「マグネシウム空気電池×太陽光」 次世代電力モデルハウス

2017-02-19 08:32:49 | 自然エネルギー

「マグネシウム空気電池×太陽光」 次世代電力モデルハウス

東日本大震災以降、急激に高まっている電力供給への関心。現在のエネルギー資源には限界があり、このままのエネルギー消費が続けば、やがて資源が枯渇するとも言われている。いざというときや自然環境のためにも、新しいエネルギーが求められているのだ。そんな中、次世代エネルギーとして大きな注目を集めているのが「マグネシウム空気電池」。マグネシウム空気電池と太陽光を利用して、電力の自給自足を試みる『マグネシウム燃料電池ハウス』を訪ねた。


◆天候等に左右されない、100%自家発電の次世代ハウス

 宮崎県・日向市の高台に建つ2階建てのコンテナハウス。2階のベランダには太陽光発電パネルが並べられ、庭の隅にも太陽光発電パネル付きの小さな小屋が建っている。その小屋の中にあるものは、太陽光発電パネルからの電力を蓄電するための鉛電池と、マグネシウム空気電池。太陽光の電力が不足する電力ピーク時や悪天候、夜間などは、マグネシウム空気電池から補う仕組みになっていて、家中の電力を電力会社から買わずに賄っているという。

 家の間取りはバス・トイレつきの1LDK。部屋には、冷蔵庫や電子レンジ、テレビに扇風機、シーリングライトなど、ごく一般的な家庭で必要な家電が備え付けられているもの。すぐにこのまま住むことができそうなほど、家電製品が充実している。これらをすべて太陽光発電とマグネシウム空気電池で動かすのだから驚きだ。

 今年の9月に公開されたこのモデルハウス。古河電池や再生可能エネルギー関連事業を展開しているオリコン・エナジーなど、数多くの参加企業との産学連携によって開発されたものだ。そもそもの発案者は、東北大学の小濱泰昭名誉教授。2012年に「太陽光など自然エネルギーで、マグネシウムを製造からリサイクルまで可能とする循環社会を構築する」という「マグネシウム・ソレイユ・プロジェクト」という構想を打ち出し、マグネシウム燃料電池ハウスの実証実験を行っている。


◆資源として無尽蔵なうえ、安価で安全なマグネシウム空気電池

 まだなじみの薄いマグネシウム空気電池だが、その特長とメリットについて、小濱名誉教授はこう語る。「資源となるマグネシウムは、地球上で8番目に多い元素。海水にも塩化マグネシウム(にがりの成分)として大量に含まれていて、ほぼ無尽蔵に存在しています。人体にも無害です。電池としてのエネルギー密度が高く、小型化にも向くうえ、現在主流のリチウムイオン電池より安価。しかも二次電池は自己放電を起こすため、充電しても時間が経つとエネルギーが目減りしますが、マグネシウム空気電池は、電解水を入れない状態で放置すれば50年、100年持つと考えられているため、非常用電源としても優れています」。

 災害時の電力確保は大きな課題だが、そんなニーズを受け、同プロジェクトに協賛している古河電池から12月、世界初の紙製容器でできた非常用マグネシウム空気電池『マグボックス』が発売される。水や海水を入れるだけで、スマートフォンを最大30回充電できるほどの大容量の発電が可能だという。

 今後この『マグネシウム燃料電池ハウス』では、実生活におけるマグネシウム電池の性能実験データなどを取得し、環境・生活・電力の関係を分析することで、一般普及に向くマグネシウム空気電池の開発を目指していく意向。さまざまな企業が関わって、研究開発が進んでいる次世代エネルギーに、各界からも熱い視線が注がれている。

◆東工大とオリコン、マイクロ波の再生可能エネルギー活用に向けた講座を設置

東京工業大学(東工大)とオリコン・エナジーは6月19日、マイクロ波を再生可能エネルギー分野に応用し、化石燃料対比で高い二酸化炭素排出削減を可能にする技術開発を目指し、2014年7月14日より東工大内に共同研究講座を開設する協定を締結したと発表した。

すでに両者は2013年11月よりマイクロ波を再生可能エネルギー分野に応用する共同研究を行ってきており、今回の共同研究講座の開設は、そうした共同研究を発展させたものとなる。

現在、この共同研究は、実用化に結び付く実験結果を得るため、反応系のスケールアップを実施すべきフェーズに入っており、今回の共同研究講座においては、専任の研究者のもと、社会的に価値の高い研究成果を早期に得るべく、研究を加速させていく予定としている。

なお、講座の設置期間は2016年7月13日までの2年間で、研究費用はオリコン・エナジーが全額拠出する。研究担当教員としては、米谷真人 特任准教授ならびに同大大学院理工学研究科応用化学専攻・教授である和田雄二氏が兼任教授として就任する予定となっている。



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