オジサンはサウナが好きだ。
しこたまサウナで汗を流し、冷水に浸かる。これを数回繰り返すと汗と疲れがすっかり抜けて、肌はサラサラ、実に爽快だ。
そんなわけで、今日もサウナの扉を開くと先客が三名ほど。
そこに、さらに六名ばかりが入ってきて、サウナ室内の密度が一気に上がった。
入ってきた中で、二人は異質だった。若く、立派な体躯のスポーツマン男子二名である。
おどおどしながら出入り口近くの隅、下段に並んで座った。
ボクたちサウナ初めてです、と顔に書いてある。
「おい、兄ちゃんたち、こっち座れ」と、先客のひとりが、奥の高い段を譲った。
「あ、ハイ。ありがとうございますっ」ふたりが移動する。
贅肉などない、引き締まった体。日焼けした肌はミルクチョコみたいにきめ細かい。
オジサンのくたびれた体とは明らかに違う。トドの群れに迷い込んだアシカ二頭。
「兄ちゃんたち、ええ体しよるの」
「スポーツしよるんか?」
次々と質問され、丁寧に答える。
『高校野球』という言葉が出た途端、色めき立った。
地元では名の知れた強豪校、しかも予選で活躍中、その投手と捕手なのだ。
さんざんふたりを励まして、茹であがった先客三名がサウナを出る。
すると早速、後から入ったオヤジたちの餌食になる。
「兄ちゃんたち、サウナ初めてか?」
快活に答える球児たちの白い歯がまぶしい。
サウナの入り方講座が始まった。
終盤になって、別のオヤジが口を挟んだ。
「高校生がサウナ入って体にええんか?」
その一言で、空気が一変した。
高校野球選手がサウナ風呂に入るのは是か否か、大論争が始まったのだ。
球児ふたり、場にいたたまれず、どんどん小さくなっていく。
オジサンたちの結論は、『若者の新陳代謝とオヤジのそれとは違う、よって球児はサウナをやめるべき』であった。
「悪いこと言わん。お兄ちゃんたち、やめとき」
その言葉に、球児は押し合いへし合いサウナを出てそのまま脱衣所に向かった。
室内には、選手たちに最良のアドバイスをした満足感が充満していた。
オジサンたちは高校野球が好きだ。
地元選手が活躍すると、『育ての親』がウジャウジャ現れる。
影響力のある『育ての親』連中に、選手は翻弄される。
そんな縮図をここで見た気がした。
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不思議なエッセイですね。
こういう引き出しをたまに開けるから
おそろしいですよ、秘宝館は~。
サウナの思い出といえば、
ホモがいたんですよ。
客があんまりいない平日のサウナ。
低温サウナっす。
寝そべってるんですけど、
ギンギンなんです。
そして、それをボクに自慢げにするんですよね。
怖かったなあ。
あ、大丈夫でしたよ。
なにもなかったです。
一応。
何かすごくありそうな話です。
こんなふうに若者とおじさんが繋がるのっていいと思います。
高校球児ならでは、なんでしょうね^^
そのスジの方っていわゆるハッテン場をキメているみたいですよね。昔、どうしても観たい映画があってひとりで駅ビル内の映画館に入ったら、来るんですよ、ホモが。空いている映画館なのに隣の席に来て、こっちが無視していたら立ち去って。そしたら次がやってきて。また次が・・・。落ち着いて映画観れなかったあ!
ちなみにその映画、007わたしを愛したスパイ(笑)
サウナのオジサンたちの共通の話題は、
大相撲、高校野球、水戸黄門なんです。
三つには、なんとなく共通しているものがある気がします。秩序とか礼儀とかだけじゃない、なんか美学みたいな・・・