米相互関税に世界市場動揺:識者はこうみる
市場関係者に見方を聞いた。
◎セリングクライマックス、関税出尽くしで反転へ
<大和証券 チーフテクニカルアナリスト 木野内栄治氏>
足元の動きは厳しくなっているが、セリングクライマックスを迎えたとみている。直近の状況からすると、4月9日に発動した後に新しい話が出る様子ではなく、相互関税は出尽くしとなった可能性が高い。それはトランプ大統領が米株市場の引け後に「素敵な提案があれば交渉する」と発言したことからも考えられる。徐々に株式市場は落ち着いていくのではないか。
たとえば、米国では今後勝ち組になるはずのフォードが2か月の販促キャンペーンをするという。一方で負け組のトヨタやBMWは2か月値上げをしない方針を示している。駆け込み輸出で米メーカーは一時的に押され気味になるためで、こうした動きが自動車業界を活性化させ、米景気の悪化懸念は薄れる。一方の中国も足元の半導体関連は悪くはない。当面は景気動向が売り材料にはならない。
以上の点から、日本株もここから持ち直すとみられる。4月は海外投資家が買い越すアノマリーがある一方、直近の下げで新年度が売りが出切ったところから始まるため、反転した後は7月まで上昇トレンドが続くのではないか。
◎報復関税強まれば一段安も、内需株優位の展開継続
<三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩氏>
米国の相互関税措置によって、各国が景気の下振れ懸念を早々に織り込んでいる状況。今後の交渉次第で明るい材料が出てくれば株価は反発する可能性があるが、反対に報復関税の動きが強まればさらに調整が深まるリスクはあるだろう。足元の日経平均はなんとか3万4000円を維持している状況で、同水準をキープできるかがきょうの焦点となりそうだ。
物色動向は、関税の影響が比較的少ない内需関連が買われやすいとみている。ただ、金融株は日銀の利上げ観測後退により調整が続きそうだ。内需株でもディフェンシブ色の強い銘柄が選別されていくだろう。
今後の日経平均は落ち着きどころを探るような展開となりそうだ。昨年8月に付けた3万1000円台を想定する必要はまだないと思うが、各国が報復関税に動くなどリスクが高まった場合は3万4000円を割り込み、売りが強まりそうだ。
◎日本株安は行き過ぎ、日銀利上げ思惑後退は支え
<マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏>
日本株の下落は行き過ぎの領域に入ってきた。前日までの下げであれば、来期業績の1割減益を織り込む水準でフェアバリューとみることができた。それ以上の下げは、現時点では過剰といえる。
3万3000円が視野に入る中、昨年8月の急落の「令和のブラックマンデー」とつら合わせになってきており、値ごろ感も出てくる。
日銀の利上げが株価には悪材料となっていたが、これほど世界景気の先行き不透明感が強い中では利上げできないだろう。日本の長期金利が上がらないとなれば円高はそろそろ止まるのではないか。そうなれば日本株も下げ止まる。
ただ、不透明感がある中では、短期的なリバウンドはあり得ても急反発はなさそうだ。しばらくは3万3000円─3万5000円のレンジを見込んでいる。
◎政策変更まで市場に圧力続く
4月3日、トランプ米大統領が発表した広範な関税措置の影響を見極める動きが続く中、金融市場では、ドルが主要通貨に対して下落したほか、米株式相場は急落した。写真は、ニューヨーク証券取引所の取引指数を示すスクリーン。4月3日、ニューヨークで撮影(2025年 ロイター/Brendan McDermid)
<シュワブ・センター・フォー・ファイナンシャル・リサーチのチーフ債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏>
雇用の展望が低下し、金融条件がタイトになれば、連邦準備理事会(FRB)は金利を引き下げる以外に選択肢がないと思う。数回の利下げでは、関税によって引き起こされた問題を解決することはできない。緩和はできるが、解決には至らない。
要するに、現状は何も意味をなさない。エネルギー以外でカナダに貿易黒字がある中で、なぜ貿易戦争になっているのか。よく考えられた合理的な政策とは思えない。
相応のボラティリティーが生じるだろう。私の予想では政権の誰かが退任し、より穏やかな政策を取ろうとするだろう。おそらく反発も見られるだろうが、実際に政策に変更があったり、真の交渉に至る証拠が出るまで市場は圧力を受け続けるだろう。
◎米雇用統計の重要性増す、分散投資推奨
<JPモルガン・アセット・マネジメント(ロンドン)のグローバル市場ストラテジスト、ヒュー・ギンバー氏>
市場の反応は昨夜の(相互関税)発表が予想以上に悪かったことを明確に示している。
われわれが注目している重要な問題は、経済データに表れた政策の不安定さがいつどのように、より穏健なアプローチへの転換を促すかだ。あすの米雇用統計は普段よりもさらに重要となり、投資家は企業がこの不確実性を雇用計画にどのように反映しているかを探ることになるだろう。
地理的分散は極めて重要だ。今年を迎えるにあたりトランプ政権を巡っては米経済にとって素晴らしいが、それ以外の国にとっては厳しいと想定されていた。しかし、政権の政策は米国にとってより困難であることがますます明らかになっている。
現在、グローバルに分散投資し、ピークに達したと思われる米国の例外主義というテーマにさらされ過ぎないようにする十分な機会がある。
◎やや過剰反応、世界的な貿易戦争なら景気後退も
<OSAIC(ニューヨーク)のチーフマーケットストラテジスト、フィル・ブランカート氏>
やや過剰反応だ。これまでの米経済の強さを忘れている。原油価格の下落は米消費者にとって追い風だ。金利低下も米消費者にとって追い風になる。
米経済への影響よりも、世界の他の国々への影響の方がはるかに大きい。消費者は多少のショックを吸収できる。確かに多少の景気減速は見られるだろうが、市場が騒ぎ立てるほどのものではない。
ただ、世界的な貿易戦争に突入すれば、話はまったく違ってくる。そうなれば、景気後退の可能性があり、物価は大幅に上昇する。スタグフレーションのような状況だ。これらは全て非常に危険だ。だが、これまでの米経済は好調で、このような状況に陥るとは思わない。米国は依然として完全雇用状態にある。
◎景気後退まだ完全に織り込まず、インフレ不透明
<オールスプリング・グローバル・インベストメンツの債券チーム最高投資ストラテジスト、ジョージ・ボリー氏>
債券市場では、関税によって今後3─12カ月間の大幅な成長減速とインフレ加速の可能性に対する懸念が高まっている。
米国債利回りは著しく低下した。10年債利回りは4%前後が非常に重要な抵抗線だが、まだ下抜けてはいない。この付近から何度か反発しており、債券市場が景気後退のような結果を真に懸念し予想し始めているのかを見極めるため、この水準を注視している。
債券市場はまだ景気後退を完全には織り込んでいない。まだ、という点を強調する。インフレがより大きな変数だからだ。われわれは成長鈍化、おそらくかなりの成長鈍化を予想しているが、インフレの見通しはまだ不透明だ。
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