思いついたメモに、
ペンを走らせることはなかった、その時、
ひと言の中に、揺り動かそうとする光明もなかったし、
こころを押す風も吹かなかった。
「何を期待してるのだ」
そう、誰かがささやく。
その通り、
期待して何かが巡ってくることなど
あるはずもないことは、
重々承知のはずなのに、
対価を求めてしまうのは、
この世の人の常。
あえて事実をメモに残しても、
変わらぬ思いがよみがえる。
忘れてしまうこともあるだろう、
他人に注意されることもあるだろう、
そして、
自ら記憶を引き出しのどこかに見つけることもあるだろう、
しかし、
必ず同じことを繰り返すのは、
身体に染みついた過去の経験でも、
誰かに教わったマニュアルでもない。
時は忘れるためにある、としたら
良いことも、
悪いことも、
己の冷静さによって物差しの質は決まる。
やり取りや会話の中に
不合理があっても、
記憶のメモは感情に消える。
間もなく悔いが訪れても
解消できる間合いが
人とひとの隙間。
不可があるとすれば、
己の未熟さか。
メモ好きな他人に問おう、
剥がれた付箋を、
あなたは探しますか、と。