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試写会「The Age of Stupid」@新宿バルト9

2010-02-13 23:00:49 | 映画感想
2010/2/12、新宿バルト9での開催。

英国大使館のご招待。

137席のシアター2はほぼ満席。
映画上映の後、トークイベントとレセプションが行われた。

残念ながら体調不良のため、レセプションには出なかったが、
翌日ダウンしたことを考えると結果論としても、出なくてよかった
(出なかったのであの程度で済んだ)と思っている。

トーク・イベントについては別掲。

***
 
ピート・ポステルスウェイト

***

地球温暖化問題に絞って作られたドキュメンタリーというか、問題提起映画。

2055年の北極海にあるアーカイブで、ピート・ポステルスウェイトが、
地球で実際に起こった温暖化による環境破壊を記録映画として編纂し、
宇宙に向けて発信するという想定。

何人かの実在の人物が実際の映像とともに登場し、
我々に残された時間は限りあり、今手を打たないと取り返しがつかないと訴える。

多くの実録フィルムが使われているが、全編を通じて観客に訴えかけるのは5人。

一人は、ずっと長く石油会社で技師として働き、ハリケーン・カトリーナの襲来の際、
自宅にとどまって、台風通過後、実際に多くの住民の救出に手を貸した男性。

ナイジェリアで大手石油資本に資源を吸い上げられ、貧困にあえぎながら医師を目指す女性。

シャモニーでモンブランなどの登山ヘルパーを行いながら行き過ぎた物流に反対している老人。

イギリスで風力発電所の建設にあた理ながら地元住民の反対に苦慮している男性。

そして、インドで貧困と闘い、誰もが乗れる航空路線開設に意欲を燃やす男性。

人類の歴史は戦いの歴史でもあった。

奪うに値する資源を持つ者の累々たる屍の上に文明は成り立っている。

そして今は石油をはじめとするエネルギーを消費することで、
温室効果ガスの排出に歯止めがかからない。

氷河がどんどん縮小しその表面に行くには梯子を何段も降りなければ到達しないという現実。

石油会社で働くことで、多くの人に利便性と富をもたらした現実と、
石油会社はその採掘に際し、結果として格差と貧困の拡大をもたらしているという現実。

貧困と闘うためのボランティア活動をするのに貧困を救えるほどの移動費用が掛かるという現実。

彼ら、彼女らはいろんな方法でそれぞれの考えでより良い未来へ向けて挑戦し続けているが、
そこには大きい壁が立ちはだかっているのもまた事実。

何かやらなきゃ。温暖化対策は必要と言いながら、
風力発電は、「景観を損ねる」という理由で反対する住民たち。

利権に巣食い、地域自由民を虐殺し、格差の拡大に手を貸した政治家たち。

映画はその他諸々の現実を我々に突き付け、
今、何かできる今我々はなぜ何もやらなかったのか、と問いかける。

***

いろいろ考えさせられました。

世の中一筋縄ではいかない典型を示したような映画。
温暖化対策のために今やらねば取り返しがつかないことになると訴えるが、
本当に我々ができることはなんなのか、は映画は教えてくれない。
それは自分たちで考えなければならないことなのだ。

映画とは関係ありませんが、アル・ゴアが「不都合な真実」で来日した際、
ある人が「温暖化防止のためには冷蔵庫を省エネ製品に買い替えたほうが良いのか」と聞い、
アル・ゴアは「その通りだ。」と即答した。
しかし、実際にはその新しい冷蔵庫の製造と古い冷蔵庫の廃棄に関するエネルギーも
勘案する必要があり、到底即答できるような話ではないはず。

結局、彼も消費文化のアメリカの代弁者に過ぎないと感じさせる一面だった。

同様にイメージ先行、シンボル化されたものは訴えやすいが、
果たしてそれがトータルとして効果的かはよくわからない。

例えば、レジ袋とエコバック、割りばしとマイ箸、火力発電と原子力発電、、等々。
原子力発電については言うまでもないだろう。

レジ袋は作らないとその原料となる石油成分は燃やすか捨てるだけで
(つまり、もともと捨てる成分=ごみの有効利用に過ぎない)
経産省も石油の節約にはならないと言っているし、
エコバックはレジ袋の何百倍もの石油を消費する、らしい。

外国産割り箸は森林破壊につながるが、国産間伐材を利用した割り箸は
むしろ森林の健全育成に役立つてので、そういう割り箸を使ってほしい、とか、
ともかく表面的にとらえてこっちがいいとは言い切れない複雑さがある。

政策も限られた金(税金)をどう配分するかの問題である。

至近なところでは、この国でも太陽光発電の優遇と引き換えに、
風力などのその他の自然エネルギー発電の切り捨てが行われている。

景観を損ねるという理由で風力発電に反対する住民は、文字通りの住民エゴの極みと思える。
しかし、現実に風車が出す低周波騒音による健康被害もあるし、
風の通り道はまた渡り鳥の通り道でもある。
風車に激突して死亡する渡り鳥たちに我々はどう詫びればいいのか。

排出権取引が果たして環境改善に効果があるのか、
発展途上国から「排出権という資源」を奪い取るだけではないのか。

CO2削減は今まで散々資源を無駄遣いしてきた先進国から
自分たちの発展を阻害するようなことを言われたくないという途上国もある。

目的は崇高でも実施するとなると、その過程に利権を生む仕組みを作り、
自分たちが利益を吸い出そうとする集団が必ず発生する。

だからといって何もやらなくていいというわけではないが、
結局は利便性を捨てきれない人間のエゴに環境破壊を回避するために
新たな環境破壊を生むだけなのかもしれない。

そのあたりはジレンマでもある。

地球はすでにそのキャパシティ以上の人間を抱えすぎてしまったのかもしれない。

余談ですが、日本の国土による人口のキャパは、
一説によれば、3500~4500万人と言われます。

現在その3倍の人口を有し、つまり、その2/3、7~8000万人は
そのエネルギーを外国に頼らざるを得ないのが日本の現実です。

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