goo blog サービス終了のお知らせ 

不確定性原理に欠陥…量子物理学の原理崩す成果

2012-01-16 14:19:55 | 科学
電子など小さな粒子の位置や速度を同時に正しく測定することは不可能とする「ハイゼンベルクの不確定性原理」が、常には成り立たないとする実験結果を、ウィーン工科大と名古屋大の研究チームがまとめた。

 80年以上前に提唱された量子物理学の基本原理を崩す成果で、ナノ科学での新たな測定技術開発の手がかりになるという。15日付の科学誌ネイチャー・フィジックス電子版に掲載される。

 物が見えるのは、物に当たった光が反射して、私たちの目に届くからだ。時間をおいて2度見れば、物の動き(速度)がわかる。ただ、光は波長が短いほどエネルギーが大きいので、小さな粒子を見る場合に問題が生じる。短い波長の光を使うほど、粒子の位置は詳しく測れるが、反射した時に粒子をはね飛ばすので、元の速度は測れなくなる。

 このため、位置と速度は、一方を正確に測ろうとすると、もう片方の誤差が増える。これが不確定性原理で、ドイツの物理学者ハイゼンベルクが1927年に提唱。32年にノーベル物理学賞を受賞している。

 同工科大の長谷川祐司准教授らは、原子核を構成する中性子について、「スピン」という量を測定した。2種類のスピンを測ると、位置と速度の測定に相当する。その結果、二つのスピンを極めて正確に測定でき、不確定性原理を表す数式で示される誤差を下回った。

 同原理の不成立を別の数式を使って主張してきた共同研究者の小澤正直・名古屋大教授は「小さい粒子でも、位置も速度も正確に測れることが実験でも実証できた。新しい測定技術や解読不可能な量子暗号の開発などへの道が開けるのではないか」と話している。

永久磁石の磁場で水を加熱

2011-07-25 13:50:21 | 科学
電源が無くてもいい?

永久磁石の磁場を銅と反応させて熱を起こし、水を加温する磁気給湯器「マグスター」を、「日本ポリスター」(滋賀県湖南市)が開発した。わずか10秒で沸騰し、0・1度単位での温度設定も可能。二酸化炭素を排出しない環境に優しいシステムで、将来的には電源確保が難しい災害現場での活用も期待される。

 1964年創業の同社は、食料品や衣料品、電気機械器具などの包装機を製造している。給湯器の開発に乗り出したのは、高井宣彦会長(70)が見たテレビのあるシーンがきっかけだ。北海道のある民家で風呂が壊れ、雪深い中、家族が近所に風呂を借りに行く姿だった。

食料品や衣料品の包装機には異物検出のため、永久磁石を使った金属探知器が組み込まれている。永久磁石は回転で磁場が生まれ、銀や銅などの金属と反応すれば電流が流れる。高井会長は「この仕組みを生かしてメンテナンスが簡単で、故障しにくい給湯器を作れないか」と考えた。

 2009年から社内で研究が始まり、昨年秋、高さ約1メートル、幅約80センチのキャスター付き給湯器が完成した。

 「高齢者がボタンを押すだけで、好みの温度で風呂を沸かせる機械」。笠井明英専務(63)が言う当初のもくろみとは別に、給湯器は発表後、思わぬ反響を呼ぶ。

給湯器からの湯で土を加温して栽培したビニールハウスの野菜(滋賀県近江八幡市で) 滋賀県彦根市の自動車部品製造会社は、冷水を使っていた部品洗浄に導入。30~35度に加温して洗うと洗浄力が向上、1日あたり4トンだった使用水量が半減した。同県近江八幡市の県農業技術振興センターでは、暖房付き温室の野菜栽培に使用。苗の根付近のパイプに湯を流して土を温めると、暖房費が節減でき、成育状況も良くなったという。

 移動が容易なため介護入浴にも使え、5月下旬には東日本大震災で被災した茨城県北茨城市の病院に2台を寄付。福島、岩手両県の病院にも今後、無償提供する予定だ。水力や風力などの自家発電機能を備える研究も進んでおり、笠井専務は「電源確保が難しい災害現場での医療活動などにも使えるようにしたい」と話している。

