鳥栖市学校給食センターに纏わる一考察
まず初めに⑴鳥栖市学校給食センターに纏わる一考察についてお尋ねいたします。
私が本件につき問題だと思ったのは4月16日熊本地震の際被災を受けたと聞いた時ではありません。また学校給食がしばらく提供できないと聞いた時でもありません。その時は復旧に向け頑張っている関係者の姿を見て後押しする気持ちで一杯でありました。
それではいつ強い疑問を持ったのかといいますと、本年6月定例会議案説明会の席上「学校給食センター災害復旧費」1,080万円を鳥栖市の懐から、市債を発行する形で出したいと提案された時です。熊本地震から一月半程経っていましたので地震でどういったダメージを鳥栖市内で受けていたのか、そう大きな被害もなく鳥栖は良かったねと思っていた中で、新築間もない学校給食センターの補修費として1,000万円という大金、またそれを施工業者ではなくなぜ鳥栖市が負担するのか、おかしいのではないかと財政課長に厳しい投げかけをしたことを覚えています。納得いくような説明はその時ありませんでした。これでは市民の皆様に何で鳥栖市が負担しなければならないのかの説明がつきません。国民主権から来るところの地方自治、政治を任せられた者は、国の場合は国民に、市の場合は市民に重大な説明責任を負っております。今となればその時もっと疑問点を粘り強く質し、執行部とともに真相解明する姿を市民の皆様にお伝えすることができれば、本件についてまた違った形で市民の皆様に伝わったのでなないかと思うと残念でなりません。本議会においても色々な角度から質疑応答があり、その都度新たなものが見えてまいりますが、私は今回質問するにあたり、広く市民の前でなされる一般質問の他に、集中的に関係者から事情を聴く担当委員会の議事録をすべて読みました。そうすると私なりに一つの真実が見えてまいりました。多くの時間が本件に費やされています。教育行政に対する期待は今議会の一般質問をみてもお分かりのように、多岐にわたりかつ切実であり、また早期実現しなければならないものも多々あります。その一助になればとの思いで質問させていただきますので宜しくお願いいたします。
それでは、鳥栖市学校給食センター問題のキーワード、「特定天井」とは何なのか、おさらいを兼ねてご答弁していただきたいと思います。
国土交通省の建築基準法にいう「特定天井」及び文部科学省の手引に示された「特定天井」及び設計の際採用された「耐震天井」との違いが分かるようにご説明お願いいたします。残余の質問は質問席から行います。
(答弁)
江副議員のご質問にお答えいたします。
平成25年7月12日付けで建築基準法施行令第39条第3項の改正がなされ、平成25年8月5日付けの国土交通省告示第771号により「6メートルを超える高さにあって水平投影面積が200平方メートルを超える吊り天井」を「特定天井」と定められております。
また、建築基準法施行令の改正を踏まえ、平成25年8月7日付けで文部科学省から「学校施設における天井等落下防止対策の一層の推進」について通知がなされており、併せて「学校施設における天井等落下防止対策のための手引き」が示されているところです。
この文部科学省の通知により、天井等落下防止対策を行なうべき天井といたしまして、「高さが6メートルを超える天井」又は「水平投影面積が200平方メートルを超える天井」と定められております。
建築基準法施行令に定める特定天井は、「高さと面積」の二要件を必要とするのに対し、文部科学省が定める天井は「高さ」又は「面積」のどちらかが該当すれば、天井等落下防止対策を施す必要があるため、文部科学省が定める天井の方がより厳しい条件となっているところです。
耐震天井につきましては、建築基準法施行令の改正前の天井で、平成15年に国土交通省から技術的助言として発出された「大規模空間を持つ建築物の天井の崩落対策」に基づき整備、改修された天井となっています。耐震天井では、天井と壁との間にクリアランスを設け、天井の水平変位抑制を図るため天井内部の補強や筋交い(すじかい)を設置する内容となっています。
以上、お答えとさせていただきます。
ご答弁有難うございます。同じ「特定天井」といっても国土交通省住宅局が定めたものと文部科学省が定めたものではその要件に違いがあるという事でした。
国交省は「6メートルを超える高さにあって水平投影面積が200平方メートルを超える吊り天井」として、わかり易い例を挙げれば、体育館の天井をつり天井にした時のような場合に規制をかけるためものです。東日本大震災でそうしたものが崩落した反省に立った手当だったと理解します。
