本当の給与は民間の2倍 出世困難手当 公務員は特権階級
その国では、国民の実に1割が「公務員」である。労働者人口に占める割合は25%、つまり働くオトナの4人に1人は、公務員として税金で飯を食っている。
この「役人天国」において、公務員は「○○手当」などの名目で次々と給与が加算され、時にその加算分は、基本給の3倍にもなった。年金は50代から支給され、本人が死亡した場合、受給権は妻だけでなく、未婚または離婚した娘も引き継ぐことができる。
あまりにその身分が美味しいため、公務員の地位は、選挙応援に対する〝謝礼〟になった。その結果、公務員の数はますます増えた。人間が増えれば、必然的に仕事はなくなる。しかし、だからといって給料や年金が減りはしない。
やがて、その国は国家財政が破綻した。これは、EU(欧州連合)のお荷物と化し、世界金融危機の引き金を引こうとしているギリシャのことである。
だが、われわれ日本人は、ギリシャのことを笑えない。「ギリシャ」の部分を、「日本」に置き換えてみればいい。民間の平均値に比べ、はるかに恵まれた待遇と社会保障。定年後には天下りで優雅な老後を楽しみ、一生、食うに困らない。そんな役人天国ぶりは、日本も何ら変わらない。
一般企業勤務の後に中央省庁傘下の特殊法人に約10年間勤務し、そこでの経験をもとに、役人の公金浪費や天下りの実態を追及しているジャーナリストの若林亜紀氏はこう語る。
■「国家公務員の場合、財務省の公表している決算書をもとに計算すると、彼らの平均年収は、約806万円にもなります。今年9月に国税庁が発表した一般国民の平均年収は412万円でしたから、民間の2倍の給与ということになります。
同じように、公務員は年金も恵まれています。平成21('09)年度のデータで、民間サラリーマンの加入する厚生年金の平均支給額は月16.5万円ですが、公務員の共済年金の場合、国家公務員が21.7万円、地方公務員が22.5万円となっています。月に5万~6万円、年間にして60万~70万円も手厚い年金なんです」
11月23日まで行われた「提言型政策仕分け」では、最終日に年金の過払いが取り上げられた。この10年あまりで7兆円もの年金過払いが発生しているため、それを解消=年金の減額を行うというのである。
だが、ちょっと待って欲しい。「国民の生活が第一。」などと称して政権交代した民主党は、「官の」ムダを徹底的に排除する、と言ってきたのではないか。
仕分けの現場には、厚労省の年金局長や蓮舫行政刷新相、小宮山洋子厚労相らもいた。だがその場で、「まずは公務員の人件費をカットするべき」と主張する者は誰もいなかった。なぜ、ムダの排除が「官」ではなく「民」からなのか。
元経産省キャリアの岸博幸・慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授も、こう批判する。
「民主党政権になってから、公務員制度改革は完全に逆行しています。事実上、天下りは解禁されており、一方で、みんなが定年まで働くということにしてしまったため、高給のまま官庁に居残る高級窓際官僚が増えた。すべてがメチャクチャな状態です。
もともと民主党は、公務員の人件費を2割カットするとしていました。その話はどこへ行ったのか。最近、震災を名目に公務員の給与を7.8%カットすると言い出しましたが、これはたった2年の時限立法です。復興増税、消費税アップと言うなら、真っ先にカットすべきものをカットしなければならないのに、公務員改革には手をつけない。これほど、国民をバカにした話はないでしょう」
保険料の負担も少ない
民主党が公務員の給与や年金に手をつけられないのは、その支持母体の一つが、自治労など公務員系労組だからだ。このあたりも、まるでギリシャである。ギリシャでは政権交代した政党が、〝お礼〟として支持者を役所で雇う。ところが、もとからいた前政権の役人もそのまま居座るため、同じポストに、複数の人間が座っていたりする。
当然、どちらかはまったく仕事がないが、それでも給与は支払われる。こうして不労所得の公務員がどんどん増殖していけば、国が破綻するのは当たり前だ。
■ここであらためて、日本の役人天国ぶりを紹介しておこう。前出のように、公務員の平均給与は、民間より明らかに高い。年金は保険料率が低く、支給額は高い。健康保険の面でも、民間の「協会けんぽ」の保険料率(9.5%)に比べて、公務員の共済組合の保険料率は、著しく低い(国家公務員=6.943%、地方公務員=7.949%など)。公務員の健保の保険料を民間水準に合わせるだけで、なんと1.83兆円の予算が浮くのだ。
