Sleeping in the fields of gold

小麦畑で眠りたい

『手』

2010-12-22 | Weblog
久方ぶりに美容院へ行った。
白髪が目立ってきて行かなきゃ行かなきゃと半ば脅迫めいた思いを持っていながら、時間がないわけでもないのに(お金がないこともあって(笑))ついつい先延ばしにしていたら、もう年を越しそうになった。

別に髪を年内に切らなければいけないなどということはなく、新年になってから切ったっていいわけなのだが、ここはそれ、日本人。ついつい、なんとなく、身支度を整えてからすっきりとして新年を迎えたいなんて気持ちがあるのだろう。これって、日本人くらいなんじゃないのか。欧米人でわざわざ年内に髪を切りに行くとか考えられないし。実際、美容院のおねーさんも年末は駆け込み需要が多いのだと言っていた。

今まで足掛け10年くらいは通っていたかと思う美容院をやめて、今回は新しい店に行った。新しい店といっても、もう何年も前から営業はしていて単に私が初めて足を運んだだけの話だけれど、たまたま割引券を地域新聞で見つけたので、今までの店に不満も持っていたし、ここはほれ、替えてみるかと。

初めての店ってめんどうくさい。あれこれ個人情報を書かなきゃいけないし、一から担当者とつきあっていかなきゃいけない。何度か足を運んでいる店なら、そういう一切がわりと「てきとー」に済ませられる。

結果。
満点、というわけではないし、難をつければ細かい点では色々あるのだが、結構気に入った。
何より店が小さいのがいい。席は3つしかない。シャンプー台は2つ。割合と予約をしっかり取るためか、あまり飛び込みの客はいないようで、長時間誰かが待っているということもない。そして何より気に入ったのが、「担当者」が基本的に最初から最後まで全部、シャンプーからカットから白髪染め、ブロー、マッサージまで一人でやってくれるのだ。これは当人にしてみれば大変だろうけれど、前の店では各過程で人が代わって相当待たされて嫌になってしまった。

担当してくれた女性が頭の回転の早い子で、「呆け突っ込み」が結構デキル。カンちゃんと言う。
ちょっとざっくばらん過ぎる感じもあるのだが、やることはちゃんとやっているのでOK。

値段のサービス中だというので、生まれて初めて「眉カット」もしてもらった。ザクザク今まで自分で切っていたけれど、プロに整えてもらって、プロに眉を書いてもらうと、まー、なんつぅか、エッジのかかったキリッとした「THE眉!」という感じになった(笑)。私は眉を描くのが苦手なので、特に左眉、楽しかった。

最後にブローしてもらいながらカンちゃんは私の髪の毛の先っちょの方だけ、コテにあてて(今、コテって言わないか(笑)。カーラー?」くるりん♪としてくれた。
「少し巻いてみましょう」と言われたとき、「縦ロール?」と思わず聞いてしまって「縦じゃないです」と笑われたのだが、私にとって「巻く」と言ったらなんとなくイメージ的に縦カールでアントワネットごっこ、なのかと。

いやぁ、ちょっとした手間で変るものですね。いいとこの「マダム」みたいな感じになった。
カンちゃんは言う。
「まぁ、ちょっとした手間ですけどね。その一手間をかけることによって全然変ってくるんです。芸能人だって綺麗ですけど、あれ、トリートメントとかマメにやっています。美は一日にしてならず、です」
それから、自分が言ったことにやや照れている。

いえいえ。素晴らしい。そうだよ、美もローマも一日にしてならず、だね。
ワタクシはいたく感心致しましたよ。
だって、眉カット楽しかったし。525円で人生初体験だよ(笑)。
カンちゃんのアイディアでくるくる巻やったおかげで、楽しかったもの。有閑マダムみたいになれたし。

いや、帰ったらまたすぐにゴムで束ねちゃうんだけどさ。
せっかくのキリリ眉も落としちゃうんだけど。

なにより感心したのは、彼女の「手」だった。
ふとした拍子に、彼女の手のひらを見たとき、見かけの格好は黒い帽子をかぶってショートパンツでかわいらしいのに、その手がひどく荒れて、むごいことになっているのだった。
美容師というのは、日々染料やシャンプーなどで水を使うので、手が荒れてしまう。
この彼女の手を見て、立派だなと思った。とても立派だ、と思った。

真面目に働く手。

笑顔の裏の、この手荒れが。
プロの力なのだ。



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