一方、文科省の方はというと「高さが6メートルを超える天井」又は「水平投影面積が200平方メートルを超える天井」のどちらかに該当すれば、天井等落下防止対策を施す必要があるとの答弁のようにかなり小さな空間しかないものまで規制をかけるものです。
思うに、地盤に固着した建物は地震の際その揺れが直に構造体に伝わり、地震の大きさに連動して揺れます。そして建物の高いところほど大きく揺れるのは経験上知りうるところです。「高さが6メートルを超える天井」として高さにより規制を設けることは高いところほどよく揺れるという経験からすぐに理解できます。
次に「水平投影面積が200平方メートルを超える天井」について見てみます。
天井が落下して人に危害が及ぶことを防止するという規制目的から「特定天井」には単位面積当たりの質量要件があります。1平方メートル当たり2キロ以上20キロ以下という基準があります。1平方メートル当たり2キロに満たない場合は人に大きな危害、あるいは致命的なダメージまで与えないということから特定天井に求められる厳しい設備要件は定めないということ。又、20キロを越えればそもそも吊り天井はリスクが大きく許可できないということだと理解します。そして水平投影面積が200平方メートルの場合にその基準で質量換算すると、天井そのものの重さは400キロ以上4,000キロ、4トン以下となります。かなりの重量物となります。重くなると、吊っている天井ですので建物の揺れと直には連動せず、その場にとどまったり、あるいは独自に揺れたりして、天井と壁がぶつかるリスクが高まったり、あるいはその重さゆえ、壁にぶつかったときの衝撃が強くなります。あるいはその両方からかも知れません。国交省は様々な実験を繰り返しされたことの結果としてこの基準を定められたのだと思います。
その点、文科省は「又は」ということで、面積と高さの関係が曖昧で、何をもってどのような事象を規制しようというのか、合理的な説明が私にはまったく見えてきません。
まずもって私はこの文科省の通知による規制が、本件において将来禍根を呼ぶ最初の原因になっている気がいたします。
しかし、文科省の補助金がなければ学校給食センターは建ちません。残念ながらそれに従うということが現実的な対応だったのでしょう。
それでは、こういう事態に対してどういう対応がなされたのでしょうか。
委員会での答弁によると工程会議の後に行われていた分科会において、政令及び告示の確認を行い、市及び施工管理者、施工業者の3社の方で「合意」がなされ天井施工が行われたということです。ここにいう「合意」とは何を意味するのでしょうか。鳥栖市、施工管理者、施工業者がそれぞれ認識していた「合意」について現時点で明らかになったことを対比しながらお答えください。
(答弁)
江副議員のご質問にお答えいたします。
鳥栖市学校給食センターは、建築基準法 施行令第39条第3項の改正前に建築確認を終えており、改正後の建築基準法施行令の適用を受けない施設ではありましたが、設計時から耐震天井の仕様に加え、より災害に強い建物にしたいとの考えから、改正後の基準を見据え、吊りボルトや斜め部材の配置、ハンガー及びクリップといった接合金物の緊結などの設計を行ない、天井脱落対策を行なってきたところでございます。施行令改正前は、天井材と壁とのクリアランス幅については規定がなかったところですが、工事発注後に原則6センチ以上のクリアランスを確保するとの基準が示されたことから、市、工事施工業者及び工事監理業者が協議し、クリアランスを6センチ以上確保するとの合意がなされたものです。
この合意を直接確認できる資料については、現時点では確認できておりませんが、天井を施工する際に工事施工業者から提出される施工図の承諾願や工事施工監理者が工事施工中に天井材と壁のクリアランス幅について是正を指示していることから、市、工事施工業者及び工事監理業者がクリアランス幅について、共通の認識を持っていたものと考えております。
以上、お答えとさせていただきます。
ご答弁有難うございます。
設計時から耐震天井の仕様に加え、より災害に強い建物にしたいとの考えから、改正後の基準を見据え、吊りボルトや斜め部材の配置、ハンガー及びクリップといった接合金物の緊結などの設計を行ない、天井脱落対策を行なってきたところなどは、さすが規制当局の情報に敏い大手設計事務所ならではと思うところです。
また、工事発注後に原則6センチ以上のクリアランスを確保するとの基準が示されたことから、市、施工管理者及び施工業者が協議し、クリアランスを6センチ以上確保するとの合意がなされたと改めてご答弁いただきました。
