読売新聞の書評で、興味をもって、本書を読んでみた。
山本周五郎賞、直木賞、山田風太郎賞の候補になった作品という。
題名が、なかなか、刺激的だ。
最強と呼ばれた剣豪、宮本武蔵と対戦した相手側からの物語かなと想像させた。
7章に分かれているが、最初の3章は、それに近く、中々、面白く読めた。
しかし、4章以降、ちょっと、話が込み入ってきた感じがした。第六章で、4~5章の謎めいたものが整理されて . . . 本文を読む
サマセット・モームは、うん十年前の学生時代、「人間の絆」を読んで以来だ。
あの、サマセット・モームが、小説家が主人公のスパイ小説を書いていたのか?
それどころか、ウイキペディアによると、サマセット・モーム自身が、実は、諜報活動をしていたという事実に驚愕して、この本を読んだ。
小説家が、諜報活動に関わるという設定は、よくある設定らしい。
過去読んだ、ジェフリー・アーチャーの作品の中でも、記憶 . . . 本文を読む
やっと、THOMAS HARRISのHANNIBALを読み終えた。
約2か月かかった。546ページというから、それほど長かったわけではなかった。しかし、結構、大変だった。
過去の羊たちの沈黙では感じなかった格調の高さとでもいうのか、語彙も難しく感じた。イタリアの芸術関係の記述が多かったせいかも知れない。ただ、映画を見ていたのは、おおいに助かった。結末以外は、かなり、原作に忠実に描いているように . . . 本文を読む
読売新聞の書評で、ゆったりとした作品という言葉につられて読んでみた。
十時半睡事件帖のシリーズの7巻目、最終巻らしい。著者の絶筆でもあるらしい。
事件帖とあるが、この巻については、事件らしい事件があるわけではない。
海洋ものに比べるとかに、ゆったりとした作品だ。
丁度、三島近辺に旅行に行ってきて、箱根八里の街道を知ったばかりのせいか、小田原ー三島ー元箱根ー沼津といった地名や、その街道が、身 . . . 本文を読む
久しぶりに、山関係の作品を読んだ。読売新聞の書評で見つけた本だ。
”世界一不気味な遭難事故”と副題がついている。
1959年に、ソ連のウラル山脈に登山した9名の若者がテントから一キロ半ほども離れた場所で、凄惨な死を遂げた。
氷点下の中で、衣服もろくに付けていなかったり、靴も履いてなかったのだ。
最終報告書では、「未知の不可抗力によって死亡」と記載されていた。
地元 . . . 本文を読む
白石一郎の直木賞受賞作、「海狼伝」を読んだ。
白石一郎の作品は、以前にも読んだことがあるが、久しぶりだ。
戦国時代、海で育った笛太郎が、村上水軍の海賊と行動をともにするようになり、新しい船を建設して、当時の中国に旅立つまでを描いている。海洋冒険時代小説の最高傑作と言われているが、なるほどと思った。
当時の船同士の戦い方や、いろいろな船の種類、操船の仕方など、海流の影響など、詳細に描かれており . . . 本文を読む
長岡弘樹の自薦ミステリー集、「切願」を読んでみた。
6つの短編集からなるが、どれも、ユニークで、独特の雰囲気を持っている。
長岡氏は、短編ミステリーの名手と言われているらしい。
後半のちょっと長めの2作、「迷走」と「真夏の車輪」は、中々、面白かった。予想もつきにくかった。 . . . 本文を読む
ようやく、米澤穂信の「黒牢城」を読めた。
直木賞を受賞して、図書館では、長らく、待ちが続いていた。
読んでみて、驚いた。時代小説的なのだが、ミステリー小説でもある。
織田信長に反旗を翻し、有岡城に籠城した荒木村重の物語だ。
大きな合戦が描かれているわけではないが、籠城している中で、種々の事件が起こり、その一つ一つの事件を解決せねば、士気にかかわると、村重が推理を働かせるのだ。
緊迫感もあ . . . 本文を読む
葉室麟の「草雲雀」を読んだ。
葉室麟の作品にしては、少し、軽めの奇想天外な物語だ。
主人公は、師範代を務める剣客なれど、兄の世話になり、結婚もできず、女中を妾として、同居している。
一方、道場仲間から、用心棒になってくれと、頼まれるのだ。元家老の妾腹の子供であることがわかり、もし、家老になれたら、藩の剣道指南役にして、結婚できるようにするというのだ。
引き受けたのは良いが、次々に刺客が現れ . . . 本文を読む
ちょっと、気楽に読めるものが欲しい時に、奥田氏の作品は、ぴったりである。
今回の短編集も、よくありそうな日常の中で、おこりうる物語をさらりと描いている。in the poolなどに比べれば、現実的であるのだが、だからといって、それほど深刻でもない。
6作の中で、「家においでよ」が、一番、気に入った。突然、妻に別居された男の行動である。自分の若かりし頃の理想の生活を実践するのだ。終わり方が、良か . . . 本文を読む
書評で高い評価であり、エドガー賞受賞作の本作品を読んでみた。
先日、読んだ佐々木譲の「エトロフ・・」と同じく、真珠湾攻撃の時期を舞台にしているのに興味を持ったのも一つの理由だ。
読んでみて、驚いた。自分のイメージしていたものとは、全く、違っていたのだが、自分の好みの文体と、好みのストーリー展開、見事な結末だったのだ。
近年、読んだ小説の中でも、5本の指に入る傑作と言っても良いだろう。ストーリ . . . 本文を読む
浅田次郎「天国までの百マイル」を読んだ。
心臓病を患う母の命を救うため、天才的な心臓外科医のいる病院まで、母を車で運ぶ破天荒な末っ子の物語だ。
映画やテレビにもなった作品だ。
親子の絆、男女の悲しい恋模様を描いた感動の傑作と背表紙にあるが、その通りだと思う。
今、何故か、この作品を読んでみたく思った。
ちょっと、幸せの黄色いハンカチを連想させるロードムービー的な作品だ。ピーターポール&マ . . . 本文を読む
池波正太郎の鬼平犯科帳の番外編とも言える本書を読んでみた。
ちょっと、不思議な作品と言えるのではないか。
主人公は、「お松」という薄幸の女性だが、美人でもなんでもないのだ。しかも、亡父から顔に傷を付けられている。
捨てられた亭主にも、「不作の生大根」などと怒鳴られていたのだ。
この作品では、その「お松」の数奇な人生が描かれていく。
並行して、鬼平の盗賊の捕物が描かれていくのが、中々、接点 . . . 本文を読む
MICHAEL CONNELLYのTHE OVERLOOKを読んだ。
前作が、ECO PARKのようだが、読んだのに、ほとんど、記憶がなかった。
書評の中で、短かったというのがあったが、確かに260ページというのは、短い方かも知れない。
ストーリーとしては、殺人の上、放射性物質が、盗まれる。
FBIは、放射性物質の行方を追うのを、安全保障のための、最優先事項として動く。
ハリーボッシュは . . . 本文を読む
佐々木譲の「エトロフ発緊急電」を読んでみた。
山本周五郎賞受賞作だ。
真珠湾攻撃前の情報戦が主なストーリーなのだが、非常に内容が濃密であり、大作とも言えるページ数(623ページ)だった。
南京大虐殺も描かれており、残虐な戦争犯罪にぞっとした。
一方で、主人公である日系米国人の不思議な魅力と、ハーフの女性や、朝鮮人、アイヌなどが、複雑に絡み合い、人種というものの難しさや、愛憎までも描かれてい . . . 本文を読む