこ広範囲で整備されている。ただ、飯島町の場合に比較すると全町一斉という整備ではなかったから、整備年代がずれている。このあたりが自然に与えた影響の変化をもたらしたのかもしれない。わたしの結論ではこんな感じである。果樹園優先地帯は「絶滅地帯」、昭和50年代以降に整備された水田空間は「絶滅危惧地帯」、それ以前戦後に整備された水田空間は「準絶滅地帯」、戦前以前のままの空間は「情報不足地帯」といった分けだろうか。


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