Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

日本で最も小さいトンボ

2008-06-18 19:20:24 | 自然から学ぶ




 体長が2cm程度というハッチョウトンボを、現場に出たついでに昼休みに新山まで見に行った。あまりトンボに興味もない人は、このトンボを見ても「赤トンボ」というだろう。身体の色が見事に赤い。身体が赤ければみな「赤トンボ」といってしまうあたりはけして嫌いではない。赤いトンボに違いはないのだから・・・。しかしハッチョウトンボがみな赤いわけではない。やや緑色が混じった橙色の体色のものも飛んでいる。これはハッチョウトンボのメスである。オスで20mm、メスで18mmほどという説明もあるが、体長は見分けがつかないほど似ている。もともとオスも羽化後は橙褐色だといい、しだいに赤みを帯びてきて、15から20日で完成色になるという。オスのの赤いイメージがハッチョウトンボのイメージになっていて、メスの方は紹介されないことが多い。写真に撮るとこの赤い体色に焦点が当たってしまうものだが、まだ焦点がトンボにいくだけよい。メスにいたっては草むらの緑色や褐色に紛れてしまい、完全なる保護色。メスをねらってカメラを構えるのだが、デジカメのオートフォーカスには反応しない。何度も取り直すのだが、焦点が1枚も合わない。そうこうしているうちに昼休みの時間も終わり、あきらめて帰ることになってしまう。

 「ハッチョウ」の由来は、江戸時代の本草学者である大河内存真が『蟲類写集』に「矢田鉄砲場八丁目にのみ発見せられ、そのためハッチョウトンボの名を有する」と記録したのに始まるという。その矢田鉄砲場八丁目とは、現在の名古屋市の矢田川付近という。湿地や休耕田が生息環境だといい、水深の浅い水辺が好きなようだ。あまり遠くへ移動することはないといい、現在生息する環境を維持すれば、絶えることはないのだろう。本州以南に生息しているようで、前述したように小さい体長は「日本で最も小さいトンボ」と言われる。世界的にも小さな部類という。発生場所が限られているということから、現在では希少なトンボで、長野県版レッドリストにおいても絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。また、環境庁が1982年に全国一律に定めた「指標昆虫」10種のうちの1種であり、生息が確認された場合は開発前に配慮が必要とされているという。

 ところで余談であるが、「新山」を流れる新山川のことを「ニュウヤマ」川という。この「ニュウ」も地すべりから発した地名かもしれないが、「ニイヤマ」と呼ぶ人と「ニュウヤマ」と呼ぶ人がいて、正しくは「ニュウヤマ」と呼ぶものだという人が多い。実はかつては集落の名も「ニュウヤマ」だったのだが、新山村という村が合併で誕生した際に「ニイヤマ」と正式に読むようになった。ところが今ではその新山も伊那市富県の一部であり、「ニイヤマムラ」と称していた時期は短かった。そんなこともあって両者が混在しているようだ。
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