しかも、平均的に仕事はラクだ。神戸市環境局の職員が、勤務時間中に22人も集まり、楽しく野球の練習をしていたことが明らかになった。彼らは「体力作りのためにやった」と釈明したが、平日の午後に職場を抜け出し、みんなで野球をする民間企業など、どこにもない。あまりにヒマすぎるだろう。
前出・若林氏もこう語る。
「私がいたのは厚労省の外郭団体でしたが、とにかくヒマで、ほとんど仕事がありませんでした。管理職の課長が、午後3時に出勤とか、飲み会が続いたとかで午後5時出、などということがザラでした。
中には、週に1回の課長会議にだけ来る課長、月に1度の部長会議に来るだけの部長、という人たちもいました。にもかかわらず、課長の年収は1200万円、部長は1400万円。こんな会社は民間ならすぐに潰れてしまいますが、役所は潰れないので、みんなどっぷりとそのぬるま湯に浸かっていたんです」
8km以上の遠出に「旅行手当」
役所には「売り上げ」や「コスト」はない。あるのは「予算消費」だけ。したがって若林氏の勤務していた職場でも、3月の年度末になると、やたらと「旅行に行かないか」と勧められたという。「旅行」とは、全国各地のどこかで行われている、関連事業のセミナーなどに参加するという名目で地方に出張し、「余った予算を使って来い」という意味なのだという。
「仕事の契約をしたことにして、堂々と自分の愛人に税金から手当を支払っていた幹部もいました。笑ってしまうくらい、酷い有り様でした。そういう雰囲気の中で、まともに仕事をしようとすると、逆に怒られるんですよ。
ある時、大学教授たちをヨーロッパに派遣する機会があり、教授がエコノミークラスの席で十分だとおっしゃるので予約して稟議書を回したら、上司(厚労省キャリア官僚)に怒られました。80万円を10万円に節約して怒られるなんて、民間ではあり得ません。でもお役人の発想では、まともなことをしようとすると、『他とバランスが取れない』ということになるんですね」(若林氏)
■たとえば、神奈川県川崎市の「独身手当」。勤続15年以上の職員が独身のままで満40歳になると、なぜか現金7万円がもらえるという。原資は職員互助会の積立金だが、最近まで市が税金で7万円を上乗せし、計14万円が支払われていた。
同じく川崎市などでは、「出世困難手当」なる珍手当もあった。たとえば、係長を5年やっても課長になれない者を、「困難係長」と呼び、課長に準じる給与を支払うようにしていたのだ。係長同様、部長になれない課長は「困難課長」と呼んで、やはり部長待遇に近い給与を支払っていたというから、呆れてしまう。
その他、東京ディズニーランドに行ったり、映画鑑賞をしたり、スポーツ観戦したりするのに「観劇・観戦手当」をもらい、職場の親睦活動に出ると「元気回復手当」をもらえる例(千葉県佐倉市)などもある。
また国・地方を問わず、公務員は8km以上の遠出をすると、1回1000円程度の「旅行手当」がつく。交通費や出先での「昼食代」名目だというが、営業系のサラリーマンが同じ手当をもらえるなら、1日で数万円になるのではないか。
その他にも、なぜか和歌山、広島でも支給されるという「寒冷地手当」や、ハローワークの窓口で働くのは精神的苦痛になるとして支給される「窓口手当」、子どもが18歳になるともらえる「成人祝い手当」などなど・・・・・・。
国・地方合わせて約400万人いる公務員たちが、こうして浪費を繰り返してきた結果、積み重ねた日本の借金は、現在、約1000兆円に達した。財政は火の車となり、財務省に洗脳された野田佳彦首相は、「消費税をアップする」と連呼している。詰まるところ、国民は、役人の浪費の帳尻合わせをさせられるのだ。
億ションだけど家賃は5万円
さらに、手当など実質の収入面だけでなく、住環境の面でも公務員は恵まれているのは言うまでもない。
2011年春、東京湾岸のウォーターフロント・東雲に、地上36階のタワー型の公務員住宅が登場した。眺望も交通の便も抜群、民間人が付近の高層マンションを手に入れようとすれば、億レベルの予算が必要だ。
ところが国家公務員たちは、このタワーマンションの3LDK70m2という物件に、月たった4万8000円で入居することができる。単身者用の1Kの部屋であれば、家賃は1万8000円程度だという。
また、売却を検討中となっているが、都内屈指の一等地にある南青山住宅なども、近くの同等物件は家賃50万円は下らないところ、月に7万5000円で3LDKに住むことができる。