マグスター
磁気で水を温める小型の給湯器です。化石燃料を必要としない為、CO2が発生しないのが特徴の環境重視のシステムです。包装機械での異物検出に使う磁石に着目し、磁石が回転することで磁場が生まれ、金属と反応して電流が流れる原理で加熱を実現しました。磁気給湯器はキャスター付きで移動が可能ですので家庭や介護施設、災害現場、キャンプなどでお湯を沸かしたり、屋根の融雪にも利用したり、一定の温度管理が必要な野菜の水耕栽培などで幅広く使用できます。火の気がなく、高齢者の方でも安心して使えるシステムです。

免震 鉛ダンパー 効果

2011-07-23 09:05:27 | 科学
東日本大震災を契機に、超高層ビルの安全性に注目が集まっている。震災発生以前にも、建築界の内部で超高層ビルの安全性の再検証を求める声が挙がっていた。

 日本建築学会は、日本に存在する約2500棟の超高層ビルのうち「100棟以下、数十棟」は、大地震時に構造被害が生じる可能性があると指摘していた(日経アーキテクチュア4月10日号 「超高層、耐震性の検証を」)。その棟数について、このような微妙な表現をされると、それが100に近い数字なのだろうと推測してしまう。

 現行の耐震設計の想定に比べ、超高層ビルに作用する地震力が1.5~2倍になるケースがあることが、日本建築学会のワーキンググループの分析によって分かったそうだ。これには、「東海・東南海・南海の3つの大地震が連動すると…」という前提がついている。それでも、超高層ビルの「安全神話」に大きな疑問を投げかける重大な報告である。どの超高層ビルがどの程度危険かを公表するのは、さすがにハードルが高いだろう。だが、事は人命にかかわる可能性さえある。可及的速やかに何らかの措置をとっておかないと、後悔することになる。

 このようなことを考えていた折も折、日経アーキテクチュア7月10日号で「鉛ダンパーに亀裂」という記事に出会った。宮城県大崎市のビジネスホテルの地下にある免震ピットの鉛ダンパーに、今回の震災で深さ15mmほどの亀裂が生じたというのだ。「大きな揺れが数分間も続き、鉛ダンパーが繰り返し変形した。ダンパーがしっかり効いた証拠だ」という構造設計担当者のコメントが紹介されていた。子供の頃に針金を切る道具がないと、あっちに曲げたりこっちに曲げたりを繰り返して切断した。それと同じ現象が起きたのだ。

 亀裂の深さは、鉛ダンパーの直径180mmの10%足らずである。しかし、次のひと揺れでちぎれ、その次の揺れで建物が共振して大きく揺れて大被害と、つい悪い想像をしてしまう。実際には、10cmの変形を300回以上繰り返さなければ破断しないそうだ。それでも、やはり破断に至る可能性はある。いずれにしても、周辺の建物に被害が出たにもかかわらず、この建物自体は何ともなかったようだから、免震構造は間違いなく威力を発揮したのである。

単3電池2本で点灯する大型LED照明

2011-07-16 08:58:20 | 科学
川崎市内外の中小企業、大学の科学技術を生かした製品が一堂に会した「先端技術見本市テクノトランスファーinかわさき」(川崎市など主催)が六日、かながわサイエンスパーク(高津区)で始まった。八日まで。製品の紹介と同時に、企業同士の「出合いの場」を創出する狙いもあり、新製品の共同開発につながった例もある。

 約百三十の企業、研究機関が出品した自信作がずらり。光で果物の糖度を測る機器や、免許証の集積回路(IC)を読み取って真贋(しんがん)を判定する機器、工場廃水用の砂ろ過装置のろ過材をきれいにする外付け型洗浄機など、さまざまな製品が高い技術力をPRした。

