Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

同じ都市周辺の農業、でも・・・

2018-08-18 23:55:33 | 農村環境

 今、都市計画区域内にある農地について、その相続税で悩んでいる人々がいる。都市計画区域内に限らず、農振農用地内の白地と言われる地域の農地も、同様に悩みは膨らんでいる。農地であっても相続税において農地並課税対象とならない。したがって多額の相続税を支払わなければ、農業を継続できないのだ。認識不足であったが、都市部ではこれを回避するべく法律が定められているという。生産緑地法というもの。法律上は大都市圏に限ったものではないようだが、該当する自治体は東京23区、首都圏・近畿圏・中部圏内の政令指定都市、首都圏整備法・近畿圏整備法・中部圏開発整備法に規定する一定の区域内(中部圏の場合は都市整備区域内)にある市のみのようだ。ようは地方都市ではこれが該当しないというわけだ。そもそも市の都市計画とも絡んでくること。農地を守ろうというのなら、都市計画区域内にせず、枠から外せば良いことだが、そうは簡単にはいかない。とはいえすでに飽和状態になっている地方都市において、今後も都市が肥大化するとはとうてい考えられない。とすれば、都市計画区域と農振区域について、あらためて検討する必要はあるのだろうが、相変わらず成長を目指す人々も少なくなく、それが地方のアイデンティティーと言っても過言ではない。いかに両者をあげ奉らなくてはならないか、これが地方の矛盾をも招き寄せる。地方では当たり前のように農地を宅地化したり、工場化したりした。それを否定する人は、少数だったかもしれない。大都市圏で農業を営んでいる人たちより、より地方の農業を営んでいる人たちの意志は弱かったかもしれない。もちろん今さらそんなことをとやかくいう時代でもない。すべてが世間に、国に、そして発言力で勝る都市圏域に翻弄された農業、農村だったと言える。

 そもそも生産緑地法は、戦後、開発推進地域とされた都心において、農地に宅地並課税がされた際に都市農地の存続をを訴えたことによって1974年に制定された法律だという。都内での生産緑地は2687ヘクタールある(今年3月末)という(『生活と自治』8月号 生活クラブ事業連合生活協同組合連合会)。同誌によると、小規模経営にもかかわらず継続されている。そしてある経営者の「続けるのは、先祖伝来の土地を守りたいし、地域に愛されているからです」という言葉を紹介している。なんら地方と変わらない農業者の言葉だが、とりわけ同じような環境にある都市周辺農業者にもかかわらず、両者の間には大きな格差があるようにもうかがえる。土地改良法は2年続きで改正された。主旨のひとつに、都市化する地方農村の将来を考慮した視線がうかがえるが、こと地方都市周辺農業に対しては依然として厳しい。農振白地なら、農業などしなくてもよい、という声が聞こえてきそうだが、ではなぜ都市圏の農業は保護されるのか。もちろん都市住民にとって必要不可欠な存在になっているからだろう。

 さて、同誌において、生産調整がなくなった今、生活クラブとしての米作りの将来を考えている。生活クラブ内の消費量を見ても、米の消費は減少しつつあるという。2010年に15万1千俵食べていたが、2016年には13万3千俵に減ったという。こうしたなかアンケート調査を行ったというが、以前にくらべると子育て世代の米消費量が大幅に減っているという。そして全世代にわたって米飯よりも食事の準備に時間がかからないパンの消費が増えているという。提携する米生産者をどう守っていくか、検討をしているようだ。

 今日も甥たち(中学生)の話を聞いていると、友だちたちは朝パンを食べる、あるいは好む人が多いと言う。「僕は嫌だ」と思っても多数決では負けてしまう時代。同誌では米の今後についてこう記している。「米価が趨勢的に下がる傾向は強まり、生産原価を下回る構造が固定化するはずです。そのとき、農家の赤字補てんする公的な「セーフティーネット」がなければ、コメの市場出荷を断念する農家が相次いでも不思議ではありません」と。そうなると大規模農家がまず破綻するという。大規模農家を育てる意味合いが強い政策をたくさん打ち出してきたのに、もしそうなれば、農政の破綻を宣告されることになる。様子見の現状の中、果たしていかなる答えが待っているか…。

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