KAZUO ISHIGUROの作品は、3年前に読んだTHE REMAINS OF THE DAY以来だ。
何の変哲もない、事件性のない作品の中で、平易な英語の積み上げにより、人間の感情の
襞が描かれているのに、言葉に表せない感動を覚えた作品だったという記憶がある。
それだけに、彼の最高傑作とも言われるNEVER LET ME GOにも、同じような期待感が
あったし、ずっと、読む機会を待っていた。
正直言って、THE REMAINS OF THE DAYとは、少し、違った世界だった。ある特殊な
世界、閉鎖された世界でのストーリーのようなところは類似しているかも知れない。
しかし、何の変哲もない、事件性のない作品ではなく、衝撃的なストーリーだった。
他の書評を読むと、SFという言葉が出てくるが、これがSFとはとても思えなくて、本当に
これに近いことがあったのではないか。とか、疑ってしまう自分に驚いた。
キャシーという主人公の好きなジャズ曲の題名が”NEVER LET ME GO"で、JUDI
BRIDGEWATERが歌っているということだったが、実際には存在せず、映画の為に
作られたそうだ。下記ユーチューブにあがっている。
https://www.youtube.com/watch?v=4UX6tzE7P44
とてもノスタルジックな歌でもあり、牧歌的な風景ともあいまってSFとは思えない。
衝撃的なストーリーだが、そのあらすじを知って読むか、知らずに読むかは、お任せ
するために、ここでは何も言わないでおく。
(映画もよくできているらしいので、映画で見るという選択もあるかもしれない。)
ちなみには、KAZUO ISHIGUROは、インタビューの中で、衝撃的なストーリーの部分とは、
別の表の部分では3人の男女の友情とラブストーリーでもあると言っているが、THE REMAINS OF
THE DAYとも共通するが、限られた人生の中で、言葉やSEXでは表せられない感情の
高まりや、忘れられない記憶のひとつひとつの重みなどを表現したいのかも知れない。
THE REMAINS OF THE DAYに比べて、3人の若者に感情移入しずらい感じもしたが、
最後の50ページまで、このストーリーの行方が見えず、最後のページで、キャシーの何とも
言えない悲しみに共感を覚える不思議な終わり方だった。
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