 東日本大震災を機に注目を集めたのは、看板標識製作会社「近藤工芸」(同区)の発光ダイオード(LED)照明。一・八キロと軽量な投光器型、手のひらサイズの携帯型はいずれも単三電池二本で長時間照射が可能。災害時に能力を発揮する。

 「光が三六〇度拡散するよう開発したレンズによる明るさが売り」と胸を張る近藤真一社長は、会場で集じん機製造会社の社長と話し、「集じん機から出る風は何かに生かせませんかね」などとビジネスチャンスを探っていた。市工業振興課の木村佳司係長は「企業同士が横のつながりを深め、新しい展開につながれば」と話していた。

  (平木友見子)

県内中小企業の先端技術見本市「テクノトランスファーinかわさき2011」が6日から、川崎市高津区のかながわサイエンスパーク(KSP)で開かれる。東日本大震災を受けて、最先端の防災グッズや節電機器など新技術の発表が予定されている。

 屋外広告から発光ダイオード(LED)照明まで手掛ける近藤工芸(川崎市高津区)は、単3電池2本で点灯する大型LED照明「デルタレイズパワー・ブル」を発表する。自社開発の高輝度LEDユニットを四つ備え、連続点灯時間は約7時間、重さは1・9キロ、価格は1万2600円。同社は「乾電池で高輝度が出るのがLEDの特徴。業務や家庭などで幅広く使ってほしい」と期待する。

 秦野市に工場がある豊国コンクリート工業(東京都小平市)は、地震液状化対策用「マンホール浮上防止フランジ」を発表する。外周部に浮上抵抗を増やす鋳物の金枠を設けており、上部に重量物を詰めることで浮上防止を図る。同社は「横浜市磯子区で導入例があるが、県内の多くの自治体などにも普及を図りたい」としている。

 併催行事として「太陽光発電を取り巻く現状と課題」(6日午後1時半から、事前申込制)などのセミナーが予定されている。

スゴイ 磁力抵抗「ゼロ」の発電機 

2011-06-04 15:20:05 | 科学
磁力抵抗「ゼロ」の発電機 

滋賀県草津市の元建設請負業の男性が、発電機を回す時に生じる磁石の抵抗を大幅に軽減させる仕組みを発案し、解析した京都大准教授がこのほど学会で発表した。簡易な構造だが誰も試みなかった「コロンブスの卵」的発想で発電装置の簡略化が見込め、電気自動車や風力発電などへの応用に期待も高まっている。

 同市平井5丁目、平松敬司さん(72)の連式発電機。永久磁石を用いた発電機は磁石を円盤に並べて相対させ、軸を回転させることで電気を発生させる。しかし、磁石同士が引き合う力が働くため、回転が重くなることが「宿命」だった。

 平松さんは、4台以上の発電機を1本の軸でつなげ、各台の磁石の位置を軸から見て均等な角度でずらすことで、磁石が引き合う力を相殺させることを発案。モデルを試作したところ、発電機を増やすにつれ回転が軽くなることを確認した。国際特許を出願し、現在審査中だ。

 平松さんは民間の試験機関に依頼して解析したデータを基に昨秋、京都大の中村武恒准教授(電気工学)に相談。中村准教授がコンピューターで解析したところ、発電機を8台並べると磁力の抵抗がほぼゼロになることが分かった。このほど茨城県つくば市で開かれた春季低温工学・超電導学会で発表した。

 中村准教授によると、平松さんの発電機で生じる電気は波形がぶれず発熱ロスが少ないため、発電機の「弱点」ともいえる制御装置や廃熱装置が不要になることも見込める。低回転でも電気が取り出しやすいなど利点が多く、ハイブリッドカーや電気自動車の発電機をはじめ風力発電機などへの導入も期待される。すでに企業からの引き合いもあり、本格的な発電機を試作し、応用を検討する。

 中村准教授は「目からウロコの発想だが、どうして今まで誰も気づかなかったのか。多分野への広がりが期待できそうだ」と驚き、平松さんは「自転車の発電機の抵抗を軽くしようと思いついたのがきっかけ。素人の発想を聞いてもらえてありがたい」と、協力に感謝している。