夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

「長江哀歌(エレジー)」を見ました

2008-06-11 | art

これは不思議な感触の映画です。冒頭のダムに沈んだ住所に連れて行かれるところまでの人を食ったような話の運びは、昨今の日本やアメリカの映画に飽きが来ている私にはとても新鮮でした。その後もなんの脈絡もなくUFOが長江の上を飛んだり、オブジェが廃墟になったような建築物がロケットのように飛んで行ったり、脂ぎった男たちが山盛りの麺を食べながら狭い船室に次々と現れたり、京劇の扮装をした数人が携帯ゲームをやっていたり。……時折小道具に合わせて現れる烟(タバコ)、酒、茶、糖(アメ)の4つの文字も不思議な感じです。舞台になっている三峡が李白を始めとする詩人・文人に愛されたことと関係があるのかないのか。

しかし、いちばん不思議なのは完成すれば600キロの長さの貯水湖を出現させ、300万人以上の住民の退去を強いる三峡ダムの建設工事でしょう。その壮大さ、荒っぽさはまさに中国らしいもので、この国家プロジェクト自体が奇想天外、摩訶不思議なものです。まだ人が住んでいる建物の壁に「三期(最終)工事後はここまで水位が上がる」と赤いペンキで書いていったり、ビルの取り壊しを人手でやっていたり、電話1本で巨大な吊橋のライトを点けさせる実業家が出てきたり。

この映画には2人の主人公がいて、動機は違うけれどどちらも家族を探しに水没する奉節という街に来て、互いに知り合うこともなく去ります。即物的で情緒を排した描写(エレジーという邦題は適切と思えません。原題の「三峡好人」も手抜きっぽいですが)ですが、2人とも心をこの街に残していることはよく伝わってきます。ただドラマとしての組み立てに監督が腐心したとは思えないので、消えゆく奉節を主人公とした物語として見た方がいいように思います。

蛇足ながら四川大地震の映像を見たときこの映画を思い出しました。ビルの残骸や街の混乱ぶりがとても似ていました。


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なんかいろんなものがあるサイトです。


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2 コメント

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へえ… (ぽけっと)
2008-06-14 00:07:30
最初の方の文章で、なんだかその不思議な映像が見えるような気がしました。脈略なくても雰囲気ありそうな。

タイトルだけ見ると、二胡なんかのメロディー聞こえそうで背中くすぐったくなりそううなのにねw
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BGMは (夢のもつれ)
2008-06-15 12:47:49
えーっとどんなのだっけと考えても思い浮かびません

二胡のふにゃふにゃした唄い回しは私も苦手ですね。。雰囲気はたっぷりある映画なので機会があったら見てください。
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