正社員17人 トヨタ子会社誘致に500億円/少ない地元雇用 大半が非正規

2011-02-16 17:03:18 | 経済
巨額な税金を投入して企業誘致をすすめる宮城県では、それに見合う雇用が確保されていません。
 宮城県の誘致で神奈川県から仙台市の北にある大衡村(おおひらむら)に移転したのが、トヨタの100パーセント子会社、セントラル自動車です。1500人を超える労働者が働く新本社工場(44ヘクタール)は、1月6日から操業を開始し、海外輸出向けの小型自動車を生産しています。
 自民党の県議から2005年に県知事になった村井嘉浩知事は「富県共創! 活力とやすらぎの邦(くに)づくり」を県政運営の理念として掲げ、「富県宮城の実現」をめざして企業誘致に力を入れています。10年4月には「自動車産業振興室」を新設しました。
 宮城県は、同社を誘致するために500億円を超える税金を投入しています。同社工場が建つ北部第2工業団地の再整備、同工業団地に直結する東北自動車道・大衡インターチェンジ(IC)の建設、大衡ICから国道4号までの4車線化、周辺の国道4号の4車線化拡幅工事、仙台港の自動車プール拡張などの費用のほかに、企業立地奨励金、固定資産税などの優遇措置を行っています。
 県が策定した「宮城の将来ビジョン」(2007年度から16年度までの10年間)は、第2期計画期間にあたる10年度から13年度の4年間で企業立地件数を160件とし、1万人の雇用創出を掲げています。
 県によれば、セントラル自動車と県の立地協定には「従業員はできるだけ地元から雇用してほしい」との趣旨が盛り込まれています。
正規は17人
 同社は10年度に限ってみると、12月現在で252人を採用しました。宮城県内の採用数は、正規雇用で大卒者が4人、高卒者が10人、中途採用が3人の17人のみで、ほかは3カ月更新の期間工が107人でした。残りの128人は派遣社員で、「派遣会社からの採用のため県内、県外かは不明」としています。大半が無権利で低賃金の非正規雇用労働者です。来年度の採用について同社の担当者は「生産台数の動向をみて採用人数を決定する」と話しています。
 宮城県高等学校・障害児学校教職員組合の野中康浩書記長は、「私たちがセントラル自動車に要請した際、昨年春の採用は1桁と話していました。県から多額の投資を受けた企業として就職状況が厳しい県内の高校生の雇用の受け皿になっていない」と語ります。
 県と仙台市が10年前に約40億円を出して誘致した電子関連産業「東北セミコンダクタ」は、11年に完全撤退しようとしています。隣接する栗原市や亘理町(わたりちょう)でも撤退、進出取りやめなどが相次いでいます。
 村井知事は、これまでの企業誘致で5000人を超える雇用拡大ができたとのべましたが、日本共産党県議団の追及により、これらの大部分は移転前の自治体からの異動であることが判明しました
。(トヨタ子会社誘致に500億円/少ない地元雇用 大半が非正規/工業団地・高速道・港整備…至れり尽くせり/宮城県)

仙台市宮城野区で4日にあった高校3年生向けの就職面接会。「よろしくお願いします」。制服姿の生徒約300人が、35社並んだ企業別ブースで次々と自己PRした。

 採用予定は全社合わせても210人。参加した佐々木美波さん(18)は不安げだった。「自立して親を安心させたい。介護職志望だけど、とにかく高卒の求人が少ない」

 来月に卒業が迫るのに、就職活動が終わるめどは立たない。主催したハローワーク仙台は「2008年のリーマン・ショック以降はずっとこのような状況」という。

 宮城労働局によると、今春卒業予定の高校生の内定率は65・6%(昨年12月末現在)。バブル崩壊時以来の「就職氷河期」が再来している。

   ◇   ◇

 県は11年度予算案で、新卒で就職できない場合に備えた「就職チャレンジ事業」に3億2千万円を計上した。企業に既卒者のOJT(実地訓練)を受け入れてもらう際に、賃金などを1日一人あたり7200円支給する。

 県は雇用対策を喫緊の課題と位置付ける。そのなかで、村井嘉浩知事が進める基本戦略は「企業誘致」だ。

 村井知事が誘致を主導したセントラル自動車の新本社工場が1月、大衡村で稼働。関連して部品メーカーなど約10社が県内進出を決めた。県内で2千人を超える社員が働くことになるという。

 知事2期目の目標は「160社の企業誘致による1万人の雇用創出」。新年度予算案にも新たに、工場新設などへの奨励金を計17億3千万円入れた。

   ◇   ◇

 「新しく誘致した企業の採用者は、ほとんどが期間工。地元に根ざした企業が正社員を新規採用できるように育てるべきだ」。共産党県議は6日、仙台市内で開いた懇談会で訴えた。集まった住民からも「孫の就職が心配」といった声があがった。

 誘致一辺倒は万全策ではない。87年に仙台市泉区に進出した半導体製造「東北セミコンダクタ」(従業員約600人)が今年末までに撤退する方針を決めたように、リスクもつきまとう。

 誘致企業の地域偏在もある。3日、県南4市9町の首長が出席した「第11回県南サミット」では「雇用のため、県南地域の企業誘致にも目を向けて欲しい」と切実な思いが村井知事にぶつけられた。

 地場企業の育成か企業誘致のさらなる強化か――。村井戦略を応援する自民県議からも「高度技術が必要な自動車産業の誘致はすぐに雇用に結びつかない」との声があがる。(asahi.com:雇用/暮らしどこへ~県予算から2-マイタウン宮城)


コメントを投稿