設計図はそのままに仕様の変更で対応できるものと判断があったと委員会の議事録にはありました。施工業者が起こす施工図により現場で対応という合意が3者でなされたものと思われます。ただ、この合意が不確かで、不安的であったのが最大の悲劇となって後々災いを起こすことになりました。
まず、7月に行われた復旧工事において廻り縁を10センチではなく12.5センチに変えて行われことになりました。廻り縁が10センチですので、壁から一律6センチのクリアランスをとれば、天井ボードと廻り縁がかぶるところは4センチとなります。地震の際の横揺れを設計段階で3cmから4センチの揺れを想定していたそうですが、最大の揺れ幅を見たとき、天井ボードが廻り縁から脱落、衝突破損する恐れリスクが大となります。今回の損傷はまさにこのような自体が起こったわけです。
後から考えれば何でも言えることですが、今思うに、設計者であり、施工管理者であられます安井設計事務所様におかれましてはこの時、廻り縁を12.5センチに仕様変更ができなかったのかとまずは悔やまれます。あるいはクリアランスを6センチではなく、最大想定横揺れ幅4センチそれに0.5センチの余裕をみて、4.5センチ、廻り縁10センチの半分足らず幅のクリアランスで施工させることはできなかったのか残念に思います。
ここで確認の意味で被災をうけた箇所の面積と天井高を教えてください。
(答弁)
江副議員のご質問にお答えいたします。
今回の熊本地震による被災箇所は煮炊き調理室、和え物室、洗浄室、コンテナ室、ランチルーム、エントランスホールとなっております。
各部屋の天井高及び天井面積につきましては、煮炊き調理室の天井高は6.95メートル、面積については109平方メートル、和え物室の天井高は6.95メートル、面積については31平方メートル、洗浄室の天井高は6.95メートル、面積については117平方メートル、コンテナ室の天井高は3メートル、面積については202平方メートル、ランチルームの天井高は3.85メートル、面積については272平方メートル、エントランスホールの天井高は7.4メートル、面積については110平方メートルとなっております。
以上、お答えとさせていただきます。
ご答弁ありがとうございました。
国交省の基準「6メートルを超える高さにあって水平投影面積が200平方メートルを超える吊り天井」からすると、鳥栖市学校給食センターにおいてクリアランスを6センチとらなければならない特定天井ではそもそもありませんでした。また、その時は規制外となりますので4.5センチでもよかったのです。私の推測ですが、当初の「耐震設計」が廻り縁の幅10センチからしてクリアランスは4.5センチこれが設計者の念頭にあったのではないでしょうか。
被災後の現場確認によれば、天井と壁との衝突により天井の転落を防ぐという特定天井、耐震天井の目的は今回機能していたことになります。しかし、破損事故が起こってしまいました。震度4弱程度の地震でしたので、揺れが思ったほど大きくなくそれが幸いしたのかもしれませんが、文科省の通知による基準に縛られることなく合理性を求めれば破損事故さえ防ぐことができたのではないかとの思いもあります。
次に4月16日の熊本地震発生時にはクリアランス不足を思わせるような被災現場は発見されませんでした。7月23日天井ボード取り換えのためすべての廻り縁を外そうとした時、クリアランスが6センチない箇所が発見されました。これを聞くと無理して6センチのクリアランスをとったところがかえって破損事故を起こしたのではないかと感じられます。
またこれら、鳥栖市、施工管理者及び施工業者の現場立ち合いでは、給食センターが6センチのクリアランスを持つ特定天井で竣工されたことを前提に協議がなされているのです。今思えば真実と認識のかい離、それにも関わらず「特定天井」で施工されたの一言でそれぞれ共通認識が継続されたこと、それが6月議会の災害復旧問題、そして7月に起こった予定外の切断作業問題等を引き起こしたことのベースとしてあります。
そしてついに切断作業での対応問題により、身分にかかわる処分まで行われる事態となりました。本来こうした処分をするときには事の真相を明らかにした上でなすべきものであって、少なくとも今回の件では切断をするに至った経緯を鳥栖市の担当者関係者のみならず、立ち会った施工管理者、施工業者にも審尋、詳しく尋ねたうえで慎重に決定するべきで甚だ拙速というほかありません。
公平ではないような気がするのは私だけではないと思います。
