室温で使用できるマグネシウム蓄電池の開発に成功

2016-02-10 16:27:10 | 自然エネルギー

同センターによると、リチウムイオン電池は原料が高価で確保が難しく、空気に触れると発火するという課題がある。これに代わる次世代蓄電池の開発が世界で進められる中、注目を集めたのが発火の危険性が低く、リチウムの25分の1程度の価格で資源も豊富なマグネシウムの蓄電池。しかし、多くの研究機関が取り組んできたものの高温でしか動作しなかったり、数回の充電で劣化したりと小型の民生用機器への実用化には遠かったという。


埼玉県産業技術総合センター(SAITEC)=埼玉県川口市=は19日、室温で安全に使用できるマグネシウムを使った蓄電池の開発に成功したと発表した。スマートフォンなどの小型電子機器に使われているリチウムイオン電池より安全で容量が大きく、実用化すれば世界初となる。同センターは埼玉県内企業と共同開発を進め、2、3年以内の製品化を目指す

同センターは埼玉県の先端産業創造プロジェクトの一環で、マグネシウム蓄電池の開発を推進。今回の研究では、電池の正極に、酸化バナジウムに水などの添加物を使ってイオンの出入りをスムーズにする新材料を考案。電解液に有機物を加えたことで室温でも作動し、繰り返し充電しても放電容量が劣化しづらい蓄電池開発が実現した。

研究開発には埼玉県内の自動車部品メーカーなど数社も協力。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受けた4800万円に加え、県から4200万円を投資した。新材料は既に特許も取得、電解液も特許申請をしている。

リチウムイオン電池の2倍以上の蓄電量があるため、スマホやタブレット端末に活用すれば連続使用時間が大幅に延びる。また、安全性の高さから、衣服や腕などに付けて使用するウェアラブル機器でのマーケット拡大にも一役買う可能性があるという。

今後は年内の論文発表と11月の学会での報告を予定。経済産業省によると、小型民生用電池の世界市場規模は平成32年に1.5兆円に上る見込みといい、同センターは「リチウムイオン電池の代替として市場を獲得できる可能性がある。県内企業と協力して早期の製品化を進めたい」としている。(川峯千尋



コメントを投稿