地中熱活用 酒田市のエコ新庁舎

2014-02-27 22:31:17 | 自然エネルギー

 山形県酒田市が建設を進めている新庁舎は、空調設備に地中熱や地下水を利用するシステムを導入し、照明の9割に発光ダイオード(LED)を使うなど、環境への負荷が少ない全国有数の「エコ」庁舎となる。

 空調設備だけでも、二酸化炭素(CO2)の排出量は約4割削減が見込めるという。市政策推進課は「コストと環境負荷の両方を軽減できる」と胸を張っている。

 新庁舎は地上8階、地下1階の鉄筋コンクリート造り。2017年3月の完成を目指し、13年11月から建設が始まっている。総事業費は約60億7000万円。

 目玉の「地中熱ヒートポンプシステム」は、地下水の温度が約13度に保たれていることに着目し、夏は高め、冬は低めの地上の水を地下約50メートル地点まで送り、温度を13度前後に近付ける。これを空気に伝えて冷暖房として活用する。建物の基礎くいに水を通す管を取り付けるため、費用も抑えられる。

 もう一つは「帯水層蓄熱システム」で、庁舎周辺の無散水消雪に使って温度が下がった地下水を再び地下に戻し、その温度のまま保管して夏場の冷房に利用する。保管される地下水は元の温度より2度程度低い。地下150メートル付近は地下水の関係で熱の拡散が起こりにくいため、低温状態を維持できるという。

 今回の提案を行った日本設計は「両方のシステムを併用するには、地下水の速度が異なることが必要。速ければ熱を拡散し、遅ければ拡散を防げる。酒田市の場合、地下50メートル地点は速く、約150メートル地点は緩やかなため、条件に見事当てはまった。全国で他にやっている所は聞いたことがない」としている。

 また、庁舎のほぼすべてにLED照明を採用し、蛍光灯の場合より電気使用量を75%程度カット。日射量に合わせて照明の明るさを調整するシステムや、不在時にスイッチが自動で切れる人感センサーを導入し、15%程度のコスト削減も見込む。さらには、雨水を地下に貯蔵し、トイレの水に利用するなど、環境への配慮が随所でみられる。

 このほか、建設地で発生する大量の土砂は、国土交通省酒田河川国道事務所と連携して、建設中の「余目酒田道路」の盛り土に利用されている。現場が市内や庄内町と近いため、トラックの運搬距離は短く、台数も少なくて済むため、CO2の排出量削減につながっている。

 県環境企画課は「省エネルギー化を推進している県としては、行政や民間が庁舎や事業所などを建て替える際は、酒田市のように『低炭素化』を進めてほしい」と呼びかけている。