■財務省自体、神奈川県の江ノ島海岸近くに、「鵠沼寮」という単身者用宿舎を保有している(14m2で月2000円)。現在は売却済みだが、かつては横浜市の山手地区に、プール付きの官舎を保有していたのも財務省である。
元経産省キャリアで、霞が関の官僚制度の矛盾を厳しく追及している古賀茂明氏はこう批判する。
「財務省では、勝栄二郎事務次官からして公務員宿舎に住み、『若手のために宿舎は必要だ』などと言っている。公務員ばかりが優遇されることにこれだけ国民の不満の声が上がっているというのに、普通の感覚ではありません」
そして、至れり尽くせりの半生を送る公務員たちが最後にたどり着くのが、天下りと高額な退職金、年金である。国家公務員行政職の定年退職金の平均支給額は、2714万円。地方公務員の平均も、都道府県が2649万円、政令指定都市が2591万円、普通市が2485万円、町村が2168万円など。教員も2894万円、警察官は2752万円などとなっている('05年時点)。
「これが、中央省庁のキャリア官僚になると、退職金も跳ね上がります。退職金の平均は約5000万円で、次官クラスは約9000万円になります。昨年、5000万円の退職金をもらったキャリアは300人。9000万円前後の官僚も6人いました」(前出・若林氏)
彼ら高給官僚は、この高額な退職金を手に、外郭団体などに天下りし、さらに別の場所に天下りを繰り返し(いわゆる「渡り」)、その都度、数千万円から1億円の退職金を得る。さらに、民間より年間数十万円も恵まれた年金を、生涯、受給し続けるのである。
「解決のメドが立たない年金支払い記録の照合問題でも、官僚は公務員の年金である共済年金の記録はしっかり保管していました。国民の年金記録は紙のデータを電子化する過程で大量に紛失したのに、呆れたことに共済年金の紙台帳だけは、捨てずにしっかり保管していたのです。こういう自分たちのことしか考えない官僚が多いから、まともな政策もできず、どんどんギリシャのようになってしまう」(前出・古賀氏)
公務員は特権階級
役人は、メディアで報道される公務員の恵まれ過ぎた実態について、「大袈裟だ」「実際は忙しさの割に、収入が見合わない仕事だ」などと不平・不満を言う。
しかし、百歩譲ってそうだとしても、「頑張っても報われない」のは、民間であれば「当たり前」のこと。一般社会で高収入を得ようとするなら、組織としても個人としても、きちんとそれに見合う成果と利益を上げなければならない。
■それに引き換え、霞が関を頂点とする官僚機構が管理してきた日本は、名目GDPがわずか5年で515兆円('07年度)→469兆円('11年度予想)に減少し、借金は1000兆円以上に膨れ上がる体たらくだ。民間企業であれば、給与の大幅カット、大リストラを覚悟すべきレベルである。
実際、30兆円と言われる公務員の人件費のうち、2割をカットするだけで6兆円=消費税2%分以上が浮く。しかし、財務省は決して、自分たちの〝聖域〟にメスを入れない。
公務員という特権階級が国に溢れ、彼らだけが幸せになるような社会は、ギリシャを見れば明らかなように、国が潰れてしまう。
ところが最近、日本でも似たような傾向が現れ始めた。地方自治体では役場の人間がみんなコネ採用、などというケースは珍しくないが、「税金で食っていこう」という人々が、確実に増えてきているのだ。
たとえば、キャリア官僚になるための国家・種試験の志願者は、'08年度が2万1200人だったのが、'09年度は2万2186人、'10年度は2万6888人、そして'11年度には2万7567人にと、4年間で6000人も激増している。同じく、東京都の職員試験の申込者数も、'08年度には5686人だったのが、'11年度には9475人へと約4000人も増えた。
楽をして税金にタカろうという人の割合がどんどん増えていくのは、当然、国家の未来にとっては大きなマイナス要因だ。
「現在の、ただ既得権益を守りたいだけの幹部たちを見て、まともで優秀な若者は公務員になろうとは思わなくなっています。集まるのは、そこそこ安定して生活できればそれでいいという人たちだけになる。結果として、いま霞が関でも官僚のレベルがどんどん落ちて問題になっています。事務のペーパー1枚、まともに書けない係長クラスの人間が増えているのです。これでは政府の能力自体が低下してしまう。日本の将来にとって、大変恐ろしい事態です」(前出・岸氏)
役人が国を食い潰せば、ツケは国民に回ってくる。ギリシャのような悪夢が日本で現実になるのは、そう遠い未来ではないだろう。
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