5 利根川流域のこの地域は、いまでも基本的には狩猟地です。11月から2月15日まで、絶えず鉄砲の音が鳴り渡り、冬の農閑期、農家の方々は昔から伝統的に鴨猟のハンターに早変わりします。農家のおじいさんの代まで、鴨猟で生計を立てていた家族が大変多い場所でもあります
この地域では、昼間に鴨類を目撃することはほとんど出来ません。夜間に飛来します。でも、田んぼの乾田化を逆手にとって、多くの冬期湛水水田は、水を張った田んぼに米くずを撒いた、合法的に鴨を狩猟するための田んぼとして、利用されています。この猟法は、鴨を一網打尽に捕獲してしまいます。
藤崎さんの近辺でも、印旛郡本埜村から白鳥群が、何度もなんども近辺まで渡来したそうですが、鴨やタシギを狙って鳴り響く鉄砲の音に怯えて寄りつけなかったとのことです。
6 関東地方の渡良瀬遊水池から、印旛沼周辺域までは、今も、利根川の中流域の台風や梅雨時に、真水による氾濫原です。
江戸の中期に、東京湾に注いでいた利根川を、銚子へと流れを付け替えるまで、毎年の台風による大雨で、この地域は冠水を繰り返していました。 大方の農民は、農業を捨て、鴨場による猟への転換を行い、最盛期には、手賀沼周辺だけで、9ヶ所にも及ぶ鳥屋場があり、800家族以上が、鴨猟で生計を立てていたそうです。それが江戸時代には、1ヶ年に20万羽以上の鴨が捕獲され、都内江東区の両国に鴨の市場があり、江戸町民のお歳暮とは、手賀沼の鴨であったそうです。
7 この地域には、かって日本最大級の、雁・鴨・白鳥の越冬地であり、推定150万羽以上の各種雁・鴨・白鳥が越冬していたと推定されます。
同時にタンチョウツル等も渡り鳥として、この周辺で越冬していた模様です。
この光景は昭和10年頃までは、基本的に江戸時代と比較して変わらなかったと言われています。先代が鴨猟師であったという方に、何人もお会いできました。
8 いま、かって日本最大級の、50万羽と言われた「雁・鴨・白鳥」の越冬地であった、「利根川流域の氾濫源」のこの地域は、伊豆沼周辺と比較して、雁が80,000羽:1羽、白鳥が10,000羽に対して1,000羽、鴨は全域を合計しても50,000羽以下でしょう。
農家の古老から、かって印旛沼は水面が見えないくらい多数の鴨が渡来していたが、最近はさっぱり姿を見せないで、空っぽだと寂しく言われました。
なぜでしょう、単純な事で、砂漠地帯には水も餌もなく、水鳥たる鴨や雁は生息できないからです。原因の一つは、明らかに乾田化かと思えます。毎年冬の季節に乾田化によって田んぼの水がないことは、渡り鳥にとって餌がないという事に直結します。かっては、150万羽もの個体数を支えられてきた田んぼや湿地がほとんど餌場にならない状況だとしたら、これからがさらに心配となります。
9 この冬のシーズンに、印旛郡本埜村の白鳥群の朝の餌を絞って減らして頂きました。当初活発に周辺の田んぼ等に採餌に出かけた白鳥群も、12月半ばで餌を食べつくしてしまいました。印旛沼周辺域の田んぼは、ほぼ100%乾田化しております。さらに、90%は、稲の刈り取り後、直ちに耕起してしまっていました。特に本年は冷害によって2番穂に実が入っていないとかが重なっています。
ここで、印旛沼、手賀沼等の鴨がどんどん少なくなって来ている原因が、田んぼの乾田化等によって、餌不足によって、北帰しても繁殖能力が低く、雛を育てられないが原因ではないかと推定されそうです。
このままだと、後、数年で鴨の親の寿命を迎えて死に絶え、「沈黙の春」どころか「水辺の生き物のいない冬」を迎えそうです。
10 でも、皆様に、少しの朗報です。ようやっと安定した環境を発見できました。
冬・水・田んぼ(冬期湛水水田)では、田んぼのイトミミズがいかに大切かの発見が、冬に水を張ることの有意義性を明確にしました。
冬・水・田んぼの稲は、真っ白な状態で、かつ根の上の部分は真っ青で、みずみずしく生きています。この稲は、雁・鴨・白鳥、いずれも重要な食糧になるはずです。 これは、冬・水・田んぼ水田が拡がれば、雁・鴨・白鳥に対して無尽蔵に餌として供給されます。
生きた根っこ11 冬・水・田んぼは、雁・鴨・白鳥にとっても、周辺環境のも適応しながら生息の場として、間違いなく機能します。シギ類にとっては、イトミミズ、ユスリカの幼虫等、豊富な餌に恵まれ、同時に、冬の稲株の枯れた部分はタシギ等に貴重な隠れ場を提供しています。
これから、春の内陸性シギ類の、ムナグロ等の渡来が期待されています。冬期湛水水田の拡大が出来れば、関東地方でも千葉県で、特に水辺の渡り鳥、特に雁・鴨・白鳥たシギ類の減少に歯止めが掛けられるのではないかと考えられます。
これからの、雁・鴨・白鳥の大規模越冬地形成には、この部分からの地道な取り組みが最も大事な部分かと考えています。
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