沼田は次期社長になれなかった

2018年04月26日 14時49分22秒 | 創作欄
2015-06-26 07:01:11 | 創作欄

「沼田の奴!飼い殺しにしてやる!」
沼田が大隅金太に恨まれたのは不本意であった。
あろうことか、上野の中華料理店の座敷で開かれた株主総会で筆頭株主で代表権を持っていた吉岡初男が沼田を次期社長に推挙したのだ。
「大隈君、君も2期社長をやればいいだろう。次は沼田君が社長だな。いいな譲れよ!」
吉岡は強引は性格であるので、他の株主は異を唱えなかった。
もっともわずか100万円の出資で歯科企業の経営者たち7人で再建した専門新聞であった。
沼田は自負心から業界新聞と呼ばれることを嫌った。
歯科業界の零細な企業の経営者たちは「新聞屋さん」と沼田のことを呼ぶこともあり、自尊心を傷付けられたものだ。
製薬業界の大手企業の年商の1社にも満たないような、歯科業界の市場規模であった。
沼田は日本薬業新聞社に勤務していた頃、経営者インタビューの欄などを担当し、上場されている大手企業の経営者に度々取材をしてきた。
それらの経営者と比べると、歯科業界の経営者たちはいかにも見劣りがしていた。
だから、沼田は製薬業界の大手企業のトップを歯科企業の団体の講演会へ招いたりした。
「今日は、とても良い話が聞けたよ」と元厚生省(当時)の官僚であった歯科団体の事務局長に感謝された。
結局、沼田は次期社長になれなかった。
大隈が意図して6年間も株主総会を開かなかったのだ。

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