江副 康成 鳥栖市の未来を語るブログ

鳥栖市議会議員として鳥栖市の未来に対する思いを語るとともに、その活動の様子を議会および議会外についてお知らせします。

取り残される整備新幹線西九州ルート

2014-02-05 15:01:20 | 交通機関
九州新幹線西九州ルートは新幹線鉄道として整備される予定もない未着工区間を残したまま、全国新幹線整備計画から取り残されようとしています(新鳥栖武雄温泉間51㌔区間のことです)。

先の鳥栖市議会9月議会で九州新幹線「西九州ルート」のフル規格化への協議を求める意見書を賛成多数で可決成立させていただきましたそしてその時お約束した国に対する要望活動として、2月4日お昼前のまるまる一時間国土交通省との勉強会(鳥栖市議会;自民クラブ・天桜会)を上京した際実現することが出来ました。ご尽力いただいた地元国会議員秘書の方々に心より感謝申し上げます。
そして国会会期中のお忙しい中にも関わらず、実務に最もお詳しい国土交通省鉄道局石井幹線鉄道課長、岸谷技術開発室長に進捗状況と今後の見通しをご説明いただいた上で、その後質疑応答できるという最高の機会となりました。
また地元選出の国会議員3名の先生方にもお臨席いただき大変有意義な機会となりました。

以下、その時の講師のご説明と私が質問した内容でポイントと思うところをわかりやすいように若干補足していますが、私が受けた感想を記したいと思います。
整備新幹線とは「全国新幹線鉄道整備法」に基ずく昭和48年の「整備計画」により整備が行われている5路線のことを言います。その内、九州新幹線鹿児島ルート、東北新幹線は全線開業されています。北海道新幹線は全線認可の上建設中であります。北陸新幹線は長野新幹線として既に開業しているところと建設中のところがあり、敦賀から大阪までは未着工ではありますが、ルート選定中であります。
ところで、九州新幹線西九州ルート(本来は長崎ルート)は武雄温泉から長崎間66㌔が建設中ではありますが、新鳥栖武雄温泉間51㌔は未着工であります。そして整備する予定も今はないという当局のご返答でした。整備新幹線は地元の声を反映したところの政治分野の問題でしょうというお話しでした。至極ご最もなことであります。

在来線区間の沿線住民はフリーゲージトレインはかもめやみどりなど特急電車が在来線と新幹線を走る乗り物だと思ってください。新鳥栖武雄温泉間51㌔を走るときは従来の特急電車であり、新幹線ではありません。よって、新幹線扱いしませんというのが当局のお考えです(整備新幹線とはその主たる区間を列車が時速200キロメートル以上の高速で走行できる幹線鉄道をいう)。在来線ですから踏切、地方道の整備は地元自治体の負担であり、線路の改良、路盤強化やロングレール化はJR九州の負担となります。フリーゲージトレインを走らせるために沿線自治体は財源の手当てをしなければなりません。またJR九州は支出を工面しなければなりません(当然運賃にも影響あるでしょう、民間企業ですから)。
実はこれらの負担は新鳥栖武雄温泉間51㌔がフル規格整備されれば本来必要のない支出なのであります。悲しいかなこの区間のみ全国的な整備計画から取り残されようとしています。

新幹線の魅力は何と言っても完全に独立した軌道を持つという点です。このため安定した運行が確保され、踏切事故のない安心安全なシステムとして信頼を勝ち得てきました。新幹線は人や車が進入しないことを前提としているから260㌔以上の高速運転が出来るのです。九州新幹線西九州ルートは昭和48年の「整備計画」にも乗るような全国的な幹線網の一部であり、今後の新幹線活用の可能性を保つためにも全国一律の標準規格にすべきであります。