ここで、二つ目の原因となる問題についてお尋ねいたします。今回のキーワード、「特定天井」への対応の仕方の確認が、正式に定期的に行われる会議という位置づけの工程会議ではなく、その終了後に行われた分科会という全体として周知徹底されにくい会議で確認されたという事、そして記録も残らないような会議であったということを聞きますと、専門家による相互チェック体制及び履歴管理など建設当時の管理体制の甘さに問題があったのではないかとの重大な疑問が湧いてきます。この点につきご答弁を求めます。
(答弁)
江副議員のご質問にお答えいたします。
今回の学校給食センター災害復旧工事において、天井材と壁とのクリアランス不足が確認されたことにつきましては、建設当時の施工や施工監理、更には市発注者としての責任も含め、新たに検証することも必要であると考えておりますので、第三者による検証委員会等の意見も踏まえ、整理してまいりたいと考えております。
以上、お答えとさせていただきます。
検証委員会の判断待ちになることなく、出来れば自ら整理されることを期待しまして本件に関連して最後に一つご提案したいと思います。
こと問題が発生したときにもっとも詳しい人が中心になり、現場の現象を把握し問題解決への道筋を示してもらうことは、市民に対する説明責任を果たさなければならない鳥栖市にとって今後とも重要なことと思います。今回も施工管理者と施工業者は災害や問題が発生したときにすぐに駆け付けその対応にあったてくれたという事でした。しかし、それが責任問題まで含んでくると一転して保身的なものが感じられるように見えました。そうしたことを見ると、発注者の立場に立ってアドバイスを請け負い、アカウンタビリティー説明責任がそもそもの義務である専門家集団、それをを使ったスキームCM(コンストラクション・マネージメント)方式の活用が今回のような大規模かつレアなケースでは今後必要になるのではないかと思います。塩尻市に建設経済常任委員会で行政視察に行った際、新体育館をCM方式で建設された事例の説明を受けました。その特徴の一つとして市民に対する説明責任ということに自ずと目が行ってしまいました。そうした観点から今後鳥栖市においても専門的、特殊な公共工事にはCM方式を視野に検討すべきではないかと思いますがいかがでしょうか。
(答弁)
国交省のガイドラインによりますと、CM方式(コンストラクション・マネジメント)とは、建設生産・管理システムの一つで、コンストラクション・マネージャーといわれる発注者の補助・代行者が、設計・発注・施工の各段階において、
・設計の検討や工事発注方式の検討、
・工程管理、
・品質管理、
・コスト管理などの、各種マネジメント業務の全部または一部を行い、発注者は、コンストラクション・マネージャーのアドバイスを踏まえ、建設工事等を、分離又は一括して発注を行うものでございます。
CM方式では、
・施工業者への支払い管理を行うことで、コスト構成を把握する事が容易となること。
・コンストラクション・マネージャーが、設計段階から支援を行うことで、工期の短縮やコストの縮減が期待されること。
・技術者が不足している地方公共団体を中心に、技術者に対する量的・質的補完が期待されること。などの利点がございますが、
CM方式の留意点といたしましては、
・コンストラクション・マネージャーの選定にあたり、コンストラクション・マネージャーの業務範囲(役割・責任)を踏まえた選定基準及び資格審査や実績評価について十分な検討が必要となること。
・資質や能力が不十分な者がコンストラクション・マネージャーとなった場合、発注者のリスクが増加すること。
・これまで元請業者が行ってきた施工に関するコスト管理を、発注者及びコンストラクション・マネージャーが行う場合、発注者側の業務量が増大するほか、コンストラクション・マネージャーの選定によっては、工事費が増加するなどのリスクが伴うこと
などが考えられているところでございます。
本市におきましても、これらの状況等を踏まえまして、他自治体等でCM方式が導入された事例等について、調査するとともに、今後、本市における、公共施設等の建設プロジェクトの実施に関しましても、その都度、CM方式も含めて、どのような実施方法が 最も適しているのか、各種方式を比較検討した上で、適切に選定してまいりたいと考えております。
以上、お答えとさせていただきます。
設計、施工、施工管理においても地元業者がそれに携わり、そのノウハウを高め、鳥栖市から外部へと経済活動が盛んになってくること、そうしたところから鳥栖市が豊かになってくるものと思いますし、そう願っている者の一人です。規模の大小にかかわらず、公共工事におけるアカウンタビリティ、説明責任の重要性に理解のある人たちと今後とも一緒にやっていければいいなとの期待をもって次の質問に行きたいと思います。