東大法学部が初の定員割れ法曹や公務員志望減少が影響か

2012-11-07 16:54:27 | 報道


 今年、東京大学法学部が初めて定員割れした。最難関の大学、そのなかでも看板学部の定員が割れた。こう聞くと、驚く人もいるかもしれない。
 
 ただ、これは東大特有の仕組みがあるがゆえの話。決して入学試験の定員が割れたのではない。東大は、文科I、II、III類、理科I、II、III類という区分けで入試を行う。入試時点では学部の枠で募集をしないのである。専門課程の学部に入るのは大学3年からだ。
 
 文科I類(以降、文I)は、入学者の多くが法学部に行く。実は定員割れをしたのは文Iではなく、専門課程としての法学部である。なんだと思う人もいるだろう。しかし、法学部の定員割れの裏には、司法試験離れ、公務員離れがあると推測されるから、事情は単純ではない。
 
 まず、東大における3年以降に所属する学部学科を決める仕組み、進学振り分け制度を説明しよう。2段階に分けて、選抜をしていくのだが、大学2年の6月時点で学部学科の志望を第1段階、第2段階に分けて登録し、9月上旬に第1段階、同下旬に第2段階の進学内定者が決定される。
 
 法学部の場合、文Iからの受け入れ人数が圧倒的に多いのだが、文科I類以外からの受け入れ枠もある。今回、定員割れをしたのは、第2段階の文Iからの受け入れ枠である。118人の枠に対し113人にしか志望者がいなかった。
 
 文Iであるから、ほとんどの学生が入学時には法学部を志望していたはずである。文Iの入学者数は440人強。一方、文Iからの法学部の受け入れ枠は、第1段階と第2段階会わせて395人と文Iの入学者数は40人強少ない。入学当初から法学部以外に進学すすることを予定している学生もいるにしても、定員割れをしたという事実は文I生における法学部人気の陰りを意味していると言える。
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 東大法学部は、法曹志望者、公務員志望者が多いのは言うまでもない。授業もきびしく、履修者の4分の1が単位を落とす科目もある。法曹や公務員志望者ではない民間企業への就職志望者を下に見る風潮があるという。当初から民間企業に就職するつもりあれば、わざわざ授業が厳しい法学部に行かなくてもよいと考えても不思議はない。
 
 今や司法試験に合格しても、弁護士として就職するのは楽ではない。財政危機ゆえに公務員の人件費削減が声高に叫ばれ、いわゆるキャリア公務員の天下りに対する目は厳しくなっている。そうであれば、東大生であっても法曹や公務員志望が減るのは無理もない話だ。法学部の定員割れはそうした志向が端的に表れたケースと言えよう。



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