繰り返しになりますが、新幹線は皆さんご存知のように極めて高速で走る関係上、前方注意義務がありません。つまり、例え線路に人がいようと跳ねないように回避する止まる義務がないということです。ブレーキをかけても4キロほど停車距離が必要だと運転手の方からお聞きしました。だから人も車も中に入ってくることがないような独立した専用の線路を持っているのです。一方在来線は踏切があり、また踏切以外でも容易に人が侵入するリスクがあるので、運転手には前方注意義務があります。人や車が前方にいれば止まって衝突しない義務があるのです。西九州ルートは全長143キロの中で新幹線、在来線、新幹線と細かく入れ替わるというまさに運転手泣かせのコースを敢えて取ろうとしています。岸谷室長は技術的に対応は可能だとお話されました。しかし、新鳥栖武雄温泉間51㌔には93ヶ所に踏切があります。また線路は容易に人が入れる構造となっています。技術的に可能な分と構造的に不可能な部分はどうしても出てきます。複雑系の最大の生き物、沿線住民を含めて人がもたらすミスは技術的には防ぎようがありません。

そこで、思い出すのが、昨年夏スペインで起きました既に運行中のフリーゲージトレイン、その車輌が在来線曲線部で想定速度をオーバーして起こした脱線事故です。また昨年暮れ山形新幹線在来線部分でミニ新幹線が自動車と衝突事故を起こした件です。在来線での列車事故はこれまでも数多く起こりました。しかし、これから新幹線と在来線との融合が起きるようになると全国新幹線網における在来線部分は人や車が軌道に入ってくるリスクに絶えずさらされることになり、そこでの事故は全国新幹線網の一部でもありますから全国広範囲に波及することとなってきます。ネットワークの中核部分は堅牢なシステムで守らなければなりません。

いま、私は国土強靭化法という昨年12月4日に成立した法律に着目したいと思います。その法律は東日本大震災を教訓に強靭な国土を作るため、脆弱性評価をし、脆弱な部分をクリアして国土を強靭化していきましょうというものです。まさしくこれから整備新幹線を棚上げし在来線の手直しで事足れりとする新鳥栖武雄温泉間51㌔がこの脆弱な部分に相当するのではないかと私は訴えてまいりました。
長崎県知事をはじめ長崎県関係者、及び嬉野、武雄の首長・市議会はもとより、沿線の首長議会までもがフル規格化を多数求めているのに古川佐賀県知事がフル規格化に全く動かないのは、フル規格化した場合佐賀県が負担しなければならないと言われている800億円という地元負担分の問題があるからです(国土交通省としてはどういう根拠で算出したのか不明との事でしたが)。
これがネックになっているのです。しかし国土強靭化法にはそこを救済するような規定があります。

頂いた資料に新規着工区間の比較表があります。その総工事費を見ますと、北海道新幹線1兆6700億円、北陸新幹線1兆1600億円であるのに対して九州新幹線西九州ルートは2100億円(既着工分含めて全体で5000億円、ただし、他の二つの既着工分はありますが何ら記載されていません)であります。これを見てどう思われますか。
新鳥栖武雄温泉間51㌔の整備で新たに4100億円かかると佐賀県は見積もっています。
もしかかるとしても他の工事区間を見ればこのくらいの資本投下を西九州ルートに投じてもらってもいいと思いませんか。
佐賀県が地元負担分を負担出来ないなら国土強靭化法に基づきご支援いただけないものかとご要望致してきました(法には財政措置等とらなければならないという規定があります)。

石井課長より与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの話も伺いました。これから先は政治の話なのだと思います。

ご列席いただいた地元国会議員の先生方は期待されている有能な先生ですが大変お若い方ばかりです。これまでの整備計画に対する決定過程には関係する部分が少なかったものと思います。しかし、新鳥栖武雄温泉間51㌔フル規格化の問題はゆっくりできませんが、これからの問題でもありますので、おおいに期待したいと思います。
私は「新幹線西九州ルートで肥前の殖産を実現する会」のメンバーとしてもこの問題に取り組んできました。2020年東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。東京への人の流れが東京から九州への人の流れともなり、“九州は一つそして日本は一つ”を目指してこれを機にさらに頑張りたいなと思います。

追伸 2020年東京オリンピック・パラリンピックに間に合わせるため安易にフリーゲージトレインを新鳥栖武雄温泉間51㌔に走らせた方がいいというのような主張では決してありません。鹿児島ルート整備におけるリレーつばめの乗換駅八代駅のように、この場合武雄温泉でホームTOホームで在来特急に乗り換えできるように当面できたらなという思いです。当然長崎武雄温泉間は前倒しでフル規格新幹線が走れるよう整備すべきということですが。


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