世界初、新波力発電の仕組みとは あけた穴で潮吹かす、9月稼働
東京大先端科学技術研究センターが福井県越前町の海岸沿いで実証研究を進めている世界初の人工ブローホール(潮吹き穴)を使った波力発電の設備がおおむね完成し、9月の稼働を目指している。来年3月まで日本海の強い波エネルギーを利用して発電量などのデータを取り、実用化を検証する。
ブローホールを使った波力発電は、海岸沿いの岩盤に人工の穴を掘り、穴の中に出入りする波の上下動で発生する風を陸上のタービンに送って発電する仕組み。実用化すれば、一般的な波力発電の仕組みに比べ設置費を半分以下に抑えることができるという。
同センターの飯田誠特任准教授らの計画が環境省の地球温暖化対策技術開発・実証研究事業に採択され、2012年度から3年間の事業として進めている。発電設備は同町小樟の通称赤島と呼ばれる場所に設置した。
海中に向けて岩盤に斜めに穴を開けるブローホールは昨年12月に掘削工事を始め、直径1・4メートル、長さ約50メートルの穴3本を貫通させた。波の上下動で発生する風を穴から集める「バッファタンク」を設置し、往復する風をとらえ風の向きにかかわらず同じ方向に回り続ける特殊なタービンと発電機も取り付けた。制御装置や計測装置の設置を準備しているという。
発電設備の出力は最大で30キロワット。発電した電気は蓄電池にため計測装置の電源などに使う予定。同センターは「越前海岸の冬場の強い波に期待しており、波エネルギーがどのくらい電気に変わるのかなどを調べたい。集めたデータを基に、発電コストが安く長期間利用できる実用化を考えていく」としている。
設備は国の実証研究事業のため、来年3月に終了した段階で撤去するのが基本だが、同センターは地元が存続を希望するなら国に働き掛けるという。
地元小樟区の大間憲之区長は「環境に負荷をかけない波力発電の実現や再生可能エネルギーの普及拡大に向け、発電設備の設置に協力してきた。地元で使えるかどうかはまだ分からないが、実証試験を見守り応援していきたい」と話している。
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